『決意』

25 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/05/26(土) 23:58:30.87 ID:kzl5tsJH0

子供を成す・・それは地球上すべての生物にとって本能的に体に染み込ませられたもので 人間という種の発展と保存を兼ね揃えたものだろう。それにどんな形であれ自分の手によって 新たな命を宿すのは神秘的かつ大変喜ばしいものだ。俺はようやく父親になるのかと思うと 清々しさと責任感を同時に感じてしまう。

だけどもそんな喜ばしい出来事も時期が違えば喜びから一転して悲劇へと変わり果てる。 あいつの妊娠が判明したとき、俺の場合も喜びと悲劇を同時に味わった・・

「・・俺も父親なんだな」

「ま、出来ちゃったものは仕方ないだろ。俺たち妊娠してもおかしくない生活を送ってたじゃないか」

「やけに冷静だな。お前のお腹の中に俺の子供がいるんだぞ」

妊娠の結果が判明した夜・・俺は妙に落ち着いているあいつを見ながらじっと自分のことを見直すことにした。 俺たちは高校を卒業後、前々から温めていた計画を実行に移すことにし、親父が買ってくれた別荘を元にあいつと 2人っきりになりながらあいつと一緒に生活をする・・まさに究極のキャンバス生活を送りたかった。 そのためにはまず多数の問題をクリアしなければならないもので、バイトをこなしながら学校の教師陣の お墨付きをもらえた成績の悪いあいつの家庭教師という生活が始まった。

計画を立案した俺はそれを実現させるためにバイトのほうは何とかこなしていたものの、あいつの家庭教師のほうが 難航を極め苦心の末にようやく俺と一緒の大学へと合格することができた。

合格発表のことは今でもよく覚えている、ようやく俺の苦労が実った感じだったな・・

26 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/05/27(日) 00:00:45.95 ID:RSAKjwo30

「・・まぁ、幸いなのが卒論が終わったときに発覚した頃だな。それにしてもお前女体化してるのに大丈夫なのか?」

「そんなのは関係だろ。・・まぁ、ちょっと早いけどこの俺が母親になるなんてな」

「怖いのか?」

「・・んなもん、わかんねぇよ」

そういってあいつはじっと自分のお腹のほうをそのままじっと見つめていた。じっとあいつの表情を見てみると その瞳は今までの闘争心むき出しな瞳とは違い、どこか優しく吸い込まれそうな感じな瞳であった。 あいつも母親の重圧というのをそのお腹からひしひしと感じているのであろうか? しかも俺とは違ってあいつの 場合は自分の体にもう一人の命が宿っているのだ、それを産み落とすのは並大抵のことじゃない・・

今までのような喧嘩とは明らかに次元が違いすぎるな。

27 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/05/27(日) 00:02:21.27 ID:RSAKjwo30

「そういえばいい病院見つけてな、ちょっと遠いけどなかなかいいって評判だぞ」

「あのなぁ、いくらなんでも早すぎるぞ」

「でも、設備がしっかりしてるんだからそっちにしようぜ」

実はあいつの妊娠が発覚したとき、俺はインターネットを駆使してこの辺にある評判のよい産婦人科を探していたのだ。 最近は病院の評判とかもまちまちなので慎重に選ばないと思わぬトラブルとかも発生してしまうかもしれない、 そんなことのないように安全かつ評判のよさそうな病院を検索していたのである。

「・・子供が生まれたら真っ先にそのこと話してやるよ」

「お前はしっかり俺の子供を無事に生んでくれよ」

「この俺様が簡単にくたばると思ってるのか?」

「その意気だ」

俺たちの命を宿しているあいつのお腹を触ると・・穏やかな命の鼓動が2つ聞こえてきた。

28 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/05/27(日) 00:04:43.06 ID:RSAKjwo30

数日後、いつものようにあいつと一緒に大学をこなした後、車で例の病院へと向かうことにした。 病院のほうは結構大きくて中に入ってみると妊娠を確認した病院よりも設備がすごく整っておりインターネットの 情報もバカにならないな・・

それに料金のほうもこういった大きい病院にしてみればかなり手ごろな値段でかなり低価額だったのも 驚くべき特徴であった。保険が利かないのが少し痛いのだが・・ここは今まで蓄えてた貯金を削るしかないようだ。

受付で手続きをしてそのままじっと待っているとなんだか奇妙な心境だった。

「前行った病院よりも設備が充実してるな」

「まぁな、保険が利かないから高いのが少し痛いけどな」

保険という響きは今の現状では少々痛いものだが、就職したらこのバイト漬けの生活から脱出して充実感たっぷりの 生活をできるだろう。流石にこのまま安定するのはまだまだだけども就職したらあいつや産まれてくる子供にも 苦労を掛けずに生活してほしい、親父たちとの話し合いにおいても向こうは俺たちに援助は一切しないと 公言されたばかりだ。保険だって俺が頑張って就職したら・・

「おい、何惚気てんだよ。頭でも打ったか?」

「・・うるせぇ」

そんな調子のままで俺たちはじっと心地よいまま、待ち時間を過ごしていた・・

29 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/05/27(日) 00:06:03.17 ID:RSAKjwo30

「中野様~・・中野 聖様、順番が来ましたので診察室にお入りください」

「お、おい! 俺はまだ・・」

「まぁまぁ、いいじゃねぇか。俺たち実質的には夫婦みたいなもんだろ?」

「ッたく・・妙なところだけ律儀だな」

そう、俺は手続きの際にあいつの名前を自分の妻のように書き込んだのだ。俺たちはもう実質上夫婦みたいなもん だし今更恥ずかしいことじゃない、それに籍のほうだってもう少ししたら正式に組み込まれるので子供が産まれたとき にはあいつは正式に俺の妻となるのだから少し早くたって問題はないだろう。

そんなことを考えながらあいつに付き添いながら診察室の中に入っていくと・・思わぬ人物に出会ってしまった。

30 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/05/27(日) 00:09:00.47 ID:RSAKjwo30

「じゃあ次・・あ、次の患者さんって君だったんだ」

「あ、あんたは――・・」

患者に安心感とリラックスを同時に与えてくれて病院内の不安を一掃してくれるような癒しの声、俺は 自然と湧き出てしまう驚きを抑えられるとこの癒しとも呼べる声に聞き覚えがあった・・ 俺の中で思い出となっていたその声はどういう経緯を辿ってきたのかはわからないが、今こうして再び現実と なって俺の目の前に舞い戻ってきてしまうのである。診察室で俺たちを暖かく出迎えてくれた人物は 昔、とあるいざこざで入院した病院の院長さんであった。

しかも、この男性はただの男性ではない・・俺たちのよく知る人物の旦那さんである。 肝心の先生ほうは俺たちを見ると驚きながらも優しく出迎えてくれた。

「やぁ、奥さんのほうは始めましてだね。すごい生徒だったって礼子さんからよく聞いていたよ」

「礼子・・? ――もしかしてッ!!」

「ああ・・礼子先生の旦那だ。 しかしここは産婦人科でそれにあんたは本来別の病院に勤務してるんじゃないのか?」

そう、この先生・・すなわち礼子先生の旦那さんがここにいる時点でおかしいのだ。 ここは旦那さんがいる病院とは離れているほうだし、そもそもこの先生は外科と内科を器用にこなしている スーパードクターらしいのだが、だけどもこの産婦人科は旦那さんからしてみれば職務違いであって 専門外であるはずだ。

しかし旦那さんはその理由をさらりと説明してくれた。

31 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/05/27(日) 00:12:43.78 ID:RSAKjwo30

「実はここの病院の院長とは前々からの知り合いでね、この時間帯の担当の人が急用で来れなくなったんだよ。 それでうちの病院に人員を廻してくれって言われてね。本来なら適任の人を廻すんだけど・・無理言って僕が この病院に来たってわけだよ。

産婦人科はかなり大変な仕事だからね。ここで働いている人たちの状況などをこの目で見ておきたかったんだよ」

「で、でも大丈夫なのか・・?」

旦那さんはさらっとこの病院にいる理由を説明してくれるが本当にできるのかどうか疑わしい限りだ。 高校の頃はよく保健室で入り浸っていた時はよく礼子先生から旦那さんの評判を聞いており、旦那さんは 外科とか内科専門で仕事もきっちりとやっているようで旦那さんの病院に入院してたときには患者の人は もちろんの事、看護婦さんたちからもかなり信頼されている腕のようなのだが・・今回は産婦人科、女性の体を 扱う分野なのでいくらそれなりの経験を積んでいる旦那さんには未知の領域のはずだ。 下手すればあいつは無論のこと、お腹にいる子供まで命の危険性が伴うかもしれない・・

そうなった場合は俺はあいつの後を追ってその場でショック死してしまいそうだ。

32 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/05/27(日) 00:14:22.53 ID:RSAKjwo30

「検査程度なら僕にだってできるよ。ここじゃ余り大きくは言えないけど実、は若い頃はとある診療所にいた 腕利きの先生に医療を学んでね・・人手不足からかよく妊婦さんの検査とかもさせられたよ。

まぁ、だけども緊急時や手術を要する場合は研修医のほうが僕よりも遥かに役に立つよ。 何せ僕にはそういった手術の知識と経験がないんだ・・生半可な知識の元で下手に手術すると 何より患者さんの命が危ういからね」

「なるほ・・――ッ!! 痛ェッ、何するんだよ!」

「うるせぇな!! てめぇこの俺様を無視するとはいい度胸してるな!!」

「ハハハッ! ごめんごめん、ちょっと話し込んじゃったね。それじゃ改めて検査を始めるよ」

そういって旦那さんは慣れた手つきで機械を駆使しながらあいつの体を検査を始めていた。 それにしても俺以外の奴があいつのパーフェクトな体つきを触るのは我慢のならないことなのだが、 検査なので暫くは仕方なく我慢しなければならないだろう。

しかし、この俺以外であいつの身体をまじまじと見つめられるとどうも殺意に近いものが出てしまう、 気を緩ませるために病院にあるものを見ようとしたのだが・・なかなか想像というのは思い浮かんだら 頭から離れないものである。旦那さんもそんな俺に気を遣ってくれているのか、所々でもう少しで検査が 終わるような言葉を機械を使いながらもあいつに投げかけている。

そんな状態で検査は約20分ぐらい続いた・・

33 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/05/27(日) 00:15:46.05 ID:RSAKjwo30

「はい、これで検査は終わりです。今のところ文句なしの健康そのものでこの状態を保ちながら 慎ましく生活を送っていれば元気な赤ちゃんが産まれてきますよ」

「ほ、本当か!! 嘘だったら礼子先生に言いつけるぞ!!」

「大丈夫ですよ。旦那さんのほうもお疲れ様でした・・ 少しの間、奥さん借りちゃってすみませんね」

「あ、ああ・・」

やっぱり気づかれていたのか・・嫉妬も見苦しいとはこのことだ。 俺は恐る恐るあいつのほうを見てみると・・あいつは完全に俺を見下しながらその張りのある声で笑っていた。 とてもこれから子持ちになる女性だとは誰もわかるまい・・

「お前筋金入りのバカだろ!! 独占欲に駆られて変なこと考えてたんじゃねぇのか?」

「・・う、うっ! ち、違うに決まってるだろッ!!」

完全に言い当てられてた。頼むからもう少し場所を考えてほしい・・周りに人がいないのが幸いなのだが この狭い診療室の中、そんな大声で罵られると恥ずかしさ全快だ。

34 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/05/27(日) 00:17:52.64 ID:RSAKjwo30

「まぁまぁ・・それにしても本当に2人とも仲がいいんだね。僕もなんだかちょっとだけ羨ましいよ」

「そ、そうだった! ・・あ、あの礼子先生には俺の妊娠のことは暫く黙ってもらえないかな?  ほかの人には結婚式で明かすつもりだったから・・」

「ああ、俺たちが親父たちと話し合ってまだ日が浅いし俺たちが籍入れるのもあと少しの状態だからな」

あいつの妊娠については両親と関係者にはちゃんと話しておいたし、妊娠についても同意を得られた。 ただほかの人たちには結婚式であいつの妊娠を公言することになっている・・もし旦那さんを通じて礼子先生に この事実を知られてしまったら、たちまち家に乗り込まれてお説教どころではない騒ぎとなってしまうだろう。

礼子先生は過去に子供を流産して子供を産めなくなった身体になってしまったのでそういった倫理上の面が とても厳しく、俺たちが付き合った当初から2人仲良く特別な性教育も施されたほどだ。高校3年間は先生が ピルを処方してくれたおかげで助かったのだが、卒業してしまうとキャンバス同棲生活の名残から肉欲に溺れた生活を 4年間ずっと続けてしまったためそういった面でかなり乱れてしまった。 酷いときには休みの日はそういったことに当てられたこともあったほどで有り余る若さから出てしまったものだろう・・

もし礼子先生に知られたら・・俺なんかは説教どころでは済まされず、叩き殴られて終いには命に関わる 大問題になってしまう。それだけは絶対に避けておきたい・・だからこそ旦那さんには黙ってもらいたいのだ。

「わかってる、礼子さんには妊娠のことは暫く黙っておくよ。それよりもこれから昼休みだから少し食事に付き合わない? この病院は設備も充実してるから職員専用の食堂なんかがあるんだよ」

「そうだな、腹も減ったし・・俺の腹の中にいるガキにも何か飯食わせないとな」

「じゃあ、行くか」

話も綺麗にまとまったようで俺たちは旦那さんの伝でここの病院にある職員専用の食堂へと向かうことにした。


35 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/05/27(日) 00:20:42.01 ID:RSAKjwo30

病院内にあるこの食堂は普通にある食堂と同じようで出された料理も見た目と普段の定食屋と同じで病院という こともあってか見た目の割にはかなりヘルシーに設定されているようでカロリー表示を見てみるとどのメニューも かなり低くて結構驚いてしまった。

「すげぇ・・どうやって作ってるんだろうな?」

「おっ? 主婦の感想か」

「バカ野郎! んなことは当たり前だ!! 産まれてくる子供の栄養管理できなければ母親になれないぞ!!」

「ハハハハ!! ここの食堂の料理は見た目の割りにかなりヘルシーにできていてね、味も申し分ないよ」

旦那さんがそう言うのでためしに一口食べてみると、かなり味もおいしくこのままお金を出してもいいぐらいだ。 そういえば旦那さんの病院で入院していたときに不味いのが定番の病院食がかなりおいしくてさっぱり薄味だったのを 覚えている。後で看護婦さんに聞いてみると確かあれは旦那さんがすべて考案したものらしいのだが、この料理にも 似たような点は多々ある。もしかしてこれも旦那さんが提案したものなのだろうか?  そういえば前に礼子先生から聞いたことあるのだが、何でも旦那さんは料理も趣味で作ったりしているらしいな。

そんなことを考えながら飯を食べているとあいつが突然旦那さんに向かってとあることを聞き出した。それにしても お前は妊婦なんだからもう少し大人しくしてほしいんだがな・・今度、日頃からバカみたいにやっている合気道を 少しだけ抑えるよう進言してみるかな。

36 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/05/27(日) 00:22:22.07 ID:RSAKjwo30

「なぁ、礼子先生って昔どんな人だったんだ?  見た感じ俺よりもかなり悪そうというか・・俺たちよりもかなり破天荒な道を歩んでいた気がするな」

礼子先生の過去か・・俺も礼子先生からある程度は聞かされたとはいえまだまだ知らない部分が多いはずだ、何せ あの超有名な暴走族の頂点に立っているんだから若い頃から並々ならぬ人間だったのだと思うな。

たちまちその話題に俺たちは興味津々になりながら旦那さんのほうに耳を傾けた。

「昔の礼子さんか、そうだね・・今の奥さんよりもかなり捻くれてて、言葉よりもすぐに力任せに物事を解決してたね」

「何だとッ!! 俺よりも捻くれてるってどういうことだよ!!!」

「・・そういった所が昔の礼子さんとそっくりだよ。今は少し大人しくなってるけど昔は真っ先に僕に切れてたね」

なんとなくわかる気がするが・・今のあいつよりもかなり捻くれてたというとすごい人間だったのだなぁっと容易に 想像できる。今のあいつでも単純なところがあるのにそれに捻くれさがつくともう大変だ、よく周りはそんな礼子先生に 付き合えたものだ。

飯を食い終えて、お茶を啜りながら俺は静かに旦那さんの話に注意を向けた。

38 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/05/27(日) 00:25:25.55 ID:RSAKjwo30

「・・でもね、捻くれている分だけ繊細だったんだよ。 礼子さんの場合は家庭にかなり問題があってその分、精神がやつれていたからね。

満足なストレスの捌け口がなくて真っ先に病気によって女体化したときは辛い現実とストレスが助長して 一時期は自殺未遂寸前までいったんだよ」

「あの礼子先生が・・――自殺?」

「俺も昔は人と群れるのは嫌いで女体化したときはかなりショックだったけど、その後にできたダチの存在が あったからそこまで思いつめたことはなかったが・・」

「・・礼子さんはそれだけ人が信用できなかったんだよ。まぁ、女体化して実の親にまで見限られてたんだから仕方ないさ」

だんだんと空気が重苦しくなってしまっていたのだが、旦那さんはすぐにそれを察していったん話を区切りると 別の話題を持ち出した。

「ごめんね重苦しい話になって。そういえば礼子さんは学校ではいい先生だった?」

「ああ・・厳しかったけど俺たちよく保健室に押しかけては相談してたな」

「お前の場合は説教だろ。俺の場合は薬とかもらったり、後は話ばっかしてたな・・ 女体化したもの同士なんか合うとこがあるんだよ」

「お前だって大して変わりないじゃないか」

「うるせぇな!」

頭に血が上って少しあいつと揉めあってしまっていると旦那さんのほうはじっと俺たちを見守りながら うんうんと頷いてこう静かに呟いた。


39 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/05/27(日) 00:27:14.50 ID:RSAKjwo30

「その様子だと礼子さんも立派に教師をしているみたいだね。・・あ、始まったようだ」

“現在、女体化は私たちの努力も合ってか徐々に解明されつつあります。 ですが一番大切なのはそれを理解する環境が・・”

「この人・・最近テレビに出ている」

「ああ、日本人でアメリカにある国連の研究所に所属してるんだっけな? 確かこの人は女体化に関してかなりの論文を出してるぞ」

突如、テレビに写ったこの女性・・確かこの人は世界的ではかなり有名な人で教科書にも載っていたぐらいだ。 確か名前が木村 徹子っていっていたかな? 前にテレビの特集でやっていたけど、この人がいなかったら 女体化の認知がここまで高くならなかったと評されていた。

この人がいったい礼子先生や旦那さんとはどういった関係なのだろうか?

「彼女も僕たちの友人だよ。それも昔ながらの・・」

「マジかよ! 確かに外国に友人がいるって聞いたけど・・」

「確かに俺は聞いたことはあったけど・・同姓同名程度しか思ってなかったぜ」

俺たちが驚きを隠さない中でざわめいていると、旦那さんのほうはテレビに映していた視線をこっちに 戻しながら何かを思い出しながら俺たちにこう言ってくれた。

40 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/05/27(日) 00:28:21.78 ID:RSAKjwo30

「僕と礼子さんに徹子さん・・3人でいろいろな壁を乗り越えてここまで来たんだ。 君たちにこの先、多分いろいろなことがあるよ」

「んなもん、関係ない!! 俺は母親業をしながら俺の行く道を究めるだけだ!!!」

旦那さんの重みのある言葉にあいつは真っ向からこう言い放った。 なんともあいつらしい力強く凛々しい言葉だ、そんなあいつに俺は惚れ込んでこうやって一緒に暮らしていこうと 思うんだろう。

そんなあいつの言葉に旦那さんは嬉しそうに笑いを浮かべながらもどこか悲しそうな目をしながらこう一言――・・

「ハハハハ!! ・・でも、君たちはあの頃の僕たちよりも十分強いよ。決して僕たち夫婦のようにならないように・・ね」

旦那さんの儚い言葉がとても悲しく・・俺たちの胸に突き刺さっていた。

42 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/05/27(日) 00:30:08.44 ID:RSAKjwo30

旦那さんと食事をして別れた後、帰りの車の中であいつがこうポツリと呟いた。

「・・なぁ、俺本当にこの子産んでいいのかな?」

「おいおい、あれだけ母親がどうのこうのって言ってたじゃないか」

突然あいつの不安を帯びた言葉に俺は驚きながらも車を走らせた。 旦那さんの前ではいっちょまえにあれだけ言ったのにいざ母親となるとこうも不安になってしまうのかと思ったりも してしまうが、今のあいつは俺たちの命を宿している。 俺は今でも十分あいつを支えているのだが、いざ一人となると2人分の重圧があいつに圧し掛かってくるのだろう。 口ではいつものように俺に偉そうに言っているあいつだがそうした事によって1人になった時の重圧から少しでも 真際らそうとしているのかもしれない・・

「今まで子供について考えたことなかったけど・・俺ちゃんとこの子を産んで立派な人間に育てられるかな?」

「・・んなもん、俺たち次第じゃねぇか。 その後とか云々言う前に今はお前のお腹にいる子供を産むことに専念しようぜ」

「お前みたいにそう簡単に考えられねぇよ! ・・でも、なんだか吹っ切れたような気がする」

車を走らせる中、俺は母親となったあいつの顔をチラッと見ると底知れぬ嬉しさと満足感に浸りながら闇で閉ざされている 夢に向かいながら車を爆走させるためにアクセルを思いっきり踏んだ・・

―fin―


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最終更新:2008年09月17日 18:54
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