『女のド根性!!』

133 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/27(水) 15:23:16.80 ID:mO2RVDTQ0

「ふぅ、今日も大安売りで助かったぜ」

俺はいつものようにスーパーで買い物を済ませると家への帰り道を ルンルン気分で楽しんだ。今日はスーパーで肉が大安売りだったので 買って買いまくった。やはり主婦たるもの大安売りには目を光らせなければならない。

今日の晩御飯は焼肉だ。大安売りしていた肉は結構品質がよくいいものだった。 なら余計な手を掛けずにそのまま焼いて味わおう。

「フー・・まさか俺が結婚して主婦になるなんてな」

そう、俺は元男・・かって、女体化シンドノームという病気が発症してしまい、 男だった俺はある日突然、女の体になってしまった。最初は慣れない女の体に 苦労を費やされたが月日が経ち、徐々に女の体に慣れて天涯孤独を貫いてきた 俺の周りには人が集まってきた。そして・・結婚して子供も設けた。

俺の名は相良 聖・・かって血に飢えた狂犬と呼ばれたが、今は極普通の主婦に落ち着いた。

「さっ、希は大人しくしてるかな」

俺は我が子の身を心配しながら、家路へと歩いていった・・

134 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/27(水) 15:25:20.97 ID:mO2RVDTQ0

「ごちそーさん、なんで今日は焼肉なんだ?」

「たまたま、肉が安かったからな」

俺の目の前にいる男性・・こいつこそ俺に旦那様である中野 翔だ。 昔からの宿敵同士であったが・・世の中というものは不思議にできており、 いろいろ転びながらも俺たちは結ばれた。俺も成長したもんだなとしみじみ思う。

「でもよ・・手の込んだ料理が食いてーよ」

「うるせぇな!!・・文句があるならてめぇだけ外食で過ごすか?」

「うっ・・やめておく」

そういってあいつはこれ以上言及するのをやめた。ま、少し言い過ぎたかなっと 反省したりする。こいつと付き合ったのは高校の時だ。だから、結婚したときも余り 実感がなかったな。料理を始めたのも高校を卒業してからで友人である ツンに教えてもらった。それからは料理のデパートリーも増え始め一般的なもの から高度なものもできるようになった。やはりここは俺の昔からある天才能力が 役に立ったのかも知れんな。

136 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/27(水) 15:28:22.89 ID:mO2RVDTQ0

「ママ~」

「ん、何だ希?」

俺の膝にちょこんっと乗りながら甘えている幼い女の子・・俺たちの愛の結晶で ある希だ。希を妊娠したのは大学卒業間際・・まぁ、発覚したときはかなりの騒動 だったのだが、何とかやってこれた。希は4歳ちょっとだ、ようやくかわいい時期に さしかかったといえる。

希は俺の膝に乗りながらこう呟いた。

137 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/27(水) 15:28:56.77 ID:mO2RVDTQ0

「ママ~・・次はなに作るの?」

「次か・・まぁ、明日までに考えておくぞ。だから、楽しみにしておけ」

「うん!!」

そういって希は俺から離れて部屋へとダッシュで走った。 希はいつも晩御飯が好きみたいだ。こないだ、家族でレストランに食事したときは 少し騒動が起きた。注文してメニューが運ばれてくるのだが・・ 希はお子様ランチになかなか手をつけようとはしなかった。

“ママの料理がいい!!”

母親としてはこの上ないうれしい言葉であったが・・ あの時はなかなか駄々をこねる希を納得させるのに苦労した。 一応納得させたが・・俺の料理がいいとしみじみに口をしながら食べていたのを 覚えている。その日以来、俺は希にたくさん料理を振舞っている。 やはり、子供の笑顔というのはいいものだ。腹を痛めて産んだ甲斐があるというものだ。

しかし・・そんな日々が続いていたある日、俺はとんでもない試練が突きつけられた。

138 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/27(水) 15:32:02.56 ID:mO2RVDTQ0

その日、俺はいつものように洗物をしていたのだが、いつになく希が そわそわしていた。なんでだろうと思いつつも俺は洗物を続けていた。 すると希が背後から俺に抱きつき、こう言って来た。

「ねぇ、ママ・・」

「何だ?」

「明日・・オムライスが食べてみたい!!」

「・・えッ!!オムライス・・だと?」

俺はとたんに洗物をしていた手がぴたりと止まった。珍しく希からのリクエスト・・ 母親としてはそれに応えてあげたい。だけど・・俺には事情があったのだ。 そう、俺は昔から卵アレルギーであったのである。 女体化してから検査を受けたものの、昔からあった食物アレルギーには変化が なかったみたいだ。体の構造は変化しても食物アレルギーが変化しないのは 当時は余り考えなかったのだが・・今となっては後悔ものである。

俺は何とかやんわりと断ろうと思った。

「な、なぁ・・今度はだめか?」

「明日がいい!!!」

139 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/27(水) 15:34:01.15 ID:mO2RVDTQ0

断固、断る姿勢がなかった。やはりここは俺の血の遺伝だ。 しかも希はあいつの血も引いているのか結構鋭い部分もあった。 結局そのときはやんわりとかわしたのだが・・余りいい効果ではなかった。

その夜、俺は夫婦としての行為を終えるとベッドの横にいるあいつにさっきのことを告げた。

「なぁ・・さっき、希がオムライスを食いたいって言われたんだよ」

「なら、作ってやればいいじゃねぇか。希は食いたがっているんだろ」

「簡単に言うな!!!・・俺は卵アレルギーなんだよ」

俺は自身の体のことをあいつに告げた。今の俺の腕ならオムライスぐらい 楽勝なのだが、俺自身が卵を食べれないため、そのまま取りやめたかったのだが・・ 希が食べたがっているのを母親として無視できなかった。 かといって、俺だけ別のメニューだったら希は違和感を覚えるだろう。 俺が卵を食えないってことを知れば責任感じちゃうからな・・

「俺はどうすればいい?」

「う~ん・・確かに俺らがオムライスでお前が別のメニューだったら希だって何かしらの 責任は感じるだろうな」

「・・どうすりゃいい?」

俺はあいつと一緒にいろいろ考えたが、結局いい案がなかなか出てこずに夜を過ごした。

140 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/27(水) 15:36:07.37 ID:mO2RVDTQ0

翌日、俺は旦那を見送り希を幼稚園に送り出すと、オムライスについて 考えていた。やはり、1人で考えたっていい案なんて出ない。 そんなことを考えているとインターフォンが響いた。 俺は来客に対応すると、ドアの向こうからはもうすぐで2歳に差し掛かる息子を 抱えたツンがいた。

「・・と言うわけだ。俺はどうすりゃいいと思う?」

「どうすりゃいいって言われても・・」

俺はツンを家に招き入れると早速あのことを話した。 やはり、同じ母親同士・・何かあるものもあるだろう。ツンはそのまま息子を抱えて あげながらこう言ってくれた。

「う~ん・・難しい問題よね。やっぱ、子供が忘れるのを待つしかないと思うわ。 ほら、あの時期ってよくとっさに新しいことが思い浮かぶからすぐに忘れるわよ」

「そんなものかね・・」

俺はそのまま不安を感じながらツンと一緒に午後のひと時を楽しんだ。 ほかにも日ごろの子育ての愚痴や夜の生活等など様々なことを言い合った。 ツンは俺よりも少し遅く子供を産んだためよく俺にアドバイスを求めてくる。

俺は希の頃の経験を活かしツンにアドバイスを送りながら時間だけが刻々と過ぎていった・・

141 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/27(水) 15:39:59.10 ID:mO2RVDTQ0

「なぁ、ドクオ」

「なんだ、新しい特訓なら勘弁してくれよ」

希を幼稚園から迎えて道場でのひと時・・無論希も同伴であるが、 最近なぜか合気道をやりたがっている。やらせようかどうか少し迷いどころだ・・ 俺はそのまま高校のときの腕を保っている。 人によれば裏師範代とまで言われているが・・まぁ、護身術程度に抑えてあるので よほどのことがない限り本気ではやらない。横にいるドクオもそれなりに成長を みせているのだが俺からみればまだまだだ。ちなみに内藤のほうは仕事の 都合上で休みの日しか来ていない。

まぁ、それでも2人の実力は互角といったところか・・

「ちげーよ!!お前、人と違った食事のメニュー出されただどう思う?」

「いきなりなんだよ。・・そうだな、まぁ食うな。それがどうかしたか?」

俺はそのまま呼吸を整えると、ドクオの胸めがけて正拳突きを放った。 するとドクオのほうは完全に隙だらけだったのでおもしろいように決まった。

「何すんだよ!!!」

「お前に聞いたのが間違いだった・・ぼさっとしてないで!!!さっさと来い!!!」

俺はそのまま構えると、ドクオに稽古をつけることにした。 やはり、強くなったとしてもまだまだであり。そのままドクオを〆ると俺は 道場を後にして希を連れてスーパーへと向かった。

142 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/27(水) 15:41:00.69 ID:mO2RVDTQ0

このときの俺はオムライスのことなど頭に入ってなかった。俺はそのまま希と一緒に スーパー内を回っていると・・希が俺に卵パックをかごに入れようとした。

俺はその光景を見てようやくオムライスのことを思い出した。俺は慌てながら卵を戻そうとしたのだが・・

「き、今日は・・魚の塩焼きと煮物だぞ」

「オムライスは!」

「ま、また・・明日な。明日になったら作ってやるからな」

俺は苦し紛れに言ってはならないことを言ってしまった。 希は“約束だよ”っと言いながら卵パックを元の場所へと戻した。俺は慌ててさっきの言葉を 撤回しようと思ったのだが・・ 希は寝るまでオムライスのことを口にし続けた。こうなってしまったからには簡単には忘れる なんてできないだろう。

何とか対策を立てないとまずいと思った俺は“ある人”のところへと頼るしかなかった・・

145 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/27(水) 15:52:24.43 ID:mO2RVDTQ0

「頼む礼子先生!!!もう、先生しか頼る人いないんだ!!!!!」

「そうは言われても・・ね」

俺が最後の頼った人・・それはかっての恩師である礼子先生だった。 俺はそのままやけくそ半分で先生に連絡を取り無理やり会う約束をこぎつけた。 幸い、今日は休みであったためあいつに希を任せると、俺はそのまま喫茶店で 礼子先生と会った。久々に出会った先生は変わってはなく。礼子先生はタバコを 吸いながら俺の話を聞いていた。

「せめて、アレルギーを1日でも抑える薬を分けてくれ!!!このまま行くと 家庭問題に発展してしまう!!!!!」

「わかったから・・落ち着いてちょうだい。旦那に掛け合ってあげるから」

「本当か!!」

俺は藁をも縋る思いで礼子先生の電話を聞いた。確かあいつから聞いた話だと 礼子先生の旦那は医者らしい。だから俺はそれに賭けることにした。ギャンブラーも 大勝負のときはこんな気持ちだったのかと思うほかないな・・

礼子先生はしばらく電話して携帯の電源を切るとタバコを吸いながらこういってくれた。

146 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/27(水) 15:57:25.98 ID:mO2RVDTQ0

「さっき、旦那に掛け合ったわ。そしたら食物アレルギーを抑える薬があるって、 今から旦那の病院に行けばもらえるわよ。全く・・あんたらは学生の頃から手を焼かせ」

「やった!!!で、その病院はどこにある!!」

「うれしいのはわかるが、落ち着いてくれ・・」

俺はその報告にかなり喜んだ。そして礼子先生と一緒に病院へと向かった。 意外にもここから近かったので早く薬を受け取ることができた。病院に着いて俺は 礼子先生の旦那から真っ先に薬を受け取った。

「はい、これだよ。えっと・・使用上の注意としては昼食の前で目安としては30分・・」

「ありがとな!!!助かったぜ!!!!」

「あっ、ちょっと!!まだ使用上の説明が・・」

俺はそのまま金を払い、礼子先生の旦那を後に薬を抱えたままダッシュで 病院を後にしてスーパーへと向かった。旦那からは何か声が聞こえていたのだが俺には関係ない。 薬さえ受け取ってしまえばこっちのもので俺はその脚でスーパーへと向かい オムライスの材料を速攻で買った。

(待ってろよ希!!)

俺はそのままオムライスの材料を買い終えると、家へと帰った。 家に帰った俺は2人のから出迎えられると、早速、薬を飲んでオムライスを作る 準備を始めた。薬は飲みやすいカプセル状だったのですぐに効くはずだ、 そのまま俺はご飯を炊いてチキンライスを作る準備を始めると横で見ていた 希がわくわくしたような目線でこちらを伺っていた。

147 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/27(水) 16:01:33.37 ID:mO2RVDTQ0

「ママ、今日はオムライスなの?」

「おうっ!待たせたな!!」

「やったぁ!!!おやじ~・・」

希はそのまま横にいたあいつの元へと向かい抱っこされている。どうやら喜んで くれたようだ。あいつは希とじゃれあいなっていると。俺の元へやってきて小声で こう呟いた。

(大丈夫なのか?)

(フフフ・・俺には秘密兵器があるんだよ。だから心配すんな)

俺はあいつの心配をなくすと、オムライスの製造へと取り掛かった。 数分してご飯は見事に炊き上がっており俺はスーパーで買ってきた材料を入れな がら難なくチキンライスを製作した。そして、そのままチキンライスを卵に包む作業 へと取り掛かった。やはりこれは難しいものであったが、何とかうまく成功し3人分 のオムライスを作り上げた。

149 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/27(水) 16:07:12.13 ID:mO2RVDTQ0

「よし、食うか」

「オムライス、オムライス~」

やはり希は楽しみにしていたのだろう。 目を輝かせながら俺の作ったオムライスをじっと見ていた。 さて、ここからが勝負である。もし・・俺がオムライスを食べれなかったら、 希の心に深~い傷を残すのは間違いないだろう。俺はスプーンでわなわなと 震える手を抑えながらオムライスを1口すくった。

やはり、緊張は大きいもので俺はゆっくりとオムライスを口に運んだ・・

(よ、よっしゃぁぁぁ!!!!気分は悪くないし、吐き気も全くしないぞ!!!)

俺は歓喜きわまった表情でオムライスを口にした。昔、卵を食したときわずかながらも 蕁麻疹と吐気がしたことがあった。薬を含んだ俺に今その症状は全くない。それに卵の味と いうのがえらい新鮮だ。数十年ぶりに食べたこの味がここまで変化するなんて・・ 俺はほっとしながらもオムライスを平らげた。

(とりあえず・・何とかなったか)

俺はそんな安堵をしながら1日を過ごした・・

151 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/27(水) 16:12:12.36 ID:mO2RVDTQ0

しかし、翌日・・ベッドから起き上がった俺の身にとんでもないことが起きた。

「イテテテ・・頭が痛い。昨日は酒飲んだ覚えもないぞ・・もしかして、副作用と でもいうのか?」

俺は目覚めると突然、原因不明の頭痛に見舞われた。 昨日は酒も飲んでいないし・・となると原因はあの薬か。俺は頭を抑えると、横にいたあいつが起きたようだ。

「どうした?頭痛か・・お前俺に隠れて酒でも飲んだか?」

「うるせぇぇぇぇ!!!!・・はぁ~、これからどうするかな」

俺はあいつに枕を投げると頭を抱えながらこの頭痛をどうしようかと悩みに悩んだ・・ 幸いそれからというものの希はオムライスに満足したのか俺に卵料理をリクエストすることはなかった。 あの薬は、全部使用しないまま家の押入れの奥深くに眠っている・・

みんなも薬には十分気をつけようぜ!!!

Fin


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最終更新:2008年09月17日 18:48
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