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◆YPPZoWABRI :2008/03/18(火) 21:58:54.93 ID:sOP5LUk30
入院生活っていうのはとにかく暇だ。
それはともかく俺が何故病院に居るかと言うと、会社の健康診断でちょっとした病気が見つかり、この病院で開腹手術を受けて20日程入院する羽目になったからだ。
術後23日は痛みで退屈どころじゃなかったけど、数日経って痛みが治まって来るとだんだん時間を持て余す様になってくる。
病院内のコンビニで漫画や雑誌を買って読んだりしたがすぐに読み終えてしまい、直ぐに退屈になってしまう。
そしてまたコンビニの雑誌コーナーにやってきた。
その中にいくつかクロスワードパズルの本があった。
「これなら退屈しのぎに良いかも知んないな、懸賞付きもあるし試しに買ってみるか」
俺は適当に選んでレジに持っていった。
会計の際、何故だかパズルの本だけバーコードが読み取れない様で店員は首を傾げながらキーで入力していた。
そんな事はどうでも良い、俺は病室に戻ると早速問題に取り掛かった。
おっと、これは難しそう。先ずは簡単なヤツからだよな……俺はページをパラパラとめくり簡単そうなヤツから解きにかかった。
296 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 21:59:47.06 ID:sOP5LUk30
「近沢さん、そろそろお食事ですよ」
声を掛けられるまで夕食に気付かなかった。俺は教えてくれた人に礼を言いベット回りを片付けた。
「しかし旨くないなぁ……」ついぼやきが出てしまう。
「確かにそうですが仕方ないですよ、もう少し健康に気を遣っていたら……まぁ今更言っても手遅れなんですがね」
隣の人が静かに話す。この人の食事はほとんどペースト状だ。消化器の病気で、胃を全摘したそうだ。それに比べたら俺の食事なんてはるかにマシだ。文句を言ったら罰が当たる。
さっさと食事を終わらせ俺は昼に買った雑誌を読んだ。パズルはまた明日だ。
しかし、俺はこんなんでいいんかな?20代後半でバツ1、見舞いに来てくれる人もほとんど居ない。
離婚後は家を追い出され、親とも会ってない。
まぁこれも仕方ない、別れた嫁は俺が言うのもなんだが、良く出来た嫁だった。そんな嫁を親も頼りにしていた。
それなのに俺の浮気が原因で離婚してしていれば呆れられるのも当然だよな。
離婚に関して後悔が無かったかと言えば嘘になる。言い訳とか嘘が上手く言えれば別れずに済んだんだろうが、俺にはそれが出来なかった。
俺は一切言い訳をせずに離婚を受け入れてしまった。
もう一方の相手は他人の物を欲しがるタイプで自分から言い寄ってきた癖に俺の離婚が決まるとさっさと俺の元を去って行った。
「もう結婚とか女はいいや……他人に振り回されるなら一人で居よう」
297 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 22:00:56.78 ID:sOP5LUk30
次の日、珍しく見舞いが来た。同僚で数少ない飲み仲間だ。
奴は俺が寂しがってるだろうから買ってきてやったとか言いながらエロ本を数冊持ってきて先に読んでいる。
おいおいズボンが膨らんでるぞ、奴のスケベさに呆れながら昨日から始めたクロスワードパズルに手を掛ける。
「近沢、お前パズルなんてやるんか?」
「昨日初めて買った。これ、なかなか良い暇つぶしになるのな」
「だろ?俺もよくやるけど、その本は見た事無いな……まあいい、俺にもちょっとやらせろよ」
「駄目だ、お前にやらせたら俺の暇つぶしが無くなる」
奴は仕方ないとか言いながら持ってきたエロ本を全て読んでから帰っていった。
クロスワードパズルも中級になってきた。
占いパズル?何だこれ?完成して文字を繋げると貴方の未来が占えますって、まあいいか…
占いとか言いながら占いに関するワードは出て来ない。代わりに貴方の名前は?とかなぜか俺に関する問題ばかりが出てくる。
自分の事だから答えは簡単だ、でもちょっと気味が悪い。それでも全て書き込み文字を繋げていく……答えは「にょたいか」
有り得ない、俺は30が近付いているかつては女房も居た身だ。そんなの有り得る筈がない。
たまたま偶然答えがそうなっただけだ、俺は直ぐにこのパズルの事を頭から追い出し別の問題を解き始めた。
他の問題を解いていても先程の答えが気になって集中出来なかった。
消灯には早いが今日はもう寝よう。
298 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 22:02:20.59 ID:sOP5LUk30
カーテンを引き明かりを消すと直ぐに意識は深い所へ沈んでいった。
夜中、何回か救急車の音に気が付くんだが、今夜は一度も目覚める事無く眠り続けた。
次に目覚めた時、何故か部屋が変わっていた。
今まで6人部屋だったのが個室になっていた。寝ている内に何かが起きた様だ。
とりあえず起き上がろうとして違和感を感じた。
「…痛くない」
お腹に力が入ると手術の傷が痛むんだが、今日はなんとも無い。
昨日の朝もまだドレーン跡などから出血していたんで痛みが無い事が凄く不思議だった。
俺はベットから降りようと蒲団から出て腰掛けると更に違和感が増した。
ベットってこんなに高かったっけ?それよりスリッパが無い。俺のスリッパはどこにやったんだ?これじゃトイレにも行けないじゃないか!
俺が途方に暮れていると病室の入口が開き看護士さんが入ってきた。
「近沢さん気が付きました?具合はどうです?」
具合は悪くないけどスリッパが無いのが困る。
「トイレ行きたいけどスリッパが無くて困って……あ゛っんっ、あれっ?声が変?」
看護士の女の子はちょっと笑いながら待って下さいって言いながら袋の中から俺のスリッパを取り出した。
299 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 22:03:17.31 ID:sOP5LUk30
「はいどうぞ!」
俺はベットから滑り降りる様に降りてスリッパの中に足を入れた。
やっぱり変だ。
スリッパの中で足が遊んでいる。
それにこの娘、俺よりだいぶ背が低かった筈なのに並んで立つと僅かに俺が高いだけになっている。
「じゃあ行きましょうか?」って俺は子供じゃ無いぞ!
俺はトイレへ急いだ。後ろから足音が追いかけてくる。
「そこ違う!」
何故だ?間違は無いじゃないか、トイレのマークを確認していると「近沢さんはこっちです」と腕を引っ張られた。
えっ?こっちこそ違う!しかも中には若い女性も居た。やばい悲鳴が……聞こえ…ない?なんで?
女性は悲鳴をあげるどころかこちらに向かってにっこり微笑んで会釈すらしてくる。
俺が狐に摘まれた表情でいると「鏡を見たら分かりますよ」って先の看護士さんに言われた。
言われた通り鏡を見た。
そこに居たのは30前のおっさんじゃなくてどう見ても10代後半の若い娘だった。
俺は呆気に取られてオシッコをちびった。
一度漏れ始めたものにもう止める術は無かった。止めようとしても勢いが弱くなるだけで完全には止まらない。
それでも個室に入り病院着の前を開けて下着を下げた。
完全に用を済ませた時、下着はもう履穿く事が出来ないほど濡れていた。
300 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 22:03:43.97 ID:sOP5LUk30
扉の外から「ごめんなさい」って謝る声が聞こえる。
幸い病院着は濡れて無かったが、下着とスリッパは洗わないと使えない。俺がその事を伝えると看護士さんは直ぐに戻りますからと言ってトイレから出ていった。
下着は脱いで濡れた内腿をトイレットペーパーで拭いた。スリッパはどうしようもない。
10分程で彼女が戻ってきた。
渡されたコンビニの袋には新しいショーツとスリッパが入っており、それとは別によく絞ったタオルが渡された。
女物の下着に抵抗はあったが意を決して穿いた。
汚した下着等はコンビニ袋に入れてトイレを出た。
含む言葉
「本当にごめんなさい、もっと早くに言わなくちゃいけなかったのに……驚きますよね」
もう済んだ事で彼女を責めても仕方ない。それより何故こうなってしまったかを知りたかった。
医師に説明を求めても分からないの一点張りで、逆に初めてのケースだから詳しく調べさせて欲しいと言われた。
どうしようもないな……
分かっているのは俺は30前にして女体化したって事、それに伴い手術跡が綺麗さっぱり消えてしまった事だけだ。
最後に医者が「貴方はクロスワードパズルをやってましたか?」って聞いてきた。
「はい、それがどうか?」
「いえね、貴方のとは違うんですが前に2度ほど不思議な事が起きた事があるんです。その人が言うにはパズルの答え通りになったって、そんな事ある訳無いのにね」
「……あれ?どうしました?顔色悪いですよ」
「パズル……パズルの答えが女体化でした……」
女体化して若返ってしまった俺、一体この先どうなるんだろう?
最終更新:2023年12月12日 10:12