巷ではクリスマスだなんだと騒がれているが、相手の居ない者には関係ないわけで。
本日12月25日も私達は寂れたゲーセンでゲームにふけっていた。
人の数がまばらなのもあって色々とゲームを渡り歩いたが、すでに日は沈み、時計の短針は8時を過ぎていることを示している。
そんなわけで、本日最後のゲームで夕飯を賭けつつ友人と対戦している現状。
傍から見ると女の子二人が口汚くゲームをしている様は哀れ以外の何者でもないので、見てる奴等はできれば胸中にしまいこんで固く封印してほしいもんである。
「よっ、はっ、とっ」
そんな哀れみの視線にも気付かず、反対側の筐体では友人・宇宙(ソラ)がいちいち声を上げてキャラの動作を表現している。
相変らずユニークな奴だ。
「あだっ、くっそ」
しかしいくら面白かろうと周りには他のお客がいるわけで。
迷惑になってそうだしそろそろ帰るか。
なんか感じる視線が子供を見守る親のような感じがするのは、きっと気のせいだと思う。
ええどうせガキの体系ですよ、どうせ身長なんて150ねえよちくしょう。
「あい、とどめー」
「うがー!またかよくそー!」
ほえるなよ。
というか仮にも女の子になったんだから、もう少しおしとやかにだな。
まあ私が言うのも筋違いだとは思うが。
「ちくしょう、金貸せ!もっかいだ!」
期待するだけ無駄だなこれは。
「負けたのにたかるなよ、余裕ないから今日はおしまい」
「ちっくしょー……次はぜってぇ勝ってやるからな!」
筐体をはさんでわめくのはまじめに迷惑だからやめていただきたい。
店内はポツリポツリとしかお客がいないから余計目立つのだ。
「わかったわかった。今度な」
「くそー、覚えてろよお前」
適当にCPUに負けた後、筐体を離れ連れ立って出口へ向かう。
ソラから恨みがましい視線を向けられている気がするが、毎度のことなので無視無視。
しかし、いつも思うのだが、ここは筐体を変えないのだろうか。
ずらりと並ぶ格ゲー、シューティング、パズル、どれも全て同じ筐体だ。
筐体上部中央には「SEGA ASTRO CITY」の文字。よっぽどこの筐体に思い入れがあるんだろう。店名も「ASTRO CITY」だし。
「そーいやーさ」
出口を出た直後、思い出したようにソラが言った。
「おまえはなんでここに良く来るんだ?人気のゲーセンとか他にもいっぱいあるじゃん」
「んー、なんでだろうね」
自分でも良く分からない。強いてあげれば
「名前が京(ミヤコ)だからじゃないかね」
本当はもう一つあるけど。
「それ関係あるのか?」
「さあ?まあ、プリクラとかない分だけあそこはいいと思うよ」
「女らしくねー」
「おまえが言うなよ」
「俺元男だもんねー」
笑いあいながら宇宙の都市を後にする。
きっとソラと一緒だからだろう、ということもあったが、言わないでおくことにした。
その後、どこかで夕飯を食おうにもソラの財布が空だったために、私がソラの家で二人分の飯を作ったことも追記しておく。
なんだかなあ。
最終更新:2008年06月11日 23:49