とりあえずお許しが出たので投下。
こちらからはやんき~?お姉さんシリーズ
コラボ先は名乗りを上げてくださった方の中から、コゲ丸さんの「幼馴染」をチョイスしました。
これらの作品を読んでからの方が楽しめると思います。
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「本当、皐月ちゃんも大変だったのね~…」
「はい。 でももうすっかり良くなりました。」
友達のお嬢さんが大きな事故に会ったと聞かされたときは本当に心配しました。
けれど、こうして元気になってくれてとても嬉しいです。
「でもごめんね~? いきなり押しかけてしまって…」
「いいのよ。 そんなに気兼ねする仲じゃないでしょ?」
「それもそうね~。 ふふっ。」
こうしてお話するのも実は楽しみにしていたんです。
こういう機会でもないと、お友達の家を訪ねるのって気兼ねしてしまいますから。
二人で盛り上がっていると、突然インターホンがなりました。
「私出てくるね。 お母さんたちは話続けててー。」
ぱたぱたとスリッパを鳴らしてかけていく皐月ちゃんを見て、少し羨ましいと思ってしまいました。
うちの優也ちゃんは面倒くさがりだから、チャイムが鳴っても出てくれないんです。
「お!?お母さ~ん!!??」
突然穏やかな空気を引き裂くよう皐月ちゃんの声が聞こえてきました。
私たちは慌てて玄関まで飛び出していきました。
「もしかして……あたる君…?」
彼女も動揺しながらその女に子に質問をしました。
女の子はこくりと一度だけ首を縦に振りました。
その瞬間、どさっと物が落ちる音と共に皐月ちゃんが倒れこんでいました。
「なるほど…… でもおばさんちょっとだけ安心したわ。」
「どうしてです?」
「皐月のために男でいようとして、他の女の子とそういう関係にならなかったからよ。」
皐月ちゃんが眠っている間、あたるちゃんは色々なことを話してくれました。
ずっとお見舞いに来れなかった理由、女の子になって凄く悩んだこと、ようやく決心がついてここに来たこと。
そんな彼女の労をねぎらおうとして、不意に私の手が彼女の頭に伸びていました。
「頑張ったのね~。 偉い偉い……」
優しく彼女の髪を撫でてあげると、彼女は何処か気恥ずかしそうにしていました。
そして涙を必死にこらえているのがわかりました。
私は何も言わずに、ずっと彼女の髪を撫でてあげました。
「……ありがとう、お姉さん……」
「あらあら、お姉さんだなんて~。 最近の子はお世辞が上手なのね~?」
「優、貴方が言うと嫌味にしか聞こえないわよ……?」
「どういうことですか?」
「私と優はそう年齢が変わらないのよ。 つまり今年で三十ピー歳よ。」
言った瞬間、あたるちゃんの表情が凍りつきました。
確かに私はよく若いとは言われますけど、そんなに驚くことでもないような~…?
彼女はそれが信じられないといった様子で私の顔をまじまじと見つめてきました。
女の子とはいえ、見つめられると照れてしまいますね~…。
「優さん…ってもしかして、この間テレビに出てませんでした?」
「は~い。 桜沢ゆうで~す。」
「ってマジで…!?」
現役当時のようにパチンとウィンクをしてみました。
やった後で恥ずかしくなってしまったのは秘密です…。
私の発言にあたるちゃんは更に驚いているようでした。
そんな時、ようやく皐月ちゃんが目を覚ましてきました。
「…あ…」
「お、おう…」
二人は顔を見合わせるなり、言葉に詰まってしまったようです。
ここは私たち大人の二人がなんとかしないといけませんよね。
アイコンタクトを送ると、向こうもそう考えていたらしくすぐに目が合いました。
「まぁまぁ、先ずは座ってお茶でも飲みましょう~? 暖かいものを飲むと落ち着きますよ~。」
「そうね。 お茶淹れ直してくるわね。」
「さぁ、皐月ちゃんは座って…ね?」
おずおずとソファに腰掛けた皐月ちゃんはチラチラとあたるちゃんの表情をうかがっています。
あたるちゃんも同じように、チラチラと皐月ちゃんの表情をうかがっていました。
けれど、どちらとも話し始めるきっかけがつかめないでいるようでした。
「とりあえず~… ちゃんと再会できて、おめでとう~。」
「…ありがとうございます。」
「おばさんも女体化した人なんだけど、周りの人の態度が変わらなくて嬉しかったのよ~?」
「そうだったんですか?」
なんとなく、身の上話をすることにしてみました。
男性だった頃の記憶は殆どないけれど、それでも変わらず接してくれた仲間に感謝していること。
そんな話をしているうちに、お茶のお変わりが出てきました。
「とりあえずこれでも飲んで落ち着きなさい。」
「ありがとうございます。」
「本当、あたるちゃんは礼儀正しくていい子ね~。 それに比べてうちの優ちゃんは…。」
「そのうち優ちゃんもわかってくると思うわよ?」
「そうかしら~…?」
やっぱり子供を持つ母親同士、こちらばかり話が進んでしまいます。
相槌を打っていたあたるちゃんと皐月ちゃんは何処か詰まらなさそうにしていました。
「私、ちょっと部屋に戻ってくるね。 折角あたるが着てくれたんだから着替えてくる。」
「お、おう…。 いってらっしゃい。」
いそいそと部屋に戻ってしまった皐月ちゃんを見送って、なんだか申し訳なくなってしまいました。
そんな私たちに、あたるちゃんは重い口を開きました。
「あの…小母さん、これからのことについて少し相談があるんですけど…。」
「あら、どうしたの?」
「おばさんも相談にのりますよ~?」
あたるちゃんの口から出てきた言葉は私たちを本当に驚かせました。
この場に皐月ちゃんがいなくて、正直良かったとさえ思ってしまいました。
最終更新:2008年09月10日 01:51