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◆YPPZoWABRI :2008/03/09(日) 15:40:05.81 ID:/msgBw9D0
安価「春風の悪戯」
昼飯を喰ったところにこの陽気、眠くならない方が不思議ってもんだ。
このままフケるかな…
俺は屋上のベンチにひっくり返って目を閉じた。
「眩しいな…」瞼越しに真っ赤な陽の光が見え、俺の睡眠を邪魔しようとする。
俺はポケットからくしゃくしゃのハンカチを取り出して顔の上に掛けた。
直ぐに周りの物音が遠ざかっていく。
「冷っ!」
急に頬に冷たい物が押し当てられびっくりして目が覚めた。それと共に睡眠を邪魔された怒りが沸いてきた。
「何すんだこの野郎!」
ぶん殴ってやろうと飛び起きたらベンチの前で両手に缶コーヒーを持って微笑む渚がいた。
「目が覚めた?はいコレ」
渚は冷たい缶コーヒーを俺に渡すと俺の横に座ってきた。
「脅かすなよ、危うく殴るとこだったぞ」
「あらあら、前は有無を言わさず殴り掛かっていたのに随分変わったものね」
「うっせー!俺は女は殴んねぇーんだよ」
「そっか…もうお前とは喧嘩も出来ないんか…」
そう言った時のこいつの横顔は驚くほど綺麗で、寂しそうだった。
86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 15:40:33.67 ID:/msgBw9D0
そういえばこいつとはいつも本音で付き合ってたよな、それが行き過ぎて時々拳を交える事もあったけど、俺達の仲は変わらなかった。
そんな俺達の間が変わってしまったのはこいつが女になってからだ、多分、原因は俺、こいつに嫌われる事を怖れて本音が言えなくなっていた。
「ところで何か俺に用があったんじゃないか?」
「あっ、そうだ、担任が誠の事を探してたんだ」
「かったるいから行かない」俺はちょっと渚に意地悪になっていた。
「そんな事を言わずに行く!」
渚の柔らかい手が俺の手首を引っ張る。
「仕方ないな…」
俺は立ち上がると今は女になってしまった友の後に続いた。
校舎の入り口扉を開けた時、一陣の風が吹いた。
「わっ!」渚は慌ててスカートを抑えたけど遅かった。
俺の脳裏にはしっかりブルーの水玉模様が焼き付けられた。
「見た?」
「はい、しっかりと」
「忘れろ!」
「いや、それは無理っていうもんだ。それよりそのパンツ、お前の趣味か?」
「…な、訳無いだろう!恥ずかしくって買いに行けない事をいい事に姉ちゃんが水玉とかプリントパンツばかり買ってくるからしょうがないんだよ」
87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 15:42:58.36 ID:/msgBw9D0
「プッ、プリントパンツ…あははは…お前がプリントパンツ…あははは…合わねぇ、腹いてぇー」
目の前の渚は少し涙目になってた。
「悪い悪い、笑ってすまんかった。今度、ちゃんとしたの買ってやるから許せ!」
途端に渚の目が輝いた。
「本当か?本当に買って来てくれるんだろうな?」
「えっ?ちょっと待て、買ってやると言ったが買ってきてやるとは言ってないぞ…って、渚!おい、待てよ、渚!話、終わってないぞ!」
「誠の趣味だったら何でもいいよー!」
最終更新:2008年09月17日 18:19