134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:12:29.83
ID:X/T4mo7i0
明け方トイレにいきたくなって目が醒めた。昨夜、水分を摂りすぎたかな?なんて思いながらトイレに入り、ファスナーを下ろして愚息を取り出し…
スカッ!空振り
あれ?
もう一度愚息を取り出そうと手をもっていくが、愚息は行方不明、僅かな毛の感触しかない。
おろっ?
立派ではないが陥没するほどちっちゃなちんちんじゃない
誘拐?それとも構って無かったんで拗ねて家出した?
迫り来る尿意と愚息の行方不明に焦った俺はまともな思考が出来なくなっていた。
とりあえず便器を跨いでって、うわ、パジャマとトランクスが邪魔!
慌ててパジャマとトランクスを脱いで便器に跨がる。もう我慢できねぇぇぇ…
じょぼじょぼじょぼ…
便器の縁に当たって周りに飛び散る飛沫。俺は中腰になりながら必死で便器の中に収まる様に身体を動かした。
「畜生、なんでこんな目に遭うんだ!俺の愚息は何処行った!」
出すものを出して濡れてしまった足や股間をトイレットペーパーで拭く…
な…無い!
お楽しみ袋までが無くなってる。
ちょっ、マジ?ヤベー!何処に落とした?
俺は下半身剥き出しのままトランクスやパジャマのズボンの中を探した。
俺がパニックになって探してる所に兄貴が起きてきた。
「ちょ!おま、誰だ?」
「アニキー、俺のちんちんが…お楽しみ袋が無いんだよー」
「あれ無いとやべーんだよ、アニキも探してくれよー」
135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:14:14.30
ID:X/T4mo7i0
「さ、聡か?」
「冷静になって聞けよ」
「なんだよ、冷静って!俺の一大事に冷静になんてなれるかよ!」
「聞け!聡!」
兄貴の気迫に圧倒された。
「…はい…」
「お前のちんちんと玉はな、落としたんじゃ無い。消失したんだ。もう戻る事は無い」
「何言ってんだよ勝手に消える訳無いだろ?女体化じゃあるまいし…」
そうだ、誕生日はまだ先だ、女体化なんてある筈がない。
「そうだよ、その女体化だ」
「嘘だろ?俺の誕生日は…」
「そうだまだ先だ。でもあるんだよ、中にはお前みたいな事例が」
「そんな…あんまりだ!」
「まだ猶予があると思ってたのに、それより有紀にはなんて言えばいいんだよ?」
「有紀って彼女か?」
「うん、週末に彼女と旅行に行くはずだった…」
「お前、友達と旅行って…彼女とだったのか、そうか」
「兄貴よ、俺はどうすりゃいいんだ?」
「それより聡、パンツ位穿け、目のやり場に困る」
兄貴に指摘されて初めて気付いた。
「うわっ!」
急いでトランクスを穿く。
ガチャ
137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:15:14.01
ID:X/T4mo7i0
「どうしたの?朝っぱらから」
「あっ、母さん、聡が女体化しちゃって…」
「えっ、が?」
「聡、ちょっとこっち向いて!」
俺は仕方なく母さんの方を向く
「まぁ、まぁ、まあまあ!あなた可愛いわよ!」
「母さん、ちょっと」
「どうしたのよ弘司?」
「聡には彼女が居るんだよ」
「あっ、あらそう…ごめんね、母さん女の子が欲しかったからつい喜んじゃって、本当にごめんね」
「いいよ母さん、でも俺どうしたらいいいんだよ」
「そうね、このまま学校に行く訳にもいかないよね」
「取りあえず今日は学校を休みなさい。それと今すぐシャワーを浴びてきなさい。汚しちゃったんでしょ?」
「弘司!トイレ片付けといて!母さんは聡の着替えを用意するから」
「なんで俺が…」
「ブツブツ言わずにやる!」
母さんに言われてむくれる兄貴。
「兄貴ゴメン」
「いいよ、それより気を落とすなよ、俺ならいつでも相談に乗ってやる」
「ありがとアニキ」
138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:16:35.25
ID:X/T4mo7i0
俺は兄貴に任せて風呂へ行った。
脱衣所で服を脱ぐと胸に二つの膨らみがあり、下に視線を移せば薄い茂みが見えるだけで男の証はもうどこにも無かった。
「マジかよ…」
浴室に入り少し熱めのシャワーを頭から被る。
もう昨日迄の筋肉質の身体じゃない。全体的に丸みをおびた身体は見た目以上に柔らかくなっていた。
週末に旅行に行ってロストする筈だった童貞…俺の為にバージンを捨てる覚悟をしてくれた彼女になんて言えばいいんだ?
彼女の決意を無駄にしてしまったこの身体が恨めしい。
カチャ
脱衣所の戸が開く音がして母さんから声を掛けられた「聡、さっきはごめんね」
「うん」
「身体洗えた?」
「うん」
「着替えとタオル、ここに置いておくからね」
母さんはそういうと脱衣所を出ていった。
もう一度頭からシャワーを浴びて浴室を出た。
髪を軽く拭いてから、身体を拭く。
タオルで足を拭こうと前屈みにになった時、自分の股間に目が行った。
「はは…見事に何も無いでやんの」
139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:17:37.39
ID:X/T4mo7i0
身体を拭き終えてから恐る恐る洗面台の鏡に向かう。
男の時の面影が多少残ってはいるけど、もう完全に女顔だ。
「どう見ても男には見えないな」一人呟く
そういや声もずいぶん変わってしまった。
喉仏の膨らみは微かにしか無い。肩幅も狭く華奢な身体になってしまったもんだ。
自分の顔を鏡で確かめてから母さんが用意してくれた服に着替える
初めて穿くショーツに戸惑ったが意を決して穿いた。トランクスと違う穿き心地に違和感があったけど仕方ないな。
細く柔らかくなった髪を乾かすと脱衣所を後にした。
居間へ行くと家族が揃っていて俺が入ると皆こっちを見る。
当たり前ちゃ当たり前なんだけど、ショックを受けてる身にこの視線はかなり痛い。
重い空気の中、父さんが口を開く
「母さんや弘司から聞いた。ショックだろうが、なったものは仕方ない、何かあったら助けてあげるから必ず言いなさい」
それだけ言うと仕事に行ってくると言って出ていった。
兄貴も俺もそろそろ学校行くわって着替えに部屋へ戻ろうとする。
取り乱した上に後片付けまでさせてしまって兄貴には申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
兄貴に「ゴメン」と言うと兄貴は出ていきざまに俺の頭をくしゃくしゃっとして「気にすんな」そう言ってくれた。
直ぐに父さんも兄貴も出ていき母さんと二人になった。
「聡」
「なに?」
「これから聡は一生その身体と付き合わなくちゃいけないの、あなたが始めから女の子なら小さな内から少しずつ教える事なんだけど」
母さんは俺の下半身を指差し聞いてきた
「そこ、綺麗に洗った?」
俺は頭を横に振る(怖くてサワレナイ)
「今は恥ずかしいかも知れないけどダメよ、ここは清潔にしなさい」
その他、トイレや生理、性交の事、妊娠から出産に至るまでの事を聞かされた。
頭ん中はぐちゃぐちゃだ。
141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:19:46.63
ID:X/T4mo7i0
女体化って不便だ、昨日まで普通に出来ていた事が出来なくなるし、服も靴も合わなくなってしまう。
今着ている服は全て母さんの物ばかり、それでもかなり緩い。自分の服はブカブカでもう合わない。
流石にブラだけは全く合わないので付けてない。だからなのか、男の人が俺の胸に視線を向けるのは…気持ち悪い。
「先ずはここからよ」
「ここからって母さん、ここランジェリーショップじゃん!」
「当たり前でしょ?」
「母さん行ってきなよ、俺、向こうで待ってるから」
「何たわけた事言ってんの!アンタの下着を買うんでしょうが!」
「へっ?」
「分かったらさっさと来る!」
俺はオドオドしながら母さんに付いて店に入った。
初めて入るランジェリーショップは異次元の世界だった。
原色やパステルカラーにフリルやらレースが付いた色とりどりの下着が揃っていた、中には透けた奴とかほとんど紐っていうのまで…これ下着かよ
俺がカルチャーショックを受けている間に母さんは店員さんを呼んでこの娘のサイズを計って下さいなんて言ってるし。
店員さんに「こちらへ」なんて言われて付いていったがまさかあんなところを計るとは思っても無かった。
店員さんが言うには68のBらしい。
いくつか持ってきてくれたヤツを片っ端から着けさせられてやっと数点決まった
更にショーツやらなにやら買うと精神的にかなり疲れた。
142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:20:52.99
ID:X/T4mo7i0
「さぁ、次は靴屋よ!」
「はい…」
「じゃあ次は洋服ね」
「あう…」
「次は制服」
「…」
ハイテンションで店を次から次へと渡って行く母さん、その元気は何処から来るんですか?ぼ、ボクはもう…もうダメポ…
「あらアンタ、何疲れてんのよ」
「こうあっちこっち連れ回されて慣れない物を脱いだり着たりさせられると身も心もボロボロになるよ。」
「それにしても何で母さんそんなに元気なん?」
「あら、楽しいからに決まってるからじゃない」即答!
負けました。
「疲れてるみたいだから少し休んで行こうか?」
俺はその意見に大賛成だった。
沢山の荷物を持って喫茶店に入りやっと一息つけた。あまりの荷物の多さにうっすら汗ばんでいる。別の意味の汗も出たが…
「母さん、こんなに買い物をして大丈夫なの?」
俺の問いに「息子が居る家は大概女体化に備えて貯えてるもんよ、それに兄ちゃんが女体化しなかったからその分浮いたしね」
ちょうどその時、俺の携帯から着うたが流れてきた。
「電話?」
「ううん、メール」
開けてみると7件あった。
「友達から?」
「うん、それと彼女から」
「そう、彼女には何て言うつもり?」
143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:22:10.56
ID:X/T4mo7i0
どうしていいか分からなくて言葉に詰まった
「聡、もうなってしまったものは仕方ないのよ。起こってしまった事は無かった事には出来ない。分かるでしょう?」
「そうは言っても頭じゃ解ってるけど、いくら俺が能天気でも気持ちはそんな簡単に割り切れないよ。」
「しかも今朝なったばかりだし」
「当たり前じゃない、人間なんだから」
「……」
「でもね、このままにしておく訳にいかないでしょう?」
「タイミングを逸したら余計に言い辛くなる事もあるし、相手を傷付ける事もあるからね。」
「うん、分かった。」
そうは言っても今は何と言っていいのか分からなかった。
夕方近くに買い物を終えて俺と母さんが沢山の荷物と共に帰ってくると家の前に有紀の姿があった。
「有紀どうしてここに…」
「貴女は聡さんの姉妹ですか?」
「えっと…何て言ったらいいのか…俺…」
「俺?まさか聡?」
「うん」
「嘘!なんで聡が、だって誕生日はずっと先じゃ…そんな」
「稀にこんな事があるらしいんだ。今日は連絡しなくてゴメン」
「聡、家に入ってもらえば?」
母さんに言われて有紀に上がる様に言うが「ゴメン、今は混乱してるから帰る」
そう言うと彼女は帰ろうとした。俺は母さんの方を向く、頷く母さん。
「じゃあ送るよ」
145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:23:15.15
ID:X/T4mo7i0
俺達は並んで歩いた。
会話は無かった。
もう少しで彼女の家というところで不意に彼女が口を開いた。
「なぜ私を責めないの?」
「だって責める理由は無いじゃないか」
「だって、私がもっと早くOKしてたら聡は変わらずに済んだのに…私のせいだ。」
有紀がそんな風に感じるとは思いもしなかった。俺のせいだ
「そんな事言ったらダメだ。だって有紀は知らなかったんだし、俺の為にその…」
「だからそんな風に考えないで」
俺にはこの時、他に掛ける言葉が見つからなくて彼女の肩をぎゅっと抱きしめた。
「ありがとう有紀、これは君のせいじゃなくて俺のせいだ。」
「だから君が気に病む事は無い。」
彼女からそっと離れ「明日からは学校へ行くよ。それじゃここで」そう言って俺は彼女のもとを離れた。
俺達が家に帰ると兄貴は既に帰っていた。
俺が帰るなり「おう、聡 今日はどうだった?パンティー買ってもらったか?後で俺にも見せろよ」だと!
このくされ兄貴が!今朝抱いた兄貴への感謝の気持ちやら申し訳無さは一気にぶっ飛んでしまった。
俺は怒りの鉄拳を兄貴にお見舞いしてやったが「参った参った」とか言いながらほとんど効いていない様だ。
暫く暴れたお陰で息が切れてきた。
「はぁ、どうだ!参ったか!」
「うん、参った」
「だったら二度と言うんじゃない」
俺が自分の部屋に戻ろうとした時「少しは気が晴れたか」って
「うん」
「なら良かった。今度裸エプロンみしてね(はーと」
…やっぱ殺す!
146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:25:09.69
ID:X/T4mo7i0
兄貴のバカのお陰で鬱な気持ちが少し晴れた。やっぱ優しいな
この日の晩御飯は少しギクシャクしたものになった。専らギクシャクしてたのは父さんだけど
俺がお茶を淹れてあげたら顔を赤くしてた。若い女の子に馴れてないんだね。
食事を終えてお風呂に入る。
今朝、母さんに言われた事を思い出して丁寧に洗う。
お湯に肩まで浸かるととても気持ちが良かった。
それと同時に朝の痴態を思い出した。自分で顔が真っ赤になるのがわかる。
俺はたまらなくなってお湯に潜った。
お風呂から出て身体を拭いてショーツを穿いた。
そのまま髪を乾かすと首にタオルを掛けてお風呂場を後にした。
居間でお茶を飲みながら新聞を読んでいる父さんに「お風呂空いたよ」って声を掛ける。
「あぁ」って言いながら一瞬こっちを見てお茶を吹き出した。
「さ、聡!はだ、はだ、裸!」
「いや、俺ならパンツ穿いてるけど」
「聡!!」
いきなり母さんの怒鳴り声が聞こえた。
「あんた、何て格好してんの!シャツ位着なさい!」
「今まで何にも言わなかったのに、急に怒んないでよ」
「アンタは今、女でしょ!」
「ハイハイ、シャツ着て来ます」
「来なくて宜しい!」
147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:26:41.57
ID:X/T4mo7i0
部屋に戻って綿のシャツに袖を通す。
よくグラビアなんかで綺麗な娘が男物の白いシャツを着た写真があるけど俺もやってみた。
鏡に自分の姿を映す…うぉ!萌えた!
俺、なんて事やってんだろ…
俺は自己嫌悪に陥ってそのままベットに潜り込んで直ぐに眠りに就いた。
「起きろ聡!学校に遅れるぞ!」
兄貴に起こされてのそのそと布団から這い出るとそのままぺたんと座り両手をついた恰好で兄貴を見上げた。
「お、おはよう。何時?」
「何時って、おっ、おまいその格好…萌え~っ!」
「へっ?」
兄貴のデレっとした表情に視線を下に向けるとシャツの間から胸の谷間が見えた。
「弟に萌えてんじゃねぇ!」
両腕で胸を挟む格好になっていたので慌てて起き上がり胸を隠した。
「おい!」
「は?」
「出てけ」
「はい?」
俺は枕を投げつけながら叫んだ。
「今すぐここを立ち去れ!」
見直して損した。
148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:28:18.53
ID:X/T4mo7i0
鏡を見ながらセーラー服に袖を通した。
自分で言うのもなんだが、なかなかのスレンダー美少女の出来上がりだ。
背は少し縮んだけど、それでも165cmある。女性としては高い方だな。
何か視線を感じて辺りを見回すとドアの隙間から兄貴が…
「あのぅ、早くしないと学校遅れちゃいますよ…」
「あっ!ホントだ!やべー!」
「覗きは不問にしてやるから兄貴、チャリに乗せてけ!」
「おk!」
俺は急いで顔を洗うと兄貴と一緒に家を出た。
チャリの後に跨ろうとしたがスカートを見て止めた。
荷台に横座りになって兄貴のお腹に手を回す。コイツこんなにおっきかったっけ?
「ほら兄貴、急ぐんだ!」
「ガッテンだ!」
兄貴は頑張った。登校中の人や他の自転車を次々と追い越していく。
「おう、早い早い!」
兄貴の頑張りのお陰で俺達はいつもより少し早く着いた。
「ありがとうね!」
「いいって事よ」
兄貴はそう言いながらふらふらと学校に入って行った。
149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:29:27.48
ID:X/T4mo7i0
言い遅れたが兄貴と俺は同じ高校に通ってる。
兄貴が3年で俺が1年、彼女の有紀もこの高校の同級生だ。
教室に向かう兄貴と別れた俺は職員室に向かった。
職員室の前で立ち止まり息を吸い込む
「1年A組橘聡入ります!」
そう言いながら扉を開けると俺に向けて一斉に視線が注がれた。
「お前、橘か?随分変わったな」
声の主は担任の山田先生だ。
「丁度、お前の女体化に付いて話してた所だ。まぁこっちに来なさい」
言われた通り先生の元へ行った。
「お前はこの後、保健室に行って身体測定と写真を撮ってもらう。」
「その後、2時限目から授業に出たら良い」
「ところで名前は聡のままか?」
「予定外だったんでまだ変えてません」
「そうか、生徒手帳は名前が変わってからでいいな」
「はい」
「じゃあ谷脇先生、こいつをお願いします」
「はい」
この谷脇先生と呼ばれた20代半ばの綺麗な先生は保健の先生で、男子生徒の間でかなり人気が高い。
「それじゃ私は保健室に戻ります」そう言うと席を立ち俺に保健室に行く様に促してきた。
俺は谷脇先生の後を付いて行く。
150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:30:13.35
ID:X/T4mo7i0
「びっくりしたでしょう?」
「はい?」
「女体化よ」
「そりゃもう、焦りましたよ」
「気が動転しちゃって俺のちんちんと金玉何処だー!って探し回りましたもん」
ここまで言ってはっと気付く「俺、不味い事言っちゃいましたね、すみません」
そんな俺に先生は笑いながら「いいのよ、だってアタシも女体化してるから」って「えぇぇぇ!」
知らなかった!
「だから気にせずに話してね」
「はい」
女体化の先輩が居ると心強い。
保健室に入って直ぐに手帳用の写真を撮った。
「こんなのでいいかな?」
デジカメのモニターを見せられる。
「ばっちしです。」
「じゃ、身体測定やちゃおか?」「服脱いで」
「はい」
「身長は165cmと」
「体重は39kg」
「バストにウエスト…」
「貴女、細いね~」
「そうですか?」
「出るところはまぁそこそこ出てるし、それよりウエスト細っ!羨ましいわぁ」
そう言われても俺にはウエストの細い事に何のメリットがあるか全く理解できなかった。
その後、視力やら聴力、その他の検査といくつか女体化に付いてのレクチャーを受けた後、開放された。
少しの間、保健の授業は俺だけここで受けなければいけないらしい。
最後に何かあったら相談に乗るからいつでもおいでって言われ、俺は先生にお礼を言って自分の教室に向かった。
151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:31:07.71
ID:X/T4mo7i0
廊下に出ると丁度、1限目が終わった所で急に校内がざわつき始めた。
教室に向かう俺を途中まで山田先生が迎えに来てた。
「おう、丁度お前を迎えに行く所だったんだ。みんな教室に残っているから来てくれ」
先生と一緒に教室に入ったが職員室と違ってかなり緊張した。
俺達が入るとざわついてた教室が急に静かになった。
「えっと、紹介しよう」
「こいつは橘聡だ」
「えーーーっ!!」
一瞬で教室中が蜂の巣を突付いた様な大騒ぎになった。
「マジ?」
「嘘?可愛い!」
「何で?」
「細ーい!」
「童貞?」
「チェリー?」
もう、みんな言いたいように言ってくれて。
「おーい、静かに!」
少しは静かになったがそれでもざわつきは収まらない。
「まぁ、そういう事なんでこいつを宜しく頼む」
取りあえずなんか言った方がいいかなと思い、やけくそで「誕生日前にちんちんを無くした可哀相な橘です。宜しく!」と挨拶しておいた。
「じゃぁ頼むぞ!」そう言うと先生は教室を出て行った。
次の瞬間俺の周りに人だかりが出来た。
質問の嵐だ。このクラスでは俺が最初の女体化なんで珍しいんだろう。
今日1日は恐らくこんな事で終わる予感…
152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:32:48.21
ID:X/T4mo7i0
教室の騒ぎも一段落ついた昼前の休み時間に友人の美紀(よしき)が俺の所にやってきた。
「なあ聡…」
「おぅ、どうした?」
「俺、来週誕生日なんだよ…」
まぁ、大体の察しはついたが敢えて聞いてみた。
「で?」
「…なりたくない…」
小さな声で言うもんだから聞き取り辛い。
「もう少し大きな声で言えよ。聞こえなだろ?」
「女になりたく無いんだ」
「お前もど…」
「バカ!声がデカイ」
やっぱりそうか
「悪い、で、俺にどうしろと?」
「やらせてくれ」
「無理!」即答!
「何でだよ?」
「だって考えてみ、お前は男同士裸で絡めるか?」
「無理!」
「だろ?そっちの趣味とか無けりゃ出来る訳ないじゃん」
「でもお前、今は女じゃないか?」
「一昨日まで男だったんだぞ、身体は変わっても心まではそう簡単に変わる訳無いだろうが」
「ああ、そうだよな…お前の気持ちを考えなかった俺が悪かった。スマン、今のは忘れてくれ」
153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:33:52.57
ID:X/T4mo7i0
全く素直なヤツだな。まぁそこが良いんだけど。
「分かった。今のは聞かなかった事にしてやる。でもよ、他にあては無いのかよ?公衆欲情…おっと、他にも色々あるだろ?」
「怖いんだよ…」
「何が?」
「何がって病気に決まってるだろ?」
「そう言われてみたらそうだが、でもそんな事言ってたら何にも解決しないぞ。」
「そうなんだよな…はぁ…」
駄目だ、こいつかなり落ち込んじゃったよ。
「まだ一週間近くあるじゃないか、頑張って彼女見つけな!まぁ、不運にも女体してしまった暁にゃ俺が相手してやるよ。」
「お前、さっきは無理って言ったじゃん」
「男のお前は無理ってこった。だから早く変わっちまいな」
「あぅ…」涙目になっちゃった
「ゴメン、からかい過ぎた。まぁ頑張れよ」
可哀相だがこいつ間違いなく女体化するだろうな。
午前中の授業も終わった昼休み、俺は急いで有紀の居る2つ先のC組の教室へ向かった。
俺が彼女の教室に行くとまだ有紀は自分の席に居た。何人かが怪訝そうな目で俺を見たが構わず俺は彼女の元に歩み寄る。
俺の気配に気付いた彼女がこちらに視線を向けてきた。
「聡…」
「有紀、ちょっといいか?」
「うん」
急に周りが騒ぎ出した。「聡って?」
俺は有紀を教室の外へ連れ出しお昼はどうするか聞いた。
「まだ決めてない」って言う彼女に「何か買って静かな所で食べよう」と持ち掛け、俺達は購買でパンと飲み物を買って校舎の屋上へ行った。
154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:34:57.26
ID:X/T4mo7i0
屋上には数人居ただけで俺達は空いたベンチに座って黙ったままパンを食べた。
食事を終えた俺は彼女に週末の事に付いて切り出した。
「ねぇ、週末の旅行だけど、どうしようか?」
「聡はどうしたいの?」
「俺は行きたい。有紀は?」
「あたしは…分らない」
「そうか…」
「ゴメンね」
「いいよ、こんな形をした俺と行っても面白く無いし、気持ち悪いだけだもんね。」
一緒に行ってくれる事を期待していただけにショックと拒絶された様な感じがして思わずこんな台詞が出てしまった。
「そんなつもりじゃ…」
言いかけた彼女を制して切り出す。
「いいよ、そんな事を言わないでも。こうなった時から解ってたんだ。」
「ただ、最後に有紀と一緒に遊びに行きたかった。」
くそ、何で女体化なんてしちゃったんだろ?この時の俺は多分、泣きそうな顔をしてたと思う。
俺は有紀に泣き顔を見られたくなくて「さようなら有紀、今までありがと」それだけ言って足早にその場を離れた。
女体化は俺から彼女までも奪ってしまった。
155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:35:56.10
ID:X/T4mo7i0
俺は午後の授業をサボって保健室に行った。
「あら、早速来たの?」
谷脇先生が微笑みながら俺にここに来た理由を聞いてきた。
「失恋です。俺、さっき彼女に振られちゃいました」
「友達にはやらせてくれって言われるし、先生、女体化って一体なんなんですか?」
「なんで俺が女にならなくちゃいけなかったんです?」
涙が次から次へと零れ落ちてくる。俺はもう、感情をコントロールすることが出来なくなって声を上げて泣き出してしまった。
先生は立ったまま泣いている俺をベットへ座らせると、自分も隣に腰掛け優しく肩を抱いて引き寄せた。
俺は先生の膝に顔を埋めて暫く泣き続けた。
俺は夢をみていた。子供の頃、無性に悲しくて泣いていた夢。
気付くとベットに寝かされていた。いつの間にか眠ってしまったみたいだ。
「目が覚めたようね。気分はどう?」
なぜ泣いてしまったのか分らないほど不思議と心は落ち着いていた。
「あっ、はい、大丈夫です」
「そう、それなら良かった」
俺が起き上がろうとすると
「もう少し休んでなさい。まだ目も赤いわよ。それと荷物ならさっき担任の先生に言っておいたから、後で誰かが届けてくれる筈よ」
そう言われ俺はこのままここに居る事にした。
「先生」
「何?」
「先生には恋人とか居るんですか?」
「いるわよ」
「相手の人は男性ですか?」
「そうよ」
その答えは今の自分には意外だった。
156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:36:37.69
ID:X/T4mo7i0
「意外そうな顔してるね。私に男の恋人が居るって事がそんなに不思議?」
「いえ、あの、ごめんなさい。先生は綺麗だし、女らしいし、その…男の人の恋人が居ても不思議じゃないんですけど、でも、女体化されたんですよね?」
「そうね、最初は男の人と恋人として付き合う事なんて無いと思ってたし、事実友人感情しか無かった」
「でも、それが少しずつ変わって気が付いたらいつの間にか男性を愛せる様になっていたの」
「肉体の変化に比べて心の変化はすごく遅い。だからそのギャップに悩み、中には耐え切れず命を絶ってしまう人も居る。だけどある程度は時間が解決してくれるから思い詰めちゃ駄目よ」
「それとね、女性として生きるのもそう悪くは無いわよ」
そう言うと先生は俺の頭をくしゃくしゃって撫で、自分の机に戻ってパソコンのキーを叩き始めた。
キーを叩く音を聞きながらこの先どうなるか分らないけど、自分の気持に正直に生きよう。そう心に決めた。
「カラカラ…」
扉の開く音で目が覚めた。どうやらまた眠ってしまっていたらしい。
音のした方を見ると友人の一ノ瀬卓也が居た。
「大丈夫か聡?カバン持ってきてやったぞ」
俺は卓也にありがとう、大丈夫だからと言ってベットから起きだした。
靴をつっかけ立ち上がろうとして眩暈を起こした。
次の瞬間、俺は卓也に支えられていた。
「大丈夫か?」「大丈夫?」
先生と卓也が心配そうに聞いてきた。
「大丈夫、ずっと寝てたんでちょっと立ち眩みを起こしただけです」
まだ心配そうな顔の卓也に「もう大丈夫だから心配すんな」そう言ってポンと肩を叩いた。
俺を支える際に卓也が落としたカバンを拾い上げると一つを卓也に渡し「さあ、帰ろうぜ!」そう言って彼の背中を押した。
「先生、今日はありがとね。もう帰るわ」
片手を上げて出て行く俺達に先生は「気を付けてね」って微笑みながら送り出した
157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:38:18.04
ID:X/T4mo7i0
俺と卓也は帰る方向が同じなんで時々途中まで一緒に帰ってた。
今日もいつもと同じ様に並んで歩いていた。いつもと違うのは俺が女体化したって事だけ。
そろそろ奴と別れる角に差し掛かる。
いつもなら「じゃあな」って言って曲がっていく彼だが、今日は曲がらずに俺に付いてくる。
「おいどうしたんだ?帰らなくて良いのかよ?」
「ああ、取りあえずお前ん家まで送るよ。」
「心配してくれてんのか?だったら大丈夫だから」
「まあ、そう言わずにこんな時位素直に送られてろ」
「分った。それじゃあ家で茶でも飲んでけ」
「おう!」
「ただいまー!」
誰の返事も無い、母さんは買い物かな?兄貴は…どうでもいいや。
「まあ上がれよ」
卓也と2階の俺の部屋に入る。
「ちょっと待っててくれ」俺は荷物を机の上に置いて台所へ飲み物を取りに降りた。
冷蔵庫の中の飲み物といえば父さんのビールばかりで俺達が飲める物は半分に減ったコーラ位だった。
あと、棚を漁るとポテチを発見したので、それとグラスにコーラを注いで自分の部屋に戻った。
「悪いな、こんな物しかないけど勘弁してくれよな」
「ああ、構わない。寧ろポテチとコーラは最強の組み合わせだと思うがな」
「そう言ってくれると嬉しいよ」
俺はコーラを一口飲むと直ぐにセーラー服を脱ぎ始めた。
159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:39:19.91
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一刻も早く着替えてこの馴れない窮屈なブラから解放されたかったからなんだが、急に卓也が慌てだした。
「あわわわ…おまい、ちょっ、ダメ脱いじゃ」
俺は構わず卓也に背中を向けて背中のホックを外してくれと頼む。
「何で…」
「何でって、慣れてないから腕がつりそうになるんだよ」
ブツブツ言いながら震える手で外し「着替えるなら着替えるって言えよ。部屋出るからさぁ」って
「なんで?」
「何でってお前、お前自分の身体見てみろよ」
言われて下を向くと外れかけたブラから乳房が覗く。
「あっ、そうか!悪い、お前女の裸見るの恥ずかしいのか?」
俺は悪戯心を起こし、ブラを半分ずらしたまま奴の方を向くと、既に奴は背中を向けていた。つまらん
「ちが…お、お前、男の前で着替えるの恥ずかしいとか無いのかよ?」
「無い!」
「はぁ?」
「だってしゃあないじゃん、俺、男だったんだし、これが相手が女子なら恥ずかしいかも知れんが」
「そんなモンか?」
「そんなモンだ」
「とりあえず着替えるまで出てるから、着替えたら言ってくれ」
そう言うと卓也は扉の外へ消えた。
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:43:24.60
ID:X/T4mo7i0
俺はジーンズにタンクトップ、コットンのシャツっていうラフな恰好に着替えて扉を開けた。
この後、俺は卓也に延々と説教されてしまった。こいつ真面目なんだよな。
「でもよ、俺にはまだほとんど女の自覚が無いんだけど…」
「だからこそ慎重に行動を…」
などとやり取りを交わして最終的には俺が折れる羽目になったんだがなんか悔しい。
「はいはい分かりました。」
お前も女体化したら分からぁ…
小さく呟いただけだったのにヤツは「俺が女体化する事は無い」っておい!
俺の着替えであたふたするヤツが非童貞?まさか?
「お前、済んでんのかよ!」
「ノーコメントだ」
あー、悔しい!
「いやらしい、このすけべ、エッチ…変態…」
「おい、幾ら何でも変態は無いだろう」
「ああ悪い、ちょっと羨ましかっただけだ。俺なんて誕生日前に女体化+失恋だもんな…やってられんよ」
「そうか、大変だな」
「あぁ、大変だ」
「なあ、卓也」
「何だ?」
「お前、週末なんか予定あるか?」
「別に無いけど、どうした?」
「だったらちょっと俺に付き合えよ。」
「別に良いけど何すんだ?」
「本当は彼女と旅行に行く筈だったんだけど、ダメになったから気分転換にちょっとパラでもやってみたくなってな」
「パラ?」
「パラグライダーだよ」
161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:44:25.83
ID:X/T4mo7i0
「えっ?空飛ぶんか?無理!俺、高い所ダメだし、第一金無いから」
「そう言わずに行こうぜ金なら出すから」
今度の俺は折れない。なんだかんだ言って遂に卓也にうんと言わせてやった。
「よっしゃ、決まり!とりあえず軍手とかの手袋とスニーカーが要るらしい。それと動きやすくて汚れても構わない服が良いみたい」
「分かった、ただ行くに当たって一つ条件を付けさせてくれ」
「何だ?」
「その言葉遣いを何とかしろ」
「何でだ?」
「俺が恥ずかしい」
「何が恥ずかしいんだよ」
「鏡見ながら喋ってみるといい、容姿とのギャップが物凄く変だから」
自分では気付かなかったが、ヤツが言うからには本当に変なんだろう。
「善処してみるよ」
そろそろ帰るって言う卓也を玄関先まで送って精一杯の笑顔を作って「今日はありがとう。うれしかったわ、また送って下さるか、し…ひっ…ら…イカン、もうダメ。あははは…」
笑いながら言うとヤツは「今の最初は良かったぞ、まあ努力したまえ。じゃあな」そう言って帰っていった。
これで週末は惨めに過ごさないで済むな。
卓也が帰って何分もしない内に母さんが買い物から帰ってきた。
善は急げ!俺は直ぐに母さんに週末の予定変更を伝えた。
「泊まりじゃなくなったのね。正直、アンタが女の子になっちゃったから止めさせようと思ってたところだったから丁度良かったわ。」
そう言う母さんに本当の事を打ち明けようかどうしようか考えてる内に先に母さんから言われた。
「そういえば昨日の彼女とはどうなったの?」
「終わった。多分…」
「そう、大丈夫?」
「正直ちょっと凹んだ、でも大丈夫なんとかなる」
「アンタ昔から立ち直りだけは早かったからね」
「うぐっ、親ならもうちょっとハートブレイクな息子を慰めてくれても…」
「アンタはルーか?しかも息子じゃなくて娘だろが!」
162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:45:36.87
ID:X/T4mo7i0
俺はそろそろ自分の部屋に戻ろうとしたが母さんがそうさせてくれなかった。
母さんが言うには「料理は女の必須科目よ」って。
俺は男だって言うと頭をひっぱたかれ、ちんちんの付いてない男が何処居るかって怒られた。
それと「もう貴女に料理を作ってくれる人は現れないから覚えておきなさい」
そう言われると従うしかなかった。
習うより慣れろって事で包丁の持ち方に始まって切り方や下拵えまでをやらされた。よく指を切らなかったもんだ。
後の味付けやなにかは母さんがやったが、一応俺も手伝いはした。
俺と母さんが料理を作っている間に兄貴と父さんが帰ってきた。兄貴は「今夜はお前の料理を食わされるんかよ」とか言ってたが、父さんはなにも言わず嬉しそうに目を細めていた。
この晩の食事は結構賑やかなものになった。俺の料理初挑戦(って言っても下拵え位だが)、と俺の名前をどうするかで盛り上がったのだ。
父さんの考えた名前に何で?って聞くと、初恋の人の名前だってうっかり口を滑らせて母さんに睨まれてた。
兄貴は、某アニメキャラの名前ばかりなので却下!
結局、母さんの考えた聡美に落ち着いた。
「無事、俺の名前も決まったところで風呂行ってくるわ」そう言って席を立つと母さんがな昨日みたいな事はするんじゃないと釘を刺してきた。
「昨日の事と言いますと?」何も知らない兄貴が聞いてくる。
「この娘ったら昨日、パンツ一枚に首にタオル掛けただけで風呂から出て来るんだから、全く…」
母さんの言葉に父さんも「あれには父さんも焦ったぞ」って…
「えっ?マジ?俺見てない!ずるい」
「ひーーろーーしーー!」
母さんの怒気を含んだ声に兄貴は自分の口走った言葉に気付いた様で母の方を向き、その表情を見て取ると一目散に逃げ出した。
おい、兄貴、見たかったんかよ…
まあ、そんな事で俺は明日、学校を休んで女体化の届出に行く事になった。
163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:46:57.48
ID:X/T4mo7i0
女体化者の恋は実らない…
夜、ベットの中でふとそんな考えが浮かんだ。でも、谷脇先生は異性の恋人が居ると言う。心も徐々に変わっていくものだとも言った。
そうなのかも知れない。
でも今の自分にはそんな事はとても理解出来ない。
俺が男と?想像しただけで気持ち悪い。
ふと有紀の事を思った。ああ、彼女もきっとこんな気持ちなんだろうな。
俺の心はまだ彼女にある。間違いない。
でもこんな異端の俺が彼女に付き纏ってたら迷惑だろうな。彼女には普通の男の人が似合ってるよ。
俺は彼女への想いを断ち切る決心をし、携帯のアドレスから彼女の項目を削除した。
ついでに携帯も変えよう。俺は携帯の電源を切って眠りに就いた。
朝起きて窓の方を見るとカーテンの隙間から雨が降っているのが見えた。
昨日の家族会議?で決まった俺の新しい名前とか女体化の申請の為に学校は休む事にしたから今日はのんびりしていた。
俺はのろのろとベットから這い出すと時計を確認した後、鍵を開けてトイレへと向かった。
兄貴達は出掛けてる時間なんで寝る前に着替えた男の時のTシャツに下着のままだ。
トイレに入り便座を上げて思わず苦笑い。
「癖って凄いな」
独り呟きながら便座を戻す。便座に座って下を向くと両足の間に女物の下着が見えた。Tシャツ越しに胸の形も見て取れる。
「これって卑猥だよな。」
そう思える今の俺の心はまだまだ男だ。
食事に行くと母さんが洗い物をしていた。
「母さんおはよう」
「あら、思ったより早かったね。朝食はテーブルの上にあるから食べて。」
「それよりアンタ、そんな格好で父さんや弘司の前に出ちゃダメよ。」
「わかってるって」
「どうだか?」
164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:47:57.70
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朝食を食べ始めた俺に「アンタ、本当に気を付けてないと危ないわよ」って注意してきた。
「何が?」
「ほらそんなトコ、女の子って自覚が無いトコが危ないの。男はね貴女みたいな女の子を狙っているのよ」
「へっ、まさか?俺を?」
「まさかと思うならよく鏡を見るといいわ」
洗い物を終えて手を拭きながら「食事が済んだら役所へ行くから着替えてらっしゃい。母さんは先に用意してるからね」そう言うと台所から出て行った。
「俺が危ない?まさかね」
でもよく考えてみると、今の自分は少し背の高いスレンダー美少女だ。これが自分じゃ無ければ惚れていたかも知れない。
そう考えると少しは気を付けようと思ったりもしたが、ナンパされても別に相手にしなければいいだけじゃないかと思い、それ以上考ええるのは止めた。
さて、着替えてきますか!
部屋に戻ってジーンズを穿き、少し肌寒かったのでタンクトップの上にデニムのシャツを着た。
「あっ、いけね 忘れる所だった。」
俺は慌てて日曜日の予約の電話を入れると部屋を出た。
「母さん着替えたよ!」
俺は玄関で何時もの黒い傘を広げようとしたが、母さんにこっちにしなさいって取り上げられ、代わりに薄いピンクの傘を渡された。
ちょっと抵抗があったけど、傍目にはこっちの方が合ってんだろうなと思いそのピンクの傘を開いた。
俺達は病院へ行き女体化の診察を受け、その足で市役所へと向かった。
病院ではかなり時間が掛かったが、市役所での手続きは実に簡単なものだった。
病院で渡された用紙と保険証を提出して名前変更の申請をしたら10分程で終わった。実にあっけない
新しい戸籍は次男の項と名前がバツで消され長女、聡美となっていた。これがペケ男か…
離婚者はバツ1とかバツ2とかバツで言われるが女体化者はペケ男だ。
続柄の-男の男の文字が×で消された事からきたらしいが、ダメな男って言う意味でもあるらしい。
なんでこんな差別するんだろうね?完全に消して直してくれればいいのに…
165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:50:10.69
ID:X/T4mo7i0
手続きを終えた俺達はまた買い物に行った。
また母さんの着せ替え人形だ。嬉しそうに服を選ぶ母さんを見てると何故かこれで良かったのかもしれないと思えてきた。
「聡美」
「……」
「聡美ってば」
ああ、そうだった。俺は今日から聡美だったんだ。
「なに?」
「貴女の服とかだけど、母さんの好みばっかり押し付けちゃ悪いから、今度は友達と行ってきたらいいわ。」
「女の子の友達居るでしょ?居なかったら従姉の久美ちゃんに頼むけど…」
「うん、居るよ。泰菜とか千里とか」
「悔しいけど若い娘の趣味とか流行はもう母さんじゃ分らないから…でも、たまには母さんに付き合ってよね。」
「わかった」
「じゃあ夕飯のお買い物を済ませて帰りましょうか?」
「ちょっと待って、出来たら携帯変えたいんだけど…ダメかな?番号を変えるだけでも良いから、お願い」
「どうしたの?」
「変わっちゃったついでに番号とか変えたいなとか思って…」
「いいわよ。で、キャリアも変えるの?」
「番号とかが変えられたら今の携帯でもいい」
携帯ショップで番号の変更を頼むと母さんがやっぱり新しい携帯にしなよって勧めてきた。
今まで使ってきた携帯は今の自分の手には少し大きいかったし、母さんが変えていいって言ってくれたので、幾つか触ってみて自分の手に合った物を選んだ。
「母さんありがとね。」
166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:52:13.87
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お店でアドレスとかは一切移さなかったので、帰ってからメモリーから必要な分だけ移してメモリーを初期化した。
取りあえず卓也や泰菜達数名だけに「携帯変更、番号アドレスはこれ」ってメールを送っておいて夕飯の手伝い…もとい、特訓に向かった。
「危なっかしいわね」母さんが零す。
「仕方ないじゃん、馴れてないんだから」
「あーあー、力ずくで切っちゃダメだって。押す様に切ってみて。そう、上手いわ」
俺は怒られたり褒められたりしながら包丁を使った。
「ただいま!」
兄貴の声に母さんが「お帰りなさい」って返事してたけど俺は黙っていた。
理由?このエプロン姿を見られたく無かっただけだ。どうせエプロン萌え~っとか言うに決まってるからな。
階段を上がっていく音が聞こえてほっとした。
「どうしたの?」
「いや、兄貴にこの格好見られたく無かっただけ。だって実の弟に萌えとか言うんだから、信じらんないよ」
「うふふ、弘司らしいわね」
そんなやりとりをしながら夕飯の準備は終わった。なんとか今日も手は切らずに済んだ。
翌朝、カーテンの間から洩れる陽光が眩しくていつもより早く目が覚めた。
起きて着替えをしてから1階に降りると母さんが食事の準備をしてた。
「おはよう。顔を洗ったら手伝うよ」
「じゃ、そうしてもらおうかな」
顔を洗い制服の上にエプロンを着ると取りあえず食器を並べて母さんが使った鍋やフライパン等を洗った。
「あれ?このお弁当箱は?」
「あなた用に買ったのよ。今までのじゃ大き過ぎるでしょ?」
「うん、でも可愛いくない?」
「もう、だからいいんでしょう。文句言うともう作ってやんないわよ」
「あーごめんなさい、お母様!私が悪うございました。」
「でもその内、自分で作ってもらうわよ。」
「はい…」
「あら?やけに素直ね、何かあった?」
「別に無いけど、自分の事位自分で出来なきゃって思っただけ。」
167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:53:29.26
ID:X/T4mo7i0
「おはよう。」
「あっ、父さんおはよう」
「なかなか似合ってるじゃないか」
「えへへへ、そうかな?」
「あなた、食事は?」
「もらうよ」
「聡美、父さんにご飯よそってあげて。ついでにあなたも食べちゃえば?」
「うん」
食事を終えた俺に母さんは兄貴を起こす様に言ってきた。これはチャーンス!
この間の復習をしてやる。
ふぉーふぉふぉ!
両手をちょきちょきしながら兄貴の部屋に潜入!
ターゲットはまだ寝ている模様、おれはゆっくり接近した。
なんとみっともない格好よ。シャツはめくれて腹が露出し、トランクスの前はこれでもか!って位に怒張している。
うまやらしい
それよりなんでこいつのてぃんてぃんは無くならなかったんだろ?
彼女?
いや、そんな影は無かったと思う。
だとしたら…まぁ、今度問い詰めてみよう。
さてと、どうやって起こそう?その前に悪戯してみたくなった。
ぞうさんを描いてみたかったが、可愛くなさそうなので却下、先ずは耳に息を吹きかけてみた。
ビクッ!
やつのぞうさんが反応した。
もう一度…ビクッ!
こりゃ面白い!一体どんな夢を見てるんだろう?
168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:54:29.84
ID:X/T4mo7i0
言葉には反応すんのかな?
「おあずけ!」 ショボーン
おお、萎えた。
次は何にしよう。
再度耳元に顔を近づけた時、急に寝返りを打ちやがって俺は奴に巻き込まれた。
「おい、こら!ヤメロ!抱き着くな!止め!腰を押し付けてくんじゃねぇ!」
「お…重い。潰れる」撥ね退けようとしたが今の俺にそんな筋力は無かった。
こうなったらしょうがない。
俺に抱きついてる兄貴の頭を抱きかかえるようにして胸で圧迫してやった。
「ふがっ、ふが」苦しみだした。
もうあと一歩ってところで兄貴に突き飛ばされた。
「痛ぅ、あいててて・・・」
「うぅ、死ぬかと思った…って聡、何してんの?」
「何しにって、起こしにきたら寝惚けた兄貴に襲われたんだよ!このけだものが!」
「??? そういや、なんか顔に幸せな感触があっ・・・うげっ」
言いかけた兄貴の鳩尾に正拳突きを一発お見舞いしてやった。
「思い出さなくていい!目が覚めたならさっさと起きて来い」
俺は乱れた服を整えて自分の部屋に戻った。
これはやばい、女体化でこれほど筋力って落ちるものなのか。
寝惚けた兄貴ですら撥ね退けられない様じゃこれだと本気の男には敵わないじゃないか。
母さんの言っていた気を付けろって意味がよく分かった。
169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:55:55.49
ID:X/T4mo7i0
カバンとバックにそれぞれ教科書と体操服を入れて下に降りた。
「おぅ、さっきは悪かったな。侘びに学校まで乗せてってやるからちょっと待ってろ。」
俺は玄関を出た所で兄貴の自転車を用意して待った。
「んじゃ行くべ!」
荷台に座って腰に腕を回す。やっぱり大きいな。
兄貴の漕ぐ自転車はふらつきもせずにすいすい走って行く。途中、有紀を追い越したが気付かない振りをした。
俺達は学校の手前で自転車から降りると歩いて学校入った。
「サンキュー兄貴!また頼むよ、でも襲うのはもう無しな」
「それはわからん」
「こら!バカ兄貴!」
じゃあなって片手を上げると走って行っちまった。
「おっはよう!」
教室に入ると妙な空気が流れていた。
ん?教室の一角がやけに暗くそこだけ別世界の様だ。
「さぁーとーしー」
その暗黒世界の中心から俺を呼ぶ声がした。
「美紀?…どうした?」
「だめだー、もう終わりだー」
絶望に打ちひしがれた美紀の声に
「おいおい、そんなに悲観的になるなよ、今日を入れてまだ3日あるだろ?希望を持てよ、それにまだ完全になるとは決まってないんだから」
俺の言葉に少し希望を見出したみたいでほんの少し明るくなった。
「そ、そうだよな?ならないかも知れないんだよな?」
「ああそうだ、だからそんなに暗くなるな」
「あ、ありがとう聡」また涙目になってるよ。
「それと、昨日から俺は聡美になった。まぁどっちで呼んでくれても構わないけど…」
171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:57:06.20
ID:X/T4mo7i0
「あっ、いけね。変更届け出してこなきゃ。じゃあな」
「おい、言葉遣い…」後から頭をポンと叩かれた。
「卓也…あら、あたくしとした事が…おほほ、急ぎ変更届けを出してきますわ。それでは失礼」
うげっ、吐きそう
卓也から逃げ出した俺は職員室の前で一旦止まって息を吸い込んでガラガラっと扉を開けた。
「失礼します!山田先生いま…したね。」また注目を浴びてしまった。癖だね
「何だ橘」
「えっと、名前が変わりましたのでその手続きに…」
「そっか、で、名前は何にしたんだ?」
「聡美です」
「そうか、でも手続きは事務になるんで事務室に行って来い」
「そうですか、じゃあ行ってきます」
俺が顔を上げた時、谷脇先生と目が合った。小さく手を振る先生に俺も小さく手を振って応え職員室から出ようとした。
扉に手を掛けようとした時、不意に扉が開いた。
「あっ」
「聡…」
有紀と一瞬目が合ったが俺は直ぐに視線を外した。俺は何か言いたそうにしている彼女の横をすり抜けると振り返らずに事務所に向かった。
本当は彼女と言葉を交わしたかった。でもしなかった。
彼女とは終わったのだ。
実際、彼女からそう言われた訳じゃなかった。
でも週末の旅行を躊躇された時点で拒絶されたと受け取ってしまった。
一番辛かった時だから拗ねて余計に意地になっているのかもしれないし、多分そうだろう。
彼女も混乱していたし、彼女が悪い訳じゃない。それは分っている。
でも、自分も悪くない。
173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 01:58:09.78
ID:X/T4mo7i0
考え事をしながら歩いていたら誰かとぶつかって尻餅をついてしまった。
「あいたたた…ゴメン!前を良く見てなかった…って、あれ、祐二か」
「こっちこそゴメン」そう言いながら祐二はこちらの方を見て直ぐに視線を外した。
「どうした?」
「スカート」
尻餅をついた拍子にスカートが捲れて下着が見えてしまっていた。
「あ、ごめん、見えた?」何故か謝る俺
「いや、その、はい、ゴメン」
立ち上がろうとする俺に手を差し出した祐二の手に掴まって立ち上がる。
お尻を叩きながらもう一度祐二に謝った。
「ねぇ、君は俺の名前を知っているみたいだけど、俺は君の事を知らないんだけど…」
そう言う祐二に
「俺だよ祐二、聡だ。」
「たちばなさとし、今は聡美だけどな」
「聡か!女体化したとは聞いてたが、えらく華奢になったもんだな」「しかも綺麗になって」
「おいおい、お前、よくそんな事を平気で言えるな」
「だってそうだから仕方無いじゃん」
「はいはい、褒め言葉として受け取っておきます。」
「あっ、やばい!早く事務所に行かなきゃいけないんだった。じゃあまたな」
「ちゃんと前見て行けよ!」
「わかった!」
俺は祐二と別れると急いで事務所に向かった。
事務所に戸籍謄本を提出して必要な書類にサインをすると予鈴が鳴った。
急いで事務所を後にし、教室に向かっていると「廊下は走るな」って注意されてしまった。
175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:01:49.11
ID:X/T4mo7i0
>>172 確かに不思議だ?前は帽子貰っても3回喰らったのに・・・
一人でいっぱい使うのもなんだし、もう止めとこうか?
178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:07:53.91
ID:X/T4mo7i0
じゃあ行けるだけ行ってみます
朝のホームルームで今日の体育の授業はプールの清掃をやるので着替えたらプールに集合する様指示があった。
もうそんな季節か、それより俺、着替えどうしたらいいんだろう?
「先生!俺…」
「ゴホン!」卓也め…
「私はどこで着替えをしたらいいんですか?」
「橘か、お前は女子更衣室だろが?嫌なんか?」
「えっと、まだ抵抗がありまして…それに女子の皆さんも嫌だと思うんですが…」
「おーい、橘が女子更衣室に入るの嫌なヤツ居るか?」
「いませーん!」
「だそうだ、安心して着替えて来い」
「そ、そんなー」
「だったら今まで通り男共と着替えるか?」男子の表情が変わった。
「その方が…」「ダメー!」言い終わる前に女子からダメ出しされてしまった。
「まぁそういう事だ。じゃあ宜しく」
何が宜しくだよ、体育フケよっかな?
「あっ、言い忘れてた。橘だけど、名前が聡美に変わったそうだから」
179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:09:20.13
ID:X/T4mo7i0
昼休み
みんな思い思いの場所、人とお昼を食べている。俺は教室で一人食べるのがなんだか嫌で弁当を持って屋上へ行った。
屋上のベンチは今日も何箇所か空いていて俺はその中でも一番人と離れているベンチを選び腰を掛けた。
お弁当箱を開けてご飯を口に運ぶ
「美味しい」
俺が弁当を食べていたら不意に肩をポンと叩かれた。
声の主は今朝会った祐二だった。
「横いいか?」
「ああ、別にいいが、どうした?」
「お前の教室に行ったら居なくて、探してた」
「何か用か?」
「昨日、お前にメール送ろうとしたけど送れなかったから」
「ごめん、携帯変えたんだ。」
「そうか、でもそれだったらメール位くれよ」
「うん、悪かった。で、用事は?」
「お前が女体化して凹んでんじゃないかと思ってな、励ましのメールを送ろうとした」
「なんだそんな事か、だったら大丈夫だ。明後日は卓也と遊びに行ってくるしな」
「でも俺には大丈夫そうには見えんが」
「どう見えるんだ?」
「傷付いた美少女」
「止してくれ柄じゃない、それにしてもよくまあそんな恥ずかしい言葉が言えるもんだな」
「そうか?でも俺はそう思ったから言ったまでだ。それより自分を誤魔化す方が恥ずかしいと思うがな」
俺は奴の言葉を聞いて何も言えなくなってしまった。
一度は自分の気持ちに正直に生きようと誓った筈なのに全く守れていない。
「どうした?」
180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:09:58.88
ID:X/T4mo7i0
「俺、自分を誤魔化してる」
「彼女と別れたくなかったのに避けてる。」
「彼女からさようならを言われるのが怖かったのに自分からさようならを言ってしまった」
「もうダメなんだ。」
「何がダメなんだ?」
「何がダメって考えてみろよ、俺はもう男じゃない。もう、彼女と一緒になれることはないんだぜ」
「それがどうした?」
「どうしたって…ははは、常識で考えてみろよ」
「お前は常識で恋愛するのか?好きって気持ちに常識が必要あるのか?」
「そうだよな、でも続けようとすると彼女を不幸にしてしまう。だからいいんだ」
「そうか、お前がそう思っているならこの話はもう止めだ。さっさと飯食っちまおうぜ」
俺と祐二は無言で食べた。
「ごちそうさま。聡…じゃなかったな、午後の授業は何だ?」
「体育…やべ、早く行って着替えなきゃ」
「どうした?まだ時間はあるぞ」
「だからだよ、遅くなったら女子と一緒に着替えなきゃいけなくなる」
「別に良いじゃないか」
「いくない!お前、大勢の女子の中に一人混じって着替えが…お前なら出来そうだな」
「そうでもないぞ」
「お前が?」
「そう言うな、俺だって男だ」
「まあいい、じゃあ俺行くわ」
「じゃあな」
俺は祐二と別れると一旦教室に戻り体操服を取ってプールへ急いだ。
181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:10:56.69
ID:X/T4mo7i0
カチャッ
まだ誰も居ませんよね・・・
良かった。誰も居ない。
誰か入って来るんじゃないかとビクビクしながら着替え急いで更衣室を出た。
更衣室をでた俺はプールサイドのベンチに腰掛けてみんなが来るのを待った。
プールは午前中も作業をしていた様であちこち濡れて掃除用具がフェンスに立て掛けられていた。
まだ汚れてはいたがプールの水色が陽の光を反射して眩しい。
夏はもうそこまで来ていた。
「橘君」
声の方を向くと幼馴染の泰菜と同じクラスの結衣が居た。
「なんだ、もう着替えちゃってたんだ」
「悪いかよ」
「結構楽しみにしてたんだけどな」
「何をだよ」
「チッチッチ」泰菜は人差し指をワイパーの様に振りながら「女の子はそんな言葉使いをしちゃいけませーん」
「恥ずかしいんでしょ?」
「悪いかよ!」
「ほら、言葉」
「もう、卓也みたいな事言うなよ」
「い・わ・な・い・で・でしょ?」
「それで卓也君は何て言ってるの?」
「卓也と明後日、パラをやりに行くんだけど、一緒に行くのに俺の言葉使いが恥ずかしいから直せだって」
「直さないなら行ってくれないそうだ」
「ふーん、そうなんだ。ところでパラって何?新しい踊り?」
・・・ぷっ!あはははは・・・
「何が可笑しいのよ!」
182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:11:56.12
ID:X/T4mo7i0
俺が笑っていると結衣が泰菜に「多分、パラグライダーの事だと思うんだけど・・・」って「結衣ちゃん正解!」
「もう、それならそうと言ってよね」
ふくれっ面で言う泰菜がとても可愛く見えた。祐二ならここで可愛いとか言うんだろうな。
「いいな、あたしも飛んでみたいなー」
空を見上げながら泰菜が呟いた。
「ねっ、あたしも行っていい?見るだけでもいいからさぁ、ねえ、いいでしょ?」
「ね、結衣も行かない?」
「私はちょっと・・・」
「え~っ、行こうよ。」
「やっぱりダメです」
「ケチ!じゃあいい、一人で行く!」「聡、あんた、あたしを連れて行きなさい。」
おいおい、勝手に決めんなよ
「本当に行くつもり?お金掛かるよ」
「いい、行く。お金ならお年玉とかアルバイトした分があるから大丈夫!」
「まあ、そこまで言うなら連絡してみるけど、もしダメなら諦めてよ。」
「うん!じゃ、決まりね!」
「それよりあんた水着は買ったの?」
・・・・・・ぎくう!
硬直してしまった。
「あうあう・・・」
「まだのようね」
「はい・・・」
183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:13:01.78
ID:X/T4mo7i0
「スク水なら学校の購買にあるけど、サイズも分かんないだろうし、試着したほうがいいでしょ?それと海とかに行くのにも他の水着が要るでしょ?」
「丁度あたしも水着を買うつもりだったから一緒に買いに行こ!」
「い、いいよ・・・俺、泳がないから」
「ダメ!あんた体育の単位落とすかも知れないわよ」
「まさか」
「まあ、それは無いかもしれないけど、夏休みに補習を受けなくちゃいけなくなるけど、いいの?」
俺は首を横に振って答えた。
「だったら諦めなさい。うじうじしてるとみっともないぞ」
一人で行くより泰菜と一緒の方が行き易そうだったので俺は彼女の好意に甘えることにした。
「分かった。行くよ。」
そろそろみんな着替え始めた様で更衣室の方が騒がしくなってきた。
「あんた、後の着替えの事考えてなかったでしょ?」
「あっ!」しまった。何も考えてなかった。
「いやー楽しみだなぁー」
「泰菜ったら、橘君が困ってるじゃない。」
「いいのいいの、いずれは慣れなきゃいけないんだから。」
ぞろぞろプールサイドに人が集まりだした。
体育の先生もやってきた。
「はーい、集合!」
「みんな居るかな?」
「いまーっす!」
「そうか、まあ見てのとおり、プールサイドの掃除は終わってるからこの時間はプールと更衣室の掃除をしてもらう」
「A組はプールを、B組は更衣室と通路を掃除してくれ」
「じゃあ始めるぞ」
皆、思い思いの道具を手に取り掃除を始めた。
184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:13:50.94
ID:X/T4mo7i0
俺はデッキブラシを取るとジャージの裾を捲り上げてプールの中へ降りた。
「うわっ、ヌルヌルする。」
「おーい、滑るから転ばないように気を付けろよ!」
先生が言い終わらない内に早くも転んだ奴が居た。
美紀かよ・・・ドジだな。あーぁ、ジャージのお尻の部分が濡れてるよ。
奴の事は放っておいて俺はデッキブラシでプールの壁面を擦った。
ホースを持った女子に擦った後を水で流して貰う。
ゴシゴシ…ゴシゴシ…
「キツイ!」筋力の落ちた身でブラシを使って壁を擦るのは結構な重労働だ。俺は直ぐに疲れてきた。
「代わってやろうか?」後ろから卓也に声を掛けられた。
「いいよ」俺は少し意地になって断った。
「まあそう言うな」
俺の手からブラシをひょいと取り上げると代わりにホースを渡してきた。
俺は奴の手から再びブラシを取り返そうとして滑ってバランスを崩した。
「転ぶ!」
そう思った次の瞬間、俺は腕を掴まれていた。
「冷たい!」
転びかけた拍子に俺はホースの水を被ってしまった。
「大丈夫か?」
「濡れた…」
俺の胸元を見て直ぐに顔を背ける卓也、白い体操着にショーツとお揃いの薄いピンクのブラが浮かび上がっていた。
「橘君これ」俺の異変に気付いた女子の一人が俺にタオルを貸してくれた。
「ありがとう」
首にタオルを掛け、胸元を隠した。
「橘、すまん」
「ああ気にするな、おれ…いや、私も悪かったから」
やっぱり女言葉は苦手だ
186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:14:41.38
ID:X/T4mo7i0
「やっぱきつそうだから壁は俺がやるよ」
「だから気を遣わなくていいって」気を使ってくれるのは嬉しいけど、それと同じかそれ以上嫌だった。
だから苛々したりつい意地を張ってしまう。
卓也がどうしていいか分からないっていう顔で俺を見ている。悪い事言っちゃったな
「スマン、まだ女扱いされるのに馴れてないんだ。」
「そうか、お前の気持ちを察してやらなくて悪かった」
「謝らなくていいって、お前は悪くないしイイ奴だ。」
「それと出来たら言葉遣いなんだが、長い目で見てくれると嬉しいんだが駄目か?」
「うーん、仕方無いな、でも少しは努力してくれよな」
「分かった。さぁ、掃除を早い事済ませちゃおうぜ」
「タオルありがとうね。後で返すからもうちょっと貸しててね」
俺達が馬鹿な事をしている間にも掃除は進みプールの壁の汚れもあらかた落ちていた。
もうちょいだ、ゴシゴシ…ゴシゴシ
ふう、終わった。
「おーい卓也、こっち流してくれ」
「わかった。待ってろ」
水を掛けられて汚れの落ちた壁は眩しくて目を細めないではいられなかった。
後は底をやったら終わりだ。他の人達であらかた済ませていたので、俺は汚れの残った所を探してはブラシで擦った。
壁と違って底は楽で最初からこっちにしとけばよかったと少し後悔。
187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:15:27.93
ID:X/T4mo7i0
俺達プール組が終わる前に一足先に更衣室組の掃除が終わってプールサイドに戻ってきた。
「聡!じゃなかったなんだっけ?」泰菜が俺を見付け声を掛けてきた。
「聡美だよ。どっちでもいいけど」
「ああ、そうだった。で、あんた何で濡れてんの?」
「自爆だよ。滑って転びそうになって水を被った。まぁ、あそこに居る奴よりはマシだけどね」美紀の方を指差す。
「うわ、確かに…」
「奴はノーパン決定だな」
「聡美も他人の事は言えないでしょ?」
「確かに」濡れたままのブラは気持悪くて痒かった。
掃除も終わりすることの無くなった俺達に体育教師はちょっと早いけど終わりにする。他のクラスは授業中だから静かにしろと言って解散となった。
ぞろぞろと更衣室へ戻り始めた。「どうしよう…」俺が躊躇っていると泰菜に腕を掴まれた。
「さあ行くわよ」
「えっ、ちょっとまだ人いっぱいだからもうちょっと待つよ」
「そう言わずに行くよ!」強引に更衣室に引っ張り込まれた。
「!!!」
女子更衣室に入るってだけで恥ずかしかったのに、着替え中の女の子だらけで恥ずかしさのあまり顔が火照る。多分、顔真っ赤だ。
俺は俯いたまま一番端の着替えの所まで行き、みんなに背を向けて濡れた服とブラを外した。
「あんっ」
ジャージからスカートに穿き替えようとした時、いきなり後から胸を揉まれた。
「ちょっ、止め!」
「なかなかの物をお持ちのようで…」
「その声は泰菜か!」
「大当たり、しっかし細いね~、一体ウエストは何センチよ?」
「確か56…」
「えーっ、それ反則!あたしより5cmも細いじゃんって、ばれたか」
「バストは?」
「良く分らない、それより着替えが先だって」
これ以上なにかされたらたまったもんじゃない、制服を着るとソックスは穿かずに更衣室を出た。
188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:16:18.71
ID:X/T4mo7i0
「よう、さっきは悪かったな」
「卓也のお陰で生乳揉まれた…」
「ぶっ!!何それ?」
「聞きたいか?」
「いや、止めておこう、大体の想像はついた」
「想像すな!」
「ああ、それと明後日だけど泰菜も行きたいって言ってきたんだけどいいか?」
「お前さえ良かったら構わない。なんなら俺が辞退して泰菜と二人で行ったらどうだ?」
「おい今更そんな事言うなよ」
「分かった分かった約束だからな」
「そう言う事。あっ、先行っててくれ泰菜の分も連絡してから戻るから」
卓也を先に行かせてから再度スクールに連絡を入れた。
放課後、荷物を持つと直ぐに隣の教室に行った。
「泰菜!日曜OKだってさ!」
「機材は貸してくれるそうだから、取りあえず汚れても構わない格好で手袋とスニーカーとかの靴だけ用意してきてくれって」
「やったー!これで空が飛べる」
「で、費用は1万ね。それで時間はどうしよう?10時にショップに行く事になってるんだけど、駅で待ち合わせでもする?」
「そうね、それでいいわ。それと、明日だけど…」
「明日?」
「もう忘れてんの?水着を買いに行こうって言ったじゃない」
「あっ、あれ?」
「そう、あれ」
「……」
「ところで、女の子っていつもあんな事やってんの?」
「ばか、やってる訳無いじゃん。いつもやってたら変態だよ。たまにふざけてやってるだけだって」
「それなら良かった。みんなあんなんだったら付いていけない」
189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:17:03.35
ID:X/T4mo7i0
ぽちっ
「あんっ」
「何するんだよ!」
「えへへ、やっぱノーブラだ」
「もう…」
泰菜ってこんな奴だったっけ?しかも前より過激になってないか?
「じゃあ明日、お昼過ぎに一旦聡美ん家に行くからそれから行こう」
「うん、それじゃあ明日」
泰菜と分かれると今日は一人で家に帰った。
帰る途中で美紀を見かけたので声を掛けた。
「美紀!」
「ああ、橘か…どうした?」
「いや、特に用がある訳じゃないけど、気になったから」
「そうか、お前に心配かけて悪いな」
「気にすんなって、もし、困った事が起きたら連絡しろよ、微力ながら力になる」
「それと、俺、携帯替えたから電話番号を教えておくよ」
「美紀はまだ携帯持ってなかったっけ?」
「ああ、必要ないから」
「取りあえずこれが連絡先、あと、保健の谷脇先生な、あの人も女体化者だからもしなった時は相談したらいい」
「えぇぇ!あの美人先生が?まさか?」
「だって本人が言ってたから間違いないと思う。嘘をついたって何の徳にもなんないじゃん」
「それと先生は女体化はそんなに悪いものじゃないって言ってた。だからもし運悪くなってしまっても悲観するなよ」
「俺の言いたい事はそれだけだ、じゃあな」
「あ、ありがとう」
少しは役に立ったかな?
190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:18:37.27
ID:X/T4mo7i0
俺は家に帰ると母さんと一緒にキッチンに立った。
「明日、泰菜と買い物に行くんだけど、少し貰えないかな?」
「いいわよ、で、何を買うの?」
「水着、再来週から学校でプール始まるし、海とかプールに行くのにも要るって泰菜が言うんだ」
「あ、母さん水着の事、すっかり忘れてたわ。じゃあ少し多目にあげるから他にも帽子とか日傘とか買うといいわ」
「ありがとう母さん」
「いいっていいって、それより早く料理覚えなさい」
「分かりましたお母様…」
「聡美!聡美ったらいつまで寝てんの!泰菜ちゃん来たわよ」
「あ、はーい。上がって貰って!」
「あれ?もうお昼?え、まだ9時じゃない…」
コンコン「入っていい?」
「あ、うん」
「オハヨ!」
「約束、お昼じゃなかったっけ?」
「そのつもりだったけど、天気もイイし早く起きたから来ちゃった」
「しかしこの部屋に入るのも久し振り、小学校以来だっけ?」
「そんなになるかな?」
「うん、それより早く行こ!」
「そんなに急かさないないでよ。まだ着替えもしてないのに」
「手伝ったげようか?」
「もう、いいよ自分で出来るから。それよりちょっと、見ないでよ」
「いいじゃない、減るもんじゃないし。それにもう女同士なんだから恥ずかしがらなくていいよ」
ああ、女の子に抱いていた幻想が泰菜によって壊されていく…
俺が着替えてるのをまじまじと見てる泰菜「そんなに見るなよ」
191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:19:47.78
ID:X/T4mo7i0
「あんた有紀と付き合ってたじゃん。しなかったの?」
ゲホゲホ…
「何、藪から棒に…」
「まぁしてないからなったんだろうけど、好きな男の人が居たらあたしだったら…」
その先は聞きたくなくて彼女の言葉を遮った。
「違うんだ…彼女は悪くない。俺の誕生日はまだもっと先なんだ。本当は明日彼女と二人で旅行に行く事になってた」
急に表情が変わって今にも泣きだしそうな顔で謝ってきた。
「ごめんなさい。知らなくて…本当にごめんなさい。あたしあなたが変わったって聞いて彼女が許せなくなってた…」
「いいよ、だけどもう彼女の事は悪く言わないでね」
「うん」
「ありがとう泰菜」
「はいお待ち!こんなんでイイかな?」
「えーっ、ジーンズ?折角綺麗な女の子になったんだからもっとお洒落しなさいよ」
「そんな事言ったって分かんないよ、それに動き易い方が良いしさぁ」
「じゃあ、あたしに任せなさい。さっき小母さんにも言われたし、あたしが選んだげる」
「お手柔らかにお願いします」
二人でデパートの水着売り場にやってきた。
女の子になったとはいえ、こういう場所にはまだまだ抵抗がある。
泰菜と一緒じゃなかったらきっと来られなかったと思う。
「ねえ、これどう?」
彼女らしい可愛いタンキニ水着だ。
「いいんじゃない?でも正直言うとビキニがイイと思うんだけど」
「ダメ、恥ずかしいから」そんなものなんですかね?
192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:20:31.12
ID:X/T4mo7i0
俺は逆にフリフリとかワンピースに抵抗があったので同じタイダイ柄のパレオが付いたブルーのビキニにした。
この色ならあまり目立たないだろう。
他に学校指定のスク水とかサンダルやスイムキャップ等を選んでたらお昼を過ぎてしまった。
「聡美、お腹空かない?」
「うん、ペコペコ、取りあえず何か食べようよ」
俺達はデパートのレストラン街で何を食べようかあれこれ迷った末にパスタのお店で食事をした。
午後は俺の夏服を選んだんだけど、女の子ってどうしてこう買い物が好きなんだろう?
泰菜はストレス解消にもなるって言うけど、俺にはかえってストレスになるんだけど、どうして?
俺の服を選ぶ彼女はとても楽しそうで、もう勘弁してくださいとは言えなかった。
「なんだかんだでいっぱい買っちゃったね」
「うん、ホント今日はありがとね」
「明日、天気いいとイイね」
「大丈夫だって、天気予報じゃ晴れて気温が上がるって言ってたから絶好のフライト日和になるって」
「あと、駅っていってたけど、何時に行けばいい?」
「そうだね、割と近くだから8時半位でいいんじゃない?」
「じゃあそうしよ。それじゃまた明日」
「うん、バイバイ」
家に帰って直ぐに携帯が鳴った。
電話に出ると駅まで明日は迎えに行くから駅に着いたら連絡して下さいっていう事だった。
「あっ、いけね卓也に時間言ってなかった」
俺は卓也に待ち合わせ時間を伝え明日に備えて早目に休む事にした。
193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:21:48.29
ID:X/T4mo7i0
日曜日
早く寝たのもあるけどセットした目覚しより1時間も早くおきてしまった。
まだ母さんは起きてなかったのでキッチンに入って見よう見まねでホウレン草と油揚げのお味噌汁を作ってみた。
「うん、初めてだけどまあまあいけるじゃん」
あと、玉子焼きでも作ってみようかな?
俺が卵を溶いてると母さんが起きてきた。
「あら、今日は休みなのにやけに早いわね」
「浮かれちゃってつい早く起きちゃった」
「あら、それにお味噌汁も作ったの?」
「うん、母さんには遠く及ばないけど、見よう見まねで…」
「どれ………そう悪くないわよ。上等!」
「よかった…ダメだしされたらどうしようかと思った」
「じゃあ、今日の朝食は聡美に任せるわ。玉子焼き作るんでしょ?みんなの分も作ってね」
「あと、冷蔵庫にお魚があるから焼いといて」
「はーい」あれ?なんか楽しいぞ、母さんに褒められたからかな?
俺はウキウキしながら玉子焼きを作った。
あともう一品、余ったホウレン草のお浸しを作って完成
「出来た!」
「良く出来ました。じゃあ頂きましょうか」
「いっただきまーっす!」浮かれて普段では使わない言葉遣いになってる。
「あっ、この玉子焼きも悪くないわよ。葱の香りと塩加減が丁度」
「へへ、ありがと」
194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:22:35.21
ID:X/T4mo7i0
食事が終わると母さんの分の食器も洗って棚に仕舞った。
「じゃあ準備してくるね」
「忘れ物のない様にね」
俺はジーンズに長袖のシャツに着替えて、昨日泰菜に選んでもらったワンピースを着替えにバックに入れて家を出た。
「行ってきまーす」
「気を付けてね、無茶しちゃだめよ」
「はーい」
日曜の駅は人も疎らで平日のこの時間ならいっぱい居るサラリーマンや学生は殆ど居なかった。
まだ二人は来てなかったので俺は券売機の前の柱にもたれて待った。
今日はどんな景色が見られるんだろう?まさか墜ちやしないよね?
まぁ、パラの事故率なんて他のスポーツと変わらないって言うし、大丈夫でしょ。
それよりどんな景色が見られるんだろう?想像するだけでワクワクしてきた。
「おはよう!」
「あっ、泰菜おはよう」
「ねぇ卓也は?」
「まだ来てないけど、もうじき来ると思うよ」
「卓也もよく行く気になったね」
「なんで?」
「あれ?知らなかったっけ?彼、高所恐怖症よ」
「昔、木に登ったのはいいけど、下を見た途端に怖くなって降りられなくなってたもん。彼ね、外の見えるエレベーターも苦手なんだよ」
「知らなかった。だからなかなかうんって言わなかったんだ・・・それならそうと言ってくれたら・・・」
「言ってくれたら?誘わなかった?」
「誘った」二人顔を見合わせて笑った。
楽しみがもう一つ出来た。
195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:23:28.62
ID:X/T4mo7i0
「あっ、来たわよ」
卓也の表情は心なしか暗かった。
「おはよう卓也、今日は天気も良くて良かったね。絶好の山飛び日和じゃん」
「えっ?山飛びって?俺達体験だよな?」
「うん、そうだよ。スキー場で体験飛行をやるんだけど、条件が良かったらタンデムで飛ぶんだ」
「あれ?俺、言ってなかったっけ?」
「聞いてない。俺、帰る・・・」
「あれー?卓也君、女の子二人置いて帰っちゃうんだ?」
「こんな美少女二人が行くのに男の卓也君は行かないんだ?ひょっとして怖いのかな~?」
泰菜に言われて「そ、そんな事は無い。今のはほんの冗談だ」なんてバレバレだっての。
「じゃあ、切符買ってくる」
「あっ、あたしも・・・」
俺達は最寄の駅までの切符を買って電車に乗った。
電車は空いていて3人並んで座った。
俺と泰菜はワクワクしながら今日の初フライトの事とかを話したが、卓也は全く話に乗って来なかった。
奴には悪かったかな?
1時間程で駅に着いた。俺は聞いてた番号電話を掛けると10分程で駅に着くから北口を出たロータリーの電話ボックス前で待つ様に言われた。
言われた通り待っているとステッカーをいっぱい貼ったワンボックスカーが俺たちの前に止まった。
196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:24:28.70
ID:X/T4mo7i0
「橘さん達でよかったかな?僕は山岸って言います。えっと、あとこいつ等が・・・」
「立川です」「岡林です」「山岸の家内です今日はよろしくね」
「あっ、私、橘聡美です。で、このこ娘が・・・」
「三春泰菜です」
「あっ、俺、一ノ瀬です」
「今日は宜しくお願いします」
「じゃあ行きましょうか?」
俺達は車に乗り込むと山の方に向かった。運転席と助手席には山岸夫妻が座り、奥さんが運転した。
車の中で今日の予定とか、空の素晴らしさとか色々教えてもらったり、体験談もいっぱい聞かせてもらった。
「彼氏、いいねこんな可愛い娘二人と一緒で・・・で、どっちが彼女?」立川さんが卓也に聞いてる。
「ぶっ!」思わず俺と泰菜は吹きだしてしまった。
「あれ?違うの?」不思議そうな顔の立川さん
「違います。あたし達は幼馴染の同級生なんです」
「あら、ごめんね」
「友達でもこんな可愛い娘と知り合いなんて羨ましいよ」
「そう言えば岡ちゃん彼女居なかったもんね」
山岸の奥さんに言われてしょげてみせる岡林さん。なんか優しそうな人だな。
「あっ、聡美!あれ!」
泰菜の指す方を見ると空の高い所をパラグライダーが数機ゆっくり舞っていた。
「ああやって上昇気流、サーマルって言うんだけど、それに乗って高く上がるのよ」
「ええ?動力も無いのに?」卓也が珍しく口を開いた。
「鳶とかが羽ばたきもせずにずっと飛んでるのを見た事無い?あれと同じ、上昇気流の中で旋回して高く上がるの」
「そうなんですか」
197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:25:23.87
ID:X/T4mo7i0
山岸さんの携帯が鳴って誰かと話してる。
「あ、そう。だったらそっちに行く・・・うん、それじゃあ」
電話を切って俺達の方を向くと「今、良さそうなんで先に山に行く事にしたから」
「はい!」「やったね、聡美」「うん」
俺と泰菜が喜んでいると岡林さんが卓也の様子に気付いた「あれ?彼氏暗くなっちゃったけど、どうしたの?」
「いいんです。気にしないで下さい」
車は狭い山道を走り頂上まであと少しっていう所で止まった。
「さあ着いた。ここが第2テイクオフ、まだ上に第1テイクオフがあるけど、今日はここから飛ぶよ」
車を降りて空を見上げると山より高い所をピンクや黄色のパラが舞っていた。
「さあ、準備しよう。せっかくいい条件だ、今の内に飛んじゃお」
俺達は手袋とヘルメット、それとハーネスっていう物を着けさせられた。
「あの~、俺、パスしていいですか?」
卓也が急に止めたいって言い出した。
「あれ、勿体無いな~、視界もいいし、今日は絶好のコンディションなのに・・・」
「実は、俺、高所恐怖症なんです」
「あれ?君もか、俺も高い所苦手なんだよね」って立川さん、マジですか?
「それなのによく飛べますね」卓也が不思議そうに聞いている。
「うん、これは違うんだ、高い所は苦手な筈なのに怖くない。どう説明していいか分からないけど、これは凄く楽しいんだ」
「でも、やっぱり止めときます。でも、低い所はやりますから」
それを聞いてた山岸さんが卓也に恐怖を恥じる事は無いから、車で戻ってくるといいよって言うと「バラストあったっけ?」って奥さんに聞いてる。
じゃあ、僕は最後にバラストと一緒に飛ぶから君達からどうぞって。
「じゃあ、先に行きます
198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:26:27.97
ID:X/T4mo7i0
俺は岡林さんの所に行き、ハーネスをカラビナで接続してもらった。
「かっとびで行くよ。僕が走ってって言ったらいいって言うまで全力で走ってね」
「はい」
吹流しを見ながら待つ事数分、ライズアップと共に岡林さんから「走って!」って言われた。
俺は言われるままに走った。
何歩走ったか分からないが、俺の体はふわりと浮き上がった。
「もういいよ」
足元を見ると木々が下に見えた。初めて見る光景におもわず「凄い!」って叫んだ。
「どう?感想は?」
「凄いです」もうそれしか無い!
俺達を乗せたパラグライダーは静かに滑るように空を滑空していく。確かに恐怖感は無かった。
「静かなんですね」
「うん、動力が無いしね」
地表がどんどん遠ざかる。本当に鳥になった気分だ。
後を振り返ると泰菜を乗せたオレンジの機体が見えた。
「卓也も飛べば良かったのに・・・」
「そうだね、この楽しさを体験して貰いたかったね」
楽しい空の旅は10分程で終わりを迎えようとしていた。ランディング上空で旋回しながら徐々に高度を落としていく。
「じゃあ、そろそろ走るよ」
「はい」
「走って!」
俺は空中で走った。地面に着いて少し走った所で「いいよ」って言われ俺の初フライトが終わった。
カラビナを外している俺達の元をすーっと影が通り過ぎる。見上げると泰菜達のオレンジの機体が旋回していた。
「綺麗」
199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:27:03.35
ID:X/T4mo7i0
俺達がランディングして暫くして卓也を乗せたワンボックスが降りてきた。
「卓也、凄かったよ!も、全然怖くないし静かに滑るように飛ぶの、景色も綺麗で最高だった」
泰菜も興奮しててもっと飛んで居たかったって・・・ホントにもっと飛んでいたかった。
皆でお昼を食べて午後からはゲレンデを使った体験飛行をした。
今度は卓也も飛んだ。
何度も失敗してやっと少し飛べる様になった。
これも面白い。俺達3人は何度も何度も飛んでは登り、飛んでは登りを繰り返した。
世の中にはこんなにも面白いスポーツがあったなんて、知らなかったら損をするところだった。
200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:27:59.56
ID:X/T4mo7i0
「いたたた…」
翌日は全身を襲う痛みで目が覚めた。
もう腕なんて顔を洗うのも辛い位痛い。ベットから降りて立ち上がろうとすると足の筋肉がプルプル震えた。
昨日の楽しさがこんな形で反ってくるとは…
それこそ運動不足を痛感した。
ヨロヨロしながらトイレに入る。もう座るのも辛けりゃ立つのも辛い。
こうなったら兄貴に乗せていって貰うしかない。
「兄貴、自転車に乗せて行って欲しいんだけど」
「どうしようかな?今日は歩きたい気分なんだよな…まあ、お前がどうしてもって頼むのなら乗せていかないではないがな」
「お願いします兄上様、私めをどうか学校まで連れて行って下さい」
「そこまで言うなら送って行かんでもないが、なあ一つ頼みを聞いてくれるか?」
「変な事じゃないだろうな?」
「いや、変な事ではない。ただある服を着てみてくれるだけでイイ」
「エッチな服じゃなきゃいいよ」
「そうかそうか、良かった。じゃあ早く構えろ、行くぞ」
少し嫌な予感がしたが、エッチな服じゃなきゃいいだろう。
俺は痛みを堪えながら支度した。
俺の動きを見て母さんは呆れている。
「全く、こんなになる迄やる事はないだろうに…もう加減ってものを知りなさい」
そんな事言ったって楽しかったからしょうがないじゃん。
また行きたいな…
「おーい聡美、行くぞ!」
201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:28:58.18
ID:X/T4mo7i0
「分かった、今行く」
軋む身体に鞭打って荷台に腰掛ける。
「痛ぅ」
「じゃあ行くぞ」
座るだけでも痛いのに振動がお尻に響く
「も…もっとゆっくり行って、お願い」
「仕方ないなぁ…」
途中、変な歩き方の奴が居た。
卓也だ。あの動きから察するに奴も筋肉痛になっているのは間違い無い。
「お先!遅刻しちゃダメよ!」
追い越し様にめいっぱいの笑顔で言ってやった。
「あっ、コラ!おま…ずるいぞー!」
「あははは…あの動き、可笑しい」
「コラ、他人の事は言えんぞ」
「あ、うん」
学校に着いてからが地獄だった。手摺りに捕まりながら昇る階段はやった事無いけど、登山を思わせ、廊下はシルクロードの様に遠かった。
今日は体育が無くて良かった。
「お前、兄貴に乗せてってもらうなんてずるいぞ」
ヨロヨロしながら俺の元にやって来た卓也の脇腹をちょんと突っつく。
「うおぉぉぉ」
「痛い?」
「お前なぁ・・・当たり前だろ!」
「同じ事やってやろうか?」
「きゃー、おそわれるぅー」(棒読み)
「昨日は面白かったな・・・」
「でしょ?タンデムはもっと凄かったんだから」
「またやってみたいな」
202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:29:57.20
ID:X/T4mo7i0
「うん」
俺達が昨日の事を話していると始業のチャイムが鳴った。
「あれ?美紀が来てない」
さては・・・
俺の予想は当たった。
2日後、見慣れぬ女の子が美紀の席に座った。
俺は彼女の元に行くと声を掛けた。
「美紀ちゃんおはよ!」
「おはよう、やっぱりなっちゃったよ」うん、落ち込んでいる様子は無い。
「で、どうよ?」
「悪くはない」
「そっか、良かった。慣れるまで時間が掛かるけどその内慣れるって、でも俺、未だに便座上げちゃうけどね」
「分かる分かる、つい癖でやっちゃうのな」
「だよね」
「聡美、少し言葉使いが変わったね」
「そっか?自分じゃわかんないけど、母さんに料理の特訓をさせられてるからかな?これがやってみると結構楽しいんだ」
「ふーん、じゃあ今度俺もやってみようかな?」
「うん、そうするべきだ。だって俺達には嫁さんが来る事はないからな」
「俺達これからどうなるんだろうな?」
「さあ、わかんね、まぁ、あれこれ考えたって仕方ない、なるようになるさ」
203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:30:39.18
ID:X/T4mo7i0
数日後、学校から帰ると家の前に有紀の姿があった。
「有紀、どうして?」
「学校でずっと私の事を避けてたでしょう。私、あなたに謝りたくて」
「前にも言ったけど、有紀が俺に謝る事は何も無い」
「だったら何で避けるの?私、あなたに嫌われたくない」そう言うと彼女の目から涙が零れ落ちた。
「ここじゃなんだから入る?」
頷く彼女と玄関を開けて2階の自分の部屋に入った。
「ここが聡の部屋・・・」
「有紀、ごめんね」
「俺、有紀の事、嫌いじゃない。今でも好きだ。ただ、この間の事で有紀に拒絶されたと思ってしまった」
「それに、この体になって俺がもし、男の人と・・・そう考えたら物凄く気持ち悪かった」
「だから有紀も同性になった俺とじゃ気持ち悪いんじゃないかと思って・・・」
そう言った時、いきなり彼女が俺に抱きついてきて俺の唇を彼女の唇で塞いだ。
「これが私の気持ち」
そう言うともう一度、唇を塞いできた。
ベットに倒れ込む。唇を塞いだまま彼女は俺の制服の裾から手を入れると胸を触ってきた。
「私のも触って」
俺も同じ様に触る。
今度は服を脱がしてきた。「ちょっと待って」
「嫌なの?」
「違うんだ、鍵を・・・」
204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:31:28.10
ID:X/T4mo7i0
俺は部屋の鍵を掛けると自分から服を脱いで下着だけになった。
「綺麗・・・」彼女が呟く
「有紀だって綺麗だ」
俺は有紀の服を脱がし、ブラを外す。彼女も俺のブラを同じ様に外した。
着痩せするのか、彼女の胸は見た目よりも大きかった。
彼女はそっと乳首を口に含んだ。その瞬間、今まで感じた事の無い快感が頭の先に突き抜けた。
「あんっ」
思わず彼女の頭を抱きしめた。
彼女は左手を腰に回し、右手で俺の左胸を愛撫してきた。
お臍の下の方、これが子宮なんだろうか?きゅんとなって下着が濡れてくるのが分かる。
快感で息が苦しい。我慢しても声が漏れてしまう。
「気持ちいい?」
「うん」
今度は俺が彼女の胸を吸った。
足を絡め唇を合わせ互いに快感を貪った。
頭の中が真っ白になった。
暫くの間、二人抱き合ったままいた。
ふと時計を見ると6時近くになっていた。
「いけない、もうすぐ帰ってくる」
「下着、びしょびしょだね」
「気持ち悪いでしょ?俺の使って」
俺達は新しい下着に着替えて服を着た。
俺達は時々こうして秘密の関係を持った。
でも、それは長くは続かなかった。俺の心の女体化とでも言おうか、少しずつ変わっていく心に彼女との関係も少しずつ減っていった。
卒業後数年して彼女は俺の知らない男性と結婚した。今では子供も居るらしい。
207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/12(土) 02:32:10.32
ID:X/T4mo7i0
第1テイクオフ
ライザーを持つ手をクロスさせてライズアップ
キャノピーが綺麗に開いたのを見届けると向き直って駆け出した。
テイクオフ
上空で待っている彼の元へソアリングで向かう。
待っているのはあの日飛ばなかった彼だ。
実は彼には内緒だが私のお腹には赤ちゃんがいる。
言ったら多分、飛ばせてくれないから黙ってた。
ランディングしたら話すつもりだ。
同じ高度になった所で並んでランディングへ向かう。
明日、私達は結婚します。
- Last Flight -