41 名前:
◆Zsc8I5zA3U? [] 投稿日:2008/01/23(水) 10:01:21.25 ID:coNjGAsI0
毎年行われる同窓会の招待状が来た、しかもよく見てみると高校の同窓会だ。今更とは言えないが何ら思いいれのない招待状が来た所で私にとっては関係ない、私が高校生の時の事など誰も覚えてはいないだろう・・ま、そんなこと考えているよりも業務の方を考えた方がぐっと効率的に上なのでずっと私の頭の片隅に置いてあるだろう。同窓会なんて余り楽しそうでもないし、既婚者である私にとってはどうでもいい存在だ。
さて、ただただ流れる日常は私にとって何を巻き起こすのであろうか?
「さて、今日も待ったりとした一日だな」
学校の保健室・・これが今の私の職場だ、傷ついた生徒を手当てしたやったりあらゆる悩みに乗って上げたりしながら心の安定を測ってやる。どちらかと言うと主に後者の方がメインになりつつあるのだが・・前者の方もない事はないのだが旦那や撤兵に教えられた通りに適当に手当てすれば後は勝手に治るものである。
しかしここ最近は女体化も完全に定着したのかそういった相談もなく少し寂しいところだ。常に私に恋愛相談していたあの2人も学校を卒業してしまってどうも日常に張り合いが持てない。ふとした事で貰った猫が何故だか知らないが私に懐く、動物にも同情されるようになると少し今後について考えるようにしなければならないのかもしれない。
42 名前: ◆Zsc8I5zA3U? [] 投稿日:2008/01/23(水) 10:04:32.76 ID:coNjGAsI0
今日も何事もなく夕方・・それにしてもここまで目立ったことが何にもないと帰って気落ちもしてしまうぐらい、だけども何にもなく平穏に過ごせると言うのは理想であり良い事なのだろう。それは否定はしないのだが、まぁこれも良いものだろう。適当に帰る仕度を済ませていつものように職員室に日誌を提出すると駐車場に止めてある車で自宅へと向かう。そういえば今回は旦那の方は病院で夜勤らしいのでいつものように何か適当に差し入れを買っておこう。
レイについては旦那が何か準備はしているようなので当分は大丈夫だ、それにしても旦那の病院に行くのも随分と久しいもので色々と何やら作業に勤しんでいるんだろう。外科と内科に精通している旦那のことだから急患の患者が大勢いるのかも知れない、差し入れを運んで仕事の邪魔にならないようにさっさと帰った方が無難だろう。
そう判断した私はコンビニに向けて車を走らせた。
「相変わらず静かだな。ま、時間が時間だから仕方のないことだが・・」
予想していた通り旦那の病院は静かだった。中は夜の病棟に相応しいぐらい薄暗く最小限の電力しか働いていない、もうこの光景には慣れたがある程度の不気味さを感じているのも事実。旦那の場所も分かっているが、まずはいつものように職員に差し入れを上げてから向かおう、そう判断した私はいつものように受付の方へと向かう。
43 名前: ◆Zsc8I5zA3U? [] 投稿日:2008/01/23(水) 10:05:19.58 ID:coNjGAsI0
「どうも、旦那いる? はい差し入れ」
「いつもありがとうございます。院長ならいつもの所にいますよ」
「ありがとう。後あまり無理しちゃダメよ」
「はい。でもやっぱり保健室の先生をやっていると違いますね」
「煽てたって何もでないわよ。それじゃあね」
職員の人と軽く会話を済ませた後、私は院長室へと向かっていく。本来は職員への差し入れはNGなのだがこの病院はそういった面は緩やかに出来ている。それにこの病院の内規は他の病院とも比べてみると非常に緩い面が多々あり結構やばそうな事も出来るのだろうが、意外にもそういった事をやろうとする輩は滅多に見ない。
それにこの病院で入院を経て本気で医療の世界へと志す人も多いらしく、今まで入院していた中には見事に医大へ合格した人もいるぐらいこの病院は凄いのだろう。それにここの病院に勤めている職員も中々の曲者揃いで一風変わった人が非常に多い、偶然に出会ったこの人も確かそうだ。
44 名前: ◆Zsc8I5zA3U? [] 投稿日:2008/01/23(水) 10:06:48.27 ID:coNjGAsI0
「やぁ、礼子さん。今日も院長のところかい?」
「ええ・・お久しぶりね。多田さん」
院長室へと向かう道で丁度で会った長髪で大柄な男性・・この病院に勤めている曲者の中の一人。多田 務(ただ つとむ)さんだ。元々は法学生志望で内定確実とまでいわれたらしいが、何をどう間違えたのか突如として医学生への道を歩んでいる。本業は小児科医らしいが内科のほうも精通しているらしく、旦那の話ではちょくちょくそっちの方へも出向いているらしい。性格に関しては・・少し癖のあると言っておいた方が良いだろうか?
それにしても世の中には奇妙な人間もいるものだ・・
「こんな俺でも経歴に関しては礼子さんに負けるよ~」
「こ、心の声を読まないでちょうだい! ・・そんなんだからいつまで経っても独身なのよ」
「そりゃそうだ。お、それ差し入れか! わざわざ助かるねぇ~」
そう言って多田さんは私の持っているコンビニの袋から適当にパンを取る、この人に関しては本当に掴み所のないというか、遠慮がないと言うのか・・よく分からない性格をしている。まぁ、だからこそ子供ばかりいる小児科ではうまいところやっているらしいのだが、どうも疑問に思えてしまう。
もしかしたら精神年齢がちょうど一致するだけという意見も否定できない、旦那の方はよく見れば解ると言うのだが・・この人を見れば見るほど更に不思議になってしまう、深く考えるのはやめた方が良さそうだ。
45 名前: ◆Zsc8I5zA3U? [] 投稿日:2008/01/23(水) 10:07:59.35 ID:coNjGAsI0
「・・その様子だと今日は夜勤?」
「んだんだ、さっき小児科から急患の患者さんが来てたからその影響かな。仕事はこなすがなかなか出会いがないのは嫌なところだわ・・礼子さんの職員さんで誰か良い人いない?」
「あのねぇ・・普通の人ならともかくとして相手があなただったら相性の合う人を探すだけでも苦労しそうよ」
「相変わらずきついね~!! もしかしてさっき俺の精神年齢とか考えてなかった?」
相変わらず存在感と人の心を読むことだけは随一だ。その能力を活かせば私を介さずとも自分に合う女性など探すのは非常に容易いと思うのだが・・喋れば喋るほどこの人の思考はよく解らない。
根本からして謎なのだこの人は・・
「出会いに俺の性格なんて関係ないない!! んじゃ、院長と達者でな~」
「はいはい、そちらも達者でね・・」
マイペースという言葉を具現化したような人物と別れると私は旦那の所へと向かっていく・・だけども多田さんのような人は氷山の一角に過ぎないものでこの病院には様々な職員がいる。さて、一発目から多田さんと言う事は少し楽になりそうだが余り安心は出来ない。まるで魔窟みたいな病院だ・・
46 名前: ◆Zsc8I5zA3U? [] 投稿日:2008/01/23(水) 10:09:39.75 ID:coNjGAsI0
多田さんと別れて数分後、ようやく院長室に辿りついた私・・院長室からちょっとした所で少し呼吸を整えているとぺこりと礼をして院長室を去るある女医さんを発見する。私は院長室に入る前に女医さんの方へと向う、その女医さん・・菊川 奈保(きくかわ なほ)さんは私の存在に気が付くといつものようにぎこちない姿で私に挨拶してくれた。
「・・どうも」
「お疲れさま。はい、差し入れ」
私は袋から適当なものを奈保さんに差し出す。彼女もまた意外な経歴の持ち主で外科を初めてとして内科に小児科、それに産婦人科を転々としてこの病院へと配属になた経歴がある。しかも彼女が今まで勤めていた病院では次々と病院の不正が明るみに出てくるので業界では疫病神扱いされているらしい。
だけども彼女の経歴はそこいらの医学教授も真っ青のモノなのでこのまま何事もなく行けば間違いなく医者のお偉方が集まる幹部は確実なのだが、先ほどの経歴がそれに日を差して未だに医者止まりだ。
ちなみに彼女も私と一緒で女体化経験者なのでこの病院では旦那に次いで最も話もし易い人物である。
47 名前: ◆Zsc8I5zA3U? [] 投稿日:2008/01/23(水) 10:10:26.53 ID:coNjGAsI0
「今日は・・何の御用?」
「仕事が終わったからそのついで・・夜勤、大変そうね」
「この仕事していれば当たり前、もう慣れた」
相変わらず物静かな人だ、まるで昔の私を思い出してしまう。だけどもいつまでも昔の事を思い出しても仕方ないので少しばかり会話を愉しむ事にする、それに私は常々奈保さんに対して疑問に思ってみた事がある。それは・・
「奈保さんって上に行くつもりはないの?」
「何を言うの? あなただって一緒じゃない」
「私は無理よ。こう見えても養護教諭って出世関係の内規が色々と厳しいの」
前々から奈保さんに対して思っていた疑問、それはやはり上のほうに上がるかどうか? いくら奈保さんが勤めていた病院の不正が明るみになったとはいえ、それは身から出た錆・・奈保さんには全然関係のない話だ。それに奈保さんの経歴から考えてもそういった話の誘いは充分にあったと思うし、奈緒さんだって自分の能力を試したいと言う願望はあると思う。奈保さんに失礼だとは重々思いつつもやっぱり気になって仕方がない・・
奈保さんは一呼吸置いて静かに一言だけ述べた。
48 名前: ◆Zsc8I5zA3U? [] 投稿日:2008/01/23(水) 10:11:40.95 ID:coNjGAsI0
「・・現場の方が好きだから」
「そう、変なこと聞いてごめんなさい」
「それに・・この病院で勤務を経てあなたに出会った事が一番嬉しい。今まで他の病院に行くと私の事を良いように言う人が少なかった、だけどもこの病院はどこか違う。
院長や周りの人、それにあなたのような人に会えて私は嬉しかった」
「――ッ!」
素直な奈保さんの言葉に私は無性に嬉しさを覚える。私のような人間に出会えてただ嬉しかったと言う言葉・・今まで人に褒められるような事をしていなかった私にとって人の言葉などただの飾りだと思い込んでいた。私の存在が人にどのように与えているのかはよく解らないがこんな風に素直な気持ちを言われるのはやっぱり嬉しいものだ。
「・・どうしたの?」
「何でもないわ。ごめんね、忙しいのに野暮に引きとめて」
「私は気にしてない、むしろあなたと出会えてよかった。・・じゃ、私はこれで」
「無理しないでね」
「大丈夫・・」
そう言って奈保さんは私の元へと去っていった。奈保さんが去った今、ようやく院長室へと辿りつく・・今は夜なので2人しか会っていないが本当にこの病院の職員は一癖も二癖もあるのだ、よく旦那はこんな人物をまとめているのに関心をしてしまう。どんな人物でもひきつける性質があるのだこの旦那さんは・・
49 名前: ◆Zsc8I5zA3U? [] 投稿日:2008/01/23(水) 10:12:20.43 ID:coNjGAsI0
ようやく目的の地である院長室へと辿りついた私は旦那の声よりも安堵のため息と久しい一服によって満たされる。タバコを吸いながら私はあの同窓会の事を思い出してしまう、もう遠い昔のことだと言うのになぜこうも私に付き纏うのだろうか?
「来た早々に差し入れ押し付けて一服なんて・・ま、礼子さんらしいけどね」
「うるせぇな。何しようが俺の勝手だ」
すぐに一本目を吸い終えて二本目のタバコを加えて火をつける。やっぱりタバコというのは心地が良いもので長年吸い慣れていると習慣を通り越して義務になってしまう。私に禁煙と言う言葉なんてさらさらなし、もし私からタバコを取り上げてしまえば本当に何をするのか分かったものではない。
「お前、同窓会やったら行くのか?」
「う~ん・・仕事がなかったら行くかな。でもなんでそんなこと聞くの?」
「別に・・」
そのまま会話を切り上げるとじっと天井を見上げながらチラッと旦那を見るがすぐに旦那は私の言葉を汲み取る。長年の付き合いと言うかこれはある種の感覚的な問題なのかは解らないがすぐに旦那は私に言葉を投げかける。
50 名前: ◆Zsc8I5zA3U? [] 投稿日:2008/01/23(水) 10:13:17.70 ID:coNjGAsI0
「行ったらどう?」
「何に」
「礼子さんのクラスの同窓会。案内来てるんでしょ」
「・・行かねぇよ。それに高校の奴なんて殆ど口も聞いてないから誰がどういたのかさえも知らねぇ」
「全く、意固地なんだから」
高校の時の思い出・・私にとっては何ら価値もない、学校なんて殆ど暇潰しに行っていたようなものだし授業の内容など既に分かり切っていた事なので大した楽しみも見出せなかった。そんな高校生の生活・・だけどもふと思い出して見るととある女の形が浮き彫りになる、唯一私に楯突いた女、誰だろうか?作文でも簡潔に書ける高校生活の中でパッと浮かび上がる女の名前・・確かその女は――ッ!!
“お前、怖いんだろ――?”
野外活動でのあの言葉・・当時の私にとっては屈辱でしかない。確かあの女とはあの後1回だけ会った事がある、それはだんだんと思い出となって私の記憶に甦ってくる・・
51 名前: ◆Zsc8I5zA3U? [] 投稿日:2008/01/23(水) 10:14:28.86 ID:coNjGAsI0
灰色に染まった世界、この風景をそう感じるのはいつになってからだろうか? 物心付いたときから教育の名を借りた虐げられる日々、目の前にある知識を水を吸うスポンジのように次々と吸収して行くあの時・・名家の後取りに相応しい教養と知識、自由すら許して貰えない重圧に耐えるだけの日々、次第に出来上がった“それ”はどんどん私の心を支配していき、やがてそれは暴走となって私の前に具現化したのもそう時間は掛からなかった。あの家から開放されて自由を手にすること・・それが当時の私の目標であり存在理念でもあった、社会のゴミと呼ばれる奴らを己が力で纏め上げ、いつしか強大な集団となって絶対の力の象徴となって君臨させ続けてここまでたどり着く。しかしそんな私を突如として打ち崩した病・・女体化シンドノーム、周囲の人間はその病気の事をそう呼んだ。乾いた砂のように失ってゆく力と地位、そして最後の拠り所であった家の絶縁・・絶望と言う言葉しか思い浮かばない。
だけどもそんな私に憎たらしい笑顔で手を差し伸べてくるあの男・・その男は名を春日 泰助といった。全てに絶望して命を絶とうとしたときにそれを必死に止め、怪我でズタズタになった私の体を敵見て気に看病するその心遣い・・全てが信じられなくなっていた私にとってそれは苦痛でしかない。
放って置いて欲しい、構って欲しくない・・ 誰もミタクナイ・・
そんな私の黒い感情を徐々に融和させていく男に私は気に食わなかった。
52 名前: ◆Zsc8I5zA3U? [] 投稿日:2008/01/23(水) 10:15:14.24 ID:coNjGAsI0
「・・」
お昼休み、太陽が最も燦々と輝く時間帯でもあり同時に鬱々しいぐらいのざわめきが学校一杯に広がる時間帯だ。極力人と付き合いたくない私は誰とも目線を合わせず、誰もいない音楽室で適当に楽譜を取り一人黙々とピアノを引いていた。決して消化されず朽ち果てていくように流れる時間、あいつの存在により一時は拡大が停まったものの私の心に存在する闇。全てがどうでもよく愚かな人間が作り上げるピラミッドを見つめながらピアノの音色と共に時間は流れて行く・・
そんな時、沈黙が絶対のこの空間で音楽室のドアが開けられる。現れたのはあの野外活動で私に屈辱的な言葉を放った張本人・・確か名を小林 沙織といった。
「――ッ!! お、お前は・・」
「・・・」
どうやら沙織は私を探していたようだが、あいにく私はこの女と話す舌など持つはずがない。ましてや野外活動からまだ日が浅いこの時期・・この女に関しては自然と憎しみとしか呼べない感情が湧いてくる。
53 名前: ◆Zsc8I5zA3U? [] 投稿日:2008/01/23(水) 10:16:08.75 ID:coNjGAsI0
「待て。・・お前に話がある」
「私に話はない・・」
当然の反応に沙織は竦んでしまう。それにもうこの女とは会いたくはないし、顔を見るだけでも憎たらしい。何よりもその力強い瞳が最も気に食わない、この女には私ない絶対的な物を持っている。よくよく見て見ると私と似たようなものを自然に感じ取ってしまうが、どうせそんなのは気の迷い・・いや、それ以上にこの女にだけは何かしらの感情を抱きたくはない、はっきり言えば嫌悪に近いものだ。
そんな私の気持ちなど考えず、沙織はその力強い瞳を武器に語気を強めて驚くべき事を口に放つ。
「なぁ・・うちの部に入らないか? 部長からの頼みなんだが、一緒にやらないか」
下らない冗談にもほどがある。今の私に部活など精神的苦痛に他ならない、ましてやこんな女と一緒に過ごす時点で何かしらの行動は起こしそうだ。
「・・断る」
「そうか・・」
人間言葉とは裏腹に感情までは欺けられない、残念そうな感じだがその表情には隠しきれない安堵の表情が浮かんでおりそれが私の怒りを更に強める。だけども感情を表に曝け出すなど頭の弱い人間がするべき事であり、そんな下らない事に時間を要すだけでも愚かしくて笑えてしまう。返事も済ませたことだしこれ以上はここにいる必要もない、そう判断した私は静かに音楽室へ立ち去ろうと思ったのだが・・沙織は先ほどの安堵の表情を消し去り納得の出来ない表情をしたまま更に言葉を投げかける。
54 名前: ◆Zsc8I5zA3U? [] 投稿日:2008/01/23(水) 10:17:49.58 ID:coNjGAsI0
「おい、ちょっと待て!! ・・なんで断るんだ」
「別にお前の誘いを断るのは私の自由だ。とやかく言われる筋合いはない・・」
「それは確かにそうだが・・お前は何でそうやって故意に自分を陥れようとするんだ」
「・・何だと」
この言葉に私は生まれて初めて殺意に近い何かしらの黒い感情が猛烈に湧き出ていた。この女は私の触れてはいけないものに明らかに触れた・・抑え切れようのない怒りを何とか抑えつつも私の全ては怒りに満ち溢れる。
更に煽り立てられるように沙織はどんどん語気を強める。
「私はお前について何も知らない、だけども今の理由で納得できないのは確かだ。お前の本心は一体何なんだ!!」
初めて感情を露にして私に突っかかってくる沙織、こいつには怖れや恐怖心といった感情が欠落しているのだろうか? 何ら愛着もない赤の他人である私にここまで感情を曝け出すのを見ていると怒りを通り越して呆れすら感じてしまう・・それと同時に今までこんな女に怒りを露にして着た自分が妙に恥ずかしく感じてしまうもので、所詮この女も今まで同様、私に接し続けてきた周囲と何ら変わりはない。
55 名前: ◆Zsc8I5zA3U? [] 投稿日:2008/01/23(水) 10:18:06.75 ID:coNjGAsI0
「前にもお前は似たような事を言って俺に突っかかってきたな。・・お前に俺の何が分かる? 俺を知ってお前に何の特があるんだ。何もないだろう・・
お前は所詮ただの人間に過ぎない・・俺の知る他の周りと一緒でな」
吐き捨てるように沙織に言葉を投げた後、私は静かに音楽室を去る。秋風の吹く高校2年生の出来事であった・・
56 名前: ◆Zsc8I5zA3U? [] 投稿日:2008/01/23(水) 10:18:56.21 ID:coNjGAsI0
(あれから私は麻耶と出会い、自分の闇を払拭して人間としての感情を取り戻していった。あいつはもしかして私の闇に気が付いていたのか・・)
気が付けば二本目のタバコの灰もすっかり落ちてしまい、時刻の方も深夜の0時を当に過ぎている。こんな思い出を今更思い出してしまうと言う事はもう私も歳なのかもしれない・・
「・・で、結局同窓会には出るの?」
「さぁな。でももう一度喋ってみたい人間が出てたら出るかもしれないな」
「何だよそれ?」
不思議そうに私を見つめる旦那。当時、捻くれ物の極みだった私と喋った女・・小林 沙織は名を平塚と変えて今では世界的にもその名を知らぬ大女優の立場を欲しいままにしている。もはや会うことがない立場となってしまった彼女にとっては私などただの記憶の奥底で眠っているちっぽけな人物なのだろう、今でもあのときの沙織の力強い瞳は忘れようにも忘れられない記憶・・思い出となって時々甦る。
だけども私はもう一度だけ彼女に出会って見たい・・ふとそんな感覚が湧いてくる。
懐に入れておいたくしゃくしゃの出欠届けを出すと私は静かに記入をした・・
-fin-
最終更新:2008年09月17日 19:24