安価『けしちゃうおじさん』

103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/29(土) 08:21:15.03 ID:NY0L5b8/0
保育園の運動会の時、みんなの所にはおじさんの人やお爺さんお婆さんが来ていた。
他にも赤ちゃんやお兄さん、お姉さんが来ているお友達も居た。
私のところはママだけ、だって麻耶はママと二人だけで住んでるんだもん。
ママは優しくてお料理はとっても美味しいの
今日の運動会、麻那はママに褒めて貰いたくて一生懸命走った。でも、一等賞にはなれなかった。
でもママは良く頑張ったねっていっぱい褒めてくれた。
お昼のお弁当は麻那の大好きなものばかりで、嬉しくてお腹がいっぱい食べちゃった。

運動会が終わって帰る時、友達に「麻那ちゃんのお父さんはお仕事で来れなかったの?」って聞かれた。
「お父さんって?麻那、ママと二人だけだよ」
お友達は私に「ごめんね」って言ったけど何で謝るのかな?帰ったらママに聞いてみよう。

お家に帰ってママと一緒にお風呂に入った時、お友達に聞かれた事を思い出した。
「ねえママ、麻那には何でお父さんが居ないの?」
私が聞いた途端にママは急に悲しそうな顔をした。
「ママ、なんでそんな顔をするの?麻那、ママにいけない事を言った?」
「麻那は悪くないよ、悪いのはママだから……」
「ママがね、ママがいい子にしてなかったから麻那のパパを消しちゃうおじさんに取られちゃったの」
「ごめんね麻那、麻那のパパを取られちゃってごめんね……」
ママを泣かせてしまった。そんなつもりで言ったんじゃなかったのに……
「ママ泣かないで、ママが泣くと麻那、悲しいよ…」
「ごめんね、もう泣かない様にするからごめんね」


104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/29(土) 08:24:04.93 ID:NY0L5b8/0
今日、初めて娘の麻那が父親の事を聞いてきた。
やはり子供には父親は必要なんだろうか?

あの時、私があの一言さえ言わずにいれば今頃、親子3人で居られたのに……

彼の浮気が発覚したのは私達が結婚して一年位経った頃だった。彼女がわざとそれと分かる様な事をしたからだ。
彼女は昔から他人を妬み、他人の物を欲しがった。恐らくあの人は彼女の罠に嵌ったんだと思う。
それでもやはり悔しいし、腹もたった。だから離婚という言葉を口にした。
そう言えばあの人は謝ってもう一度やり直そうって言ってくれると思ったからだ。でも、あの人は一切の言い訳をせずに「分かった」とだけ言った。
しまったと思った時にはもう遅かった。彼は今言った言葉を私の本心と捉えてしまった。
辛そうな顔をして「後で用紙を送る」そう言い残して部屋を出て行った。慌てて追いかけようとしたけど、足が震えて追いかける事もできなかった。

彼が部屋を出てから一度、彼の両親に私の本心を伝えてもらおうとして電話した事がある。
しかし帰ってきた言葉は私への謝罪と実家に戻ってきた彼を直ぐに勘当したっていう答えだった。
もう完全に手遅れになってしまった。
それから数日が経ち、彼から離婚届と共に手紙が届いた。
手紙には非を詫びる言葉と貯金は全て私に譲渡する事が書かれていた。

私の妊娠が分かったのはそれから一月後の事だった。
離婚のショックで遅れていると思っているとばかり思っていたが、悪阻がきて初めて妊娠と分かった。
自分の両親からは別れた相手の子供は堕す様に言われた。産むのなら実家には戻るなとも言われたが、どうしても堕す事が出来なかった。
実家に戻る事は出来ず、生活費を抑える為に引越しをした。
後で気が付いたが、彼から毎月幾らか口座にお金が振り込まれていた。
出産までは彼が振り込んでくれたお金と貯金を切り崩して使い、出産後はパート収入で生計を立ててここまで来た。
子供と二人の生活は辛い事もあるが、それ以上に喜びも大きい。


105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/29(土) 08:25:30.63 ID:NY0L5b8/0
娘は今日も私に褒めてもらいたくて一生懸命頑張っていた。
ちょっと頑張りが過ぎた様で、お風呂の後、ご飯を食べると直ぐに眠ってしまった。
疲れていてもこの子の寝顔を見ていると明日も頑張ろうという気になる。

ただ、最近はやる気はあるのだけど直ぐに疲れたり、なんだか身体に違和感も感じる様になった。
近い内に病院に行かなきゃ……

なんだかんだ言い訳を見つけては病院にはなかなか行かずにに居た。その間にも疲労感は徐々に増していき、鈍い痛みを覚える様になった。
冬、子供が風邪を引いたのを診てもらうついでに私も診察を受けた。
娘はたいした事は無かったが、医者は私に再検査の必要があるので、また直ぐに受診する様に言ってきた。もしかしたら深刻な病気なのかも知れない。
そうなった時、この子はどうすれば……私の身に何かあった時、この子はどうなる?神様、お願いです。この子が独り立ち出来る様になるまで私を生かして下さい。
受診当日、色々な検査をされ、その結果が数日後に出るのでまた来る様に言われた。
検査結果が出るまで気が気じゃなかった。
そして当日、一番聞きたくなかった事を医師から告げられた。
「宮崎さん、率直に言います。貴女の膵臓には腫瘍があります。正直あまり良くありません、一刻も早く病院に来るべきでした。」
医師はその後、今はステージ3aでまだ治る可能性があると言った。その為にも一刻も早い治療が必要だそうだ。
ショックは大きかった。でもまだ終わりと決まった訳じゃない。治療さえすれば治るかも知れない。
医師と話し合った結果、子供の事もあるので当面は入院は無しで、通院しながら薬と放射線治療を行う事にした。
この事は仲の良かった友人にだけ打ち明け、治療でどうしようもない時だけ子供を預かって欲しいと頼んだ。
彼女は私の頼みを快く引き受けてくれた。これで治療に専念出来る。麻那が大きくなるまで絶対に生き延びてやる。

最近のママは少しおかしい、なんだか元気がなかったり明るくなったり一体、どうしちゃったんかな?
それにちょっぴり痩せてきたみたい。病気じゃなかったらいいんだけど…



106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/29(土) 08:26:41.15 ID:NY0L5b8/0
治療を始めて3ヶ月、検査の結果は芳しいものじゃなかった。
腫瘍は大きくはなっていなかったが小さくもなっていなかった。それとは別に肝臓への転移が見付かった。
薬を変え、更に治療を続けた。
告知から半年が経った頃には体力がかなり奪われ、パートの仕事が出来なくなっていた。
それでも治療費と生活費はかかる。
医師には入院を勧められたが、今の状況では入院は出来ない。治療だけでも苦しいのに入院となると更に費用が掛かる。それより娘の面倒を見てくれる人が居ないではないか

…頑張らなきゃ、絶対に治さなきゃ……

朝、重い身体に気合を入れて娘を起こし、お弁当を作る。
心配を掛けたくなかったので今まで娘の前では精一杯元気な振りをしていた。でもいつまでも誤魔化せる訳じゃない。今朝、娘にお弁当を渡そうとした時、目の前が急に暗く

なってしまった。
その後の事は分からない。気が付いた時、私は病院のベットの上だった。
「良かった。気が付いたのね」
そこには心配そうに覗き込む友人の顔があった。
「郁子?どうして?」
「麻那ちゃんが電話してきたのよ」
「娘が?」
娘は目を泣き腫らし、椅子に凭れて眠っていた。
「麻耶ちゃん、ママが死んじゃうってもう大変だったんだから」
「麻美、もう入院した方がいいよ」
「麻耶ちゃんは私が暫く預かってあげるから入院しなって」
「それと、あんたが言えないんならアタシから実家か元旦に言ってあげる」
実家は体面を気にして、この子を堕せと言ってきた。産むなら戻るなと、実の娘より体面を気にする人達にどうして言える?
それに実家には兄夫婦も居るし、私達は邪魔な存在でしかない。
「実家は止めて…」
「もし、私の身に何かがあったら、この子の事はあの人に頼んで」
彼ならこの子の事を絶対に悪い様にしないはずだ。
私は友人の好意で少しの間、入院する事にした。


107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/29(土) 08:27:45.15 ID:NY0L5b8/0
入院生活も10日が過ぎ、あと10日もすれば退院ってところでまさかの女体化をしてしまった俺、近沢雅也、女体化によって手術の傷も癒え、いつでも退院出来る状態なんだが

、まだ病院に居た。
本来ならこの時点で退院なんだが、30歳近い男の女体化が余程珍しかったんだろう。
寄って集ってやれ血液検査だ、MRI検査だ、終いにゃ脳波まで調べられた。
それにしてもこの人の多さ、一体何?
俺にパンツを買ってきてくれた看護師さんが言うには、あの人達は大学病院の偉い先生達だそうだ。
俺の症例が珍しかったので話を聞き付けてやってきたらしい。
モルモット扱いは正直勘弁して欲しいが、この人達なら俺のこの理不尽な女体化を解明してくれるかも知れない。
この後も検査は続き、俺は頭の先から足の先、口の中から下の穴まで調べられた。だが、何処にも異常は無く、偉い先生達の頭脳をもってしても原因はなかなか分からない。

その間に例の同僚がまたやってきたが、俺を見ても別段驚きもせずに「女になったお前には必要無いな」そう言うと前に持ってきたエロ本を持って帰りやがった。
コイツ一体どういう神経してんだ?医者も俺よりコイツの脳波を調べた方が面白いだろうに…
それより俺は女になって一つ分かった事がある。女でもエロ本を見るとムラムラする事があると言う事だ。これは以外だった。
そんなこんなで読む物を奪われた俺は、またパズルをやってみようと探したが、何処に行ったのか全く見付からなかった。
また買えばいいさ…

2日後の晩、一人の女性が俺の所にやってきた。どこかで見た覚えがある。
彼女は俺の顔を見るなり間違えましたと言って立ち去ろうとした。
思い出した!
「ちょっと待って下さい。貴女は確か麻美の友達でしたよね?」
彼女は立ち止まって振り返ると怪訝そうな顔で聞いてきた。
「何で私や麻美の事を知っているんです?」
彼女の質問に俺は正直に答えた。


108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/29(土) 08:28:45.17 ID:NY0L5b8/0
「そんな事もあるんですね」
彼女は今も信じられないっていう顔をしていた。
「それよりも貴女はどうして僕の所に来たんですか?」
俺の質問に彼女は麻美の病気の事、娘の事、今、彼女達がどれだけ大変な目に遭っているかを涙ながらに話した。
彼女の話を聞いている内に俺の身体は冷たくなりガタガタと震えだした。

彼女は一通り話し終えると「彼女達を救って下さい。あの娘は実家にも助けを求める事は出来ないんです」そう言って帰っていった。
俺は彼女に伝えてくれた事の礼を言うのがやっとだった。

何とかしなければ、何とかして彼女を助けたい。
でもどうすればいいんだ?女体化した俺に何が出来る?
でも取あえずは彼女に逢わなければ…俺は直ぐに退院する事にした。
退院を決めたは良いが、困った事に今の俺に着られる服や靴は無い。入院の時に持ってきた物は全て合わない。
下着や寝間着位なら病院のコンビニでも買えるが、服や靴までは買えない。誰かに買って来て貰わなくては…でも、誰に頼む?
同僚はエロ本は買ってくるが、女物の服は無理だろう。もし買ったとしても奴の趣味の服を着るのが恐ろしい。
困った事に今の俺には頼める人が居なかった。
最悪、ブカブカになった服で退院するしかないか?



112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/29(土) 08:51:30.90 ID:NY0L5b8/0
「近沢さん、退院されるんですか?」
急に声を掛けられて驚いた。
トイレの件以来よく話す様になった娘だ。そうだ、この娘に頼めば…
「聞きましたか?ただそれに付いて一つ困った事がありまして……今の私には着られる服が無いんです。お金を渡しますので買ってきて貰う訳にはいきませんか?」
俺の頼みを彼女は嫌な顔一つせず引き受けてくれた。彼女はこの後、交代したら休みだそうで、直ぐに買ってきてくれるそうだ。
これで明日の退院には間に合う。
俺は感謝と彼女への手間賃として、買い物代とは別に自分の物も買う様に彼女にお金を渡した。
これで服はOK、後はあのクロスワードパズルを買う事が出来れば、もしかしたら麻美の病気を治す事が出来るかも知れない。
俺は病院のコンビニへ向かうと真っ先に雑誌のコーナーに向かった。探していたパズルは一番端に一冊だけあった。
「あった!よかった…」思わず声が漏れた。漫画を立ち読みしている若い兄ちゃんが怪訝そうな顔をしてこっちを見たが、直ぐに元の本へと視線を移した。
やっと買える。そう思って手を伸ばしかけた瞬間、他の男の人が先にその雑誌を手にした。
「あーっ、その本!」
男性は驚いた顔でこっちを見た。
「お願いです。その雑誌、私に譲ってもらえませんか?」
俺の頼みに男性は、他にもパズルの本はあるじゃないか、それじゃ駄目なのかと聞いてきた。
他の本では意味が無い。その有り得ない事が現実になるそのパズルではないと駄目なのだ。
「他のじゃ駄目なんです。その本じゃないと……」言ってる内に目が熱くなり、最後の方は声が詰まって言葉にならなかった。
そんな俺に「そんなに必要なのか?分かったから、お譲ちゃん泣かないでくれるか?」そう言うとその人は本を譲ってくれた。
俺はその人に何度も何度も頭を下げてお礼を言った。
そしてレジに持って行った。
今回もバーコードは読まれず。店員さんは首を傾げながらキーを叩いた。


113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/29(土) 08:54:34.56 ID:NY0L5b8/0
俺は店を出ると本を抱えて病室に戻り、バックの一番下に入れた。ついでに着られなくなった男物の服は、ゴミ袋に詰めて掃除の人に処分をお願いした。後は服を買ってきてくれるのを待つだけだ。
今日もなんだか分からない検査を受けた後、医師から経過を看たいので23ヶ月に1度来て下さいって言われたが、多分ここに来る事は無いだろう。
翌朝、看護師の娘が私服姿で訪れた。
いつもの格好と違い、私服の彼女はちょっと幼く見えた。
彼女は何着もの服を見せ、コーディネートの仕方とやらを説いているが、俺にはさっぱり分からない。
取り敢えず今、着る服を選んでもらい着替えた。その際、ブラは不要だと断ったが、「男性だった貴女なら若くて綺麗な娘がノーブラで居たら、男の人はどうなるか分かるでしょう?」そう言われると着けない訳にはいかなかった。

俺は彼女にお礼を言って彼女の選んでくれた沢山の服と共に退院した。
入院費は予定より短い事もあったが、思ってたよりかなり安かった。
俺は一旦、アパートに帰り、荷物を置くとパズルの本を持って麻美の友人に書いてもらったメモを頼りに彼女の居る病院に向かった。
電車を乗り継ぎ、目的の病院に着いたのは病院ではそろそろ夕飯の時間になる頃だ。
俺は病院の売店で花を買ってエレベーターに乗った。
エレベーターを降りると何か慌しい雰囲気で、色んな機器が病室へと運び込まれている。どうやら誰か重篤な容態になった様だ。  
一瞬嫌な予感がしたが、先日入院したばかりと聞いていたので俺はまだ大丈夫だと思っていた。
それが教えられた部屋に近付くに従い嫌な予感は真実味を帯びてきた。母を呼ぶ子供の声、必死で励ます友の声、俺は彼女の部屋の前で呆然と立ち尽くした。
医師や看護師が慌しく動いている。その中で彼女一人苦しんでいる。
「ちょっと寄って!」
ストレッチャーを押してきた看護師に怒鳴られた。


114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/29(土) 08:55:24.23 ID:NY0L5b8/0
彼女を励ましていた友人が俺に気付き彼女に声を掛ける。
「麻美、近沢さんが来てくれたわよ」
「雅也さんが?」
友の声に反応して彼女がかすれた声で聞いた。
彼女は俺に視線でこっちに来る様に促してきた。
俺は彼女の傍に行き手を取り声を掛けた「麻美、しっかりしてくれ、こんな形になっちゃったが雅也だ」
「雅也…さん?どうして女の子なの?」
「君達を苦しめた罰かもしれない。それよりお願いだから頑張ってくれ!君に治ってもらおうと思って不思議な本も持ってきたんだ。治ったらもう一度やり直そう」
「嬉しい…でも、もう少し早く聞きたかった…」
「今からでも遅くない!本当に不思議な事が起きるパズルなんだ!これさえ解けば君の病気も治るんだ」
俺はページをパラパラと捲り占いのページを開いた。
「ほら、やるよ、先ずは君の名前だ」
俺は空いたマスを麻美の名前で埋めた。
「次は生年月日だ」
俺は彼女の誕生日を書き込んだ。
「覚えていてくれたの?」
「忘れる訳無いじゃないか!」
「もういいの、それよりこの子を…麻耶をお願い」
娘の麻耶は母のベットに顔を埋めて泣いている。
「分かったから頑張ろう……」
「私より今の貴女に似ているわ」
「いいから続きを…」
言いかけた時、彼女は急に顔を歪ませたかと思うと静かになった。
心電図の音はまだ彼女が生きている事を知らせていた。
蒼い顔をしてママ死んだのって聞いてくる娘の麻耶に大丈夫、眠っただけだよって言うと彼女は少し安心した様だ。


115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/29(土) 08:58:36.39 ID:NY0L5b8/0
少しして麻美の友人の郁子さんがパズルに付いて聞いてきた。
「そのパズルは何が不思議なんです?」
「これはこの問題を解いた人に不思議な現象が起きるパズルなんです。僕はこのパズルのせいで傷が治り女体化しました。
他にも余命1ヶ月と言われた人が一夜にして完治したりとか有り得ない様な事が起きているんです。だから彼女にやってもらえば彼女の病気も治ると思うんです」
「にわかには信じられない話ね」
「でも、僕がやった時の回答は女体化でした」
俺達が話していると、それまで規則正しかったリズムが狂い始めた。
「麻美、しっかりしろ」「麻美!」
俺達の慌て様に麻耶は怯え、ママ死んじゃやだって泣き出した。
俺はしゃがみこんで麻耶の小さな身体を抱いた。
その間にもだんだん弱く途切れがちになっていく……神様!俺の命はどうなってもいいですから麻美を助けてください。
俺達の願いとは裏腹にどんどん衰弱していく彼女、一度大きく息を吸った後、ゆっくり吐き出し呼吸が止まり、心電図の波形もフラットになった。
医師は脈と瞳孔を調べると俺達に向き直り、重い口調で臨終を告げた。
母にすがり泣きじゃくる娘を母親から引き離す。
看護師さん達がてきぱきと器具や輸液の片付けを始め、俺達は一旦病室の外に出された。
次に部屋に入った時、着替えが済んで顔には白い布が掛けられていた。
「麻美…」
彼女にはまだ温もりがあり、死んだという事がとても信じられなかった。


117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/29(土) 09:05:38.19 ID:NY0L5b8/0
少しして看護師がやってきて俺に彼女との関係を聞いてきた。俺は元夫だと告げると、こんな時に冗談は言わないで下さいって言われた。
確かに今の俺は小娘に見えるだろう。だがこんな時に冗談を言う筈無いじゃないか。
俺は今朝まで入院していた病院の診断書と退院証明を見せてやった。
「こんな時に冗談なんか言うはず無いでしょ!」
語気を荒げ詰め寄る俺に謝りもせず「だったらこれをお願いしますね」そう言って封筒を押し付けてさっさと詰め所に戻っていった。
渡された封筒の中には診断書と請求書が入っていた。
こんな所には一秒でも居たくなかった俺は電話帳で近くの葬儀社に連絡してから彼女の荷物を片付けた。

死に化粧が施された後、彼女の住んでいたアパートに戻った。
彼女の友人が実家の方に連絡してくれたが、葬式には出ないとの事で、俺と娘と友人数人だけのお葬式をした。
すっかり小さくなってしまった彼女を前に俺達3人はぼーっとしていた。
あの日、やりかけていたパズルの本が目に入り、彼女の代わりに続きをやってみた。
旦那の名前、娘の名前、卒業した学校……俺は彼女の答えでマスを埋めていった。
全て埋めて文字を繋いでいる内にひとりでりでに涙が出て困った。
「ふたりともだいすきだよ」
これは彼女からの最後のメッセージだったんだろうか?


120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/29(土) 09:13:21.04 ID:NY0L5b8/0
後に俺は娘を認知し、正式に自分の娘にした。
会社は女体化した俺の首を切る様な事はせず、外回りの仕事から内勤に変えてくれた。
定時に帰れるので子育てするには都合が良い。その分、多少給料は下がったが、そう大した事では無い。
風変わりな同僚だが、育児で俺が飲みに行けなくなった分、時々ウチに来て飲む様になった。
娘とも結構ウマが合うらしい。料理を作っている俺をそっちのけで二人してきゃっきゃ言いながら遊んでいる。
その娘も今ではすっかり俺になついて俺の事を雅ママと呼んでくれる様になった。
俺はそんな娘の為に朝早く起きて一生懸命保育園のお弁当を作るのだ。
人の為に何かをしたいという気持ち。そして何かをしてあげる事が出来るって事がとても幸せに感じられる。
麻美、この子は俺が責任を持って育てるよ。


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最終更新:2008年09月17日 18:27
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