お題『失踪』

お題『失踪』


「えぇ!?」

咄嗟に驚きの声が口から発せられ
その声が昨日までの自分の声と違うことに再び驚く

「まさか・・・」

必死に姿見を見つめ
少し横を向いたり、体ごと横を向いて鏡を見つめる。

「やっちまった・・・」

―女体化症候群―
最近は発症率も少なくなっており、メディアでも滅多に取り上げられることも少なくなってたので、自分の姿を見るまで忘れていた。

いまだ現実感を持てず、これは夢かと頬をつねって見るも

「痛い・・・夢じゃ・・・無い」

ふと見下ろす胸元には、小さいながらも昨日には無かった膨らみがあり
混乱に拍車がかかる。
股間にもあるはずのものが無い

父親は単身赴任
母は早朝からのパートですでに出勤し、家には自分一人

「どうしよう・・・あっ、学校・・・行ける訳ねーよ」

かと言って親に連絡する気にもなれず
とりあえず着れる服を探す。
幸い今の自分に違和感の無い服を発見
ジーンズのウェストはベルトで何とかなったが、裾は仕方なく折り返して履いた

「学校の友人にヘルプ電話・・・いや、できねー!!!」

今電話したところで何になる
絶対学校に連れてかれて動物園のパンダ扱いされるに決まってる。

今や学年に数人規模の女体化率
友人には助けは求めれない・・・

「そうだ!美紀子ねーちゃん!!」

5年ほど前に女体化した元従兄弟、現従姉妹の事を思い出す
確か今は大学生で一人暮らしをしてるはずだ
携帯のアドレス帳を開きコールすること20秒ほど

「はい、もしもし。優希?珍しいね、どうしたの?こんな朝早くに」
「美紀子ねーちゃん助けて!」
「ちょっ!優希よね?」
「そう!俺だよ!」
「まさか・・・もしかして・・・なっちゃったわけ?」
「そうなんだよ・・・で、何がなんやら、どうしていいかわかんなくて、助けてお願い!」
「とりあえずお母さんには連絡した?」
「いや・・・してないっていうか、したくないっていうか・・・」
「あー、わかった。丁度今日講義無いし、今から向かえに行くわ、家には居たくないんでしょ?」
「助かる、おねがい」

すぐにバイクで迎えに行くから、と言われとりあえず逃げ場所は確保できた
美紀子ねーちゃんも突然女体化した人で
俺の気持ちもすぐ分かってくれたみたいだ

迎えに来てくれた美紀子ねーちゃんに「ごめん・・・」と言い
バイクの後ろに乗って、美紀子ねーちゃんのアパートへ向かう道すがら
これからどーするか、どーすればいいのか、どーしたいのか考える
けれど考えるほどに頭が混乱してどうしようもない

「はい、お茶」
「ありがとう」
「しかしあの優希がねぇ~、まさかなっちゃうとは」
「俺も信じれねーよ、悪い夢なら覚めてほしいと思う・・・」
「とりあえずお母さんに今日は友達の家に泊まるから、ってメール入れときなさい」
「そっか、そうだね・・・」

とりあえず親にメールを入れておこう
携帯には友人から「学校どーした?サボりか?風邪でも引いたか?」
などメールが数件入っていたが無視、携帯の電源を切る

「で、これからどーする気?」
「まだ・・・何も考えてない・・・」
「ま、今日は金曜だし、日曜までここに居ても、まぁ心配はされないんじゃない?」
「いいの?俺邪魔なら出てくよ」
「どーせ行く当て無いんでしょう?」
「まぁ・・・」
「こんな機会じゃなきゃ、優希と話すことも少ないしね、気が落ち着くまでうちに居なよ」
「ごめん、ほんと」
「私も突然女体化したときは、今の優希と似たようなことになったもの、気持ち良くわかるよ
そうだ、私が女体化した時の話してあげよっか、参考になるかもしれないし」

そして3日間、俺は美紀子ねーちゃんから、女体化した当時の話やこれからの話
女の体での生活の仕方など
色々教えてもらった。

母さんには「ごめん、日曜に帰る」とだけメールを入れておいた。

―fin―


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最終更新:2008年09月11日 01:05
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