とりあえず第一話完成。あらすじどうしよ・・・
「虚像」第一話
眠い。
つーかだるい。
どうも体に力が入らない。
なんなんだろう。
ぼんやりと、ベットにつっぷうしながら首だけ曲げて
机の上の時計を見る。
「3:54…」
意味もなく、デジタル時計の液晶に映された数字を声に出す。
学校を休んでもう三日になる。
とらあえず学校には風邪と言っている。
だが実際、症状は…自分でもよくわからない。
うまく説明できないが、何か頭を締め付けられるような頭痛。
食欲はなく、食事もまともにとっていないというのに、
何かが腹の中でうごめいているかのような感覚。
本来ならそれで悶え苦しむ所だというのに、それすらできない倦怠感。
それが何日も続いているのだ。
…学校はどうなっているだろう。
陸上部副部長という身から、部活も心配になってくる
(トントントントン…)
誰かが階段を上がってくる音がする。聞き慣れたリズム。母さんだろう。
(トン…トン…トン…)
…いや…もう一人。母さんの後からゆっくりと聞こえる足音。
…アイツか。いつも俺ん家の階段を一段抜かして上る。
(ガラッ)
母「優?入るよー。どう熱下がった?真琴ちゃんがお見舞いに…」
真琴「元気ー!!…って昨日と変化なしじゃん!」
優「うるせー…静かにしてくれ…」
真琴「ちょっとぉ!なにそれ!?三日連続でプリント届けに来てる私の身にもなってよ!」
家近くなんだからいいだろ…と言うのも億劫だった。
幼なじみの真琴はいつも明るく俺に接してくる。俺はそっけなくあしらうが、今までこれで成りたってきた。
だが、実際今は静かにしてほしい。いつもならそれなりに返答はするが、今は大声を出されるとジンジンと頭に響くのだ。
母「こら!せっかく真琴ちゃんが来てくれてるのに!…まったく。ただの風邪がなんでこんなに長引くのかしら…まさか女体化なんて事…」
優「おい!ありゃ15才からだろ…第一、血液検査で大丈夫だったろ…」
「女体化」と聞いて思わず大きな声を出していた。優が1番嫌いな言葉だった。
「女体化」と聞いて思わず大きな声を出していた。優が1番嫌いな言葉だった。
女体化。15、6才の性交を体験した事のない男子に起こる現象。その原因やメカニズムは未だにわかっていない。
別に童貞のままでも女体化せずに済む者もいるのだが、近年、その数は現象していき、今では全体の10%ほどだと言われている。
優は検査で女体化しないという事はわかっていたが、その検査の結果は絶対ではない。
なにせ、女体化自体に謎が多く、例外が予測出来ないのだ。
優はその、検査結果が絶対ではないという事に言い知れぬ不安を感じていた。
真琴「プッ!優が女になるとか…元々女顔だし変わんなかったりして…w」
優「……」
真琴「あり?」
優「…もういいって…プリントそこに置いといて。ありがとな。」
真琴「あ……うん。」
もう面倒くさくなって、机の上を指さした後、布団を被った。
母「たくっ…ごめんね~真琴ちゃん。優、お粥作ったからこれも机の上置いとくわ。早く食べるのよ。」
優「…ああ」
生返事をするが、食欲はなかった。
ふすまを閉める時に真琴が何かを言った気がしたが、聞き取れなかった。
また眠気が襲ってきた。
(ピピピピピピピ!)
優「っー!」
電波時計のアラーム音が耳元で鳴り、跳び起きる。時間は、休んでいる間も学校へ行く時間にセットしてあった。
机の上にあったはずの時計は何故か優の枕下にあった。
(いつ落ちたんだよ…)
そう思い時計を拾う。
ん…?
時計を元の位置に戻した後、深呼吸をし、体を爪先から手首まで大きく上に伸ばす。
(治ってる…?)
昨日まであんなにだるく、ハキケがしていた体はすっかり回復していた。
再度、背伸びをし、大きく息を吸う。とても清々しい気分だ。
まるで、自分が新しい自分になったような。
これなら学校に行けそうだ。
通学カバンを片手に階段を駆け降りる。やはり、久々に持つカバンはやけに重くかんじる。
景気よく階段を駆け降り、リビングのドアを開ける。
家族の視線が集まる。
優「母さん!治っ………?」
あれ…?声がおかしい。やけに高い。
二回咳をして再度声を出してみる。
優「あー…っ…?ん?」
やはりおかしい。喉を潰したのかと思い、喉ぼとけをさする。
喉ぼとけがない―
そう認識するのと家族が一斉に俺の前に集まるのはほぼ同時だった。
妹「……あの…兄ちゃん…だよね?」
は?何を言ってるんだコイツは…見てわかるだろ。
妹の言っている事がいまいちわからぬまま、とぼけた顔で妹を見る。
母「……優なのよね?」
優「あー!何言ってんだよ!ちょっと声がしゃがれただけで!見ての通り……」
――!!
そこまで言いかけた所で、ある三文字が頭をよぎった。
「女体化」
……まさか…!
次の瞬間、ドアをはねのけて洗面台へ走った。
父がなにか言いかけていたが無視した。
もう慌てていて、洗面台へ行くつもりだったが、途中で下駄箱の上の鏡が目に入り、それを掴みとった。
鏡に映る顔を凝視する。
―――違う。
俺の顔じゃない。
どこがどう違うとかははっきりと言い表せないが、これは明らかに昨日までの俺ではなく…
女の顔だ。
それから、俺は何分かそこに立ち尽くしていたようだ。
母に肩を叩かれて我に返った。
鏡は手の中にはなく、玄関のタイルの上で無惨に割れていた。
これからどうするか…頭の中でまずすべき事を模索する。
…何をしたらいいのか全くわからない。
昨日までの俺とは全てが違うのだ。
女体化した男は、体だけでなく、心、好み、思考まで徐々に女のものになる。
自分が自分でなくなっていくような気がして、頭が混乱してくる。嫌だ。女なんかになりたくない…!
もうこれ異常先の事を考えるとおかしくなりそうだった。
母「ちょっと……あ…大丈夫?」
母も動揺しているようだ。
…とりあえずは、自分の今の姿をもうちょっとじっくり見よう。それだけが頭に浮かんだ。
洗面台へ進む。途中、リビングを覗くと、もう妹と父は先に家を出たらしい。テレビはつけっぱなし。コーヒーからまだ湯気が立っている。
妹も動揺していたのか、いつも持っていっているテニスのラケットが、無造作にカーペットの上に置かれている。
洗面台の前に立つ。目はつぶっている。
母「それじゃあ…わかんないでしょ。」
んな事わかってる。
ただ、怖い。
昨日まで、生まれた時から酷使してきた俺の体は、もう目の前の鏡の中にはない。
あるのは……どんな体なんだろう。
意識すれば、目をつぶっていても判る。
肩に少しかかる柔らかい髪。
胸に膨らんだ二つの…乳房。
できるなら、その女性としての因子を持つ全てを、自分の体から取り去ってしまいたかった。
優「受け入れなきゃな…」
明らかに、親の前でいった強がりだった。
だが、強がりで言った言葉でも、そうしない訳にはいかないのだろう。
意を決して目を開く。
…………
そこに立っていたのはやはりさっきの女だった。
今、改めて見てみると、どうやら妹に似ているようだ。
肩幅は明らかに狭まり、筋肉もなさそうである。
優「……っくそ!」
女の声だ。さらに嫌になってくる。その場にへたり込んだ。
母「…学校にまだもう少し休むって連絡入れてくる…」
そうしてくれた方がいい。今は当然行く気も起きないし、準備もない。
真琴にも、プリントはもう届けに来なくていいと母に言ってもらおう…
もう一度鏡を見る。女がこっちを見ている。これが俺だ。
優「本当に女になっちまったのかよ…」
幾分のびた髪を触る。邪魔だ、と感じた。
洗面台の引き出しから、ハサミを取り出す。
鏡と向き合い、髪の一房を手に取る。
ゆっくりとハサミを近づける。
優「やっぱ受け入れられねーよ…」
俺は男だ。男でいたい。これからも…ずっと…
体は女になっても、俺は男として生きていこう。そう思った。
ならこんな長い髪…必要ない。
ゆっくりと指先に力を入れる。ハサミの二つ刃の間隔が徐々に狭くなる。
(ジョキ…)
数本の髪が下に舞い落ちる。
だが、髪が僅かに切れる音を聞くと、優は指に力にを入れる事ができなくなっていた。
(なにやってんだよ…俺…)
手に取った一房をなかなか切る決心がつかない。
なんで?なんでそんな事に躊躇してるんだ俺は…!
邪魔なのに…こんなの必要ない筈なのに…
なんで切れないんだよ!
母「…!!何してるの!」
(バッ)
学校への連絡を終えたらしい母が、俺が今しようとしている事を見て俺からハサミを取り上げた。
優「何すんだよ!」
母「髪は女の命なの!そんなバカな事やめなさい!」
優「俺は男……」
(パアン!!)
次の瞬間、目の前で光が弾けた。
母に頬をひっぱたかれたらしい。
優「………っ!」
母を睨みつけた。
母「優!アンタは女になったの!
そりゃ…今は受け入れられないかもしれないけど…
こうなった以上、これからアンタは身も心も女として暮らしていかなきゃならないの!
だから……そんな事…しないで…?優…」
母は目にうっすら涙を浮かべいた。
つられて…俺も泣いた。
…髪を切れなかったのは、心のどこかで、この髪を大切に思う気持ちがあったからだろう。
俺は…女としてこの髪を切る事は出来なかったんだ…
俺は、女になったんだ。
第一話完
だめだ・・・難しい。まあ出来れば続きをお楽しみにw
最終更新:2008年09月17日 17:56