『中野翔の日記』(8)

920 名前:中野翔の日記 ◆Zsc8I5zA3U? []:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 01:55:27.52 ID:qwWdB8Oe0

○月$日・・久々にこの日記に書き込むことになるんだな。今までの日記を見てみると俺ってバカだったんだなwwwwそういえばこれでもう最後のページか・・・思えばこの日記はもう10年近くも書いていないな。まだ小さかった希がこの日記と見て余計な事実を知ってしまえば余計傷ついてしまう。そう思って俺はこの日記を固く封印した。今までのことが書けれないのが辛かったがこれも希の為と想いしてきたことだ。それに・・日記なんかよりもより色濃く思い出というもんは残るもんだ。っと、ページを無駄しにてはいかんな。久々の日記だからブランクがあるのかも知れんなww

まぁ、こんなことを書いていても仕方ないので今の俺の現状を書こう。俺は相変わらず会社で家族を養っている。俺もどんどん出世して今や若き部長だ。ここまでこれたのも俺の仕事の活躍ぶりと・・そして何よりも家族の支えがあってこそだと思う。階級が上がってからはかなり忙しくなったが家族サービスは忘れてはいない。あいつとも思えば結婚して長いな・・もう軽く10年近く経ったか・・・椿も大学を卒業後、いい人を見つけてくれていたようだ。よかったよかった。そういえば昨日、思わぬ人物に出会った。・・・礼子先生だ。ここ数年は互いの都合で会っていなかったのだが、偶然あいつと一緒に出かけたスーパーで出会った。礼子先生は俺たちの姿を見るや否や「元気そうだな」の一言、今は教師を辞めており、どこかの医療関係の仕事についているようだ。旦那の手伝いをしながら楽しい生活を送っているようだった。元気だよな、俺らよりも一回りよりもの年上なのに・・そういえば・・俺たちもそろそろ40を過ぎたんだよな。

もう俺たちもいい年だな、そう思いながら俺はあいつと一緒にスーパーを回っていた。

921 名前:中野翔の日記 ◆Zsc8I5zA3U? []:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 02:05:25.56 ID:qwWdB8Oe0

内藤夫妻も俺ら夫婦と同様に子育てに忙しい日々を送りながら毎日を過ごしていった。時々内藤とは電車で一緒に会うため、子育ての愚痴やらいろいろなことを話した。ドクオのほうはこのまま独身生活を謳歌していた・・・なんてことはなく、白菊さんとよりを戻したらしくひっそりと結婚して2人の子宝に恵まれた。月に1度はみんなでどこかへ行くことにしている。一家全員で交友を深め友情を確認していった。そういえば道場のことだが、時間上の都合か内藤がドクオに師範代を譲った。それに2人とも力は互角であったのでどちらが師範代になっても誰も文句を言わなかった。当のあいつはというと・・合気道をしながらも今の実力を維持するに至っている。もうピークはやんだようだな。

そんで希のほうだが既に高校を卒業後、大学へと進学した。希は合気道をすべて体得して中学校の頃にはほぼ免許皆伝クラスまで上り詰めた。それにあいつ直伝の指導法もあってかメキメキと成長を続けていた。それに俺の血を引いているためか頭のできもよく、小学校高学年の頃には既に中学の基礎学習を始めていた。それにあいつから引き継いだ美貌とスタイルがあるのだのだからモテないはずがない。中学校の頃にはファンクラブができているほどであった。さらに攻め寄ってくる男共は自慢の合気道で手加減しながらもすべて撃退したらしい。それを聞く度にあいつは「流石、俺の娘だ!」っと、感心していた。全く・・末恐ろしい親子である。

幸いにも年頃の娘にありがちな父親離れはなくなっていた。家族思いのいい娘へと育ったとしみじみ実感する。よく衝突した結果だと俺は思う。相変わらず口調も変わらないで俺のことは未だに親父だwまぁ・・そこがかわいいんだけどなwww昔はショックだったが今では心地よい響きだ。

だけど、希が成長してくるにつれ刻々とあの事を話す日は近づいていった・・

926 名前:中野翔の日記 ◆Zsc8I5zA3U? []:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 02:21:37.55 ID:qwWdB8Oe0

そして、希が心の整理ができるようになった高校2年生の時・・希に俺らのことを話すことにした。もう既に女体化シンドノームは完全に撲滅された病気であり、天然痘などと同等であった。希の学校でもその事実を語り継がされているが・・しかし、いくら知識だけでも希たちの世代はもう女体化シンドノームは“ない”のだ。男が15,16歳で童貞のままだったら女体化するという常識は希たちの世代にはもうないのだ。だから俺らは話すことにした、あいつが元男だったこと、俺らが宿命のライバルだったことなどいろいろなことを話した・・

すべてを聞いた希はショックだったのか、黙って自分の部屋へと戻った。これでいいのだ・・いずれは知ってしまう事実、だから親である俺らが話すほうがちょうどいい・・残酷な選択だが俺たちが話し合って自分たちでこの方法を選んだのだ。すべてはほかならぬ希のために・・・これも1つの親からの愛情だと思いたい。

    • すべてを話して希を見届けた後、めったに泣かないあいつが糸が切れた人形のように俺に寄り添いながら泣いていた。辛かったのは俺もだ・・だけど、これから1番辛いのは希自身だ。これを超えて希はまたひとつ成長する・・

そう、当時の俺らは思いたかった・・

927 名前:中野翔の日記 ◆Zsc8I5zA3U? []:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 02:28:02.32 ID:qwWdB8Oe0

希に真実を話してから数日してからか・・俺たちはそのときは希にどう接していいのかわからなかった。会社へ出勤して内藤に話すたんびに気が晴れる。内藤はいつも落ち込む俺を励ましてくれる。・・こうなることはずっとあいつと一緒に覚悟していた。口ではわかっていたのに・・・体のほうは現実を受け付けるにはしばらくかかった・・いつもは楽しい家族との食事のひと時も何だか気が進まなかった。

そしてさらに数日が経過し、希が俺らを呼んで真剣な顔つきをしながらこう言ってくれた。

「私、あれからずっと1人で考えたの・・だけど、1人じゃ答えが出なくて思い切ってなー君に相談したの。なー君も最初は半信半疑だったけど、そうしたら家にいたツンおばさんが私たちにママや親父のことを話してくれたの。」

希の話はまだ続いていた。俺らは黙って耳を傾けた。

「・・最初はとても信じられなかったけど最後にツンおばさんがこう言ってくれた。“それでもあなたの親には変わりないわよ”って、それでね、私思ったんだ。ママが元男だろうとママには変わりないって・・それに、親父やママの過去についも事実だとしても今は私の親父とママ・・そう思えるようになったの。

だから・・2人とも“私を産んでくれて本当にありがとう”もう、2人の過去なんて関係ないよ。・・それが私の出した“答え”」

この希の出した答えに俺たちは救われた。・・希にこのことを話して本当によかったと思う。あの時・・希を産んだあいつのあの表情はようやく報われたと思う。希はしっかりと俺たちのことを想い、愛し、慕ってくれた。そう俺たちは感じた・・

こうして俺たちは一回り成長できた希を迎えることができた。俺たちはより強固に家族の絆を強めいった。

930 名前:中野翔の日記 ◆Zsc8I5zA3U? []:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 02:59:32.12 ID:qwWdB8Oe0

さて、最後にして最大の障害を切り抜けた俺たちはそのまま家族としての日常を余すところなく過ごしていた。希も何か吹っ切れたのか勉学と体術の強化に励み、翌年の高校3年生の冬・・見事に主席で大学合格を果たした。また、家では家事を率先してやっていたので料理とかも格段に腕を上げており、より完璧超人の名を欲しいままとしていた。道場では内藤の息子と会うのだが、内藤の息子は一応一通りには形になっているものの、いつも希にやられていた。しかし、この2人・・どことなくいい雰囲気だな。まさか・・俺に隠れて付き合ってるんじゃないだろうな!!恋人までは一応許しておくが、その先になったら俺は許さんぞ!!

しかし・・そんな俺の想いも思わぬ形で砕け散ることとなる。

それは、希が大学2年の中頃に差し掛かった頃、俺らと内藤夫妻は希たちから㌧でもない事実を突きつけられる事となった。希は重たい口調で俺らに驚くべきことを言った。

「あの・・わ、私・・・出来ちゃったの?」

親の因果は子にしっかりと受け継がれるものである。希は・・かっての俺らのように出来てしまったのだ。そう!!俺の最も恐れていたことが起きてしまった!!!

    出  来   ち  ゃ っ  た  結  婚  で  あ  る

まさか・・希がこのようなことになってしまうなんて・・・俺は早くこれが夢だと信じてみたかった。相手は内藤のボンクラ息子である。ここまでぴたりと当たってしまうなんて・・過去の喧嘩から培った俺の直感もまだまだ捨てたんじゃないな。そうだ、俺より強い奴でなきゃ希の彼氏とは認めないんだ!!早速、内藤のボンクラ息子をハッ倒す!!そう俺が準備しようとしていると俺の目の前に一閃の光が飛び込んだ。

次の瞬間、俺が見た頃には内藤の息子はみぞおちを押さえながらその場に立ち竦んでいた。やったのはもちろんこの場では1人しかいない・・

932 名前:中野翔の日記 ◆Zsc8I5zA3U? []:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 03:16:44.38 ID:qwWdB8Oe0

そう、あいつだ・・あの相良 聖だ。しかもその瞳はあの血に飢えた狂犬の頃のものであった。あいつは威厳たっぷりに内藤の息子を見つめるとこう言い放った!

「希の言うことなんざどうでもいいんだよ!!!この、ボンクラ野郎がッ!!!大事なのはてめぇは希を幸せに出来るのかできないのかどっちだ!!!真のない言葉を言ってみろ!!てめぇをその場でブッ殺してやるぞ!!!!!!!!!」

俺のお株を奪ったあいつはあの頃のままの視線で内藤の息子を睨み上げた。そのキレと技とスピード・・当時のあいつのまんまであった。それに・・あいつをじっくり見ていると久しぶりに男の頃のあいつとかぶって見えた。そうだ・・この感じだ。何も考えてなかったあの頃・・まさかこの歳になってこの空気を感じるとは・・・思っても見なかった。あいつがそのつもりなら・・俺もそうさせてもらうぜ。

そして俺の中で20数年ぶりに俺の中で深い深い眠りについていた殺戮の天使が目を覚めた。

933 名前:中野翔の日記 ◆Zsc8I5zA3U? []:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 03:17:50.16 ID:qwWdB8Oe0

「おい、てめぇ!!!この殺戮の天使様と血に飢えた狂犬との一人娘を幸せにする度胸はあるのかァ!!!」

目覚めた俺の中の殺戮の天使はあの頃の威厳を取り戻すかのように内藤の息子に怒鳴り上げていた。この最凶・凶悪タッグを前に内藤の息子は鳩尾を抑えながら俺らを見ていた。当の内藤夫妻はというと、俺らを止めもせずただ、じっとこの場を静止していた。しかし、そこには只ならぬ友に託した子への想いがあった。俺らは友人の“想い”を受け取るとこいつらの覚悟と器量を問うた。

「てめぇら!!この世の中はお前らが思っているほど甘くはないぞ!!!・・お前らは社会に出て傷つき、その理不尽さに怒りがこみ上げるだろう。そしてその怒りに我を忘れ時には揉めあうだろうな・・その困難にてめぇらは耐えれるのか!!!」

俺たちの重く、深い問い・・そうかあの時、親父はこんな気持ちで俺たちの覚悟を試していたのか・・社会に出ることへの理不尽さ、それに耐えうることの出来る忍耐や覚悟・・そして、何よりも肝心で大切なのは相手を幸せに出来るのかということ――――ッ!!

それを親父は試したのだろうと今ここで実感した。

935 名前:中野翔の日記 ◆Zsc8I5zA3U? []:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 03:33:38.01 ID:qwWdB8Oe0

場には先程とはうってかわって、静けさだけが支配していた。静寂の中・・あいつらは黙って下を俯いていた。俺は目を瞑りながらあの時と同じ状況を思い出していた。あいつを幸せにする想い・・おなかにいた希を守り抜くという覚悟・・それらが入り混じって俺らは晴れて結婚した。あの時、俺が見せた覚悟をこいつらは果たして見せられるかどうか・・それがこの静寂を脱却する唯一の方法であった。周りの音がよりはっきり耳に聞こえたまま・・俺はそっと目を閉じた。すると、走馬灯のように今までのことが駆け巡る・・

結婚してからのあいつ・・

               笑っているあいつ・・

不安げなあいつ・・

                 まだ幼い希を抱っこしているあいつ・・

そして・・俺にあいつを託してくれた男の頃のあいつ・・・

そのすべてが俺の中で駆け巡った。俺はすべての思い出を見ていると突然、机がドンッっと叩く音が響いた。俺はゆっくりと目を開けると内藤のボンクラ息子が真剣な表情をしながら俺らにこう示した。その瞳にはあの頃の輝きが秘められていた。

内藤のボンクラ息子は覚悟というオーラをまといながら俺たち最凶タッグへと立ち向かっていった。

936 名前:中野翔の日記 ◆Zsc8I5zA3U? []:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 03:48:54.88 ID:qwWdB8Oe0

「俺は・・あんたら見たいな実力もなければ才能もない・・ただの凡人だ。だけど・・だけど!!!希を思う気持ちだけは誰にも負けない!!!確かに・・世間てものは甘くないとはわかっている。だけど・・俺たちは耐える!!耐えて耐えて・・耐えまくって!!俺の愛する人とその子供を絶対に幸せにしてみせる!!!」

相当な覚悟だ・・あのときの俺と同じような気迫だ。ボンクラ息子からは脱却させてやるよ。だが、それでもまだ足りない。さぁ・・示せお前たちの道を・・

俺はじっと・・希を見据えた。

そして希が立ち上がり、一呼吸置いてから俺たちに向けて覚悟を貫き通す威厳と気迫をまとったまま俺らに立ち向かった。それは・・新たなるものであった。

「私は愛する人との子供を宿した・・・だから、だから!!私は何が何でも絶対にこの子を産みます!!!たとえそれが世間の風に逆らおうとも・・

    • 私たちは絶対に幸せになる!!!!」

このときの希には俺らの風格とオーラをしっかりと受け継いでいることが確認できた。

937 名前:中野翔の日記 ◆Zsc8I5zA3U? []:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 03:55:30.66 ID:qwWdB8Oe0

見事だった・・よく、言ったと・・俺は親として誇らしげに思う。ちょっと早いが希も成長したなと俺らは思った。あんなに小さかった希がここまで立派になった。俺らの子育てはようやく終わりを迎えた。希は世間に出られるようなれっきとした一人前になったのだ。内藤の息子も・・よく言ったと誇らしげに思う。最後に内藤とツンからはあの時と同じように援助は一切なしとの通告を2人に叩き付けた。希は血に飢えた狂犬の荒々しさと殺戮の天使の冷酷さを見事に受け継いでいた。それを横にいたあいつと一緒にそれを確認するとあのときの親父のようにゆっくりとその場から立ち去った。・・この2人ならどんな困難にもたち迎えられるだろう。そして俺は親として最後の祝辞を2人に送った。

                2人二一生ノ幸アレ・・・

    • そして、月日は経ち今日はあいつらの結婚式だった。俺たちの結婚式と同じようにあいつらも友達に祝福されながら巣立っていった。内藤の息子は既に希を養うためにアルバイトに精を出しているという。決して楽ではないが2人とも幸せな日々を送っているというらしい・・だが、そこまで世の中甘くはない。時には悲しみ大きな障害が2人に待ち受けているだろう。だけど・・2人で力を合わせれば何とかなるはずだ。2人とも・・もうそれができる歳だ。

そう思いながら、傍にいたあいつと一緒に俺は希の晴れ姿を内藤と一緒に見届けた・・・

938 名前:中野翔の日記 ◆Zsc8I5zA3U? []:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 04:18:04.09 ID:qwWdB8Oe0

◇月○日・・この日記もまだページが残っていたんだな。俺は今病室のベッドの上だ。希の晴れ舞台を見届け、孫の顔を見た後、若きスーパージジィとなった俺は仕事をしていると突然、会社で倒れてしまった。すぐさま俺は病院に運ばれ、精密な検査を受けたら衝撃の結果が出た・・・

診断によると末期がんだそうだ。既に全身に転移しており医学的には完治不可能だそうだ。あの難病といわれた女体化シンドノームは治せるのに末期がんは治らないのかねぇ・・あの時、あいつらを養うために無理したのか・・それとも、よく喧嘩していた頃のつけが今頃回ってきたのやら・・・抗がん剤投与で延命はできるらしいのだが俺はそのまま断った。子供の成長も見届けたしな・・もう思い残すことは何もない。だけど・・あいつが少し寂しい想いをさせてしまうな・・まぁ、いいか。

少しだけ・・ 

        ほんの少しだけ・・・

あいつには少しだけ寂しい想いをしてもらうだけさ・・・なぁに、すぐに逢えるさ・・でも、妻に寂しい思いをさせるなんて旦那失格だな俺・・

そんな俺の感情を知ってか知らづか・・俺の決断を聞いたあいつはいつもと同じ表情のまま俺を迎えながらにこやかにこう言ってくれた。

939 名前:中野翔の日記 ◆Zsc8I5zA3U? []:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 04:19:29.34 ID:qwWdB8Oe0

「フッ・・殺戮の天使と恐れられたお前もさすがに病気には適わないようだな。・・安心しろ、お前が死んだって俺はちっとも寂しくないさ・・お前の分まで孫の世話でもしてやるよ。そうしたら、自然にあの世行きだ。」

そう口では言っていたが・・多分、泣いていたのだろう。俺の死を受つけるのは怖いんだな。こいつは意外と寂しがり屋さんだからしゃあないな。俺は久々にあいつをそっと抱きしめるとそう心に呟いた。

                 ごめんな・・先に逝っちまおうとするなんて・・・

あいつは笑っていたが、瞳からはわずかに一滴が零れ落ちていった・・・

それが最期に見たあいつの笑顔と・・・悲しみであった。

940 名前:中野翔の日記 ◆Zsc8I5zA3U? []:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 04:38:27.23 ID:qwWdB8Oe0

そしてその夜・・来るべき日がとうとう来ちまった。突然苦しみだす俺の体・・しかし、その変化はどちからかというと心地よいものであった。ふわぁっと、離れる体・・・すると周りにはたくさんの人がいた。ドクオに白菊さんに内藤にツンに椿に俺の孫を抱えた希に内藤の息子・・それに、あのときのように必死に泣きじゃくるあいつがいた。おいおい、泣くなよ・・また逢えるだろ?ただ、逝くタイミングが少しずれちまっただけだ。最初の頃のセックスのように・・・

悲しみの声が俺の周りにじわりと広がっていった。希からは「親父ィ・・まだ、死なないで・・・」っと、そういえば希は昔からパパっ子だったな。小さいころはよく手を引いて散歩とかよくしたもんだ。車の中では俺の膝の上に座ってよく駄々をこねて俺たちを困らせていたな。最後の最後までだめな親父だったな俺は・・・ごめんな希、親父この若さのまま死んじまったよ。

ざまぁ、ねぇな・・でも、生きている間に希が一人前に育ってくれて本当によかった。

941 名前:中野翔の日記 ◆Zsc8I5zA3U? []:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 04:43:33.62 ID:qwWdB8Oe0

そしてあいつの声が最もよく響いた・・

「こんのバカヤロォ!!!!!俺よりも・・・この相良様よりも先に逝っちまいやがって!!!!!!こんの大馬鹿野郎ォォォォォォォ!!!!!!

このバカヤロウ・・・・・・俺、お前が・・お前が・・

先に逝っちまったら俺どうすればいいんだよぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」

大丈夫さ。まだお前には俺たちが遺した家族がいる。さすがに俺はもう蘇ることは出来ないが十分に死ぬまでの代わりにはなると思うぜ。希は小説家になったそうじゃないか、とんだ博打が味わえるな。でも、希は俺らの娘だ。・・絶対売れる。ビッグなことをしてくれぜ!!いつになるかはわからんがな・・

それにまだ、お前はあの頃のようにかわいいよ。初めて惚れた頃のようにかわいい・・俺が保障する。

    • 死んでるけどな

最期に・・俺はお前に逢えて本当によかった。俺は一生後悔はしない。むしろ生まれ変わったらもう一度恋をしたいぐらいだ。この日記も最期にこういう形で飾れることが来て本当にうれしい。そういやこの日記も残るはもう最後の一行だったな。

では、最期に・・・愛してるよ聖、また逢おうぜ・・・

942 名前:中野翔の日記 ◆Zsc8I5zA3U? []:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 04:59:43.42 ID:qwWdB8Oe0

この日記は今、時代を風靡している小説家、中野 希が自身の父親である中野 翔氏が綴った日記を編集、再構成したものである。そして、この日記帳は中野 翔氏の妻、中野 聖氏の遺品から見つかったものである。その時の聖氏は非常に安らかな寝顔で逝ってしまったといわれている。

まるで・・亡き翔氏に出会えたかのように・・・

なお、この日記は貴重な過去の女体化シンドノームの資料としても重要視されている。

しかし後に希氏はこう述べている。

「この日記はただの女体化シンドノームの体験記ではありません。今は亡き、父と母が体験した・・・偉大なる大恋愛サスペンスです。この日記を読みながら父と母の記憶が体験できたら幸いです。

ただ・・原本である、父の日記には最期のページが真っ白でした。・・どうか、皆さんで最期のページを見つけてみてください。読んでいるうちにきっと、最期のページが見つかるはずです」

943 名前:中野翔の日記 ◆Zsc8I5zA3U? []:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 05:02:06.56 ID:qwWdB8Oe0

   あなたには見えますか?                   

                         この日記の最後のページが・・・

これは喧嘩に明け暮れていた男の・・・

                             涙と苦労と忍耐と根性と愛と・・・・・

そして・・中野 翔という男の感情がすべてがつまった日記帳である。

fin


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最終更新:2008年09月17日 18:44
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