―買い物―
姉から借りた服はジャケットもジーンズのウェスト、裾丈もぴったりだった。
いきなりフリルの付いたスカートを手渡されたけど、流石に初日からは精神的にキツイと、何とか断った
自分から女になるって決めたクセに、と何度も言われたが、それはそれ、これはこれ
「とりあえず美容院に行こうか、いつもの場所でいい?」
「うん、女に変わったからって行きつけ変えるのも怖いし」
ここ数年行きつけの美容院は、値段はリーズナブルだが
腕はいいし、センスもいい
なにより、言葉で伝えたイメージ通りにも仕上げてもらえる相性のいい美容師が居て
もう他の店で切ってもらう気になれないのだ
電話をすると、幸い平日だったので今からでもOKとのことで
早速出かけることになった
担当の美容師さんはやっぱり驚いていた
「今まで何人か女体化した子を見てきたけど、こんな綺麗な髪は久しぶりだ」と
「まさにアジアンビューティーな髪だ」など言われ、ちょっと悪戯心で
「思い切ってばっさり切ってください」
冗談で言ってみる
「勿体無い!せっかく綺麗でここまで伸びたんだから、長さはこのままにしようよ」
結局毛先を調えて前髪と軽くシャギーを入れてもらって美容院を出た
覚悟はしてたけど、まさかこれからが地獄とは―
10時に家を出て、現在帰宅したのが夕方6時
自分と姉の両手には大きな紙袋が合計4つ
下着から始まり、服、化粧品、アクセサリー
親から渡されたお金で買えるだけ買った
いや、買わされたという表現の方が正しいかもしれない
特に服なんかは、姉とほぼサイズが一緒ということもあり
姉はこれ見よがしにと、自分の服を選ぶような感覚でどんどんすすめてきて正直疲れた・・・
スカートだけはまだ抵抗があって
「ジーンズだけでいい」と言っても
「どうせ制服じゃスカートでしょ!」と
ワンピースと膝上丈のプリーツスカートなんかも買わされてしまった。
帰宅するなり買ってきた服を片っ端から無理やり試着させられ
「お姉ちゃん、私着せ替え人形じゃないんだけど・・・」
と抵抗するも
「今日だけ今日だけ♪」
と流されてしまう
こーいうときの姉の言葉は信用できない。
たしか、『一生に一度のお願い』を過去3度ほど聞いた気がする。
「おとーさーんこんなのどぉ?」
「おぉー!いいじゃないか、すごく似合ってるぞ」
「でしょー、これあたしが選んだんだよ」
ブラウスにプリーツスカート、ハイソックス
軽くメイクもされてちょっと恥ずかしい
「そろそろお友達呼びなさい、ご飯できるから」
「わかった、じゃぁ着替えるね」
流石にいきなりこの姿は見せられない
せめて地味目なTシャツとジーンズに着替えようとすると
「いいじゃないそのままで、似合ってるんだから」
「いや・・・でも・・・お願い、今日だけ」
「ダメ、お姉ちゃん権限でダメ、それにもうすぐリョウ君達来るよ。あたしがさっきメールしといたから」
「え!?なんでお姉ちゃんがあいつ等のメアド知ってんの!?」
『ピーンポーン』
―これ以上ないというくらい、絶妙なタイミングで鳴る玄関のチャイム―
間違いなくリョウとハヤトだろう
姉はさぞ嬉しそうに
「今のため」と無邪気な、『悪巧み成功』みたいな笑顔で返される
やられた・・・
―買い物―END
最終更新:2008年09月11日 00:59