無題 2007 > 12 > 12(水) ◆YPPZoWABRI

幼なじみの男友達がいた
小さな頃からいつも一緒に遊んで、同じ幼稚園、小学校、中学校と続いてきた。しかもクラスもほとんど一緒、これは奇跡に近い。
そんな私達の関係も中学3年にもなりそろそろ終わりに近づいていた。
進学先が違うのだ、それまでは気付かずにいた気持ちだが、二人の道が離れてしまうというのが分かってから彼の事が気になってしかたなくなった。

「ねぇ、こんなにイイ女が居るのにお前は口説こうって気になんないのかね」
アタシがそう振っても奴は冗談としか思ってないみたいで笑いながら「口説いて欲しいの?」とか言ってやがる。
決死の覚悟で言った言葉だったのに…癪に触るんで「ばーか、ウソだよ」とか言って自分の気持ちをごまかした。
このニブチンが!

なんで気付いてくれないのかな?

その後、何の進展も無いまま私達は卒業を迎えた。

気持ちを伝える事が出来ないまま…

私達は高校生になり彼とはすれ違いばかりで会う事はほとんど無くなった。
でも気持ちは会えない分余計に強くなっていく。
夏休みになれば、夏休みになればまた彼に会う事が出来る。その時はこの気持ち必ず伝えよう。

しかし、私は彼への気持ちを伝える事が出来なかった。

「彼に彼女が出来た」
彼と同じ学校に行った友達から聞かされた事実、目の前が真っ暗になった。
その日、私は勇気の無かった自分に後悔し一人泣いた。
彼の事忘れなきゃ…

夏休みになり久しぶりに彼に会った。
「久しぶり、彼女出来たんだって!やるじゃん」
「アタシを口説こうとしないと思ってたらこんな事だったのね」
「そう言うお前はどうなんだよ?」

「あっ、アタシ?」
「アタシは…居るさ、こんなイイ女ほっとく男なんてアンタ位だよ」
アタシは咄嗟に嘘をついた
「そうか、良かったね」
その後、他愛のない話しをして別れたが、別れ際の彼の笑顔は少し寂しそうだった。

この年の秋、彼が亡くなった。
自殺だった。
お通夜の晩、彼の顔を見て私は驚愕した。
「違う!これは彼じゃない!」
「だって、だってここに居るのは女の子じゃない!」
「誰よ!私をからかわないで!」
「彼はどこよ!」
「彼に会わせてよ!」

叫ぶ私に小母さんが私に一通の手紙を渡してきた
「あの子の手紙よ」

手紙にはこう書かれていた

君がこの手紙を読む事は無いかも知れない
もし読む時は恐らく僕はこの世に居ない筈だ
僕は弱い男だった、以前君が何で口説かないのって言った事があったよね?
僕は何故か「好き」の一言が言えずにあんな口調になってしまった。
高校に入ってある娘に告白されて付き合う様になったが君の事が忘れられず直ぐに別れた。
そして今度こそ君に告白しようとしたがすでに遅かったようだね。
そして、僕は女体化してしまった。
女体化した僕は必死にこの身体に、環境に馴染もうとした。でもどうしても馴染む事が出来なかったんだ。
日に日に増していくこの違和感にもう疲れたんだ。
何未練がましい事書いてんだろう。ごめんね。
本当は君にお礼が言いたかったんだ。
今まで一緒に居てくれてありがとう。
僕は君と居た時が一番幸せでした。
貴女は貴女の好きな人と幸せになって下さい
さようなら

立っていられなくなってその場にへたり込んでしまった。

私のせいだ。あの時、嘘さえつかなければ彼を失う事は無かったのに・・・

その後の事はよく覚えていない。
彼を失ってしまってから毎日が虚ろで生きてる実感が無い。

逢いたいよ・・・彼に逢いたいよ・・・

そうだ、彼に逢いに行こう。

私は少しずつ溜めておいた薬を一気に飲んだ。
薄れ行く意識の中、笑顔の彼がいた

「やっと逢えたね。本当はねアタシ、あなたの事がずっと好きだったの」

やっと本当の気持ちが言えた。
よかっ…た…


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最終更新:2008年09月17日 18:07
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