『礼子先生』(11)

205 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/18(月) 17:17:18.33 ID:0a4pQahS0

(想いは伝えておけ・・っか、簡単に言いやがって)

私はさっきのジジィの言葉を考え込んでいた。この溢れ出す彼の想いを彼に伝える・・確かに簡単なことだ。なぜならこの想いを彼に 伝えればいい。だけど・・それだと、必ずしも何らかの形で撤兵と揉めるだろう。もしかしたら、もう今までのような友人関係が築けないぐらいに やばいものとなるであろう。だから今の私は覚悟をつける期間がほしかった。

・・恋と友情の決着をつけるために

だけど、なかなか決着がつけれないまま私は大学1年の生活を終えた。そのまま大学2年生となり本来なら晴れ晴れとした気持ちに なるのだが、未だに恋と友情の決着をつけていない私はそういった進級の結果を快く受け取れなかった。あれから2人とはちまちまとしか 連絡は取り合っていない。特に撤兵とは相変わらず気まずい雰囲気は続いている。まだこれといって大きな衝突はなかったが、もういつ 起こってしまうかもわからない。彼には時々、夕食を作ってきてもらう。2人きりで部屋にいるが想いを打ち明けれていない。いつも伝えようと決意するが 私の心の中でブレーキがかかってしまう。

・・撤兵ともめてしまうから?

いや、多分彼に振られるのが怖いから・・そんな恐怖心が私のブレーキとなっていた。

そんな気持ちのまま私はいつものように大学で今日の講義を終えそのまま帰ろうとしたのだが・・突然、講義の先生から話があるからといわれて 呼び出された。

212 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/18(月) 17:43:33.16 ID:0a4pQahS0

「・・養護教諭ですか?」

「うん、君にぴったりだと思んだ」

講師の先生からの呼び出し・・それは私に養護教諭になってみないか?という話であった。養護教諭というのはいわゆる保健室の先生がなることの多いものであり、一般の教師とは違って 通常の授業は一切行わず、性教育やらそういった子供の将来にかかわる大事な部分を教える教師のことだ。 それにこの先生は今までにも数多くの教師を学校に輩出したことでも有名なベテランの教諭であった。それ故に子供の心理状況にも人一倍長けていた。講師の先生は さらに話を続けた。

「・・あの、なんで私に?」

「養護教諭については君も知っていると思う。・・最近は女体化については私の頃に比べたら法整備も十分に整ってきた。だが、未だに多くの差別と問題を根強く残しているのもまた事実だ。 いくら法が整っていたとしても世間的には認知されていない部分もある」

先生の言っていることは事実だ。今までに習ったことであるが女体化はある日突然発症することが多い。その時期によって学校側はその児童にそれ相応のケアを施さなければならない。 だけどそれは簡単なことじゃない。周りの環境やほかの児童の人間関係などをすべて把握して適切な処置を考えなければいけない。今までに日の影を見ていた養護教諭であったが、最近になって ようやく注目されてきていた。

だけど、私は先生の話を聞くたびに大きな不安が宿ってきた。それは・・

213 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/18(月) 17:53:03.13 ID:0a4pQahS0

「あの・・私成績が悪いんですか?」

そう、養護教諭は些細なことで人間関係に大きく影響を与える職業であるため、教育学部の中でも余り選択する人がいないのが事実であった。だから私は成績の悪さから養護教諭に無理矢理選択させられた のかと思った。だけど、先生はそんな私に笑いながらこう答えてくれた。

「ハハッハ・・そんなことはない、むしろ君は生徒の中でも特に優秀だ。だから、君に頼みたいんだよ。私が見たところ君は非常に人を見る目がある、それにその環境に溶け込む適応力があると私は 思っている。それに君自身・・女体化していると聞いた。だから頼みたいんだよ・・女体化に悩んでいる生徒たちを救えるのは君かもしれない。

・・まぁ、私個人の考えで君の進路を勝手に決め付けるのは良くないことだ。君自身もちゃんとした目標があるだろう、もし養護教諭になる気があれば私のところへ来てくれ。 無論、君自身の意見を私は尊重するよ」

そういって先生は私の元から立ち去った。私は帰り道、先生の話が気になってしょうがなかった。養護教諭・・その役目は児童の精神的なケアやほかの一般教諭が解決できない人間的な問題まで 幅広く扱っているものだ。だけど、それは人の気持ちを敏感に察しなおかつ適切な処置を施さないといけないものだ。それに、今の私は人間関係に大きく悩んでいる。恋をとるか友情をとるか大きく迫られている。 そういった環境の中、養護教諭になれるはずがない。むしろ、誰かの手を借りたいぐらいであった。

(養護教諭か・・人間的な経験がものを言う職業にこの俺がなれるかっての・・)

私は先生の言葉を考えながら部屋へと戻った。いつものように部屋の中に入るといつもは何もない机の上には数え切れないぐらいの豪華な料理が並んでいた。

214 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/18(月) 18:09:54.20 ID:0a4pQahS0

机の上にある豪華な料理・・それを作れる人物といえば私の知る中でたった1人しかいない。その人物は、私が帰ってくるのをみると すぐに出迎えてくれた。

「あ、お帰りなさい。待ってましたよ」

「お、お前・・今日は来れないんじゃなかったのか?」

そう、彼は今夜は撤兵と出会うはずであった。今日はいつものように電話したら目の前にいる当の本人が私に電話に断りを入れたはずであった。 なのになぜ・・こうして撤兵との約束を振り切って私の部屋にのうのうと料理をしているのだろうか?

「お前・・撤兵はどうしたんだよ?」

「・・・やめました。なぜかわかりませんが・・無性に礼子さんに会いたくなったんですよ」

しかし、今だの感情の整理がつかない私は思うような言葉が出てこなかった。

215 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/18(月) 18:10:52.08 ID:0a4pQahS0

「・・何してんだよ、こんな所で」

違ウ・・

「・・お前ッ!!撤兵が・・撤兵がどんな気持ちで誘ったかわかってんのかッ!!!!」

違ウ、違ウ・・

「それを・・俺なんかのために・・俺なんかのために!!!!」

違ウ違ウ違ウ・・・・・・言イタイノハソンナコトジャナイ・・ タダ・・タダ、コノ想イヲ伝エタイダケナノニ――ッ!!体が・・心が邪魔して思うように伝えられない。

・・言イタイコトモ伝ワラナイ

そんなの・・          そんなの・・

                        絶対ニ嫌ダッ!!!!!!!!!!!!

218 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/18(月) 18:28:16.87 ID:0a4pQahS0

「ハァハァ・・」

私はすべて言い終えるとそのまま虚脱してしまい、ヘナヘナと地についた。 モウ・・終ワリダ、コンナ想イナンテ捨テテシマエ・・

そう想いながら私は脱力した。きっと、これで良かったんだ・・自分でそう言い聞かせていた。所詮、恋と友情なんてくだらないものなんだ。 これで・・いいんだ。素直に2人の前から身を引こう・・

私はそう想いながらそのまま地にへばりついていた。

「言いたいことは・・それだけですか?」

「え?」

私は顔を上げるとそのまま彼の顔を見た。すると彼の表情はいつもよりも凛々しく・・男の顔つきとなっていた。やばい・・そんな顔で見られると 捨ててしまいたい想いがなおさら蘇ってしまう。それぐらい・・あのときの彼はかっこよかった。

「顔を上げてください・・」

私は彼に支えられながら力の抜けていた体をようやく動かした。たくさんの料理が並ぶ中・・それとは対象てきに私たちの空気はとても重たく 静かなものであった。

・・そして、その重たい中で彼が口を開いた。

219 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/18(月) 18:43:20.27 ID:0a4pQahS0

しんみりとした空気の中で彼は重たい口を開いた。

「・・徹子さんも何度も僕を誘ってくれました。そして今夜も誘われました。“大事な話がある”っと、始め僕はそれに応じようとは 思いました。けど・・なぜか、脳裏に礼子さんのことが強く浮かんできて・・そして途中で足を止めました。徹子さんはの方はなんで?と言った顔を していました。さらに僕は徹子さんにこう言いました」

“ごめんなさい・・と”

「徹子さんのほうは・・泣いていました。そして僕にこう一言・・」

“あいつが・・お前は冷夏がいいのか・・・”

「・・僕はその問いにしばらく考えました。そしたら、不思議と今までのことがリフレインされてきたんですよ。それも礼子さんのことばかり・・そのときに僕は 改めて思いました。

“礼子さんが好きだと・・”」

「―――ッ!!」

私は驚いた・・もう、これといってもいいぐらいの驚きだ。まさか・・まさか・・目の前にいる彼が私を想っていたなんて・・ この私を好いてくれていたなんて・・

そして彼の独白は続いた。

234 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/18(月) 19:21:01.21 ID:0a4pQahS0

「そして・・徹子さんに向けて黙って首を縦に振りました。その時の徹子さんの表情は・・涙の中で笑っていました。そして“早く冷夏の元へ行け”っと 言われました。僕は黙ってその場を去ろうとすると徹子さんはただ一言・・こういい残して去っていきました。

“お前が好きだった!!”っと・・

僕は・・止めることができませんでした。・・男として最低ですよね、女の子をこうした形で泣かしてしまうなんて、そして知らぬ間に礼子さんを傷付けて しまっていたなんて・・」

知らなかった。私は自分自身のためだけに全く周りを見ちゃいなかった。彼の気持ちを全く考えてはいなかった。彼が・・彼が・・今までこんな気持ちで私を 想っていたなんて・・全然わからなかった。いや、わかろうともしなかった。最初に出会った頃、最悪であった。私はその頃、人を全く信用しちゃいなかった。それでもしつこく 私に構ってくる彼がウザかった。それから次第に心と体が徐々に傷つき、終いには生きていく希望さえもなくした。そして私は自殺を図った・・ そのときに私を止めてくれたのも彼だ。そのときからであろう、彼を徐々に意識していったのは・・

一緒に笑い、励ましあい、時には喧嘩しあい・・

そして、私は女性として彼を男性として意識してしまった。日に日に経つたびに彼が欲しくなった。だけど・・そこには友人である撤兵がいた。だから一度は自分の気持ちを無理矢理押し殺して 諦めようとした。・・だけど、彼はそんなことを望んではいなかった。ただ・・いつものように思ってくれるだけでそれでよかったんだと・・

だんまりしたまま、彼の独白を聞いていた私は徐々に気持ちの整理がついていった。

237 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/18(月) 19:35:36.64 ID:0a4pQahS0

「どうしました・・」

「おいッ!!!・・俺が好きなら俺とキスしろ」

もう・・こうなったら気持ちに任すしかない。嫉妬も友情も迷いも何もない・・そこにあるのはただ、純粋に人を好きになった気持ちだ。 もはや、ほかの気持ちなんてどうだっていい。撤兵は彼に想いを伝えたんだから私も彼に想いを伝えなければならない。ただ1人の 女性として・・同じ人を好きになった同士の女性として、全ての想いをぶつけなければならない。

私は・・目を瞑った。すると、私の口から全身にかけて彼の暖かみと温もりが伝わった。

そのまま私たちはなり崩し的に共に夜を過ごした・・

私はようやく、ようやく・・溜め込んでいた全ての想いに踏ん切りをつけることができた。彼に抱かれる中、私はそこから生まれる 人間的な快楽にどっぷりと浸かることができた。不思議と今まで感じていた嫉妬や想いが入り混じりながら快楽へと構築される。私は全てを忘れることができた。 全てを忘れられるからこそ、こうした肉欲を貪りあう行為ができるのだと改めてに実感した。

そして互いを出し尽くした後、私たちは布団の上で全裸になりながら呆然と天井を見ていた。自然とそこからはすっきりとした気持ちよさと、生まれ変わったような 感覚がした。

239 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/18(月) 19:52:27.93 ID:0a4pQahS0

一通りの行為が終えると私は彼に話しかけた。

「なぁ・・なんでお前は女体化しなかったんだ?」

前々から持っていた疑問だった。彼は一通りの女性経験があるとは思えない。それなのにさっき抱かれたときは久々のような感覚であった。 それなのになぜ女体化しなかったのか?

彼は少し間を置いてから私の質問に答えてくれた。

「・・僕にはかって友人がいました。その友人は僕の一歩先を行っていてどれをとっても超優秀な人でした」

「友人がいた・・そいつは今どうしてるんだ?」

私は友人がいた・・っという彼の言葉に引っ掛かりながらもその友人の行方を聞いた。すると彼はそのまま一呼吸置き、こう語った。

「・・・・死にましたよ。自殺で・・死因は女体化したときによる多大なストレス」

「――えッ・・じゃあ、そいつが」

私はそのまま悟った。その相手がおそらく彼の初体験の相手なのだろう。・・彼はそのまま語ってくれた。

240 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/18(月) 20:09:59.74 ID:0a4pQahS0

「・・彼は女体化して最初に僕に言ってくれました。“俺を抱け・・お前だけは俺と同じ苦しみを辿ってほしくない”っとね。思えば 僕もバカでしたよ・・その翌日友人はこの世から去りました。遺書にはこう書いてありました・・

“前略、両親と大切な友人へ

私はもう生きていくのに疲れました。この女体化によるストレスは多大なものでした。 本当にごめんなさい。

そして、大事な友人へ・・これで多分、女体化にはならないと思う。最初で最後の治療だった・・ お前は最高の医者になれると思う。せめて・・お前と一緒にオペをしてみたかった・・

本当にすまなかった。                       以上”

てね・・なんとも馬鹿馬鹿しいでしょ・・何が最後の治療だ、自分で命を絶つなら・・最初からやるなよって何度も自分を責めましたよ。 そして僕は決意しました。彼を超える医者になろう、それが彼にとってのせめてもの贖罪になるなら・・とね」

彼は私の横で淡々と自分の傷を語った。そして一言・・

「あの時、礼子さんが自ら命を絶とうとしたとき・・あいつのことが少しダブりましてね。あいつの自殺以来、女体化した人にはかなりのおせっかい 焼きになってしまったんですよ・・って礼子さん!」

「バカヤロウ!!!・・お前は本当に大バカ野郎だッ!!!!」

私はそのままの体制で彼に抱きついた。なぜかはわからない・・ただ、私は全裸のまま彼に抱きついた。

理由なんてない。ただ・・そうしたかったから。

242 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/18(月) 20:23:17.90 ID:0a4pQahS0

そしてそのまま夜が過ぎ、朝となった。私はそのまま服を着るとコンビニへタバコを買いに行った。思えばここ数日は全く吸っていなかった。 私はタバコを買うとそのまま手に咥えた。タバコからはあの嫉妬からでる不味い味は全くせず、今までと同じ味とほんのりと心地のよい 苦味のある味がした。そのまま私は家に帰ると彼がいつものように朝食を作って帰りを出迎えてくれた。

でも、まだ私にはもうひとつ役目が残っていた。

それは・・撤兵との決着、ここ数日はまともに連絡を取り合ってはいない。だから、こんな関係も嫌だった。撤兵も私の大事な友人だ。 こんなことで失いたくない・・私は朝食を食べ終えると、そのまま携帯を取り出した。そして撤兵のメモリへ操作すると私は横で心配しきっている 彼を見ながらこう忠告した。

「こっからは俺と撤兵のことだ・・絶対に手出しはするな。いいな?」

「・・わかってます」

「フッ、そんな顔するな。・・絶対うまくやる。あいつだってこんな関係望んじゃいないさ・・」

「はい・・」

そして私は撤兵の携帯に連絡を入れた。私はそのまま撤兵が出るのを待った・・そして数分後、撤兵が電話に出た。 私は緊張しながらもそれを押し殺し、撤兵との電話に応対した。

「もしもし・・俺だ。話があるから来てくれ。わかった・・そっちに行く」

私は電話を切った。意外にも撤兵のほうから場所の指定があったので彼を置いて単身1人でそちらに向かうことにした。さて、何とか苦労もなく話までこぎつけることが できたのだが、ここからが本番であった。

私たちの女の戦いは静かに火蓋が切られた。

243 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/18(月) 20:35:31.63 ID:0a4pQahS0

私は指定された喫茶店へ向かうと、すでに撤兵が喫煙席で座っていた。私はそのまま黙って撤兵の前へと座った・・まずはここは精神を 落ち着かせるためにタバコを一本取り出しそのまま口に咥え、火をつけた。いつもならここは友人同士の楽しい会話が飛び交うところなのだが 非常にも苦しく、私の飲み物を運んできた店員さえ飲み物を置くと、そそくさと立ち去っていった。

そのまま、両方ともタバコを吸いながらだんまりしていると、撤兵が口を開いた。

「・・抱いたのか?」

「・・抱いた」

「そうか・・」

淡々とした会話・・重いものであった。なぜ友人同士でこんな会話をしなければいけなかったのかわからないほどであった。やはり撤兵も女体化してから 私と同様、そういった部分が鋭く磨き上げているようだった。そして今度は私が撤兵に切り替えした。

「・・お前は俺やあいつのことはどう思っているんだ?」

私の本当の目的にして全てであった。これに対する撤兵の回答で私たちの今後を左右するものであろう。それぐらいこの質問には重大な意味が こめられていた。私は・・大きな不安の中、タバコを灰皿にもみ消しながら、箱から新しいタバコを1本取り出し撤兵のの回答をじっと待った・・

    • 一方の撤兵はタバコを吸い上げてしばらく考えていると、ポツリポツリとこうつぶやきながら答えた。

248 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/18(月) 20:52:35.59 ID:0a4pQahS0

「・・・・俺はなここ数日間が変に長く感じた。あるとき泰助のことを思い浮かべてたらな、次第にそれが強くなったんだ。そして一緒に 大学で勉強しあったり食事していくうちにその思いは俺の想像がつかないぐらいにとてつもなく大きいものに変わっていった。 そして・・初めてのようやくデートまでこぎつけたときお前から泰助の携帯に電話がかかってきた。そしたらな、俺のこの想いが嫌というほど 強まってきたんだ」

そういって撤兵は一呼吸置いてそのままタバコを消して新たなタバコを取り出した。

「そしたらな・・それから3人で遊ぶのがだんだんと疎くなったんだ。・・そこから泰助に関する独占欲が強まったんだと思う。友人のお前にわざと 泰助の話をしてそうやって自分を満たしていく・・だんだんと本来の自分とは違ったやり方に嫌悪しきっていた。だけど・・そうしないと 自分自身が満たされなくなっちまった。それから俺は・・お前と会うのをやめた。奇しくもその頃からお前は俺と連絡を余り取ろうと しようとしてなかったからな・・」

撤兵も私と同じだった。彼に恋していく自分と友情をとろうと知る自分・・それに悩んでいたのだ。そして幾ばかの時が流れ・・苦悩の末、彼は私を 選んだ。そして撤兵は・・想いを告げて彼に振られた。

「昨日の夜は・・別の意味で泣いた。大泣きだ・・涙と共に今までの想いがスッと流れたな。泣いて泣いて泣きまくってしばらくした後、ぷつんと 泰助の想いが自分自身の中に消え去ったな。今の俺の気持ちは・・・」

撤兵は一呼吸置いた後・・真剣な顔つきでこう告げた。

「・・頑張れ。散々、泣きすぎた結果がこれだ。お前らは俺の分まで・・頑張ってくれ。・・それだけだ」

そういって撤兵は席を立った。このままじゃいけない・・私は本能的にそう感じた。そのまま帰ろうとする撤兵に私は呼び止めた。

249 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/18(月) 21:04:24.17 ID:0a4pQahS0

「撤兵ッ!!!また、また・・今までどおりに遊べるか!!また・・俺たちみんなでバカやって笑いあえるのかッ!!!!」

このままでは撤兵は私の元を去ってしまう。それだけは嫌だ!撤兵は私の大事な友人であり仲間だ。こんな形でみすみす失うわけには 行かない。いや、絶対に失うわけにはならなかった。撤兵はそんな私の叫びを聞くと微笑しながら、そのまま後ろを向き手を振った。

「ああ・・ただ、少し時間をくれ。じゃなきゃ今すぐは無理だ」

「撤兵・・」

「大丈夫・・ただ少し時間くれたら、またお前たちの前でひょっこりと舞い戻ってやるよ」

私は少し空しくなりながらも気迫の言葉を放った。

「絶対だぞッ!!!絶対俺たちの前から姿を消すな!!いいなッ!!!!」

「ああ・・絶対に消えたりしねぇよ、ダチとして約束してやる」

「絶対の約束だからな!!!・・破ったらただじゃおかねぇからなッ!!!!」

絶対の約束を取り付けると撤兵はそのまま御代を払い、喫茶店を後にした。これでよかったのだろうか?もしかしたら彼の友人や昔の私みたいに 自ら命を絶とうとはしないのだろうか?私は不安で不安で仕方なかった。その日から数ヶ月の月日が経ち、私は不安の毎日を送っていた。でもそのたびに彼が 私を慰めながら不安をほぐしてくれた。

それから更に日にちが経ち、撤兵は約束どおり私たちの前からひょっこりと姿を現してくれるのはまだ先の話である。

339 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2006/12/19(火) 03:23:07.14 ID:g8F+wfwa0

撤兵との女の争いもどうにか終止符が打てた今日この頃・・人間関係もとりあえずであるが徐々に戻りつつあった。あれから撤兵のほうも どうにか大学には通っているらしい。まだ少し失恋を乗り越えるには時間が掛かるらしいが、何とか私個人とは今までどおり会話できるぐらいまでに回復した。 そして、何より自身の変化は大きいものだ。私たちは相変わらずの関係であるが友人から彼氏彼女の関係へと昇進した。まぁ部屋が隣同士であったので 同棲しているのとなんら変わりなかった。だけどまた経済的には余り余裕がないのも事実である。まぁ私はバイトしなくてもそれなりに生活を 送っているのだが、余り無理はできなかった。そんなこともあってか私は充実な人間関係を保つことができた。

そして、私はとある決意を秘めながら先生と応対した。

「先生・・私、養護教諭やってみようと思います」

私の決意・・そう、それは前に先生が話してくれた養護教諭の道である。人間関係が充実した私は養護教諭をやってみようと思った。 先生は一瞬喜んではいたものの少し苦い顔をした。

「私個人としてはうれしいことだが・・いいのかね?君自身の将来を大きく左右するものだぞ。まだ養護実習までには時間があるからそれまでに じっくりと考えてみたらどうだ?」

「いえ私自身、女体化した身ですし・・それにその経験が役に立てば何よりですから」

私の決意は変わらなかった。女体化した児童を救いたいというのもあったのだが、何よりも私自身・・この過酷であろう養護教員の道に興味を持ったのも また事実であった。先生は私の決意を聞いたのかしばらく考えてこう進言してくれた。

「わかった・・よく決意してくれた。頑張れよ」

「はい!」

私は力強く返事をするとその場から去った。


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最終更新:2008年09月17日 19:17
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