623 名前:
◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/12(月) 08:21:18.18 ID:gqe6rGa+0
あれから俺たちは食事を取った後、結局ホテルへと泊まることになった。 幸い今日はお金を多めに持ってきてあったので2人分の部屋を取るには 十分の余裕がある。それにここは安いビジネスホテルだから個室はかなり安い。
「1部屋、800ドルか。じゃ、それを別々で・・」
「・・1部屋だけでいいわ。用意して」
「お、おい!!」
突然の行動に驚くばかりだ。まさか部屋で揉めるかと思い、あらかじめ別々に してきたのだが・・そのあいつが部屋を1つにまとめようとするなんて思ってもみなかったことだ。
何なんだよ・・今日のあいつのおかしさに惑わされて俺のほうも ついペースが乱れそうだ。それに店主のほうも俺らについてはカップルだと 思っているだろう。正直言って俺にとってはありがた迷惑なのだが・・ こういう場合だと何を言っても無駄だろう。
あっけなく店主から部屋の鍵を受け取るとそのまま指定の部屋へと向かおうとした。
624 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/12(月) 08:24:30.58 ID:gqe6rGa+0
「さ、行きましょ」
「・・おい、いいのかよ」
「別に・・節約になっていいじゃない。私は構わないわよ」
ますますあいつの意図がわからなくなってきた。 まぁ今更、部屋を変えるわけには行かないな。 だけど前にも似たようなことはあった。
そう・・來夢の誕生日の時に泊まったホテルでの出来事だ。 だけどあの時はあいつは慣れない酒で酔っていただけだ。そうに違いない。
“ねぇ・・しよっか?”
あの言葉はあいつの本心から出たものじゃない。 ただ酔ってしまったときに出てしまった不意の一言にすぎないものだ。 あいつの本心ではない。そうじゃないと・・思う。だけどなんでだろう・・なんかそれだと しっくりこない気がする。俺は残念がっているのか?
やっぱここは考えても仕方ない。ここは駄目で元々、あいつに付き合うとするか・・
625 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/12(月) 08:26:30.38 ID:gqe6rGa+0
俺らは部屋に入った。 部屋にはテレビが1つベッドが2つ・・と典型的なビジネスホテルの部屋の 造りだった。入ってすぐのほうにシャワールームも見えた。 しかし、俺は部屋に向かうたびに体の中から緊張が高まってきた。
「んじゃ。俺、先に入っていいか?」
「・・いいわよ。來夢のほうには連絡してあげるわ」
珍しいな・・昔よく俺の家に泊まったときには常に俺よりも一番風呂を独占していた あいつだ。それが俺にやすやすと譲るなんて不思議なものだ。 ますますこの不可解な1日が深まってくるな。 まぁ、こういう場合はシャワーを浴びてすっきりすれば何とかなるだろうな。
俺は一旦、考えるのはやめてシャワールームへと向かった。
626 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/12(月) 08:29:21.12 ID:gqe6rGa+0
「ふぅ・・なんかすっきりしねぇな」
流れる水の音の中、俺はシャワーを浴びながら この1日のあいつの行動について考えていた。 だけど、考えれば考えるほどあいつの不可解な行動はわからないことだらけだ。 なんかこう・・よくわからんな。まぁ、考えてみればあいつのほうは相手は俺だ。 昔から俺を知り尽くしているあいつにそんな気なんてはなはな起きんだろう。 俺は蛇口を閉めるとそのままタオルで濡れている体を拭くとそのまま着替えた。 そのまま再び部屋に戻るとあいつのほうはのんびりと部屋でくつろいでいた。 あいつは俺が出るのを確認するとバスルームへと向かおうとした。
「來夢には連絡してあげたわ。じゃ、私もシャワーを浴びさせてもらうわ」
「あ、ああ・・」
そのままあいつはバスルームへと消えていった。 しかしまぁ・・なんであいつは俺と一緒の部屋を選んだのだろう?
別に一泊するだけだし金もそんなに減っているわけじゃない。 だけどあいつはなんで俺と一緒に・・ま、考えたって仕方ないか。 おかげで金にも余裕ができたことだし、なんかコンビニで適当に 買い物に行ってこようか・・ ついでにあいつにもなんか適当に買ってきてやるか・・
そう俺は決め込むと一旦部屋の鍵を持ち出すとコンビニへと向かうことにした。
627 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/12(月) 08:31:49.86 ID:gqe6rGa+0
「どこ行ってたのよ!!」
「ああ・・悪い。コンビニで適当なもの買ってきた。喉渇いたろ?」
しょっぱなからバスローブ姿のあいつに怒鳴られた。 黙っていった俺も悪いと思ったのだが・・こいつは目のやりどころというものがわからないのか? まぁ、ことあいつに限ってはわかっているだろうと思っているが・・ それにしても、俺も男だ。こういった眼のやり場には少し困ってしまう。
「お前な・・」
「たまたまこれしかなかったの!!じっと見たら殺すわよ!!!」
「わかったわかった・・ほれ」
俺は袋から適当に冷たい飲み物をあいつに渡してやった。 ホテルにも適当な飲み物はあるのだが、俺も少し酔いたくなったので 酒と少しばかりの摘みを買い込んだ。あいつにも適当に買った飲み物を 渡してやった。あいつに渡した飲み物はいつも飲んでいた水でそれを投げた。
あいつに飲み物を渡しおえると俺も酒と適当な食べ物を取り出すと そのままあいつと一緒に部屋にくつろぐことにした。
629 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/12(月) 08:33:27.70 ID:gqe6rGa+0
‥それにしてもバスローブ姿から窺えることができる女性特有の体つきは 嫌でも俺の男としての部分を刺激してしまう。何とか酒でごまかしつつあるものの このままあいつといるのは少し辛いものだった。
「・・おい、いつまでそんな格好でいるつもりだ。湯冷めしてしまうぞ・・」
「別に・・」
「ったく・・先に寝るぞ」
俺は酒を飲みながらテレビに視線を戻した。 俺がコンビニから帰って数分が経ったが一向にあいつは着替える気配がない。 むしろ、着替える様子すらみせようとしない。
はっきり言ってめちゃくちゃ困るものだ。俺にはそんな気はないのだが、やはり体は 正直で昔のしがらみに関係なく反応してしまう。ここは眠って逃げるか・・
そのままグラスに残った酒を飲み干すと、俺は一足早くベッドへと戻っていった。
630 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/12(月) 08:37:09.88 ID:gqe6rGa+0
眠りに逃げたのはいいものの、やはりあんなものを 見せ付けられたらなかなか眠れないのがオチであった。 まさか、來夢に渡されたチケットからこんな展開になろうとは思いもしなかった・・ いや、まさか來夢が1枚噛んでいるのか? そう考えれば話の辻褄は通ってくる。
(・・いや、ちょっと考えすぎたか。俺も酔ってきたなこりゃ・・)
そう考えて俺は無理矢理だが眠ることにした。酔ったんだ・・これは酔ったやつが 考える典型的思考だと無理矢理切り捨てた。また別のことを考えよう。 そうだ、昔のことを思い出せば自然と眠っていられるな。
昔のこと・・そういえば、俺はガキの頃はよく來夢と一緒にあいつと遊んでいたな。 親同士の繋がりとはいえ・・あそこまで長い付き合いになるとは思いもよらなかった。
幼馴染故の特性かもしれなくもないが、3人で時間を共有していったときの方が遥かに多かった。
631 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/12(月) 08:38:41.19 ID:gqe6rGa+0
“なんだよ!!お前が悪いんだろ!!”
“うるさいわね!!”
これって俺らが小学校の頃の話だったな。 確か・・このときはたまたまあいつと一緒に遊んでいた時に ちょっとした事で喧嘩して、あの後2人ともどっか行ってしまったんだよな。
そんで確かあの後は・・
“お、おい・・大丈夫か?”
“う、うん・・”
そうそう。あいつとしばらく別れた後、俺1人でふてくされて歩いていたときに 偶然にあいつの泣き声が聞こえてきたんだっけな。あいつも俺と同様に1人で どっか行ってしまって、俺が見つけたときには足に怪我してたんだっけな。
一応あの時は応急手当をしてやって歩けないあいつをおんぶして家に帰ったな。
632 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/12(月) 08:47:48.35 ID:gqe6rGa+0
中学に上ると、あいつは俺に対してかなりの行動を起こすこととなった。 今までにもあいつは俺に対して数多くの行動を起こしていたのだが、 やってることは子供のいたずら程度だったので対して苦痛にはならなかった。
だが、中学になってくると徐々にエスカレートしていった。 時々、來夢が俺に弁当を作ってくれるのだが、事もあろうにあいつは俺のいない 隙を突いて弁当を盗んで挙句の果てには完食された。
そんな風にあいつの行動に徐々に嫌気が差してた俺はあいつにこう言いのけた。
“俺・・付き合っている奴がいるんだ”
“そう・・なんだ・・”
無論、これはブラフ・・このときの俺には付き合っている奴などいない。 ただ、あいつの過ぎた行動を抑える働きになってくると思っていた。 だけど・・あいつの反応は予想外を通り越してかなり寂びそうな顔だったと いうことは覚えている。なんかしっくりこないような後味の悪さだった。
633 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/12(月) 09:34:07.16 ID:gqe6rGa+0
それ以降は俺の目論見どおりにあいつからのあれは激減したのだが、それと 同時に寂しさに近いものを覚えたこともまた事実だ。 それからはその寂しさを真際らす為に自棄気味に別の女性と付き合って・・別れ ての繰り返しだった。なんら味気も何もなく新鮮味のない行為だったことは覚えている。
初体験といっても気持ちいいとかそんな気持ちなんて全く起こらなかった。
(・・なんだろうな。考えれば考えるほど味気ないものだ。もうやめよう・・)
考えるのをやめた俺はそのまま寝ようとした。昔のこと振り返ったってかえって 虚しいだけだ。ここはすべてを忘れて眠るに限る・・
そう・・俺は考えると、横から体中から柔らかい感触が伝わってきた。
224 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/13(火) 05:07:35.68 ID:UT8wowNP0
今日のあいつの不可解な行動はよくわからない。今俺の隣に どういうわけかあいつがいる。
何故だか状況がよくわからないのだが・・
「なッ・・何してんだよ!!」
「ねぇ、あんた誰とやったの?」
「はぁ?・・別に誰だっていいじゃねぇかよ」
いきなり何を聞くのかと思えば・・今日のあいつはいったい何があったんだ? その意図や目的がさっぱりわからん。
「だから・・あんたは初体験は誰としたのかって聞いているの」
「・・何が言いたいんだ。今日のお前はどこかおかしいぞ?」
まさにその通り。今日のあいつはおかしすぎる、今の不可解すぎる行動が それを示している。俺は寝たい気分満々なのだがどうにも寝かせてくれない・・
それどころか徐々にあいつは俺の体に纏わりついている。何がどうしたというんだよ・・一体!!
225 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/13(火) 05:10:23.05 ID:UT8wowNP0
「お前何が・・」
「この・・ニブチン!!!私は・・私は・・あんたが好きなの!!!!」
「・・マジかよ」
何だって言うんだ。何だよ・・あいつはこの俺が・・好きだって言うのかよ。 冗談じゃねぇぞ!!!こんな展開はドラマや舞台とかでもありえないことだ。 俺はただ・・あいつのことは好きとかそんなんじゃないと思う。 友達として・・好意を持っているのは事実だ。でも、最近はあいつに対する 感情が妙に高まっているのも事実だ。まさかあいつのほうは俺にそういった 意識をしていたなんて思っても見なかった。いや、あいつだからこそ思ってもいなかったことだ。
この俺を異性として意識していたなんて・・とんでもない事実だ。
「お、おい・・」
「・・私はあんたが童貞を捨てたって聞いたときには安心したのと同時に ショックだった。いくら女体化しないって安心したとはいえかなりショックだったわ・・
もうそんな想い・・絶対に嫌よ――ッ!!」
あいつは涙声になりながらもただただ俺の体に力を入れながら抱きしめながら喋っていた。 肝心の俺のほうは・・呆然となりながらあいつの話を聞いていた。
226 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/13(火) 05:11:41.35 ID:UT8wowNP0
「だから・・私はもうあんたを離したくない。その気持ちはなんら変わりないわ。 ・・もう、私はあんたを離したくない。そこまで好きになったから・・
―――私はあんたを離したくない・・
ごめんね、今までに話せなくて・・」
「・・お前」
そうか・・だから、あいつはあの時あんな顔をしていたんだ・・ あいつはこの俺に想いを打ち明けた。
じゃあ俺はなんだ? この俺自身はあいつについてどう想っているんだ? あいつは今ここで俺が好きだとその想いを打ち明けた。 じゃあ俺はあいつに対してどう想っているんだ?
幼馴染・・友達?
違う・・違う違う違う違う違う違う!!! 俺はただ自分の感情に逃げていただけだ。俺はあいつに 対しての想いを本能的にどこかストップさせている。
あの時発した感情の正体。それは――・・
228 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/13(火) 05:13:56.58 ID:UT8wowNP0
「・・おい泣くな」
「・・・えっ?」
俺は思わず隣にいるあいつを抱きしめた。 あの感情の正体・・あれは誰かを想っている感情だ。 ・・今までなんで気がつかなかったんだろうな?
あの時、母さんが言った言葉の意味がようやくわかってきた。 やはり俺は男としてまだまだなようだ。考えてみれば・・あいつが俺に 対して起こした行動の数々は俺を振り向かせるための仕草・・一種の アプローチだったんだな。それを俺は・・なんで気づいてあげられなかったんだよ・・
前の來夢誕生日でイタリアのホテルに泊まったとき・・あの時のあいつの行動は 酔ったときのものじゃない。感情から出た本心だったんだ。 だけどそれを俺は・・あえて目を瞑った。自分の本当の気持ちを無理矢理胸に 押し込んだ・・だから余計にあいつを傷つけてしまった。そういったことの連続で あいつは傷ついていたんだろう。
俺はしばらくあいつを抱きしめるた・・あいつに対するさまざまな思考や想いが 入り混じりながら頭の中が駆け巡る中・・その覚悟を決めた。
感情だけに身を任せる覚悟を・・
229 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/13(火) 05:20:42.57 ID:UT8wowNP0
「ごめんな・・長い間、気がついてやれなくて」
「・・バカ、あんたのことだからそんなことは覚悟はしていたわ。 だけど・・遅すぎよ」
互いに抱きしめている力が強くなる。俺は思わずあいつの頭を撫でた。 サラサラしてきれいな髪質・・ますます愛おしさが増大だ。それと同時に 俺の感情も強くなってくる。だけど・・今までの自分の鈍さが憎々しくなってもくる。
そのまま俺は今までの戒めの意味を籠めてそっとあいつの唇にキスをした・・
しばらくの口付けの後・・俺は裸同然のあいつを抱きしめながら そっと耳に呟いた。・・こんな風になったんだ。後はもう決まっている。 だけど、俺はそこで少し意地悪をしてみたかった。
俺のちょっとした悪戯にあいつが体を震わせるのが無性に愛らしい・・
「さて・・このままどうする?」
「私はいいわよ・・あんたが望むなら」
「そうか・・」
そのまま俺はあいつを抱き寄せるとあいつと共に漆黒の闇へと融けていった・・
230 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/13(火) 05:23:13.01 ID:UT8wowNP0
翌朝・・日差しがきつい中、俺は目が覚めた。横にはあいつが眠っている・・ ベッド越しで互いの姿を見てみると裸だ。昨日は少し夜更かしをしすぎたが・・まだ少し眠い。
「意外だったな・・」
「何が?」
「お前・・誰ともやっていなかったのか?」
昨日の夜に判明したこと・・あいつはヴァージンだった。その事実は俺に意外性と 驚きを同時に与えてくれた。まぁ、それと同時に安心感を与えてもくれていたのだが・・ こいつにも男性の付き合いは少なからずともあるはずだ。
俺以外の奴ともそういった行為をしていたのだと今まではそう思っていた。
「悪かったわね!!!・・でも、初めてがあんたでよかったわよ」
「・・そうかい」
俺は微笑しながら新たな関係を見定めるのであった・・
最終更新:2008年09月17日 19:34