『樹』(1)

69 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/17(水) 16:10:57.48 ID:OqlxokPG0

女体化シンドノーム・・それは15、16歳の男性に発症する病気である。 この病気の特徴は男性なら誰でも罹ってしまう病気であり、ある条件を 満たしていない男性は例外なく女性へと変化してしまう病気だ。 まるで漫画や創作の世界の病気のような気がするが、これが結構世界中の 男性に深刻な問題を与えている。もう、発症してから30年以上も経っている のだが・・ここ数十年で根本的な治療法はおろか女体化の原因すらも あまりわかっていない。 でも、国連直属の医療研究機関では停滞することなく女体化の原因を 追究していた・・

まぁ、俺には関係ないことだがな。

「・・スクールもありきたりな授業ばかりだったな」

「何言ってるんだよ。俺なんて単位ギリギリだったんだぞ・・全く日本人はなんで こうも頭がいいのかね・・」

「日本人は関係ないだろ。まぁ、そこは友人の好として暇なとき手伝ってやるよ」

「助かるよ。親に怒鳴られたら困るからな・・」

スクールの帰り道・・俺は英語で友達と何気ない会話をする。おっと、自己紹介が遅れた。 俺の名は平塚 慶太、18歳。・・見てのとおり日本人だが親の意向によって4歳の頃から アメリカへと生活に切り替えられた。このように英語も当然しゃべれるが、家では日本語オンリーだ。 一応、年に一度は日本には帰国している。

70 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/17(水) 16:13:57.12 ID:OqlxokPG0

俺の両親はアメリカを拠点とした企業を起こしていて、今や押しも押されぬ 大企業である。平塚の名はそれだけ世間的にも有名中に有名なのだ。 それに加えて母さんのほうは世界的に有名な大女優であって、親父と 結婚する前はかなりの有名な女優で2人が結婚したときはかなりの騒ぎで あった。そんな俺であるが最近の悩みの種といえば俺には4つ下の弟がいるが・・ 弟は女性に対して全くの耐性がない。兄としてはいつ女体化するのか ヒヤヒヤしてしまう。俺みたいにちゃんと童貞を卒業して女体化を逃れてほしいものだ・・

言ってはおくが俺は決してブラコンなどではない!!ただ少し・・弟が心配なだけなんだ!!

「ただいま・・」

「お帰り、母さんたちはまだ帰らないよ」

「そうか・・」

俺はそのまま家に入るとたった1人の弟である。來夢(らいむ)が俺の帰りを 出迎えてくれた。俺よりも一回り小さい体つきに明らかに母さんの血を濃く 受け継いでいる。女性のように整った細やかな顔つき・・よく小さいころは 女の子に間違えられても仕方がなかったほどだ。

來夢は活発でいつも友達と遊んでいた俺とは違い、大人しい性格であった。 それに仕事柄・・両親が帰ってこない日などは來夢がよく料理を作ってくれ ていた。それが功を奏したのか・・若干14歳にて料理人顔負けの様々な料理を 体得している。 女性にとってはまさに有料物件ともいえるべき來夢であるが・・俺と違いまだ童貞なのだ。

それに來夢は14歳・・俺が始めて男となったときと同じ年だ。同じ兄弟としては何とか 來夢には女体化してほしくないな・・

71 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/17(水) 16:18:10.69 ID:OqlxokPG0

「どうしたの兄貴?」

「い、いや・・少し考え事していただけだ」

「兄貴、最近考え事多いよね・・まぁ、いいや。それより今日は肉じゃがと焼き魚だよ」

「ああ・・ありがとう」

今日の俺の好物ばかり・・本来ならうれしい状況なのだが、俺は日に日に來夢の ことが気がかりで仕方なかった。世間一般だと俺のような考えはブラコンというもの らしいがやはり兄として心配でならない。 そんな來夢はというと、俺の深刻な考えなど露知らず慣れた手つきで料理を作っていた・・

「なぁ、來夢・・」

「何?どうしたの・・もしかして味付けミスってた?」

「い、いや・・大丈夫だ」

さりげなく來夢に女性関係のことを聞いたつもりだったが・・失敗だったみたいだ。 俺は味噌汁と啜りながら別の手を思索していたのだが・・來夢が肉じゃがを 食べながら面と向かって俺にこう言ってきた。

72 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/17(水) 16:19:24.14 ID:OqlxokPG0

「兄貴さ・・僕が心配なのはわかるよ。でもさ、僕ももう自分で整理できる 歳だからさ。自分のことはちゃんとやってるよ。 そりゃ兄貴が僕を心配している気持ちはわかるよ。

それに僕だって一生男のままでいたいよ。だから・・兄貴が心配しなくていいよ」

「・・そうか、済まなかったな」

來夢自身もこういっていることだし・・何とかなるかな?俺も少し心配しすぎた みたいだ。今後は少し放っておくことにしよう。そうだよな・・女体化するのは 15か16歳の誕生日の日が多いと聞く。それに來夢の誕生日はまだまだ先だ。 それまでにもしかしたら來夢が彼女でも連れてくるかもしれないしな。 その日を気長に楽しみにしておこう。

だけど俺のそんな淡い考えは音を立てて崩れることとなる。

73 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/17(水) 16:22:27.05 ID:OqlxokPG0

さて、翌日・・事件は起きた。その日俺はいつもどおりにスクールに行く 準備を始めていたのだが・・突然俺の部屋の扉が開かれた。 扉からは俺の見知らぬ女性が入ってきた。しかし・・その女性には俺の知っている とある人物の面影が濃く残っていた。俺は慌てる自分を何とか抑えながら・・ そのちっぽけな脳をフル回転させながらその人物を考えていた・・

そして・・考えた末、俺のちっぽけな脳は最悪の答えを導き出した。

「・・もしかして來夢なのか?」

女性からは來無の面影が濃く残っていた。來夢特有の女顔が60%増しで 強調されており体つきもどこか柔らかく髪も短髪の長めからセミロングまで 一気に伸び上げていたなど來無の心身的な変化を数え上げたらきりがない。 俺はあたふたしながらも・・來夢に恐る恐る聞いてみた。

「來夢・・だよな?」

「・・・うん、朝起きたらこうなった」

「・・そうか」

俺の恐れてたことがおきてしまった。女体化シンドノームは主に童貞のまま 15、16歳の誕生日を迎えたら変化が起きるのが常であるが、スクール内でも それに満たない歳で女体化した奴もいた。 今回の來無のケースもまさにそうであった。流石に來夢も自分の女体化には ショックだったようだ。來無は自分の変化を冷静に受け止めながら下を向いていた。

76 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/17(水) 16:24:13.63 ID:OqlxokPG0

「親父たちには・・知らせたのか?」

「ううん・・今から知らせに行くところ」

「・・そうか、一緒に行ってやるよ。1人よりも楽だろう?」

「ありがとう・・兄貴」

一人では不安だろう・・俺は下にいる親父たちに來夢の変化を話すことにした。 俺は変化した來夢を連れて親父たちに知らせに行くことにした。 あちこち世界を飛び回っている2人だが、昨日からこっちに移っておりいつもなら 來夢がみんなの朝食を作っているのだが、今回は2人とも適当に食べていた。 2人は俺の姿を見るとそのまま手招きしてきた。

「どうしたんだ・・來夢がいないから父さんたちまともな朝食が取れんで困ってるぞ」

「それに珍しく、來夢がいないから母親である私も心配だ」

ともに2人とも家事不適合者であるので日常の家事などは來夢に任せっぱなし である。俺は慌てながらも後ろにいる來夢を連れ出した。

「ああ・・ちょっと待ってくれよ。お~い・・來夢」

「・・や、やぁ、ご覧のとおり女体化・・しちゃった」

來夢はあっけらかんと言うが・・場にはしばらくの静寂が流れた。 そして親父が表情を変えてすぐに出かける準備を始めた。

77 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/17(水) 16:31:47.06 ID:OqlxokPG0

「なんだと!!ウイリアム!!!すぐに車を出すんだ!!!! 來夢、今すぐ父さんと一緒に来るんだ。慶太も一緒に来るんだ!!」

「お、親父・・來夢はともかく俺にはスクールが」

「うるさい!!お前もさっさと来るんだ!!」

有無も言わさぬ親父の気迫に押されて・・俺は來夢と一緒に親父と一緒に とあるところへ連れて行かされた。母さんのほうもこのことをあらかじめ 予測しあっていたのか・・あえて親父の行動をとめようとはせずに 「行って来い」との一言・・女優を長年やっていたこともあってか神経が図太いようだ。 しかし俺は何とか母親に救いを求めた。

「母さん!!親父を止めてくれよ!!」

「・・何言ってるんだ?学校には私がマネージャーを通して連絡してあげるから さっさと行ってこい。・・それにお前は來夢のお兄ちゃんだろ?」

お兄ちゃん・・今、目の前にいる母に何回言われた言葉だろうか? 小さいころから事あるたびに俺は母さんからこの言葉を口にされた。 それに俺がついていくのはこの2人にとってはもはや規則事項らしい・・ ともに大女優と現役の会社社長・・世間一般の常識など通じないだろう。 人一倍に行動力のある親父とずっしりとした図太い精神の持ち主の母・・俺は この2人には一生適わないだろう。故に俺の抵抗も野暮というものである。

かくして俺は無理矢理学校を欠席させられ女体化した來夢と一緒に親父に連行された。

151 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/18(木) 17:09:14.76 ID:L65vM9xl0?

「君たちの主任を出してもらおうか!!」

「こ、困ります!!主任はまだ会議中で・・」

「ええい、これは家の一大事なんだ!!この問題は君たちの主任の力が必要なんだ!!!」

っと、親父が英語で怒鳴り散らしていた。ここは国連直属の医療機関の本部。 主に女体化シンドノームの撲滅に力を注いでいる施設だ。 しかも国連直属とだけあって世界中から優秀な医者がここで働いている。 今俺たちがいるのは関係者の応接室・・親父の会社はここの医療機関に多額の 出資をしているのでこういった非礼も多少は許されるのだ。

しかしまぁ・・英語でここまで怒鳴りあげるのはすごいものだ。

「で、ですが・・」

「君たちの主任はかなり優秀と聞く。だったら我が子の問題にも・・」

親バカというのか何と言うのか・・特に親父は昔から子煩悩の部類に入るだろう。 2人ともかなりの著名人だったので結婚しても取材やそういったのが絶えなかった。 特に俺たちの妊娠はよく騒がれてた。しかし、親父はあえて俺たちのことを マスコミに公表などせずにひっそりと知らせる程度であった。 それに俺たちに付きまとっていたパパラッチの部類などは出版社ごと徹底的に潰していた。

当の俺たちはというと親父の行動を見守りながら出されたコーヒーを飲んでいた。

152 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/18(木) 17:10:06.91 ID:L65vM9xl0?

「お父さん・・何してるんだろ」

「・・まぁ、しばらく待とう」

俺はしばらく待っていると・・揉めている親父たちの下に1人の女性が現れた。 その女性はとても綺麗で日本人のようだった。 それに胸には主任の地位を現すバッジをつけており女性が現れたとたん 親父と揉めていた外国人はそのまま引き下がった。 バッジにはtetsuko kimuraと書かれていた。 もしかしてあの女体化の権威の木村 徹子か――ッ!! そういえばテレビの番組でもよく出ていたな。何でも女体化に関する 論文を数多く提出しているんだっけ?

そして女性は英語で一言・・

「あなたは下がってなさい」

「で、ですが主任・・」

「いいから下がりなさい!!」

英語だけどその言葉には十分すぎるほどの気迫と迫力があった。 そして外国人がその場を立ち去ると、互いの思考ベーシックは本来の日本語に切り替えて応対を始めた。

153 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/18(木) 17:11:56.72 ID:L65vM9xl0?

妙に静かな雰囲気を保ったまま親父が口を開いた。

「おおっ!!徹子君!!ようやく話がわかるのが来てよかったよ!! ・・実は家の息子が身体的な変化が起きているのだよ。是非、君の力で何とかしてほしい!!」

「お話は大体わかりますが・・お恥ずかしながら女体化に関しては まだ具体的な原因も掴めておらず進行を食い止める薬など開発できていないのが 現状なのです。私も含め我々国際医療機関チームは女体化の撲滅に力を注いで います。平塚氏の今までのご好意は私共は深く感謝しております。 ですから・・」

「じゃあ、私は一体どうすればいいのだ!!!私の宝である我が子の変化に 対応できるのが親というものだ!!このまま何もできないなんて私の親としての信念が許せない!!!!」

親父・・俺はチラッと來夢の顔を見ると流石に困ったような顔をしていた。 まぁ、そりゃそうだろうな。親父の気持ちはわからないまでもないが・・流石に アポもなしで国連の医療機関に押しかけるのは筋違いだろう。主任さんも困った顔をしている。

主任さんはしばらく考え込むと・・俺たちにこう申し出てくれた。

154 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/18(木) 17:13:48.76 ID:L65vM9xl0?

「・・わかりました。じゃあ、お子さんを診察して原因を調べてみます」

「おお!!是非、頼むよ」

「じゃ、診察するのでお子さんを借りますよ。じゃ、2人とも行きましょ」

ちょっと待ってくれ・・当人である來夢が診察を受けるのはわかる。 だけど・・なんで俺も含まれるんだ?俺は直接は関係ないしな。 それに親父のほうを見てみると、親父のほうはそれだけで満足しているようだ。 止めてくれよ!! 結局、俺は主任さんに引き連れられて來夢と一緒に応接室を後にした。

「ふぅ・・じゃ、診察するぞ」

「お、お願いします」

「はいはい、そう硬くならない。体の異変だけ調べるだけだからな」

扉越しではあるがようやく來夢の診察が開始された。 ちなみに俺が今いる場所は主任さんの部屋の外だ。流石にお医者さんだけ あってか來夢の緊張を解きほぐしながら診察をしているのが伺える。 しかし、廊下で待たされるのは堪えるな・・悪いことはしていないんだが・・ あまりいい気分ではない。だけど・・こればかりは仕方がない。 何せ俺は男性・・來夢のほうも異性の俺にみられるのは嫌だもんな。

そんなこんなで数分後・・ようやく、俺にも入出許可が降りた。 俺はそのまま部屋に入り來夢の隣に座ると主任さんはカルテを書きながら 座っている俺たちに診断の結果を伝えた。

155 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/18(木) 17:16:51.14 ID:L65vM9xl0?

「んで結果だが・・見事に女体化だ。おっと、そんなにしんみりするな。 気持ちは痛いほどわかるがこの気持ちを乗り越えなければ生きてはいけないぞ。 んで、お兄さんのほうに質問だが・・」

「何でしょう・・」

「彼・・いや、彼女だな。過去に女性とそういった経験はあったのか? 俺も医者としての立場上からあまりこんなことは言いたくないけど・・とても大事なことなんだ」

「いえ・・來夢も友達はいますけど、そういった女性は1人もいませんでした」

俺は淡々と主任さんからの質問に答えていた。主任さんは俺の質問の答えを カルテに書きながら質問を繰り返していた。 だけど、主任さんは質問の中にでも雑談を織り交ぜながら重苦しい空気を 明るい雰囲気に変えていた。

そのおかげだろうか・・俺たちは緊張をほぐすことができてよりリラックスに結果を受け入れることができた。

156 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/18(木) 17:19:22.78 ID:L65vM9xl0?

「・・大方、わかった。後は法律に則った手続きをしてもらえ。 俺としてもこんなこというのは何だけど・・済まなかったな。 ちゃんと、仕事はしているんだけど・・女体化というのは奇妙な病気でな、俺が学会 に論文を提出するまでまともな論文すら提出されなかったんだ。

それに、女体化による精神の異常やそれに伴う自殺者は増えている。俺は何とかそれを食い止めたいんだけどな・・

おっと、しんみりしてしまったな。まぁ、一番大事なのは周りの献身的な支えだ。 お前も兄貴ならちゃんと支えてやれ」

重い言葉ではあったがちゃんと的を得ていた。そして俺は改めて女体化の 深刻さを知った。よくニュースとかでも女体化による自殺や犯罪などが後を絶たないと いっている。そうならないためにも俺がしっかりと來夢を支えてあげないといけないんだよな。

俺は來夢のほうを見つめると手を伸ばした。

「來夢・・誰が何と言おうとお前はお前だ。だからこれからもよろしくな」

「・・うん。兄貴、ありがとう」

俺はがっしりと來夢と握手を交わした。

159 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/18(木) 17:21:45.50 ID:L65vM9xl0?

んで、数分してか・・俺たちは医療機関を後にした。親父のほうも 結果を聞いて一応は納得してくれたようだ。車で家に帰ると親父は 即効で手続きを済ませると母さんと一緒にこれからのことを考えていた。

「ふむ・・問題はこれからだな」

「ま、まぁ・・今まで通りでいいんじゃない。俺も別にそれで構わな」

「何を言っている!!・・そりゃ、娘ができたことについては父さんに とっては喜ばしいこと間違いないのだが・・ 來夢は一変して変わった周りの状況に慣れていないんだぞ!!」

「だから・・俺たちが今までどおりに過ごせばいいんだよ。 主任さんも周りの支えが何よりも大切だって言っていたし、それに俺たちが 無理すればよけいに來夢も気を遣ってしまうだろ?」

「それに・・僕は父さんと母さんがそのままでいればいいからさ。 父さんが僕のことを心配してくれるのはうれしいけど、兄貴の言うとおりに 2人が無理しちゃったらかえって僕のほうが心配になるよ」

來夢の一言により親父はこれ以上言うのをやめた。どうやらわかってくれたようだ。

160 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/18(木) 17:23:17.97 ID:L65vM9xl0?

「そ、そうか・・」

「それじゃあ、まずは・・」

「・・待った。來夢、今のお前に一言聞いておきたいことがある」

「母さん・・何?」

「・・お前はこれからどうやって生きていくつもりだ?」

これまで今まで沈黙を守ってきた母がようやく口を開いた。 しかもこれまでのようなのほほんとした表情とは違いえらく真剣で凛としたものだった。 それにどこか瞳がいつもと違う色を帯びている、母さんの真剣な問いに來夢は 戸惑いながらも、徐々に落ち着きを取り戻してしばし考えながらこう述べた。

「わからない・・だけど、僕はこの姿になっても希望を失っちゃいないし生きている 感覚もちゃんとある。これからのことはあまりよくわからないけど・・今までどおりに ちゃんと生活していける自信はちゃんとあるよ。だから・・これからもよろしくお願いします」

俺と親父は來夢の言葉に一瞬きょとんとしてしまった。しかし母さんのほうは この言葉を待っていたのか先ほどの表情とはうって変わって普通の表情に戻った。

「そうか・・お前がそういうなら私は何も言わない」

「ありがとう・・母さん」

2人の微笑ましい光景を見ながら俺はようやく新たな家族の船出ができたと確信するのであった・・


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最終更新:2008年09月17日 19:31
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