今日も1日が始まる
近くの小学校からだろう ラジオ体操の歌が流れ始めた
『新しい朝が来た~希望の朝が~♪』
『この歌 持ち歌にしてんの藤山一郎なんだよな・・・』
そんなネタにもならない事を考えながら ベッドの横のスイッチを押す
モーター音を響かせながらベッドが『俺』の上半身を起こしてくれる
『あれから 一年か・・・』
一年前『俺』は ホームから電車に飛び込んで自殺を図った
確実に 死ねるはずだった
電車の下に巻き込まれながら 確実に死ねる幸せを感じていた 痛みより 死ねる幸せのほうが大きかったのだ
『あいつらに苦しめられるくらいなら』
だか神は 簡単には死を与えてくれなかった
病院で目が醒めた時ベッドのまわりに 親父とお袋 それにばあちゃんがいた
みんな泣きながら それでも 『俺』が生きていた事を喜んでくれていた
『はじめちゃん・・・苦しかったのね・・・あんな事があったうえに 例の書き込みとか・・・』
お袋は泣きながら『俺』の髪を撫でてくれた
右手と左足の先に 鋭い痛みを感じた
『右手と左足が痛い』
『俺』がこう言うと 母と祖母は急に泣き出した
祖母のそれは はじめて聞く泣き声だった
慟哭とでも言うのだろうか
慌てて起き上がろとして はじめて気付いた
右手がない・・・慌てて左手で 左足を探した
そこにあるはずの左足もなかった
神は 『俺』の命を持って行く替わりに 『俺』の右手と左足を持って行った・・・
『もう 剣道はできないんだな・・・』
自殺に失敗し 身体の一部をなくした
本当なら『俺』も泣き出したくなるところなんだろうが 涙も出なかった 悲しいとさえ感じなかった
最終更新:2008年09月06日 23:46