160 名前:
◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/23(火) 21:25:31.56 ID:onoseiUc0
「2人とも惜しかったね」
「まぁな・・」
「ま、次があるわ・・」
俺たちは來夢から差し出されたジュースを受け取るとそのままゲーセンを 後にして街をブラブラとしていた。だが・・ゲーセンを後にしても、周りの視線は 俺たちに釘付けであった。
やはり、黒人や白人種が多いアメリカで俺たち東洋人は珍しく写っているの かもしれないな。それにあいつは行動力があるといってもちゃんと治安の いいところばかりを歩いている。それに俺たちには裏でガードがついているので 万が一のことがあっても安心できるのだが、アメリカという国は治安の格差が それだけで激しい国なのだ。それに俺は両親が金持ちなのでそういった 犯罪から比較的狙われやすい立場であった。 だから、俺も身を守る術はちゃんと身につけている。
さて・・しばらく歩いただろうか? 俺たちは疲れたので少し休憩すると例にも呼ばず数人の男共がやってきた。 そして集団の中から1人の男がガムをクチャクチャと食べながら定番の一言を放った。
163 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/23(火) 21:27:45.91 ID:onoseiUc0
「2人とも俺たちと遊ばない~」
こいつの英語を日本語に和訳するとこうなる、やはりナンパの 開始のセリフは万国共通のようだ。來夢のほうは女体化してからの ナンパになれない様子で心底慌てながらも、あいつのほうはこういったことに 慣れているのか比較的冷静であった。
「あんたたち、ほかに当たってちょうだい。來夢、行きましょ」
「う、うん・・」
あいつは來夢を引き連れようとしたので俺も無言でそれに同調した。 このまま揉めたって余りいい気分ではない。ならここは撤退あるのみだ。 俺たちはそのままこの場から脱出しようと思ったのだが・・男たちは このまま引き下がるはずもなく、ナイフをちらつかせて必要に食い下がってきた。
更にここは自由の国アメリカ・・日本の法律とは違いある程度の防衛は 認められている。流石の俺も少し身構えた。
「おいおい、君もその美しい顔に傷をつけたくないだろ?そんな男ほっといて連れの女の子と一緒に・・」
「いや」
流石にナイフの前に動じないあいつもすごいが正面から拒否された男はわなわなと 表情に怒りに変えていった。來夢のほうは少し怯えていた。
そして・・男たちはナイフを構えるとまたもや定番のセリフを放った。
164 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/23(火) 21:30:00.11 ID:onoseiUc0
「そうか・・なら力ずくで!!」
「ちょ、ちょっと!!危ないじゃないの!!!」
男はそういいながらあいつに向かってナイフを振り回した。 ここまで来ると俺の出番だ。俺は寸でのところで横に回り男の懐を蹴り上げた。 そのまま怯んだ隙にナイフを取り上げて腹部に強烈な一撃を浴びせた。 さすがに画体がよかった男もこれには適わず、糸の切れたマリオネットのように わなわなと抜け落ちてしまった。だけど、相手は1人じゃない。 俺はそのまま身構えながら顔をあいつらの方向に向けるとこう言い放った。
「おい!!お前は來夢を連れてすぐに逃げろ!!!」
「あんたはどうするのよ!!!」
「こいつらの相手をする!!だからお前は來夢を連れて逃げろ!!!!!」
俺は迷わずあいつらに指示を送った。あいつが來夢を連れて逃げ出せれば ガードたちが保護してくれる。俺もそれを確認したら頃合よく逃げ切ればいい のだ。こういった連中と長い間いるのは危険すぎる。何せナイフを持っている ことは銃を持っている可能性もあるからだ。 ただえさえアメリカは銃社会・・無論販売とかには年齢制限がちゃんと存在するが それにこういったやつらは親の銃を失敬しているだろう。 護身用の銃といってもそれなりの殺傷能力はある。 俺は思考を切り替えると短期決戦に臨んだ。
「さぁ、どこからでもいいからかかって来い!!!」
166 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/23(火) 21:32:30.41 ID:onoseiUc0
ナイフを持った男数人・・傍から見れば状況は芳しくないように見えるが 俺からしてみればただの雑魚だ。ナイフといっても所詮は挑発用・・素人の 手に余る代物であった。それゆえに動きが単純で交わすのは容易であった。 そのまま俺はナイフの動きに注意しながら側面に回りこみ急所に拳を思いっきり 叩きつけて1人1人沈黙していった・・
「な、なんて強いんだ・・」
「う、うう・・」
(そろそろ頃合か・・)
俺はそのまま頃合を頃合を見計らうとそのままその場にいた全員を気絶させた。 落ちていたナイフを拾い上げるとやはりどうも日本とは違いアメリカという国の 自由性に困惑してしまう。やはり、それなりの謙虚さは人間には必要だ。
「ふぅ・・自由っていうのもいろいろ問題だよな。おっと、あいつらはそろそろガードに拾われている頃か」
俺はそのままナイフを懐にしまうと、あいつらのところへ向かおうとした。 だが、途中で悲鳴の声が聞こえた。しかもその悲鳴は嫌に俺が聞き覚えのある 声であった。本能的に嫌な予感がした俺は真っ先に悲鳴のあった場所へと向かった。
急いで俺はその足で悲鳴が出てる場所に向かうと驚くべき光景が繰り広げられてきた。
167 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/23(火) 21:36:17.42 ID:onoseiUc0
「こ、これは!!!」
「兄貴!!香織さんが!!!」
俺が見た驚くべき光景・・それは銃を突きつけられているあいつの姿であった。 しかも突きつけているのは最初倒したあの男だった。どうやら倒しそびれて しまったらしい・・俺とことが油断してしまった。來夢のほうはすでに怯えている。
そしてあいつは・・いつものような覇気はまるで感じられずに震えていた。
「ヘッヘへ・・」
「・・うっ、やめ・・」
なぜだろう・・わなわなと自分の中に何かがこみ上げてくる。 銃を突きつけられたあいつはいつもとどこか違う。さっきのような明るさは微塵もない。 あるのは恐怖に引きつった表情だけだ。そしてそれをみながらあいつに銃を突きつける男・・ 俺の中ではある変化が起きていた。
すると、俺の変化に気がついたのか・・來夢は恐る恐る俺に話しかけてきた。
168 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/23(火) 21:37:37.53 ID:onoseiUc0
「あ、兄貴・・」
「・・來夢、ガードに連絡して警察を呼んでおいてくれ。俺ちょっとキレちゃったかもしれない」
「う、うん・・兄貴、無理しないでよ」
「・・ああ」
俺はそのまま後を來夢に任せるとそのまま前進して行った。こういった手合いには 慎重にいかなければならない。余計に挑発してもだめ、時間を与えすぎてもだめ・・ まさに即効勝負であった。一番の疑問はこんな危ない状況なのにやけに落ち着いて 冷静にいられる自分が不思議だった。
ただ・・恐怖に引きつったあいつの表情を見ているだけで俺は本能的に自分の奥底から わけのわからない黒いものが溜まっていった。
169 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/23(火) 21:38:31.27 ID:onoseiUc0
「・・だ、誰だ!!」
「・・・そいつを放せ」
「う、うるさい!!こ、こっちへ来るなッ!!!」
今度は男は俺に銃を向けた。安全装置は既に外れている・・普通なら怯えるものだ。 だけど今の俺には恐怖心なんてちっとも沸いてこない。不思議なことに・・俺の感情には 恐怖以外の別のものが沸いている。それが今の俺を動かしていた。
男は俺がこちらに向かうたびに震える手で銃を握る・・狙いは俺に向けられる。 いつトリガーが引かれてもおかしくない状況である。 ・・構うものか。とにかく今の俺の行動はひたすら前進あるのみ・・
「く、来るな・・来るなぁぁぁぁぁ!!!」
「・・うるさい!!」
――‥それはほんの一瞬の出来事だった。
170 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/23(火) 21:40:40.77 ID:onoseiUc0
俺は懐から先ほど拾ったナイフを取り出すと、そのまま男に向かって投げた。 ナイフはダーツのようにスッと真っ直ぐに向い男の右手の甲を突き刺した。 男は余りの痛さに声を上げて銃を離し、苦痛の表情を浮かべながら刺さった 右手を押さえていた。さらに俺はそこから男の目の前に走り、落ちていた銃を 蹴って男と銃の距離を離した。目の前に俺の存在を確認すると男はドクドクと 血が出ている怪我にもかかわらず俺の姿を見るとわなわなと震え始めた。
「ハ、ハァ・・・や、やめてくれ」
「・・」
俺は無条件で拳を上げる。ここまでくればこんな奴を倒すのは容易い・・俺が 拳を下げようとしたその時!!銃に震えていたあいつが俺の拳を止めた。 俺の拳を止めているあいつの手は・・僅かな震えが嫌ほど伝わった。
その時のあいつの行動に驚いた俺は今まで自分を支配していた感情が吹き飛んでしまった。
「お、おい!!お前・・」
「・・・バカ、大バカ!!」
「・・・」
あいつはそのまま泣いていた・・なぜあいつが泣いていたのかはわからない。 ただ・・それが俺にとっては何よりもつらいものであったのは事実だった。
320 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/25(木) 16:08:54.10 ID:/zIJ9Zv40
あれから、來夢がガードと通じて警察を呼んでくれた。 犯人は無論逮捕、ただ相手に怪我をさせてしまったことで簡単な 事情聴取を受けたが俺の正当性が認められていたので開放された。 犯人たちは今までにも同様な手口で女性を襲っており警察からも マークされていた存在であった。これで一件落着・・っと言いたい ところだが、俺にはどうも腑に落ちないところがあった。
それはあのときのあいつの表情だ。あいつは俺を取り押さえるとき なぜか泣いていた。恐怖によるものだと思うのだが・・なんで泣いていたのだろう? どうもわからないものだ・・
「兄貴・・何考え込んでるの?」
「あ、ああ、ちょっとな・・それよりもお前もうすぐで誕生日だったな。今年はどうするんだ?」
ま、しんみりするからこの話題はもう考えないことにしよう。それよりももうすぐで 來夢の15歳の誕生日だ。我が家では誕生日になると、なぜかあいつも含めて どこか海外へとお出掛けする習慣なのだ。よく家は誕生パーティをすると 誤解されがちなのだが、実際のところ生まれてこの方そんなものをしたこともなかった。
去年は確かロシアのあたりであった。 俺たちはテレビの音をBGMにしながらパンフレット片手に來夢の誕生日、どこに行くか思案していた。
321 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/25(木) 16:10:58.50 ID:/zIJ9Zv40
「今年はどこに行こう・・?」
「う~ん・・そうだな、去年はロシアのほうだったから今年は原点に帰って日本にしないか?」
「でも、ヨーロッパあたりも捨てがたいよ」
來夢が外国のパンフレットを机の上におきながらどこへ行くか悩んでいた。 っと、俺らが海外について考えていると俺はすっかり大事なことを忘れていた。 それは俺の両親の都合だ。2人とも家に帰ってくるとはいえ超多忙な 日々を送っている。親父は会社・・母さんはドラマや舞台や表彰などだ。 こうしてみると母さんのほうが忙しそうに見えるが、多数の会社を束ねる 大企業の社長業・・忙しさは並大抵ではないだろう。
幸い、副社長が親父の長年の友人らしいので大きなことがない限り1日の 休みは何とか取れるらしい。偶然なのかあいつの父親でもある。 このときから俺らとあいつの関係は始まったといっても過言ではないだろう。
「となると・・母さんのほうだな」
「うん、今週は舞台だけだって言っていたけどね。でも、母さんのことだから 職業柄、急な仕事が入ってくるかもしれないよ。
マネージャーさんに今後の予定を聞いてみれば?」
「そだな」
322 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/25(木) 16:13:56.17 ID:/zIJ9Zv40
俺は電話を手に取るとそのまま母さんのマネージャーへと電話を繋げた。 マネージャの人は日本人なので遠慮なく日本語をしゃべることができる。 偶然か・・その時のテレビは母さんが主演のアメリカ全土で人気急上昇の ドラマであった。母さんの話だと近いうちに続編ぽいものが映画化されるようである。
「もしもし慶太です。母の今後の予定ですが・・はい、わかりました。では」
「どうだった?」
「う~ん・・午前中なら大丈夫らしい。親父のほうは多分、午後には時間取れる って言ってたから直接そっちで会うらしい」
「仕方ないとはいえ2人とも忙しいんだね・・」
そういって來夢は再びパンフレットに視線を戻した。
323 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/25(木) 16:14:17.60 ID:/zIJ9Zv40
何でもマネージャーの話によると、午後にはドラマの収録があるため 午前中しか付き合えないらしい。親父のほうは午後には時間が取れる らしいからそっちで決めてくれということであった。來夢は女体化してから 急に髪質が柔らかく変化して髪が伸び始めたようで髪を触りながら パンフレットに集中していた。 俺も日本とヨーロッパ・・どちらかにするか結構迷っていた。
「ヨーロッパなぁ・・確かフランスは俺が15歳の誕生日のときに行ったな」
「うん、日本は去年帰国したばかりだからね。今年はヨーロッパにしようよ」
「ま、お前がそういうならいいよ。親父やあいつにも俺が言っておく」
「うん、頼んだよ」
行き先も無事に決まり、俺は再び電話の受話器に手をかけた。
324 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/25(木) 16:16:07.11 ID:/zIJ9Zv40
「で、今年はヨーロッパなのね」
「ああ、午前中は母さん。午後は親父がいるからな。2人ともここ最近は 時間が取れないほど忙しいからな。それと母さんからだが、当日に迎えるのは 面倒なんで前日は家に泊まっていってもいいって」
「そう、午前は小母様、午後は小父様ね。それにしてもあんたのお母さんって相変わらずね・・」
「長年女優やっているからそういった神経が図太いのかもしれないな」
あの件以来、あいつとはなかなか話しづらかったのだが・・勝手に俺らだけで行ったら こいつが怒るのは目に見えている。こいつが俺たちの誕生日の海外旅行についてきたのは もういつになるだろうか・・確か最初からいた感じがする。どこでそんな情報を仕入れたのかは わからないが空港前に行ったらちゃっかりと着いてきていたな。
まぁ、こいつの行動力は今に始まったことじゃないが・・
325 名前: 愛のVIP戦士 投稿日: 2007/01/25(木) 16:16:38.61 ID:/zIJ9Zv40
「まぁ、わかったわ。で、どこに行くの。フランスは前にあんたの誕生日に出かけたから 今度はイタリアかドイツよね」
「まぁ、そうだな・・俺としては」
「でも、ドイツって少し大人向けって言う感じがするわね・・まぁ、來夢が選んだんならそれでいいわ。 それから・・」
どうやら俺の意見など何処吹く風のようだ。選択決定権は俺にはあらず 決定権はこいつと來夢のようである。まぁ、当人が楽しめばそれでよしとするか。 お嬢様方に俺の意見はほぼ通らないであろう。 しかし・・まぁ、最近こいつの様子が少しおかしいことに気がついてみる。 俺と話すとき僅かではあるが何処となくもやもやしたというか・・変な感じがある。
「ちょっと!!聞いてるの!?」
「あ、ああ・・」
「全く・・じゃあ、前日はあんたの家に泊まるからね」
「なんだと!!!」
俺は慌ててしまった。確かに母さんは泊まってもらえっと言っていたが・・今の俺では こいつと一つ屋根の下で泊まれるかどうか怪しいものだ。
もしかしてとは思うが・・今の自分の理性を信じたい。
326 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/25(木) 16:18:01.57 ID:/zIJ9Zv40
「何言ってるのよ。さっき泊まっていいって言ったじゃない!!! ・・それにあんたの家なら昔から泊まっているじゃないの!!」
「ま、まぁ・・そうだが。俺の事情も・・」
「あんたの事情なんてどうでもいいの!!! 何なら今携帯あるから來夢に直接聞いてみる?
來夢はあんたと違って優しいからすぐにOK出すわよ」
確かに今の來夢ならこいつが泊まってもOKを出すであろう。特にここ最近、來夢は女体化 してから更にこいつとは波長が合ってきているらしい。 今、直接聞いてみれば二つ言葉で返事を快く出すであろう。
俺が言えるのはもはや限られていた・・
「かしこまりました。お嬢様・・」
「んじゃ、前日は泊まりに行くわ」
結局、あいつの勢いに押された俺はお泊りを承諾した。
105 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/27(土) 23:03:31.03 ID:YhRW5+Zs0
そして、前日・・言葉より信念がモットーのあいつは約束どおりに自宅へ 押しかけてきやがった。家には前日に休みを取った母さんがいたので流石の あいつも少しは大人しくしていると思った。・・のだが、あいつはいつものペースで 來夢とはしゃぎまくっていた。
母さんは東洋の美が生んだハリウッドの大女優・・その知名度はここアメリカを 通り越していまや全世界中に母さんの名前は知れ渡っているが家では普通に そんな感じを全く出さない。その証拠に家では芸能関係の人やテレビ関係の人・・ はたまた個人取材などはすべてシャットアウト状態だ。 何でも本人曰く「家のだから仕事はすべて忘れたい・・」だそうだ。 なにやらあいつと母さんが和気藹々と話していた。
「そういえば・・舞台の次は今度は映画ですか?」
「まぁな、もう少ししたら撮影が始まると思う。 しかし・・來夢は女体化したら昔に戻った感じだな。 女体化する前も何処となく女の雰囲気が出ていたが、女体化してからそれらが 一気に出たな。お前は私の血が半分入ってるんだ、今のお前ならパリコレなんて 楽に制覇できそうだよ。
昔、お前が女の子と間違えられた頃が懐かしいな」
「母さん、何言ってるんだよ・・」
來夢がモデルか・・十分通用できるかも知れないな。ショッピングのときも來夢は 視線を十分に感じたといっていたな。それに正直、兄である俺からしても來夢の 変化には十分驚きだ。元々、母さんの血を濃く受け継いだ來夢は女装しても十分に 女の子と間違えられても仕方ないぐらいだった。
それに今、女になった來夢を見てみると・・案外、モデルも可能だと思うな。
106 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/27(土) 23:05:23.31 ID:YhRW5+Zs0
「でも、母さん。香織さんは僕よりも顔やプロポーションが完璧だよ。 それに受けのいい性格しているし・・そういったのは僕より香織さんが 適任だと思うけどな・・」
「何言ってるのよ!!・・あんたはどう思ってるのよ?」
「えッ!!お、俺かよ・・!!!」
いきなり話を振られた俺は少し驚いてしまった。急に話を振られたので 俺はどう答えていいのかなかなかわからなかった。それに気がつくとあいつは おろか、この場にいる全員が俺の回答を待っているようであった。ここは真剣に 答えなければならないようだ。とはいっても・・2人とも女性としては一級品だ。 あいつもあんな性格をすっぱ抜けば顔、スタイルともにかなりの上位に入るだろう。 來夢のほうも女体化してから、女性特有の美貌が引き出されてきている。 性格は來夢、外見はあいつがそれぞれ勝っているであろう。
はっきり言ってこの2人は女性としては互角だ。
「どうなのよ!!男ならビシッと答えなさい!!!」
「え、えっと・・」
俺はどう答えていいのか全くわからなかった。來夢も表情は余り変えていないが 俺の答えに少しは興味津々のようだ。これ以上じらすと目の前にいるあいつに 何をされるかわからない。正直、命の危険も伴うかもしれなかった。
しんみりした空気の中、ここで母さんが時計をチラッと見てこう告げた。
107 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/27(土) 23:07:30.59 ID:YhRW5+Zs0
「・・そういえばもうお昼か、來夢お腹が減ったきたから何か作ってくれ」
「うん、わかったよ。じゃあ、昼食にしようか」
「あんた1人じゃ大変でしょ?私も手伝うわ」
「あ、助かるよ」
そういって2人は台所へと姿を消した。どうやらここは母さんに救われたようだ。 やはり長年女優をやっているとこういった空気が敏感になるのだろうか? 母はやっぱり偉大だ。
來夢とあいつが台所へ出かけた後、母さんは一息置いて俺にこう告げた。
「・・お前は男としてまだまだ半人前だ。まぁ、半分はあいつの血が入っているから 仕方ないといえば仕方ないのかもしれないな」
「どういうことだよ!!」
「・・いつかお前にも教えてやるよ。今はまだその日じゃない」
「何だよ・・それ」
そういって母さんはカバンから舞台の台本を取り出して読み始めた。 不思議と母さんの呟きは俺の中にずっと俺の頭の中を支配していた。母さんの呟きが ずっと俺の中に木霊しながら俺は1人で頭を抱えていた。
108 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/27(土) 23:11:20.86 ID:YhRW5+Zs0
さて、親父が帰らないまま時間が刻々と過ぎていきあいつを 自宅に迎え入れたまま夜を迎えた。俺たちは母さんから明日の予定を聞くと まるで修学旅行を控えた学生のように明日のことを夢に膨らませながらはしゃぎまくっていた。
んで、あいつも交え散々話し合った結果・・今年の行き先はイタリアに決定した。
「さて、パスポートとチケットも揃えたし。後は明日に備えるだけだな」
「うん。明日は車で直接空港に行くらしいから楽しみにしてようよ」
「イタリアってピッツァの本場よね。それに観光名所もたくさんあるわね」
などの会話を俺たちは楽しんだ。ホテルはローマでも有名なホテルを予約した。 明日は午後まで親父とイタリアで一晩過ごしながらしばらく楽しんだ後、帰りの 飛行機でアメリカへと帰国する予定だ。
なんだかんだといっても3人で一緒にどこか旅行へ行くのは楽しいものである。 それから晩飯の後のお風呂であるが、來夢とあいつが先風呂になった。風呂場からは 女性独特の楽しい声がちらほらと聞こえてくる。 やはり俺も男・・少しは気になってみたのだがなかなか近づけずにいた。
結局、母さんと2人きりで風呂の順番を待つこととなった。
109 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/27(土) 23:12:40.80 ID:YhRW5+Zs0
「母さんは一緒に入らなかったのか?」
「ああ・・風呂は1人が落ち着くものだ。ところで・・お前は香織のことどう想っているんだ?」
「な、何言うんだよ!!!あいつは別に――ッ!!」
すっかり俺は母さんのおもちゃとなってしまった。母さんからこんな話をされる なんて驚きだった。母さんはさらに俺にあいつのことを聞いてきた。
前のショッピングの件もあるのだろう・・心なしか母さんは愉しそうだった。
「お前ら3人は昔から一緒にいるだろ? それに・・前、お前が香織を助けたって來夢から聞いてな」
「そ、それとこれとは全然、関係ねぇよ!!あ、あいつはただの・・友達だ」
「・・そういうことにしておくか」
結局、風呂に入るまで俺は母さんのおもちゃにされてしまった。 ほかにも母さんはニヤリとしながらあいつのどんなところが気になる?などの 質問を浴びせてきたので答えるのにかなり苦労した。それにここ最近あいつに ついて考えるとどうも熱くなってしまう。 こんなものは時期に治ると俺は無理矢理体に言い聞かせた。
そんなこともあったのでこの日俺はなかなか寝付くことができなかった。
110 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/01/27(土) 23:14:23.01 ID:YhRW5+Zs0
俺の部屋は二段ベッドで下が俺、上があいつと來夢が眠っていた。 來夢のほうはスヤスヤと寝息を立てながら眠っていたが、先ほどの件が重なって なかなか寝付けなかった俺はぼやっと家の天井を見ていた。 俺はそのまま明日の備えて寝ようと思ったが・・突然、上にいたあいつが俺に話しかけてきた。
「ねぇ、昼のあれは結局どっちだったの?」
「はぁ?・・お前、まだ気にしてたのかよ」
「うるさいわね!!・・ただ、少し気になっただけよ」
そういえばお昼時・・そんなこと言っていたな。母さんのあれがなければ 今頃路頭に迷っていたかもしれないな。でも結局どっちも選ばずじまいだったな。 いまさらどっちでもいいなんて軽い言葉なんていえないし・・どうしようかな?
俺は何とか言葉を絞りながら何とか考えていた。
「俺はその・・お前でも十分にいけると思うぞ。ただ・・」
「バカ・・」
「お、おい!!・・ったく」
結局あいつはそのままプイッとしながら寝てしまった。 俺は再びもやもやした気持ちを抱えたまま寝る羽目となった・・
最終更新:2008年09月17日 19:32