『オトコニドウテイウバワレタ』

「ふぁ……。」
朝だ、今日もまた平穏な生活が始まる。そう思っていたのに……。
「ん、にゃ!」
体に違和感を覚えて見下ろしてみるとふたつのふくらみが目に飛び込んできた。
「ってことは。」
無い。そんな……、俺は確かにあの時男になったはず。
だがこれが夢ではないことは頬をつねらなくても感触から明らかだ。
どうしよう。女体化するなんてないと思っていたから、これからのことなんてまったく考えていない。
不安で涙がこぼれる。あれ、こんな簡単に泣けるんだ。
「……学校行こ。」
心のざわめきをぬぐうように制服を手にとって着替えはじめる。
一応女体化した翌日までは準備期間として欠席が認められている。しかし今は友人たちとくだらないことで笑って気持ちをごまかしたかった。
「なんか変。」
鏡の向こうで学生服を来た少女が恥ずかしそうに見つめ返していた。
すっかり変わり果てた自分の姿を見てまた目が潤んできた。
このままいると心が壊れてしまいそうだ。かばんを手に家を飛び出した。学校へ。

教室に入り、俺が俺だと分かると笑われた。それもしょうがない。俺は女体化回避したと声高々に言いふらしていたからな。
「でも俺は確かに!」
「はいはい、妄想お疲れさん。」
もちろん信じる者はいなかった。世界でも童貞で女体化しなかった例はいくらか発見されているが逆は無い。
それでも俺が必死で主張していると、ひとりの男子生徒が教室に入ってきた。
「あ……。」
見間違うはずも無い。それは俺が童貞をささげた『彼女』であった。
「どうして……。」
皆も唖然としていた。女体化はあっても男体化は無いはず。
彼女は一週間前までれっきとした女子生徒であった。一週間前、というのはそれからしばらく休んでいたから、その間のことは分からないのだが……。
「この歳になって生理も来ないし、胸もあんまりないし、アソコもなんか大きいと思ってたんだよね。」
「それってまさか……。」
「ホルモンバランスのせいで皆女だと思ってたんだけど、病院で検査してもらったら、僕、男だったみたい。」
道理で女体化するわけだ。男同士では効果がないと何かの本で見た気がする。そのときはあたりまえだとかくだらないとか思っていたが、今になって重大な結果を俺にもたらしたわけだ。
あれ? ということはつまり……俺は……、
「オトコニドウテイウバワレタ?」
「せ、責任はちゃんと取ってよね!」
それはこっちのセリフだっ!


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最終更新:2008年09月06日 23:23
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