「―――――――は?」
っと驚くタ○ゴロー…じゃなくてっ!
とにかく俺は、雪野先輩を担いで、
先輩の家まで送ることになってしまったのだ。
ろく
「先輩のマンション…ここか」
誰に言うでもなく呟く。
先輩はまだ眠っているが、問題ない。
柳先輩が地図を書いてくれたり、家のことを色々と教えてくれたからだ。
『家のカギは505号室のポストの新聞紙の下だ』
予め聞いておいたポストの中を探す。
本当にあっさりと見つかったそれを握り締め、
俺は先輩を背負ったまま雪野先輩の家に入っていった。
「ふう…」
先輩をベッドの上に寝かせてひとまずのため息をつく。
そして、自責の念がこみ上げてくると同時に、柳先輩の言葉が思い出された。
『ツバキは一人暮らしでな。こういう時、迎えに来てくれる親御さんがいないんだ』
…俺は先輩を苦しめてしまった。
一人で、頑張っていた先輩を。
「先輩、本当に、すみません…」
ベッドの上で静かに眠る先輩に、言ったものではなく、
俺の中で渦巻いている言葉が、偶然口から漏れたものだったのだが、
「・・・・・・・だから、ミキ君は…悪くないんだよ…」
その独り言が偶然耳に入ったのか。
先輩は目を覚ました。
「雪野先輩、大丈夫ですか!?」
慌ててベッドの傍に駆け寄る。
「うーん…二日酔いの最悪ばーじょんって感じ…」
そう言うと力なく笑って見せようとする。
俺を安心させようとしたのだろうが、
そんな先輩の気遣いですら、俺の胸をギリギリと締め付ける。
「先輩…」
「ん?どしたの?ミキ君・・・・・っていうか…ここ」
「ここは先輩の家です。柳先輩が教えてくれました」
「あ…章介が…そっか、それで、ミキ君が連れてきてくれたんだね…」
ありがと、と言うとまた力のない笑み。
もう、耐えられない。
この人のこんな辛そうな表情を見ているのは。
「ミキ君、どうしたの…?なんか、酷い顔色だよ?」
「先輩、俺、部活やめます」
「―――え?」
先輩の表情が驚きで固まった。
「俺、入部してから先輩にずっと迷惑かけてましたよね?」
「…ちが―――」
「保健の先生に言われました。先輩が倒れた原因は精神的なものだろうって」
「・・・・・それは、ミキ君、それはね――――」
先輩の言葉を待たずに続ける。
「それ、俺のせいですよね…俺があんなことしたから、だから俺は――――」
そこで先輩の手が、俺の話を遮った。
「ねえ、ミキ、君…こっちの話を聞いてよ…」
先輩は、泣いていた。
「悪いのは、ミキ君じゃない。そう、悪いのは、全部…『俺』なんだよ」
「―――え?」
今度は俺が驚く番だった。
確かに、今まで雪野先輩が自分をなんと呼ぶのかは知らなかった。
だが、『俺』というのは先輩に不似合いすぎた。
完全に硬直した俺に、先輩が言った。
「俺の話、聞いて、くれる…?」
ろく おわり
最終更新:2008年06月12日 00:01