―再誕―
『ピピピピピ』
電子音に反応して意識が覚醒してゆく
目覚ましを止めて起きると、きっかり6時45分
どうやら頭痛と熱は引いたみたいだ
関節の痛みも無くなっている
「目覚ましで起きるなんて何日ぶりかな・・・」
つぶやきながら立ち上がり、体をチェックしていく
昨日の医師の話だと、今日の朝
つまり現時点で女体化しているはずだ
声も変声してるみたいだから、間違いない
「あれ・・・」
立った瞬間に少し違和感があったが
予想よりは違和感なく、ちょっと拍子抜けしてしまった。
昨日までは無かった胸が、少しだけ膨らんでいる
ウェストも細くなったかな
身長はパジャマの裾の余り具合から予測すると3cmほど縮んだ程度
もう少し劇的に変化するかと思ってたけど、そんなに変わってないのかな
「ぁー」
その代わり一部に劇的な変化を感じることができた
昨日までは肩口あたりまでだった髪が、腰の辺りまで伸びてる
寝る前から伸び始めてるなーっとは思ってたけど
まさかこれほど伸びるとは、ちょっと予想外
体のチェックをしていると部屋の扉が軽くノックされた
多分お姉ちゃんだろう
「はーい」
一瞬、沈黙の後
「ミコト?入っていい?」
多分声の違いに戸惑ったのだろう
いいよ、と返事をする前に部屋の中へ飛び込んで来た。
「おわっ!?」
これは姉の声
「お姉ちゃん普通逆じゃないかな、返事も待たず部屋に入ってくるなんて・・・」
「いやぁ、ミコトの変化が気になって
それにしても・・・ミコトちょっとじっとしてて」
前半は笑いながら、後半は真剣な声でいきなり迫ってくるなり
いきなり顔をじっと見つめられ、次は上から下まで舐めるように観察され
腕・肩・胸・腰・お尻・足をところどころ触られビックリ
「ミコト・・・ちょっとその場で一周してみて」
「どこか変?」
言いながら一周すると
「ミコト、とりあえず一発殴っていいかしら?」
「ちょっと!なんで?」
「いや・・・ちょっとムカついただけ、洗面所で顔洗って来なさい、お母さん達リビングに居るから」
そう言うと姉は何やらブツブツと小言を言いながら部屋を出て行った
「ん~、やっぱり顔も変わってるんだ・・・」
洗面台で自分の顔を確認すると、「変わったけど、あまり変わってない」様な
劇的な変化はしていなかった
少し、お姉ちゃんに似てるかも・・・
「それにしても髪・・・ちょっと長すぎかな
前髪は切らないと・・・」
その場にあったヘアゴムで適当に後ろを縛ってリビングの扉を開けると、両親からまるで転校生でも見るような目で見つめられ、そんなに変なのか?
「おぉ~」
と父が沈黙を破り
「ミコト・・・美人になったわねぇ~」
と、言いながら母が近寄ってくる
美人・・・?
「でしょ~、あたしより可愛くなってない?」
「ミコトは元々可愛かったけれど、なんだか美人って感じになったわねぇ」
「そかな、お姉ちゃんの方が美人だと思うけど・・・
あ、そうだお姉ちゃん、下着だけ・・・貸してもらえないかな、今履いてるのじゃちょっと・・・」
「あー、わかった、すぐ持ってくる」
ご丁寧なことに、ショーツだけじゃなくブラまで貸してくれた
「丁度昔ので合いそうなサイズが合ったから」とのこと
多分朝胸を触られたときに、カップまで調べてたみたいだ。なんというか、抜け目が無い
着替えるとき、抵抗感というものは無かった。
一般的には、女体化した男子は、女性モノの下着を着用することに抵抗感があるそうだが
自分は元々、昨日まで股間に納まっていたモノが、なんとなく異物のような感じがしてたし。
問題は無かった
唯一手間取ったのは、上手く後ろ手でホックがとめられなかったけれど
そのうち慣れるだろう
着替え終わって、改めてリビングに戻って朝食を取る
家族そろって食事なんて、いつ以来かな
今までは急に病気で倒れても、帰ってきてくれなかった両親だが
流石に学校で倒れて病院搬送
病院から両親呼び出しとなると、まとまった休みが取れたようだ。
「ミコト、体調の方はどうなの?」
「大丈夫みたい、多分外に出ても平気だよ」
「よかったわ、これから色々用意しなくちゃね、私服とか、制服とか、靴とか必要でしょう?」
あ、そっか、私服はお姉ちゃんから借りたりは多少出来るだろうけど
制服は新しく作り直さなきゃか、そういえば足のサイズはどうなったんだろう
見るとお姉ちゃんとそんなに変わらないくらいかな?
「多分靴はあたしのが入ると思うから、後で履いてみて、ダメだったら買いに行こうか
制服は新しいのが仕立て上がるまで、あたしのが着れると思うよ」
「お姉ちゃんの分の制服はどうするの?」
「卒業した先輩から1セット予備もらってるから大丈夫よ」
んー、なんだか意外と楽かもしれない
お姉ちゃんがいて本当に助かった。もし居なかったら全部1から買いなおさなければいけないところだったんだから。感謝なくちゃ
「ありがとう、お姉ちゃん、これから色々お世話になると思うけど・・・よろしくね」
「あたし本当は妹がほしかったしね、まぁミコトは可愛く育ってくれたから良かったけど
女の子になったのよねぇ~、嬉しいわ
イロイロ教えてあげる」
「そういえば昔マコトに散々言われたなぁ、何で弟なの!妹がほしかったのに!って、パパは結構傷ついたんだぞ
でもいいじゃないか、こーやって無事ミコトは妹になったんだし」
笑いながら昔話をする姉と両親
あぁ・・・恵まれてるなぁ
これからの生活が楽しみで仕方ない
「大変なのはこれからよ、ミコト
ほら、学校とか、リョウ君たちは受け入れてくれたけど
みんながみんなあの子達みたいにはならないかも知れないし」
「大丈夫だよお母さん、私が自分で選んだ道だから」
笑顔で答える
あれ・・・今、自然と自分の口から『私』なんて一人称が出てきた
なんの違和感も無く・・・
やっぱり女になることを選んで正解だったのかな
「あぁ!ミコトが『私』だなんて!可愛い!!!抱きしめさせなさい!
そうだミコト!今日は一緒に美容院に行って買い物しようよ!前髪とか調えなきゃでしょ?」
「うん、そうだね、お母さんいい?制服の寸法とか、早めがいいとは思ってるけど」
「いいわよ、行ってらっしゃいな、せっかく姉妹になったんだから楽しんで来なさい
制服の寸法なんて、明日でも明後日でもいいんだから
お母さんは今日病院や役所に行って、手続きしてくるわ」
「じゃぁ出かける準備するよ、適当に服貸してもらえる?」
「りょーかい!可愛い妹のために一肌脱ごうじゃないの!薬飲み終わったらあたしの部屋においで」
思い返すと昨日から、イロイロあったなぁ
突然倒れて、病院で目を覚まして
女体化症候群だと告知され
女になる道を選んで
これから数日は、準備とかいろいろあわただしくなりそうだ。
これも私が自分で選んだ運命!楽しまなくっちゃ!
―再誕―完
最終更新:2008年09月11日 00:59