『ご都合主義の秘訣』(2)

141 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/22(木) 17:51:10.76 ID:0bd404Xy0

「・・あの時は本当に困ったよ」

「ま、あの頃は本当に人付き合いに慣れていなかった頃だったからな・・」

レストランを出ると無性に夜風に当たりたくなった。 極力、容姿がばれないようにいったん着替えると、そのままワシントン郊外へと 歩いていった。身近な変装だと案外ばれにくいもので、沙織のファンとかにも 全く声をかけられることはなかった。まぁもしものことがあっても息子たち 同様、目に見えないところでガードがちゃんとついてくれているので安心できるだろう。

「しかし・・慶太は本当にお前の血を引いているからかい甲斐がある」

「・・どんなところだ」

うちの長男坊は比較的に遊び盛りでよく香水をつけているようだ。 俺の血を受け継いでいるのか女体化はしていない。どうやら、やることはちゃんと やっているようだ。まぁ、そこの点では心配はないのだが・・俺に似ているということは どういうことだ。もしかして・・経済の才能があるということなのか? すると、沙織は俺の心なぞ見透かしたかのように微笑していた。

142 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/22(木) 17:51:49.94 ID:0bd404Xy0

「フフフ・・それはな秘密だ。・・ただな、昔のお前と似ていることは確かだよ」

「あのなぁ・・」

訳のわからない言葉を言わされてはぐらかされてしまった。一体どこが似ているというのだ? そりゃ子供の頃はよく遊んでやって、周りからはよく似ていると太鼓判を押されていた。 性格は・・まぁ、冷静というかよく十条の娘とはしゃいでいたわりには、割と物事を よくはっきりと見ていたな。それ以外にどこが俺と似ているのだろうか?

「・・まぁ、そんなに考え込むな。十条にも昔から言われているだろう。 “お前は時々物事に深く考えすぎだ”とな。

まぁ、慶太が本当に好きな人と付き合っているのをみて見ればわかってくるさ」

「そういうことにしておくか・・」

俺は妙に納得させられると夜風に当たりながら昔のことを思い出していた・・

12 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/23(金) 21:26:14.99 ID:nit/mg5n0

「弁当は・・買っているのか?」

「ああ・・家事は苦手なほうだからな。でも、バイトでちゃんと飯代は稼いでいる」

あれから、俺の努力が実ったのか・・原稿用紙2枚目ぐらいの分量がちまちま だった沙織との会話も何とか2枚目ぐらいまでにキープすることができた。 どうも、沙織は家族とかのことには言いたくない事もあるので家族の会話は なるべく控えるようにしている。

おまけとしてか・・沙織はゆっくりながらも徐々に俺たちとも慣れてきたようだ。 まぁただ・・昔から人付き合いが苦手なためか、人は選ぶようでまともに会話で きるのは十条と俺ぐらいなものだった。

といっても十条が昼時に会話に入ってくることは滅多になかったので2人きりの場合が比較的に多かった。

「へぇ、意外だな。バイトしていたのか?」

「まぁな・・こればかりは自分で何とかしなきゃならないからな」

「なるほどね・・」

しかしまぁ・・よく人付き合いの苦手な沙織がよくバイトなんかできていたものだ。 そこが少し意外だった。俺たちは毎日そんな他愛もない会話で盛り上がって いた。傍からみれば他愛もない会話の数々なのだが、俺たちにとってはとても 大きく刺激的であった。

沙織も俺たちとの会話に促進されてきたのか、進んで自分からも 俺たちとよく話すようになった。

13 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/23(金) 21:27:23.80 ID:nit/mg5n0

「お前と十条は・・そんなに付き合いが長いのか?」

「まぁな、十条とは幼稚園のときからの付き合いだからな。腐れ縁って奴だ」

「・・腐れ縁か、人と付き合う暇なんて私にはなかったからな」

どういうことだろう・・俺はその内容を詳しく聞いておきたかったのだが、 余り人の事情に深入りしたくない。それに沙織は今までに友達とかそういった 存在はいなかったようだしな。 でもそんな俺の心に反して、俺の中で佐織の過去をもっと知りたいという願望も 現れ初めていた。珍しくそれらが鬩ぎあって俺の心の中は戦国時代へと到達していた。

「・・どうした?」

「あ、ああ・・なんでもないさ」

俺の吐息交じりの言葉と同時に帰りのHRの始まりのチャイムが鳴った。

14 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/23(金) 21:30:12.17 ID:nit/mg5n0

「・・どうしたの? 元気なさそうだけど」

「あ、姉貴・・」

その帰りの食事風景・・俺はため息の連続であった。 そんなブルーな心が続ければ食事に手をつける箸も止まってしまった。 真理は今まで家の家事全般を引き受けていた留美が嫁いでいってから 料理を始めることとなり、俺もそれに合わせて洗濯などの家事を引き受ける ようになった。 真理の料理は最初こそはやばかったが努力の成果もあり、気がつけばかなりの 腕前に上達していた。そんな姉の料理に手がつけられないのは、やはり 沙織のことだった。

沙織の過去を聞きたいという願望が日に日に強くなっているのを嫌でも 感じていた。だけど、無闇に人の過去を聞くなんて俺は余り好きではなかった。 それらが鬩ぎあい、俺に暗を与えていた。

「あんたがそんな様子だとお姉さん困るぞ」

「あ、ああ。実はな・・」

俺は意を決して姉貴に事の経緯を話し相談した。

すると姉貴は俺から事の事情をすべて把握すると少し目を瞑り考えながらこう言っていた。

15 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/23(金) 21:31:15.08 ID:nit/mg5n0

「じゃあ、うちにその子連れてくれば?」

「あのなぁ・・そんなことできたら始めから悩まねぇよ」

全く・・姉貴は変なことを言ってくる。これじゃあ・・

「でも、何もしないよりかはましでしょ?」

「うッ・・確かに」

姉貴の言っていることは一理あった。 確かにこのまま何もせずに放って置くなんてできないだろう。 それに沙織との進展がほしかったのも事実だ。別の恋愛感情と 言うものはない。

ただ友人と言うか何と言うか・・ただ、沙織について何か知りたかった。

「それに・・あんたね、リスクなしで得られると思うほど世の中は甘くないわよ」

「あ、ああ・・」

珍しく真顔の姉貴に言われ、ご飯を食べながらようやく俺の中で決意が芽生えた。

16 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/23(金) 21:33:13.54 ID:nit/mg5n0

「な、なぁ・・今日俺んち来ない?」

「へ?」

沙織にしては珍しく、驚きながらも俺の話を聞いていた。 あれから俺は考え抜いた末に・・沙織を家に誘うことにした。俺にとっちゃ これはかなりの賭けだ。もし断られればなんかこう・・何かが壊れてしまう。 それをひしひしと感じていた。沙織も突然の俺の提案に驚いてはいるよう だが・・

少しの間をおいてこう言ってくれた。

「大丈夫だ。今日はバイトは休みでたいした予定はない・・」

「・・本当か?じゃあ、放課後一緒に行こうぜ」

「わかった」

俺はうれしさを胸にしまいこんで沙織を誘うことに成功した。 しかしまぁ・・うれしさというのはそう簡単に胸のうちに収まりきれるはずもなく 十条曰く今日の俺は終始にやけ面だったようだ。

18 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/23(金) 21:40:38.09 ID:nit/mg5n0

「ここだ、姉貴がいるんだけどまだ帰らないみたいだから」

「そうか・・じゃ、お邪魔します」

沙織を家に連れてくると俺はそのまま沙織を家に入れてやった。 部屋に入れてやると俺はそのまま飲み物を用意して久々に自分の部屋で対愛も ない雑談を楽しんだ。そういえば女を部屋に入れたのはかなり久々だったな。

沙織はどことなくぎこちない様子で俺の部屋を見ていた。

「そんなに緊張しなくていいよ。久々の来客だからさ」

「あ、ああ・・男の部屋に入ったの初めてだからさ」

「そ、そうなのか・・」

そういえば・・沙織は友達いなかったのか?いや、少なくとも女の友達はいただろう。 まぁ、深く考えるのはやめよう。せっかくのいい空気がぶち壊しに なったらたまらないからな。軽く飲み物を置いてやると軽く会話をすることにした。 最初は緊張してガチガチだった沙織も徐々にこの状況に慣れてきたのか 以前と同じように会話をするようになった。

19 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/23(金) 21:42:21.91 ID:nit/mg5n0

「2人・・お姉さんがいるのか?」

「ああ・・1人は嫁いで行っちゃって、2番目のほうと一緒に暮らしているよ」

「そうか」

俺は落ち着いてきた所で家族の話をすることにした。 最初は少し不安だったが俺が自分の家族の話をしていると沙織も興味を持って それに返すように自分の家族の話をしてきた。どうも沙織は一人っ子のようで 母親と2人暮らしのようでバイトも家庭を支えるためにやっている模様。 互いの家族の話が済むと俺はすかさず姉貴たちのことについて話すことにした。

「それにしても姉貴たちが女体化したときは驚いたよ。 何せ誕生日の日に2人同時だもんな・・ってどうした?」

「女体化・・」

何かまずいことでも言ってしまったのか? 沙織は女体化という単語を聞くとぴたりと止まってしまった。 まさか・・沙織は女体化してしまった人間なのだろうか?

そうだったら悪いこと言ってしまったかもしれない。 何せ、女体化シンドノームはまだ世間的な見解はいいほうではない。 一応法整備は整っているもののまだ細やかな認知が足りない状況なのだ。

21 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/23(金) 21:44:08.58 ID:nit/mg5n0

「もしかして・・」

「・・いや、違う。ただ、今まで周りに女体化した人がいなかったからな。少し驚いていただけだ」

「そうか・・あ、帰ってきたみたいだ」

俺は下のほうから聞こえる姉貴の声に目が行った。 どうやらようやく帰ってきたらしい。下のほうから食材のにおいが 僅かだが伝わってきた。そのまま俺は沙織と自分の部屋に 待たせると姉貴がいる台所へと向かうことにした。

「えらい今日は遅かったな」

「ごめんごめん。ちょっといろいろあって遅くなっちゃった。・・あんた誰連れ込んだの?」

「あのなぁ・・連れ込んだんじゃねぇよ」

一応妙な誤解されたらたまらないのでツッコミを入れる。 それにしても珍しく姉貴は俺よりも遅く帰ってきたので何があったのかと 思ったが・・

大方、今付き合っている彼氏と喧嘩でもしたのだろう。多分それで遅くなったんだな。

24 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/23(金) 21:46:23.18 ID:nit/mg5n0

「ついでだからその子の分も作ってあげるわよ」

「いいのか? ・・じゃ、連れてくるよ」

姉貴の粋な計らいにより沙織の分も作ってもらえられるようになった。 俺は二階にいる沙織にその事を伝えに行った。二階にいた沙織は少し 驚きながらも、携帯で親に連絡を取って了承を得た。

「無理しなくていいんだぞ」

「・・大丈夫だ。挨拶しないといけないな」

「ああ、じゃあ下にいるはずだから行こうぜ」

そのままこくんと首を小さく縦に振った沙織は俺と一緒に姉貴のいる台所へと向かうことにした。

186 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/25(日) 01:45:22.70 ID:+Xq9egLd0?

「あんたもかわいい子ゲットしたわね」

「あのなぁ・・そんなんじゃねぇって!!」

何気ない食事風景・・俺と姉貴、そして沙織が一緒に食を共にしており、自ずと 楽しい会話が広がっていた。その中で俺はふと昔を思い出していた。真理は 赤みのかかったセミロングの髪に結構整った顔と社交性の高さからか周辺から かなりモテていた。性格はどちらかというと女性に近いものであった。 よく十条や俺よりも一歩上の立場で見据えられてからかわれていたものだ。

そんな沙織を台所へ連れたとたん・・案の定、俺は一気にからかわれた。 元々、真理は男の頃から人をからかって反応を楽しんでいた性格だったから 女体化してから更にこういった色沙汰が好きになったんだろう。それに沙織を 気に入っているのか結構喋っていた。でも食事風景が賑やかになるのはとてもいいものだ。

沙織も小ぶりながらも味わってご飯を食べていた。

「・・おいしい」

「そうか」

「ま、食べたくなったらいつでも来ていいわよ」

姉貴のこの言葉に沙織は僅かな笑顔で応対した。その笑顔は見たものを引き込める何かがあった・・


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最終更新:2008年09月17日 19:41
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