『ご都合主義の秘訣』(5)

331 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/03(土) 04:06:37.16 ID:K5+d2jhH0

「まさかあの時十条の言った言葉がこうして現実になるとはな・・」

「・・嫌なのか?」

再び思考を現実に戻した俺はベッドの横にいる妻から軽く突っ込まれた。 もう40を過ぎているのに沙織の体はとても若々しく傍目から見ている と20代後半に見えるだろう・・スタイルも若いときのままに変わりはない。 だからこうして女優という職業を何十年もやっていっているのであろう。 沙織の若々しい肉体を見ていると俺だけ老けてしまったのかと思ってしまったり もしてしまう。とても18歳と14歳の子供がいる母親だとは思えない。

互いに裸のまま俺らはしばし官能的な空気に酔いしれていた。

「嫌かどうか・・試そうか?」

「やめておく・・っと言いたいところだけど――ッ」

沙織がすべてを言う前に俺はその口を塞ぐ。 互いの舌を絡め合わせる刺激的な濃厚なキス・・それは淡く儚い官能への 入り口となるもの。

俺は沙織の唇を強引に塞ぎこむと、指を躰の部分に向けて動かせる・・

333 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/03(土) 04:10:49.23 ID:K5+d2jhH0

「んっ・・」

「フッ・・時代が経っても俺たちは変わらんな・・」

沙織から発せられる別の声・・それを俺はじっくりと聞ける。 夫として・・これを聞けるのは過去にも今にも――・・俺唯1人だけ。 俺だけが妻として女として沙織個人を独占できるものだ。 更に濃厚なキスから徐々に指先は自然と沙織の躰へと滑らせていく・・ 互いに少し酒を飲んでいたため、随分と積極的になったようだ。

指を滑らしたところからはピクリと女性特有の身体が反応する。 だが、それにも構わず俺は沙織を責め立てる。それに反応するかのように 沙織の身体は感じ始めたのか、小刻みに震えが発せられた。

だけどそれと同時に沙織特有の温もりが俺の体にじわりと伝わってきた・・

334 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/03(土) 04:11:43.51 ID:K5+d2jhH0

「んあっ・・お前は・・・昔と変わらない・・な・・・あんっ・・」

「だな。お前も・・・昔と変わりないよ。こんなところかな・・」

「ちょ・・そ、そこは ――・・あっ、あんっ」

俺は少し意地悪そうにしながら強引に沙織の足を巧みに交わしながら 膣へと強引に指を入り込ませる。すでに感じていたのか・・膣から指を出すと 音を立てながら愛液が人差し指と中指にかけて纏わり付いていた。 体のほうはすでに準備は完了というところだ。

沙織はテレビでは絶対に見せない顔つきで俺に求めてきた。

「もう、我慢できない。・・来てくれ」

「言われなくても・・たっぷりと可愛がってやるよ」

そう沙織の耳元で呟くと、すべてを忘れて官能の海へと俺たちは どっぷり浸かった。すると・・過去の記憶がまた蘇ってきた。

結構アバウトだな記憶って奴も・・

335 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/03(土) 04:14:24.03 ID:K5+d2jhH0

「演劇・・?」

「ええ、演劇部の知り合いからです。何でも演劇部にふさわしい人物だそうで・・ 小林さんとお知り合いのあなたから伝えておいてください・・」

留美の姉貴の夫婦喧嘩が丸く収まって家に帰っていた頃、廊下できょとんと しながらそのことを伝えられた。春日 泰助という名の少年は隣のクラスにいた 大人しそうな少年だ。噂ではあの礼子と何かしらの関係があるらしい。 その初対面の彼からいきなりそんなことを言われた。 言うならば沙織を演劇部へとスカウトしたいようであった。

「用件はわかったが、なんで俺に言うんだ? 俺よりも直接本人に・・」

「ハハハ・・すみません。 あなたが彼女と仲良くしていたものなのでね・・では、伝えておいてください」

そういって春日 泰助なる人物は俺の元から姿を消した。 なんで俺なのかはよくわからないが・・周りも俺と沙織が仲のよい友達と 認識しているんだな。なんかうれしいのか複雑な気分だ。

それにしても演劇部か・・よくわからないが沙織がスカウトされるということは よほど目をつけられているようだ。もしかしてそういった才能が沙織にも あるのかもしれないな。普段の沙織はそういった面を余り見せないが・・ もしかしたらその中に才能が秘められているのかもしれないな。 そう考えると見てみたくなったな・・沙織の中に秘めているその才能を!!

そう決意した俺は十条と話していた沙織のほうへ向かうことにした。

337 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/03(土) 04:16:29.08 ID:K5+d2jhH0

「よぉ、何話していたんだ?」

「ああ・・なぁ、沙織」

俺はふと沙織の名前を呼んでみた。 沙織はそんな俺の言葉に反応したのか・・多少戸惑いながらも応対してくれた。

「な、なんだ・・そ、そんな呼び方されると少し緊張してしまう」

「あのなぁ・・あ、そうだ。演劇部がお前に顔出してほしいってよ・・どうする、行くか?」

沙織に事の経緯を伝えると、沙織は少し驚きながらも俯きながらも その愛らしい顔で少し考えていた。それにしても・・俺が“沙織”って呼んだの 初めてだっけかな?

十条にはよく言っているのだが・・実際に言ってみるとここまで驚かれるなんて・・ かなり意外だった。やっぱり女の子に向かって下の名前で呼ぶのは驚くべき行為なのだろうか?

そんなことを俺は考えていると、傍から聞いていた十条が先ほどの俺と同様に驚きながらもこう言ってくれた。

339 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/03(土) 04:19:04.43 ID:K5+d2jhH0

「ここの演劇部って言えばかなり有名だな。 それにスカウトされるってことは小林の素質はすごいものだってことだな」

「そう・・なのか?」

沙織は更に戸惑っている。まぁ、無理もないと思う・・ それにしても・・沙織に本当にそういった才能があるのだろうか。 いつも沙織の近くにいる俺や十条にはどうも見当がつかなかった。 というかむしろ演劇部がどこをどうして沙織のどの部分に目をつけたのかが謎であった。

「まぁ、なんにせよ。帰りに一回行って見ようぜ」

「・・そうだな」

俺の提案に沙織は意外にも素直に了承してくれた。

340 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/03(土) 04:21:47.02 ID:K5+d2jhH0

そして放課後・・演劇部が練習している体育館へと向かった。 体育館に着いた俺たちは中に入ると、猛烈な声と台本片手に台詞の 読み上げなど・・どこぞやの劇場みたいな練習方法を取り入れていた。

ほかの学校とは違う演劇部の活動に俺たちはただただ圧倒されていた。

「流石に名物とあってすごいな・・」

「ああ・・それにここの演劇部ってスポーツクラブ並にきついんだっけな」

十条は熱気溢れる演劇部の練習風景を見るとそうポツリとつぶやいた。 俺も演劇部の噂はたびたび聞いたことがあった。ここの演劇部は野球部や サッカー部の並みにきついもので完全実力制だそうだ。 噂では退部者はかなりの人数になるらしい・・その反面、指導が行き届いて いるのか、演劇部は校外問わずかなりの好評だ。文化祭ではかなりの客数だったらしい・・

そんなことをぼそりと考えていると・・演劇部の部長らしい女性が俺たちに気がついたのかこちらにやってきた。

「あら? ・・もしかして入部希望の人かな?」

「あ、あの俺たちは・・」

女性は中ぐらいの身長ながらも演劇を売りにしているだけあってかなかなかの スタイルの持ち主だった。それに少し大きめの眼鏡が特徴であった。

女性は俺たちを見つけると新たな入部希望者と勘違いし始めたようだ。

341 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/03(土) 04:24:37.20 ID:K5+d2jhH0

「あ、私は新藤 茜・・ここの部長をしているわ。 今ちょっと新しい劇の練習しているからね。

それでみんな気合が入って・・あれ!?あなた・・例の子じゃない!!」

茜という女性は沙織を即座に指差すと、まるで最終兵器を手に入れたかのように 興奮しながらチャームポイントである眼鏡のレンズがキラリと光ると沙織を解説し始めた。

「知ってるわよ!!・・小林 沙織、今年2年に転校してきた演劇部きっての 期待のニューフェイス!!

前々から入部させようと思って期待してたのよ!!」

「で、でも・・演劇なんてそんな才能・・」

「言葉よりも行動!!さっ、舞台に上がって演じるのよ!!!!」

戸惑い気味の沙織を茜は更に押し上げる。流石に伊達に部長はやっていない ようだ。沙織はそんな部長に台本を渡されると勢いに押されて舞台の上に立ってしまった。 沙織が舞台に上がった瞬間、今までの熱気は水を打ったような静けさに変化して おり、一同は勢いに押されて舞台に上がった沙織に注目がいった。

沙織はたくさんの注目に戸惑いながらも徐々に落ち着いたのか目を瞑り・・しばらくして目を開けるとこう言い放った。

343 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/03(土) 04:31:39.65 ID:K5+d2jhH0

「・・主よ!!どうか私たち哀れな子羊に慈悲の手を――ッ!!」

静かだった周りが更に静かになった瞬間だった。 すると、俺は思わず拍手をしてしまった。そんな俺につられるように十条や ほかの部員も舞台に立っている沙織に向けて惜しみない拍手を捧げた。

なぜ、俺が本能的に拍手をしてしまったのかはよくわからないが、台詞を言った 沙織の迫力や顔つきに体のしなやかさ・・俺は完全に沙織の演技に見惚れて しまったのだ。

これが沙織の中に秘められていた才能だと気づいた瞬間でもあった。

345 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/03(土) 05:23:10.30 ID:K5+d2jhH0

「・・やっぱり、私の目に狂いはなかったわ!!!あなたの才能ならどんな 舞台でも絶対にこなせるわ!!!!

どう・・演劇やってみない?」

「でも・・」

やっぱり、まだ決断が固まらないのか・・沙織は再び戸惑いながら 顔を下に俯いた。部長の言っていることとは少し違うのだが、さっき台詞を 言ったときの沙織は思わず別の人物に見えてしまった。

俺らが普段接している沙織とはまた別の人物・・その人物には自然と人の 心を掴む“何か”が確かにあった。そして俺は沙織の中にある“何か”によって 俺は心を掴まされた。

あの沙織の姿をもっと見てみたい・・そんな願望が俺の中でふつふつと沸いてきた。

346 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/03(土) 05:25:23.15 ID:K5+d2jhH0

「なぁ、俺は小林が舞台をするのはいいと思うぜ。それにさっきのお前の 演技には俺に何かを感じさせてくれた。

    • だから自分に自信持てよ」

「・・沙織、やるのかやらないのかはお前の好きにしたらいいさ。 だけど、さっきのお前は美しく眩しいぐらいに輝いていた・・」

俺たちはさっきの感想もこめて思いのたけを沙織に話した。俺としては あの沙織をもっと見たかったのだが・・沙織の人生は沙織自身が決めることだ。 俺たちがとやかく言うことじゃない。

もしかしたら演技以外にも才能はあるわけだしな・・俺と十条はそう同調しながら 沙織を見守った。すると沙織からは戸惑いも消え、再び先ほどのように目を閉じた。

そして・・沙織は意を決したのか目を閉じると再び真剣な表情となってこう言い放った。

347 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/03(土) 05:26:02.62 ID:K5+d2jhH0

「演劇を・・やらせてください!!」

「待ってたわ・・その言葉!!」

真剣な表情で沙織は部長に入部を申し入れた。部長もそれを待っていたかの ように沙織を受け入れた。

「これで役者は揃ったわね!!・・いい!!ここでの指導は厳しいわよ。 あなたはさっき私たちに見せた原石をぶつけてちょうだい!!」

「はい!!・・不束者ですがよろしくお願いします」

沙織は部長に向けて一礼するとそのまま舞台の台本を渡され、俺たちと一緒に 体育館を後にした。きっかけとは意外なところから転がっているものである。

そして今日この日・・女優、小林 沙織が誕生した瞬間でもあった。

172 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/05(月) 04:17:07.56 ID:P/+ltKYl0

あれから・・沙織は演劇部へと入部することになった。 流石に噂の演劇部とだけあってかスポーツクラブ並みの気合の入れようで あったのため、流石の沙織もヘトヘト状態だった。 それになりより、あの部長も念願の沙織を引き入れていたようで かなり気合が入っているらしく、今までのものを少し書き換えて沙織専用の セリフもちゃんと用意したようであった。

「あ、それ・・もしかして新しい台本か?」

「ああ・・何とかセリフは覚えたけど部長からはまだまだって言われたな」

沙織は膨大な台本を俺に見せてくれた。 台本はノート3冊分ぐらいの量でセリフ以外にも細やかなところや、いろいろな 部分が事細やかに書かれていた。筆跡を見るとどうやらあの部長のようで、劇の 役者やこういった脚本を書くのにも手馴れているようだった。

俺の横にいた十条も舞台の台本をじっと見るとやはりかなり驚いていた。


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最終更新:2008年09月17日 19:43
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