470 名前:
◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/26(月) 18:49:28.52 ID:Pg+mK9jU0
キャンプから数日経っただろうか・・あれから沙織に対する見解が少しだけ 変わっていった。なんていうのだろう・・余りよくわからないのだが、とにかく沙織に 対する見解が徐々に変わっていったのだけはなぜか自覚できた。 いつも、学校に来て沙織と話す時に少しばかり鼓動が高鳴ってきていた。
「ま、別にいいか・・」
「何ぼやいているんだよ。写したんなら早くノート返せよ」
「へいへい」
俺は十条の宿題を写し終えるとノートを返した。十条はああ見えて俺よりも 結構頭がよく成績も結構すこぶる良かった。だから俺はよく勉学面では昔から こいつにお世話になっていた。中学のときにこの高校を受けるときにも十条に 良く手伝ってもらい何とか合格できたものだ。こういうときの幼馴染はとてもいいものである。
471 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/26(月) 18:50:23.37 ID:Pg+mK9jU0
「そういえば・・留美さんは最近帰っているのか?」
「ああ・・そういや最近は帰っていないな。ああ見えても主婦だからな。子育ても忙しいらしい・・」
「へぇ~、あの留美さんがね・・・」
夏休みの終わった毎年この時期になると、大学を卒業してからしばらく働いて 嫁いで行った一番上の姉の留美は帰省するために家に来てくれる。お盆でも 何でもないのだが、なぜかこの時期が一番落ち着いているらしい。 しかし、今年は少し向こうの事情が変わったようで今年は姿を現すこともなく 十条も多少は心配しているようだ。
「ま、そのうち向こうが勝手に来るさ。それよりも次数学だったな・・ノート見せてくれ」
「またかよ。・・今度なんか奢ってもらうぞ」
「わかってるって」
十条からノート貰うとそのまま自分のノートに写す。懐を少し痛めるが仕方ないのはご愛嬌の部類に入る。
178 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/27(火) 22:43:59.82 ID:vsDR3dki0
その帰り道・・十条や沙織といつもどおりに話して別れた後、俺は少し寂しくなった 我が家へと向かった。やはり、なんだかんだ言っても留美が嫁いでいってから 寂しさは禁じえないものだった。俺が小学校の2年生の頃に当時中3だった 留美は15歳の誕生日に女体化した。
当時、まだ幼さが残っていた俺は男兄弟の末っ子だったこともあってか姉貴が 非常に欲しかった。だけど、留美が女体化したときには幼さながらも留美の 心情を察してか、なかなか素直には喜べなかった。
留美が男の時だった頃は共働きだった両親の影響もあってか、家の家事を 一手に引き受けてくれた。性格はかなり男らしくて留美が男のままだったら女に かなりモテただろう。それぐらいに留美は男らしい性格であった。 女体化してからもその性格に変わりはなく、漢道を貫きながらも人当たりは いいようで女の友人も多数作っていた。
そして俺が高校に入ったのと同時に留美は就職先の男性と恋に落ちて・・家から巣立っていった。
「今年は・・都合悪かったのかな」
自宅前のドアに手をかけると俺はボソッと呟くようにしながら言葉を吐いた。 やはり毎年恒例である姉の帰省がないことに少しばかりの寂しさを感じた。
まぁ、無理もないな・・結婚してから間もなくして子供を授かったんだから都合で これないのも無理もない。今までこうして家に来れただけでもすごいものだ。
そんなことを思いながら俺は家のドアに手をかけた。
180 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/27(火) 22:47:25.49 ID:vsDR3dki0
「ただいま・・ん?これは・・」
俺は家に入るとどこか懐かしいにおいが家の中に充満していた。 においにつられた俺はふと、ふらふらとにおいが発せられている台所へと 向かってしまった。そのまま台所へと向かった俺はふと目を凝らしてみると 懐かしい光景が広がっていた。
「真人・・随分と料理がうまくなったな」
「まぁね。・・あ、お帰り」
「ん?・・ああ、明人か。久々だな」
台所には2人の女性が占領している・・1人は真理なのだが、もう1人の 女性は赤みのかかった真理とは対照的で黒くて艶のある色だった。 それに大人びて完成された顔立ちだった。 俺はその女性にかなり見覚えがあった・・いや、忘れもしない。 かつて俺の兄だった元男性(ひと)、俺の家族で両親に次ぐ絶対的な 権力者で・・同時に優しさを与えてくれた一番の姉である留美だった。
留美は俺の姿を見つけるや否や、いつものように気軽に声をかけてくれた。
181 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/27(火) 22:50:42.26 ID:vsDR3dki0
「久々だな・・って今年は音沙汰がなかったからてっきりこれないと思ったんだけど・・」
「俺にもいろいろあってな。十条のバカは一緒じゃなかったのか?」
「ああ、今日はな・・それよりも今日は1人なのか?」
見たところ、どうも留美1人のようだ。子供は旦那に預けて今日は1人で来たのだろうか・・
「いや、大樹は部屋で寝かせている。 それよりもお前な・・エロ漫画やビデオなんて後生大事にとっておくな!
- あんなもんなくたってお前はもう童貞じゃないんだろ?」
「う、うるせぇな!!」
「はいはい、わかったから。さっさと部屋に戻れ!馬鹿でかい図体をしたお前が台所へいたら狭いんだよ!!」
再会の喜びなくいつものペースのまま留美は俺をからかうと真理と一緒に 料理再開した。でもまぁ、子供産んでも相変わらずだなぁっと思ったりも してしまう。からかわれ台所から追い出された俺は仕方なく自分の部屋へと戻ることになった。
部屋に戻った俺は久々に戻った日常に戸惑いながらも自分のペースを刻み続けた。
182 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/27(火) 22:53:34.52 ID:vsDR3dki0
「全く・・結婚してからお淑やかになる女性なんていないもんだな」
部屋でリラックスしながら音楽を聞いていた俺はふと言葉を漏らした。 結婚してからも性格が全く変わりない姉・・それでも心にゆとりが見えて きているような気がする。
留美は女体化に興味を持っていた真理とは違って女体化には少なからず 衝撃を受けていたようだ。今までどおりに家事はしていたものの、ショックは 隠しきれないようでしばらくは会話が激減したのを覚えている。 でも、立ち直ったのも事実だ。
結婚して子供が生まれて家庭を築いていく・・そんな生活に憧れてはいないが 少し興味がないともいえない。いずれは真理のほうも結婚して留美と同様に 家庭を築いて家族というものを作っていくだろう。
じゃあ・・俺はどうだろう?
183 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/27(火) 22:54:44.09 ID:vsDR3dki0
今までの俺は特定の彼女は作ってはいたが、反りが合わなかった。 だから、互いの干渉しあうレベルを熟知している十条たちが羨ましい。 真理もなんだかんだ言って恋人という存在もいる。元男というハンデを 抱えながらもちゃんと一般的な恋愛を味わっている・・
なら、俺は・・俺は取り残されている気がする。沙織という存在がいるものの 沙織は俺に恋愛感情など持っていないだろう。 って・・なんで沙織がこんなところに出てくるんだよ。 意識なんてしていないはずなのに・・
「・・台所に向かうか」
どうにもやりきれない気持ちになった俺は台所へと向かうことにした。
185 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/27(火) 22:57:49.32 ID:vsDR3dki0
「あ、ちょうどよかったわ。今できたところよ。 ・・それにしてもやっぱ現役の主婦やってる姉さんにはやっぱ適わないわ」
「そうか? 俺も真人の成長振りには驚いたぞ。 正直俺が結婚したときに家のことは心配だったけど何とかやっていっているようだな」
「まぁね。これでもお姉さんしてるから」
姉2人が家事のことで盛り上がっている中、テーブルには懐かしい料理が たくさん並んでいた。その中には昔よく留美が作ってくれていた料理がたくさん あった。懐かしさを覚えた俺は自然と食卓の席に着いた。 留美のほうもまだ幼い甥に離乳食を与えていた。
しばらく懐かしい一家団欒が戻って俺も嬉しかった。
186 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/02/27(火) 22:59:13.18 ID:vsDR3dki0
「懐かしいな・・俺の好きだったものばかりだ」
「そうね。昔もよくこうして3人で一緒にいたわね」
「ま、後は付属品として十条のバカがよく来たことぐらいか・・」
俺たちは昔を懐かしむと自然と料理を摘んでいた。 そういえば、留美の旦那の姿が見えないようなのだが・・もしかして夫婦喧嘩して ここに着たのか?それだったら納得ができる理由だ。 それにしても・・1歳になってる甥っ子まで連れてここに来るなんてな。 よほどのことがあったのだろうか・・?
ま、いいか。たまには3人で飯を食べるのもいいだろう。時が変わっても 姉貴たちが変わらないでいてくれるのが一番いい・・
そんな甥っ子は俺の考えを知ってか知らずか・・離乳食を食べながら無邪気に笑っていた。
649 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/01(木) 19:17:55.83 ID:rvJ1B8fE0
「わかった・・んじゃな」
携帯を切るとそのまま俺は出かける準備を始めた。 つい数分前、十条から久々に遊ぼうと連絡が入った。姉貴たちは 当分は家にいるつもりだし、ゆっくりとできる。 なら、ここは遊んでしまうのが得策と・・俺は自ずと考えが固まった。
そのまま軽く支度をして玄関に出ると・・背後から人気がした。 俺は思わず後ろを振り返ると・・甥っ子を抱いた留美が立っていた。 嫌に不気味だったのを覚えている。
留美がまだ1歳の甥っ子を抱えて俺のほうを見ながら何を考えたのか・・ 薄っすらと笑みを浮かべながら俺を見つめていた。
「な、なんだよ・・」
「外にでるんだろ。なら、ついでに大樹も一緒に連れて行ってやってくれ」
「は、はぁ?」
留美の行動に困惑する俺・・そんな俺をよそに留美は抱えていた甥っ子を 俺に預ける。大樹はまだ歩き始めたばかりなのでおぼつかない感じなのだが、それが とても愛らしく可愛げのある行動だった。
だけど、予定外のことに俺は驚く。せっかく十条と遊べるのに・・
650 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/01(木) 19:19:44.07 ID:rvJ1B8fE0
「あのなぁ・・俺はこれから」
「・・これからなんだ? 今後は大樹にお前のことをおじさんと連呼させてやるぞ」
留美はにんまりとしながらも有無を言わせない睨みで俺を見つめていた。 大樹を俺に押し付けられながらも、俺にも列記とした言い分がある。 ここで簡単に退くわけにはいかない。大樹なんて連れてしまったら十条にも 迷惑がかかるし余計な気を遣わせてしまう。
ここは俺の意志を押し通すしか対策はない。
「そもそも大樹は・・」
「よぉ、来たぞ。遅いから先に来ちゃったぜ・・ゲッ!!る、留美さん・・」
「なんだ、十条のバカと一緒か。なら頼んだぞ」
なんというタイミングの悪さか・・十条が来たと同時に大樹を押し付けられて しまった。留美は漢道を通してきたため強気のまま意志は絶対に曲げない。 やはり俺程度が到底逆らえる人物ではなかった。
それは十条も同じことだったが・・十条の場合は、今の彼女はこの目の前に いる留美の紹介で出会ったのだ。だから十条は人一倍、留美には頭が上がらない・・
結局、留美の勢いに押されて・・俺と十条は甥っ子を連れて外にでることとなった。
651 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/01(木) 19:22:56.46 ID:rvJ1B8fE0
「はぁ・・まさか、留美さんがいたとはな」
「昨日の昼頃に来たらしい。旦那がいないところをみると夫婦喧嘩だなありゃ・・」
「夫婦喧嘩ね・・」
とある公園での会話。こうしてみるとまるで爺臭いものだ。 十条と大樹と一緒にぶらぶらと歩いていたのだが・・流石に子供はよく走る。 無邪気に遊ぶ甥っ子が何となく眩しく感じてしまう。何も考えていないから こそこうして走って輝いているのだろうな。
人間というのはよくできているなとつくづく感じてしまう。
「はぁ・・毎度のことながら姉さんには困る」
「そりゃ俺も一緒だ・・って、危ない! お前な、自分の甥なんだから少しは自分で面倒見ろよ」
「あ、ああ・・悪い」
転びそうになった大樹を十条が何とか救ってくれた。 大樹も少し驚いた様子だったが、十条が元の姿勢に直してやると再び薇の 掛かった玩具のように公園を走り始めた。しかし、こんな光景が続くとぼんやりと してしまう。なんかこう・・すべてを忘れてしまいそうなのんびりとしてしまいそうな気分だ。
本当に人間てのはよくわからないものだ・・
そんな気分に俺はなっていると十条が別の方向を指差した。十条が指差した先には・・幸が偶然か、何と沙織が歩いていた。
652 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/01(木) 19:26:13.46 ID:rvJ1B8fE0
「あ、あれ・・小林じゃないか?」
「へっ?・・本当だ。お~い!!」
俺は走ってきた甥っ子を抱えると、歩いていた沙織を呼び出した。 沙織も俺の声に反応したのか俺らのいる公園へと歩みを進めてきた。
まさかこんなところで沙織に会えるとは思ってもみなかったな。 大樹は抱えられながら不思議そうな顔で俺を見つめていた。
沙織は俺たちのほうへと向かってくると不可解そうな視線で俺たちを見ていた。
「お前たち・・それに子供?」
「ああ・・この子は俺の姉貴の子供さ」
「・・ということはお前はおじさんか」
「お、おじさん・・」
――うっ・・流石にそうストレートに言われると堪えるな。 事実は事実なのだが・・やっぱりショックだな。沙織に悪気が ないのはわかっているけどな。
でも、改めて言われるとショックだな・・
653 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/01(木) 19:29:21.01 ID:rvJ1B8fE0
「ハハハ・・ところで小林はこんなところで何をしているんだ?」
「いや、散歩してただけだ。ここ家が近いし・・」
家が近い・・ということは沙織の家はこの近所にあるのか。少し意外だな。 そんなことを俺は思っていると突然沙織は興味そうな目でじっと俺を見つめていた・・
「ん? どうした?」
「な、なぁ・・その子抱かせてくれないか?」
沙織は少し照れながら抱えていた甥っ子を見ながら言った。 たしかに大樹はまだ一歳になったばかりだ。抱っこしたくたくなのも無理はない。 俺は抱えていた大樹をそのまま沙織に移し、沙織は覚束ない手つきのまま 大樹を抱っこしていた。
ふとその光景を見てみると覚束ないままながらもその姿はとても魅力的で 凛々しいものだった。大樹もそんな俺に同調するかのように無邪気に笑っていた。
654 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/01(木) 19:32:58.30 ID:rvJ1B8fE0
「子供なんて抱っこしたの・・久々だ」
「ハハハ・・なんだかお母さんみたいだぞ」
「な、何言ってるんだよ・・」
不意に言った一言・・お母さんといわれると沙織の表情が少し変わっていた。 今までに笑顔とかそういった表情の変化は確認できたが、見るからに戸惑ってい る顔つきは不思議ながらすごく魅力的なものだった。 もっとそんな表情を見たかった俺はそのまま少しからかっていると、目論見とおり 沙織は見るからに顔を慌てさせながらそのまま反論してきた。
「お、お前な・・私なんかがお母さんとか向くわけないだろ!」
珍しく沙織にしては強い口調だった。 それと同時に体も小刻みだが動き出したため、抱っこされていた大樹も戸惑い 気味だった。そんな空気を察したのか、十条はすかさず大樹を沙織から放して そのまま自分の腕に大樹を収めていた。
655 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/01(木) 19:35:22.93 ID:rvJ1B8fE0
「お、おい!! ・・危ないな。お前も少し小林をからかいすぎだ!」
「ハハハ・・悪い悪い。でも、大樹を抱っこされているのを見るとなんだかそう見えてな」
「そう・・なのか」
先ほどの表情とはまた違い、きょとんとした表情のまま沙織はじっと 考え込んでいた。俺も少し沙織が家庭に入った姿を想像してみるが・・ なんだか想像するのも少し難しい。 元々、物静かで人付き合いの苦手そうな沙織が家庭に入るなんて 少し想像するのも難しかった。このまま、ないものを想像しても 仕方ないので俺は2人にあることを提案してみた。
「ま、まぁ・・せっかくこうして3人揃ったんだしどこか行かないか?」
「そうだな。俺は別に構わないが・・小林は大丈夫か?」
「ああ・・」
そのまま沙織の承諾を貰うと眠りかけている大樹を抱えたまま俺たちは適当にぶらつく事にした。
659 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/01(木) 19:46:53.04 ID:rvJ1B8fE0
俺たちは眠ってしまった大樹を抱えながらあてがいもなく外をぷらぷらと 歩いていた。だけど、俺はなんだか無性にうれしくなってきた。十条から 大樹を貰うと昔、抱っこしてやったときと比べてずっしりと重たくなっていた。
「1歳児になったら結構重いな・・前抱っこしたときよりも重くなってる」
「意外だな、わかるのか?」
「まぁな・・」
俺は態勢を立てなしながら眠っている大樹を抱っこすると子供独特の 重みを体中に感じていた。沙織はそんな俺の行動を不可解に感じながら しみじみと見ていた。すると後ろにいた十条がとんでもないことを言い放った。
「お前ら・・なんだか夫婦みたいだな」
「なッ・・」
「お前なッ!! それにさっきからかうなって言ったの誰だよッ!!!」
全く・・さっきはからかうなって言っていたのになんて奴だ。 それに冗談スレスレのこと言ってきやがったな。俺たちが夫婦に見えるって・・ そりゃ、今は子連れだからって夫婦はないだろ夫婦はッ!!
沙織のほうも・・完全に驚いた様子で頬が薄っすらと赤みのかかった色に変化した。
661 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/01(木) 20:01:26.68 ID:rvJ1B8fE0
「わ、悪い悪い・・本当にそんなんじゃないんだよ。その何というか・・雰囲気がな」
「あのなぁ・・勝手に夫婦にされても困るよな?」
俺は隣にいる沙織に同調を求めた。そりゃ向こうだって勝手に夫婦にされちゃ困るはず・・
「あ、ああ・・こ、困るな」
「あのなぁ・・」
相変わらずストレートに物事捉えるよな。向こうは冗談のつもりだろ? だけど何だよこの戸惑いようは、本気で考えちゃいないよな? だとしたら困るぞ俺としても・・
今の時点で沙織に対するのはただの友達ということだけだ。 それが一気に夫婦とかそういったものになるような感情などあるはずがない。
「まぁ、変なこと言って悪かったよ。それよりもいい時間になったから帰ろうぜ」
十条はそう言って空を見上げるといつの間にか辺り一面はピンク色の空に 染まっていた。携帯で時刻を確認するとすでにもう夕方だった・・
そろそろ留美のほうも心配しているし帰ったほうがいいかな?
662 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/01(木) 20:04:21.61 ID:rvJ1B8fE0
「本当だ。ぷらぷら歩いていたらこんな時間になっていたのか?」
「あ、私もう家に帰らなきゃいけない。ちょうどバイトの時間だからな・・悪いがここで失礼するぞ」
「ああ・・また学校でな!!」
俺と十条は帰る沙織を見送りながらその場を後にした。 ・・しかしまぁ、本当に俺と沙織は夫婦に見えるのだろうか?
もしそうだとしたら・・結構うれしいのかもしれないな。 それに、あの言葉を聞いてから沙織の様子はちょっとばかしおかしいところが あった。妙にあがっているというか・・よくわからないものだったのは確かだった。
「さて・・俺もお暇させてもらうよ」
「待て、お前は今日は俺ととことん付き合ってもらうぞ。姉貴も久々にお前に会いたがっていたしな」
「わ、わかったよ・・」
明らかに留美との再会を嫌がる十条・・まぁ、無理もないだろう。 だけどさっき言った言葉の責任をちゃんと取らせないとな・・
「留美さんといるのはちょっと・・」
「姉さんもお前と会いたがっていたぞ。・・今日は大人しく付き合え」
「・・わかったよ。こうなったら久々にいじられてやるよ」
そして帰宅したその日・・十条は見事に留美のおもちゃにされていた。
最終更新:2008年09月17日 19:42