『礼子先生』(8)

43 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/12(火) 06:14:07.65 ID:0y/Go+0L0

夏休みの間は昼間は病院で手伝い、夕方にはスーパーへ買いだしに行き彼が夕食を作るという半共同生活が続いた。時には喧嘩もしたり 時には協力し合いといった生活が続いた。撤兵のほうも必死に頑張っているらしく最初みたいに臓器のレプリカに臆することもなく彼と一緒に 医療の手伝いをしている。私もあれ以来ちょくちょくではあるが子供たちの相手をしている。

私は以前よりは充実した生活を送っていた。

そして今日も日ごろの業務を終わらせ私はそのまま着替えるとそのまま彼と撤兵の帰りを待った。今日の買出し当番は撤兵と彼であったので 私はそのまま2人の帰りを待つことにした。奇しくもジジィと2人きりであったので私はそのまま警戒を続けながらそこらへんに転がってあった本を読んでいた。 するとジジィのほうがいきなり私に話しかけてきた。

「そういや・・進路は決まったか?」

「いや・・」

何かと思えば進路の話か・・確かに以前よりかは充実した生活を送っていたが私はいまだに自分の道筋を決めていなかった。こう充実した生活を送ったってこう進路が決まらなければ 何も意味すらなかった。

「あの2人はそれぞれの目標にきちんと進んでいる。・・そういや前に泰助が言ってたな“教師が似合う”と・・」

「だから何だ。・・それに俺は教師って面じゃない」

俺はそのまま本に視線を戻した。確かにあの時・・彼は私には教師が似合うと評価してくれたが、当時の私はそこまでまともに受け入れられるほどの喜びがなかった。確かに評価してくれることは うれしかったが、いざ現実を向き合ってみると私はそこまでの技量があるかはわからなかった。それにむしろ、元ヤン上がりの人物など雇ってくれまい。漫画や創作の世界があるまいし・・

そう私が思っているとジジィはそんな私の思っていることを見透かしてるかのように私にこう告げてきた。

46 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/12(火) 06:35:14.94 ID:0y/Go+0L0

「諦めてどうする。そんなことはわからんだろう?・・確かにこの世の中、そうそう簡単にはいかんだろう。だが、逆に考えればお前の行動次第では 叶うかもしれんということじゃ。この世の中・・何が起きるかわからるまい」

「だったらどうだって言うんだ!!・・確かに俺は未来の自分なんて知ったこっちゃねぇ!!それに・・自分自身がそれに見合う能力を持ち合わせて いるかさえもわからねぇんだ・・」

そういって私はジジィを睨みあげた。するとジジィはやれやれといいながら机の引き出しからとある薬を私に渡してくれた。・・青酸カリだ。あの時私がここから 勝手に持ち出して自殺未遂を図ったのと同じ薬であった。

「・・そこまで絶望しきっているのならこれをやろう。飲めば一発でこの世とおさらばできるぞ。わしも医者の端くれじゃがそれをとがめるほどの優しさを持ち合わせて おらんのでな。この世の中は厳しいもんじゃ。だけどそれに見合ったものも同時に得られる・・ただわしが言いたいのはそれだけじゃ」

そういってジジィは再び机に着きカルテを書き始めた。私は中身の入った青酸カリを見ながらあのときの光景を思い出していた。あの時はもう絶望が体の隅までに 充満しきっており心身ともに疲れきっていた。もう、楽になりたい・・そう思いながら薬を飲もうとすると彼が私の部屋にやってきた。そして私の中には不思議と今までの疲れが取り除かれ再び死への恐怖感が 蘇ってきた。私は・・先の見えない自分自身の進路に不安していた。本当に自分に見合った仕事ができるのだろうか・・本当に自分自身を満足させて人を活かすような仕事ができるのだろうか?だけど、もしそれが原因でさらに自分自身を 傷つけてしまったら・・私は果たして耐えれるであろうか?

私は・・青酸カリを握り締めるとジジィの元へと歩み寄った。

「返す・・ちょっと外で吸いにいってくるわ」

「そうかい・・」

私はそのまま青酸カリを机に置くと診療所の外へと出た。

47 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/12(火) 06:48:53.77 ID:0y/Go+0L0

私は再び外でタバコを吸うとさっきのことを考えていた。教師という職業が本当に自分に見合っているのか・・そして私は本当にそれを全うに こなせるかどうか・・不安で不安でならなかった。何せ、今の自分自身がこういった不安定な部分満載であるため。人に教えることのすらできるのか不安で仕方なかった。 そう思えば思うほどタバコの本数は増えに増え続けていた。

「自分の将来か・・」

私はそのまま外でタバコを吸っていると、どこからと私を呼ぶ声が聞こえていた。私は声の方向に振り返ってみるとそこには大量の食材を持った撤兵と彼が買出しから帰ってきた。 2人はそのまま私の姿に気がついたのか歩み寄ってきた。

「おう、冷夏・・何してんだこんなところで?」

「あ、ああ・・ちょっとな」

私は撤兵に心配はかけまいとそのままはぐらかしながら今日の夕食のメニューを聞いてみた。

「そういや、今日の夕食は何だ?」

「ああ、今日は肉がかなり安かったからカレーだ。早く来ないとみんな食べちまうぜ」

「そうか、後で手伝う」

そう撤兵に言うと、撤兵は意気揚々としながら中に入っていった。すると、私の表情に気がついたのか彼があの時の話題を振った。

49 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/12(火) 07:12:28.72 ID:0y/Go+0L0

「不安なんですか・・自分自身の進路に」

「チッ・・なわけねぇよ」

私は必死に否定した。私は素直になりきれない自分の心が少し恨めしかった・・ すると彼のほうが私の心情を見越したかのようにこう語りかけてきた。

「誰だって自分自身の進路には不安なもんですよ。僕だって自分の進路には不安です。・・だけど、自分の夢を叶えたいから僕は今もこうして 勉学の励んでます。・・夢を叶うためなら誰の保障もいりませんよ。自分自身のことは・・ほかならぬ自分自身しかわかりませんからね」

彼はしっかりと自分の進路を見据えていた。その瞳には私のように不安で曇らせてはいなく、その先のことを見据えているような視線であった。 そして彼は自信たっぷりにこう言った。

「僕は・・医者になりたいです。・・でなければ僕の中のあの人の死が無駄になります」

(あの人・・?)

彼は小声でポツリと何かを言った。だけど私はそんなことよりも彼の力強さが目に染みた。彼は私よりも強く、大きく、たくましく・・自分の道筋を誰にも頼らず自分で決めて しっかりその道を歩んでいた。

そして彼は私に励ますようにこう言って来た。

50 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/12(火) 07:20:12.40 ID:0y/Go+0L0

「礼子さんも・・頑張ってください。僕はあなたを応援します。礼子さんなら・・絶対に教師になれます」

「そんなこと――ッ!!」

「・・“わからない”っと言いたいでしょう?確かに僕たちのことなど誰もわかりません。・・だけど、わからないなら僕たちで事実を作ればいいじゃないですか?」

正直、彼の言っていることはわからなかった。だけど・・その厳しさには常に優しさがあった。

「・・僕だって、医者になれるかどうかはわかりません。だけど、こうやって努力しながら目指しています。・・礼子さんもできるはずです。なんたって礼子さんは僕より頭がいいですからね・・ 礼子さん、頑張りましょう。同じ将来を目指す同志として・・」

「同志・・・か?」

51 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/12(火) 07:20:38.00 ID:0y/Go+0L0

彼の言葉は私の迷いを消すことと同じ意味合いがこめられていた。かって撤兵に言ったその言葉・・今はこうして私に向けてくれる。私はうれしくてならなかった。 それと同時に私には不思議と先ほどの不安が消え去っていった。そして、自然と教師への意欲が高まってきた。“自分ならなれる!!”そう思えて仕方なかった。私は・・教師への道へと 目指そうと決意した。この世の中・・何が起こるかはわからない。ならこの世の中に私自身を嫌というほど強調しきってやろう。

「俺・・教師になってみるぜ」

「フフフ・・頑張ってください!!僕もあなたの意欲に負けないように医者になりたいです」

「フンッ、途中でイモ引くんじゃねぇぞ」

「おい、てめぇら!・・早く中に入れよ」

「お、悪い悪い・・」

待つのに我慢できなかった撤兵がこちらにやってきた。私は彼と一緒に診療所の中へと戻った。 ・・思えばさっきのきっかけとこの激励の言葉がなければ私は二度と教員の道を歩むことがなかったのかもしれない。だからこの日と私は忘れない

“教師になろうと決意したこの記念すべき日を”

202 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/13(水) 10:23:45.81 ID:rKHcgrRm0

進路と目標も決まった私はあれ以来充実した生活を送っていた。といっても学校や普段の生活は変わっていないが とりあえず学校へ行く理由はできている。学校へ行く理由すらなかった以前の生活よりかは遥かにましだ。といっても学校での生活は 余り変わっていない。まぁ、あと数ヶ月で卒業だからあんまし未練がなかった。

こないだの進路の話については担任のお墨付きをもらった。

「そうだ、いいこと考えた。どうせならもっと上の大学を目指しなよ」

っと言うことらしい。どうも私の成績は学年の中でもかなり秀でており逆にもっと上の大学に受けないのかという疑問が逆に投げかけられたほどだ。 まぁ、上の大学にいってもやることはどっと増えそうなので当初の志望していた大学へ受験すると担任に伝えた。担任のほうも一応納得はしてくれたのだが もう少し頑張ればいいんじゃないか?っと言ってくれた。それに大学のお金のことも考えなければバイトしないと非常にまずかった。受験の費用もかなりかかるわけだし 蓄えである貯金のほうもそれを差し引いたら余りいい生活ではなかった。私は進路の話を終えるとすぐに求人雑誌を手に入れるとバイト先を見定めた。

だけど・・そこまで簡単に見つかるほど世の中は甘くなかった。

「チッ・・夏休みは何とか食いつないでいけたが今度はそうはいかんな」

私は部屋で求人雑誌を読みながら割りのいいバイト先を探していた。新聞配達もあったのだが、早い割にはあまりいい時給ではなく却下。ほかにもファーストフードやコンビニなど さまざまなバイト先がずらりと並んでいたのだが、あまりいいものが見つからなかった。夜の仕事も一瞬だけ頭がよぎったのだがすぐに却下した。

そんなことを考えていると私の部屋にノックの音が響いた。

204 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/13(水) 10:38:17.29 ID:rKHcgrRm0

私は無視しようと思ったのだが・・余りにもしつこいので出てみるとそこには彼が立っており、何の用かと聞いてみた。すると彼が私に ぴったりのいいバイト先を教えてくれた。

「あ、実はいいバイト先がありまして・・家庭教師なんてどうです?」

「家庭教師ぃ~」

はっきり言ってかなり驚いた。やはり教職を目指す私にとっては家庭教師はいいバイトだが・・なぜそこまで親切にしてくれるのだろうという疑問も残った。 もしかして・・足長おじさん?

まぁ、そんなくだらないことを考えていると彼がさらに説明を続けた。

「実は、患者さんの中に小学生の子供を持つ人がおられまして・・その人、遠くの病院へ長期入院するらしくてその間にお子さんの家庭教師を探していた らしいんですよ」

「んで、なんで俺だ?」

「だって礼子さん・・教師になりたいって言っていたじゃないですか?話は既に通しておりますので・・はい、これ住所」

「お、おい!!勝手に・・」

既に物事は私がいない間に進んでおり、私は断る間もなく住所が書かれた紙を手渡された。それに紙によればお金は結構高額なものだった。受験費用を 差っぴいても当分は生活できるほどの額であった。仕事がない人間にとっては喜ばしいものではあるが、だけど・・勝手に私がいない間に物事が進んでおり、なおかつ私自身の 承諾がないことに関しては怒り心頭だった。

206 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/13(水) 10:48:17.71 ID:rKHcgrRm0

「おいッ!!いくら紹介してもらったといってもな、俺の承諾なしに勝手に物事を進めるんじゃねぇよ!!!!」

「・・それは謝ります。だけど、僕は貴方に頑張ってもらいたいんですよ」

そういって彼は少し苦い顔をしながら考え事をしていた。確かに勝手に物事を進められたのは腹が立つが、でも割のよかった仕事が なかったのも事実・・私は少し考えて決断を下した。

「・・いつ行けばいいんだ?」

「引き受けてくれるんですね。え~っと・・明後日の放課後にその住所に書いてあるところに行けばいいですよ」

彼は再び笑顔になり、私の返事を喜んでいたようだ。私自身も納得がいかなかったが、このまま迷っていると生活もきつくなるし暮らすのも 大変なので家庭教師を引き受けることにした。

「ま、踊らされたのには納得がいかないが・・職がなかったのも事実だ。その代わり、てめぇは俺の分の飯も作れよ!!俺、料理はできねぇんだから それぐらいはいいだろ!!」

「はい、いいですよ」

「よし、商談成立だ」

私は彼に今後の夕食を作らせる約束を取り付けると家庭教師を引き受けた。

242 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/13(水) 17:29:29.60 ID:rKHcgrRm0

そして当日・・家庭教師を引き受けた私は紙に書いてあった住所の家へと向かった。家は私の家から結構遠くてバイクで1時間ぐらいかかった。 家のほうだが結構堂々とした一軒屋でありみたところ2階建てであった。彼によると、この家の母親がとある病気で入院するらしくその子供の家庭教師を 私は引き受けることになった。まぁ、学校にはちゃんと行っているらしいのだが・・なぜ家庭教師を利用するのかはわからないものだ。

そんなことを考えながら私は家のインターフォンを押した。

インターフォンを押して数分後・・家からは小さな女の子が私を出迎えてくれた。女の子は小学校5,6年生ぐらいの年齢でまだまだ発展途上と思わせるぐらいの体つきであった。 それにあまり活発そうではなく、とても物静かそうな雰囲気であった。女の子は私を見るや否やすぐに家に案内してくれた。家の中に案内された私は家内を見回してみたがこの子以外に 家の人は見当たらなかった。私は女の子の部屋と思わせるところに案内された。

「え~っと・・俺いや私があなたの家庭教師になった礼子です」

「・・あの、堅苦しくやらなくていいですよ。私は麻耶です。元男性というのは母から伺っています」

私は一応、口調は女らしくしてみたのだが話が伝わっていると聞くと素に戻った。麻耶と言った女の子はやはり物静かそうな外見に似合って口調のほうも淡々としたものであった。 まぁ・・よく言えば大人っぽい素直な子っと言ったところだろうか?でも・・子供なら子供らしくもう少し活気さがほしいところである。

「おっ、そうか・・まぁ、よろしくな」

「はい、よろしくお願いします」

互いにお辞儀をすると早速、私は麻耶の勉強を見ることにした。

243 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/13(水) 17:49:50.37 ID:rKHcgrRm0

私はまず、麻耶の学力を見るためにノートに適当に問題を書いてそれを麻耶に解かせた。まぁ、問題といっても小学校レベルのものであり、私たち 高校生なら簡単に解けるものだ。私はノートを麻耶にわたすとそのまま適当に部屋でくつろいだ。

「まぁ、問題っていってもあんまり難しいもんじゃないからな」

「はい。頑張ります」

麻耶は非常に大人しい子だった。与えられた問題を黙々とこなしていた、今の子供にしては結構珍しかった。 そして・・数分してからか、麻耶が私にノートを差し出した。

「早いな・・んじゃ、採点するからその間に学校の宿題でもぱぱっとやっちまえ」

「はい」

そういって麻耶はカバンからノートを取り出し学校の宿題に取り掛かっていた。その間に私はノートに問題の採点を始めた・・ 結果はというとほとんど正解であった。間違えがあったとしても単純なケアレスミスばかりであったので実質上、100点に近かった。でも、採点しているときに ある疑問が生じた。麻耶は取り入って頭の悪い子ではない。むしろ、成績優秀といった感じだ。そんな子がなぜ家庭教師などを必要とするのか・・

そんなことを考えていると麻耶が私に宿題を突きつけた。・・どうやらわからない問題があるらしい、私は採点の途中だったが麻耶に対応した。

「あの・・ここはどうやって解くのでしょうか?」

「え~っと・・ここはこうやってこうしたほうがわかりやすいぞ」

私は丁寧に麻耶に宿題の問題を教えてあげた。麻耶もわかったのかいそいそと宿題に答えを書き込んでいた。こうして、数分間・・私は家庭教師としての役目を きっちりと果たしていた。

244 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/13(水) 18:05:56.01 ID:rKHcgrRm0

そして、契約の時間である午後9時過ぎ・・私は帰宅の準備を始めた。麻耶とは5時から9時までの4時間契約だったので私は 帰る準備を始めた。しかし・・時刻は9時近くになったのに麻耶の父親が帰宅する気配を見せていない。いくら仕事が忙しい 人間だとしても母親が入院しておりこんな時間までに娘を1人、家に放ってはおくまい。なぜ、こんな時間までに娘1人を家に 残しているのだろうか?

「じゃ、俺は帰るわ。・・お前はこんな時間1人でいて大丈夫なのか?」

「・・ええ、ご飯も私1人で作っていますし」

「・・そうか、じゃあな」

そういって私は麻耶の家を後にした。しかし、私は麻耶の寂しそうな顔がなかなか脳裏から離れなかった。私はそのままバイクで麻耶の家を 後にした。

そして部屋に帰った私は驚くべき光景を目にした。何と私の机の上には豪華な食事がずらりと並んでいるではないか!!普段は質素なコンビニ弁当しか 食していない私だが、部屋中には今のもおいしそうなにおいがたち広がっていた。私がご馳走に夢中になる中、彼が台所からひょっこりと姿を現した。どうやら 約束を果たしてくれたらしい。・・それにしてもまさかこんなにたくさんあるとは

「あ、お帰りなさい。ついでなんで僕の分も作ったんですよ。さ、食べましょ」

「あ、ああ・・」

たくさんの食事に驚く中、私は彼と一緒に食事に箸をつけた。

246 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/13(水) 18:21:10.15 ID:rKHcgrRm0

「うめぇ・・」

「お口にあってよかった」

たくさんの食事はどれをとってもおいしいものばかりであった。前にも彼の料理を堪能した私だがここまでたくさん食べたのは始めてであった。 彼の料理はどれも温かみがあり、ぬくもりが口いっぱいに広がった。そして私たちは食事をしながら今日1日を振り返った。彼は早速、今日の家庭教師について 聞いてきた。

「相手のほうはどうでしたか?」

「ああ・・これといって問題はなかったな。それに、あんな学力さえあれば家庭教師なんていらんだろっと思ったな」

私は麻耶の学力について彼に話した。麻耶は家庭教師が必要ないぐらいに頭がよかった。それにとても大人しい子だったしこれといって問題なんて 見当たらなかった。だからこうして私に家庭教師なんてつけるのだろうと疑問でならなかった。

247 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/13(水) 18:21:35.39 ID:rKHcgrRm0

「麻耶は見た感じだと、とても大人しそうな子だったな。それに・・性格上の問題なんて全然なかったし。強いていえば・・両親が全くいなかったってことかな? 母親はともかくとして父親がこの時間になっても帰宅しなかったのはおかしいと思ったな」

「そうなんですか・・確か母親のほうは一回話したことがありますが、なんだか精神的に参っているようでしたね」

「・・そうか」

私は彼の食事をつまみながら麻耶の両親について考えた。もしかしたら、麻耶は寂しいのかもしれない。両親にあまり構われずに1人でずっと家の中で過ごしているのかもしれない・・ だから帰るとき麻耶の寂しそうな顔が思い浮かんだのかもしれない。

「そんなことよりも、お前は俺が家庭教師している間にちゃんと俺に飯作れよ!!1日でもサボってたらただじゃすまねぇぞ!!!」

「わかってますって・・約束ですからね」

「絶対だからな!!」

私は彼に改めて約束を再認識させるとそのまま彼の作ったご飯を食した。


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最終更新:2008年09月17日 19:15
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