39 名前:
◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/06/11(水) 17:04:19.05 ID:cNLjjolf0
男とは家族を守る盾となり・・どこかで聞いた事のあるような言葉だが、家族を持って必死に働いている俺からすると 心に重く突き刺さるのと同時に励みになると言う不思議なものだ。あらゆるトラブルを乗り越えながらこうやって幸せな 生活を謳歌している。やっている事はパッとせず刺激とは皆無ではあるが、地道にこつこつとやっているのが一番で あると時々思う、幸せと言うのは解らないからこそ幸せなのだ。
「おい、折角の日曜だってのに何パソコンと睨めっこしてるんだ?」
「明日までに企画書仕上げとかないといけないんだよ。大丈夫だ、もう少ししたら終わる」
「無茶するなよ、まだ希は赤ん坊だからな」
「わかってるよ」
あいつと結婚して半年ちょっと、ようやく今の仕事にも慣れて俺にもゆとりと言うものが出来つつある。社会というのは 俺が想像していたよりも複雑で難解だ、例え自分が気にいらないと思っている事でさえも結果として納得せざる得ない ものになるのだからよく解らない。今更ながら親父達の気持ちがよく解るような気がする・・
40 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/06/11(水) 17:05:32.20 ID:cNLjjolf0
「・・よしっ! これで完成だ」
「ま、ご苦労さん」
ご丁寧にお茶を置いてくれるあいつの姿を見るといつになく微笑ましく感じる。 結婚して半年、付き合い初めて5年ぐらいになるが未だにあいつに飽きた事は一度もない。このような年数であれば 彼女に飽きてしまって他の女に鞍替えすることもあるらしらい。だけどもあいつが俺のために一生懸命に尽くしてい るのもあるがそれに俺自身があいつを心の底から愛しているのが一番の要因であろう。それになんだかんだ言って 俺も一児の父親でもあるのだし、親としての責任と自覚を持ち続けることが大切だ。
「さて仕事も片付いたし、これからどこかに行くか?」
「そだな。っと、希がくずりだした」
あいつは慌てて希がいるベビーベッドに向かいながら、手馴れた手つきでぐずっていた希をあやしだす。最初の頃は 実家の義母が毎日のように家に来てはあいつにオムツの替えかたに赤ん坊のあやし方や泣く声の違いなど赤ん坊を 育てる上で必要なあらゆる技術を叩きこんだ。案外あいつのことだから飲み込むまでかなりの時間が掛かると 予想していたのだが、意外にもあいつは毎日家事をやっている成果もあってか素早く飲み込めたようで、ものの 1ヶ月で全てをマスターしており今では完璧にこなすことが出来ている。あいつの成長振りに俺は驚きつつも、なんだ かんだ言っても希への愛があればからこそなのかもしれないな。
41 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/06/11(水) 17:06:22.42 ID:cNLjjolf0
「それにしても子供って不思議なんだよな、よく寝る割にはたくさん乳飲むし・・」
「へー、でも子供って大体はそんなもんだろ?」
「まぁ、そんなんだけどな。母親も楽じゃねぇや」
希を抱っこするあいつを見ていると家族と言う存在を改めて実感する。思えば俺達が結婚する決定的なきっかけと なったのは希だ、大学卒業間近にあいつの妊娠が発覚してからは目の前が真っ暗で何も先が見えちゃいなかったが あいつが希を産むと決心した時は女体化というまがい物ではなく、本当の女性の強さと言うものを俺に見せつけてくれた。
それからは互いの両親との話し合い・・正直言って俺の人生上これほどまでに壮絶な経験は他にはないだろう。あれは 本当に話し合いと言うレベルではなく俺達そのものが問われた重大なものだったに違いない、今まで俺はあいつとの 関係については自分の身を固めてから改めてプロポーズしようと考えていたのだが、それがどれほどまでに愚かしく 女々しい行為と言う事があの話し合いで身を持って痛感させられる。
(あの時の俺は・・かなりバカだったんだな)
そもそもあいつの妊娠だって俺自身がもう少ししっかりすれば防げたのかもしれないし、あいつにだってあんなに苦しい 思いをしなかったのかもしれない。そんな自分のケジメをつけるために俺はあの場であんなこと言ったのだと思う。
まぁ、こんな事を今でも考えている自分が嫌になる・・
42 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/06/11(水) 17:06:48.44 ID:cNLjjolf0
「そういや、新婚旅行どうするよ? 俺達式上げてからドタバタしてたしな・・」
「ああ、確かに出産や俺の仕事やらで全然そんな暇なかったな」
よくよく考えて見ればまだ俺達は新婚旅行と言うものを経験した事がない、あいつの出産や俺の仕事などで互いに ドタバタして旅行に出かける時間が取れなかったのだ。
「もしかして行きたいのか?」
「まぁ、せっかくお前とも結婚したんだしこういう時期だからこそ済ませておきたいしな」
このような可愛らしい意見に俺が黙っているはずもなく早急に有給届けの制作に取り掛かる。 たまには全てを忘れての旅行もいいもんだと空想しながらゆっくりと筆を走らせる・・
43 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/06/11(水) 17:07:38.25 ID:cNLjjolf0
青々とした大空、照りつける太陽・・そんな絶好の天気の元で俺は家族を乗せた車を優雅に走らせる。 新婚旅行と言うより家族旅行という意味合いが強いのだが俺もあいつも希を連れて行くことには何ら異論はない、 それに子連れの新婚旅行と言うのも俺ららしくて悪くはない。それにしても高速を走り続けていると思いのほか疲れて しまう、予定の時間まで目的地まで辿りつけるどうか不安だ。
「おい、あんまりトロトロ走るんじゃねぇぞ!!」
「トロトロ走ってもないしチャンと予定通りだよ。それより希はどうしてる?」
「さっき乳あげたら寝ちまった。暫くは大人しく眠っているだろうな」
やっぱり赤ん坊を連れての長旅は少しばかり大変だ、希もそうだが母親であるあいつの健康管理は気を遣わなければ ならない。例え時間には間に合わなくとも俺が死ぬ気でやれば良いだけの話なのでそういった点に関しては何ら問題は ないだろう。運転席越しからあいつに話していると妙な空腹感と疲労感を感じ始める。
44 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/06/11(水) 17:08:17.84 ID:cNLjjolf0
「ちょっとサービスエリアに寄ってもいいか? 少し休みたいんだ」
「ああ、そういや俺も腹へってきたしな」
「んじゃ、決まりだな」
たまたま目に付いたサービスエリアに車へと寄せてそのままゆっくりとスピードを落としながらサービスエリアの 入り口へと入って空いているあいつと協力しながら駐車場を見つけて車を停める。ずっと車に缶詰状態だと疲れて くるのでこうやって定期的に休憩を挟むのが丁度良いのだ。
「さて、これから・・」
「・・・」
「寝て・・しまったのか」
助手席に居たあいつはそのまますやすやと寝息を立てており、可愛らしい寝顔を俺に見せてくれる。 どうやら長旅で疲れているのはあいつも同じのようで希の世話なので疲労がどっと出たのだろう。助手席と運転席に 後部座席の窓を風が通り易いようにある程度開けるとエンジンを切ってドアロックをすると、そのまま俺もつかの間の 休息を味わうことにした・・
45 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/06/11(水) 17:08:56.39 ID:cNLjjolf0
「・・ろ! いい加減に起きやがれ!! このドアホウが!!!」
「んぁ!! あ、あれ・・」
「ようやく目を覚ましたか・・相変わらずだらしねぇな!!」
目を擦りながらあいつの姿を確認する、どうやら俺は寝過ごしたらしい・・時計を見て見るとすでに2時間も眠って しまったようだ。
「やべぇ!! いつの間にか寝ちまった!!!」
「はぁ・・代わりに俺が運転しようか?」
「お前は免許持ってないだろ。俺がやる」
「全く、ほらよ。これでも食って残りを取り戻せ」
そう言ってあいつは手作りの弁当を俺に差し出してくれる、それに飲み物も買ってきてくれたようでその気遣いには 本当に感謝ものだ。よく味わいながら弁当を食べてお茶を飲んで一息ついた後、俺は再び車を走らせる。予定を オーバーした分だけ俺の持てる限りの時間を駆使して何とか取り戻す、あいつの弁当を食ったお蔭で何処までも 車で走りぬける自信が俺にはある。人間やる気になればなんだって出来るのだ・・
46 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/06/11(水) 17:09:46.58 ID:cNLjjolf0
思わぬ予定超過に見舞われてしまった俺であったが人間やれば出来るものでギリギリ予定の時間に間に合ったので ようやく俺にも真の休息が訪れる。
「おー、結構いい宿じゃねぇか」
「ハハハッ、前に会社で教えてもらってな」
今回の宿はホテルではなく趣のある旅館だ、ホテルでもよかったのだが希を連れての場合だと少しばかり部屋が 手狭であいつものんびりと落ち着ける事が出来ないだろう。それにこういった旅館の方が風呂も温泉なので楽だと 思うし、夜中には混浴もできるので俺にとってはかなりの好都合だし何よりも家族重視でいけれるのは嬉しいものだ。
「でも中々いい感じだろ?」
「ああ、前に修学旅行で来た時と同じ感じだな。お前の会社もいいとこあるじゃねぇか」
「あのなぁ・・」
旅館の一室でのんびりとしながら俺はお茶を啜る、車の運転で疲れてた俺にとってこうやって足を伸ばすのは非常に 心地が良い。
47 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/06/11(水) 17:10:32.88 ID:cNLjjolf0
「そういや、修学旅行の時はお前すげぇ礼子先生に怒られてたな」
「おいおい・・あれは若さ故のなんとやらって奴だよ」
「でも意外だったのが結婚式の時には礼子先生、何にも言ってこなかったな」
「そいつはどうかな・・」
意味深げなあいつを見ているとどうも知りたくなるがあいつとも礼子先生との間で何かあるのだろう、敢て聞かない のもいいのかも知れない。それに修学旅行の時は最終日の夜にとあることが原因で2人共々礼子先生からこっぴどく 叱られたのが今では懐かしい思い出の一つとなっている。 それにしても俺達がこんなことになって一番恐れていたのはあの礼子先生の猛烈なものだったのだが、当の本人は 披露宴で呆気なく俺達に祝辞の言葉を送ってくれただけで後は何も言ってこなかった。
それがかえって怖かったのだが、今よく考えて見るとあれが大人の対応なのかもしれない・・
48 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/06/11(水) 17:11:01.72 ID:cNLjjolf0
「さてと、飯まで時間はあるし・・どうするよ」
「そうだな・・折角旅館に来たんだし風呂にでも入るか?」
「温泉か、久々だから希と一緒にゆったり出来るぜ」
「ああ、俺もお前や希と一緒にのんびり出来るだけでも幸せ者だな」
「アホか・・でも悪くはないぜ」
そう言ってあいつは希を抱っこするのを確認すると俺も立ち上がって一緒に温泉のある場所へと向かう。 温泉と言えば混浴は勿論ついているのは世の常だ、会社で教えてくれた先輩の言う事ではこの宿の温泉はすこぶる 効能が良いらしく病を和らげてくれる等の成果が出てきている。それにああ見えてあいつは俺に弱みを見せるはずが なく、日頃の主婦業で溜まりに溜まった疲れが体中に蓄積されているはずだ。きっと温泉に入ったらそれらの疲労も 吹き飛んでしまうだろう。
様々な思惑が入り混じる中で脱衣所にたどり着くと俺は衝撃の光景を目にする事となる。
49 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/06/11(水) 17:11:22.81 ID:cNLjjolf0
「えっ、混浴が・・ない」
「最近はんなもんだろ。何ガッカリしてるんだよ」
「い、いや別に・・」
「そうか、んじゃお先に行かせて貰うぜ」
「あ、ああ・・気をつけてな」
希を抱っこしながら軽やかに足を勧めるあいつとは対照的にもう少しここの宿について調べるべきだったと 失念してしまう俺であった。
50 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/06/11(水) 17:12:44.65 ID:cNLjjolf0
「俺とした事が・・」
温泉につかりながらも今日の事を思い返す、考えて見ればここの宿の事もそうだが俺があの時に寝過ぎさえ しなければギリギリでつく事もなかったはずだしもう少し余裕も持って行動する事さえ出来たはずだ。 ま、だけどもいくら悔やんでもしてしまった事は仕方がない、これからあいつや希とどのように楽しく旅行が出来るのか さえ考えればそれだけでいい。
「ま、悔やんでも仕方ねぇな。これからは面白おかしく・・」
「これから面白おかしく・・か」
「ん? 誰だ・・あっ、これは下山商事の小林部長」
「確か前にうちの会社に営業に来てくれた・・平塚物産商事の中野 翔君だったな」
突然俺の隣に話しかけてくれた人物、それはいつも取引先でお世話になっている下山商事の小林 一樹部長その人で あった。50代ぐらいの見た目とは裏腹に実年齢はおそらく定年間際なのだが、この人は営業マンとしては本当に 凄いもので当時では珍しい様々な商品アイディアやプロジェクトを成功させて下山商事に多大なる利益をもたらした 人物である、本業である営業の方も無理難題な契約を結ばせてきたものとお見受けしている。
だけども人間性と聞かれたら間違いなく嫌いな部類に入る。どうも俺らみたいな人間を常に見下していそうでいけ 好かない、それにこの人の背後関係にも色々と黒い噂が耐えない人だ。
51 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/06/11(水) 17:13:20.53 ID:cNLjjolf0
「この前はお世話になりました」
「・・ま、双方の会社にそれなりの利益が齎せたわけだから結果としてはそれでいい」
「今日はどうしてここに・・?」
慎重に言葉を選びながら俺は部長と会話を進める、仕事ならまだしもプライベートでこの人と会話するのは 正直言って非常にきつい。だけどもこの人の勤める会社にはかなりお世話になっているし無視するわけにもいかない だろう、昔だったら即座にシカトして無断で湯船から立っていてたのだが・・今はそれができない。こうしたちょっとな 礼儀を欠いてしまうと俺の会社での立場、将来は勿論のこと家族の将来にも大きなヒビが入ってしまう。
「・・プライベートだ」
「そうですか・・」
老人と会話をする上でこの間が非常に辛い、出来ることなら早く部屋に戻りたいぐらいだ。
52 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/06/11(水) 17:13:51.80 ID:cNLjjolf0
「さて、悪いがここで失礼させて貰う。歳を取ると余り無理は出来ないのでな」
「はい。お話にお付き合い頂きありがとうございます」
「・・プライベートだと言ったはずだ」
「あっ――ッ!」
「では、またの営業で会おう」
水面が静かに音をたてる中で部長は湯船から立ち上がると、そのままゆっくりと去っていった。自分では言葉を選んで 話したつもりでも部長にとってはいい物じゃなかったのだろう。それにあの人に目をつけられると悪い方向へ進むと 噂では聞いている、先輩でさえも部長と仕事をするときには神経をかなり使うと俺に愚痴をこぼしてきた事もあった。
こうなってしまえば後は運は天のみぞが知るって感じだろう・・
「・・折角、大企業の平塚グループ傘下の会社に就職できたのにな」
ちっとも気持ち良くなれないまま俺は湯船から立ち上がった。
53 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/06/11(水) 17:14:40.24 ID:cNLjjolf0
あれから何とか平静を保ちつつ俺は希を連れて上がってきたあいつと一緒に部屋に戻って用意された夕食を摘む。 だけども心なしか余り食が進まない、そりゃあんな事があったんだから仕方ないがいつまでも気にして入る自分が どうもアホらしい・・
「ん? どうした、さっきから全然食ってねぇな」
「あ、ああ・・車の運転とかでちょっとな」
「んじゃ、お前が食わねぇんなら俺が全部貰っちまうぞ!!」
「おいおい、腹壊すなよ・・」
「んなことしねぇよ!」
いつものあいつを見ているとどこか心が落ち着く、そう思ってくると何だか自然と食欲が湧いてくる。 やっぱり俺はこいつと夫婦になれて本当に良かったと思う、自然と箸を掴むと俺はいつものように食べ始めた。
「おっ、何だ結局食べるのかよ」
「やっぱりこんな豪勢な料理食べねぇともったいないからな!」
「アホ、希もこんな父親持って幸せなのやら」
何気ないやり取りの中こそが幸せなのだ、食事を進めながら俺はまったりとこの幸せな時間をゆっくりと過ごしていった。
54 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/06/11(水) 17:16:10.04 ID:cNLjjolf0
夜、希もすっかりと眠って俺達も明日に備えてゆっくりと眠る。流石に夜の営みはあいつの体調を考慮すると 余り無理な事は出来ない、前に子供をもう一人増やすかとあいつに相談した事もあったのだがあっさりと却下された 覚えがある。
女体化がなくなった今、色々な事を話し合って希にはあいつの女体化の事は心の整理が出来るぐらいまで黙って おくことにした。希が大きくなればなるほど心の重荷は増えてしまうのだが、それでも俺達の子だからそれに賭けようと 誓い合ったのだ。まぁ、俺のワガママとしてはあと一人ぐらいは子供が欲しいのだがどうやらあいつの意見はどうも 違うようだ。
「なんだかんだで大人になったつもりでもまだまだガキだな・・」
これから我武者羅に働き続けながらあいつと希を養い続けるのは良いのだが、こんな事をいつまでもウジウジと考え 続けている自分が恥ずかしい。
55 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/06/11(水) 17:17:43.27 ID:cNLjjolf0
「・・んなことねぇよ。お前は立派な俺の旦那様だよ」
「起きてたのか?」
「さっきからお前が横からグダグダと泣言いってるから目が冴えちまったんだよ」
まさか横で寝ていたあいつにまで聞こえてしまうとは思わなかったが、あいつらしいといえばあいつらしいと言うべき なのだろう。
「・・風呂にでも行くか。希は寝つきがいいから朝まで眠っているはずだ」
「ああ、でもここは・・」
「別にこんな夜中に好き好んで起きようと言う奴はいねぇよ。解ったんならさっさと行くぞ」
「わかった」
そうだ、あいつは誰よりも俺の事を理解してくれている事をすっかりと忘れていたようだ。夜空が広がる中で俺と あいつはゆっくりと脱衣所に着くと、最低限の準備を済ませて一緒に女湯の方へと向かっていく。既に夜中では あったが、あいつと一緒に湯船に漬かっていると温かくってとても心地よいものだ。
57 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/06/11(水) 17:18:25.60 ID:cNLjjolf0
「ふぅ、やっぱり温泉はいいもんだなぁ」
「まさか2度も入る事になるとはな」
「バーカ、温泉ってのはいくら入ってもタダなんだよ」
「お前らしい意見だな」
夫婦揃ってのんびりと温泉に漬かるなどあまりない機会だ、のんびりと俺に寄り添っているあいつを見ていると 待ったりとした気分になる。さっき温泉に入った時は落ち着けられるものも落ち着けられなくなってしまうもので 衝動に駆られてしまうが何とか理性でぐっと堪える。それにしても俺の世迷い事がもろにあいつに聞かれてしまって いたとは喜んで良いのか悲しんで良いのか少しばかりよく解らない。
本当なら文句ナシに幸せと呼べれる状況なのだが男としてのプライドがそれを邪魔して中々素直に喜べないものだ。
「それにしても風呂から出た後のお前は腑抜けてたな」
「おいおい、あの時はちょっと疲れただけだ。別に腑抜けてなんか・・」
「ま、何があったかはわからねぇがそう言う事にしてやるよ」
温泉に漬かりながらにんまりと笑うあいつを見ながら俺はゆっくりと明日の予定を組み立てて行くのであった・・
-fin-
最終更新:2008年09月17日 19:03