287 名前:
◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/08(木) 23:26:13.48 ID:cVwvu9Oi0
翌日・・結局とうとうこの日がやってきてしまった。 行き先は・・考えて考え抜いた末に散歩という形にすることにした。 まぁ、考えたって仕方ないから原点に還ってみようと思ってこの結論にたどり着いた。
沙織には直接家に来てもらうことになっている。なんだか少し緊張してきたな・・
「ま、何とかなるか・・」
そう俺は意気込むと玄関のチャイムが鳴った。 ドアを開けると・・ドアの前にいる沙織の姿がいやに眩しく見えた。多分気の せいだと思う。俺はそのまま沙織と一緒に外に出ると、そこら周辺を歩き回ることにした。
「散歩か・・」
「嫌だったか?」
「いや・・これでいい」
歩きながらの沙織との会話はぼそぼそだったが俺らは辺り周辺を散歩していた。 やはり散歩だと駄目なのかと当初は危惧していたが、沙織は不満げな様子など 一切見せていなかったので杞憂で済んで本当によかった。
しかし、沙織の様子がどことなくおかしかった。とても緊張しているのか・・少しぎこ ちない様子であった。まぁ、今日は十条がいないのは仕方がないのだが、 俺みたいにドンと気楽に構えてればいいのになと思ったりもしていた。
それに・・沙織の格好が若干ながら変化していた。顔には少し薄化粧をしていることに気がついた。
289 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/08(木) 23:31:06.82 ID:cVwvu9Oi0
「化粧・・したのか?」
「ああ、部長にこのこと話したらなんか喜んじゃってな。舞台で使う化粧道具貸してくれた」
「へー・・」
あの部長が貸してくれるなんてな・・気前がいいのかなんなのか わからないな。てか、公私混合っぽいが・・大丈夫なのだろうか? 少し心配になってきたな・・ おっと、いけないいけない。今はプライベート・・学校のことはシャットアウトだ。
ここは辛い日常を忘れて会話で盛り上げようと、俺は注意しながら沙織と会話することにした。
290 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/08(木) 23:31:47.32 ID:cVwvu9Oi0
「そういえば・・最近はこうなることも少なくなったな」
「そうだな・・なんか久しぶりな気がする」
沙織の言うように確かに最近は沙織の忙しさが増加して余りこうすることも なくなってきたな。ま、沙織がリラックスできればそれでいいか・・ だんだんとリラックスしてきたのか・・沙織は落ち着いた表情のまま最近のことをぼそりと言い始めた。
「・・最近、少し疲れていたんだ。部活ってのは楽しいが疲れることが多かったんだ。
だけど今はこうして気分が楽になってきている」
「そうか・・そう言ってくれれば誘ってよかったよ。今日は・・一緒に楽しもうぜ」
「ああ、今日は頼むよ。行き先は・・お前の気ままでいい」
やっぱ行き先決めていなかったことはバレていたのか・・ でも、まあこうして楽しむこともできたしこれでよしとするか!
自信が出てきた俺はそのまま率先していつの間にか沙織の手を進んで引張っていた。
292 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/08(木) 23:35:19.34 ID:cVwvu9Oi0
あれから俺たちはあらかた歩いた後、少し休憩することにした。 普通だったら味気もなくただ単に退屈なのだが、沙織からは何の文句もなく リラックスしてくれていた。むしろ、感謝までされていたほどだ。
でも、よくこんな退屈なことに付き合ってくれるよな・・普通の女だったらこんな 味気のないことすれば帰られてしまうのに・・
「・・どうした?」
「ああ・・それにしてもこんな形で満足してくれたなって・・ただ呆然と歩いているだけだったらつまんなかっただろ?」
「何だ、そんなことか。・・心配しなくてもつまんなくはない。 それに元々、賑やかな街とかはどうも好かないからな・・だからかえって静けさが溢れるこの雰囲気がちょうどいいんだ」
そういって沙織は自販機で買ったジュースを口にする。 沙織は確かに静かというイメージが強い。物静かで、余り必要以上に 人と喋らないことも相成ってかそういった静のイメージがますます強くなっている気がする。
まぁ、しかし・・一度舞台に上がると、人が変わったようになるらしい。
297 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/08(木) 23:45:51.90 ID:cVwvu9Oi0
「あの部長・・いつもああなのか?」
「・・ああ、なんか最近は気合入っているらしくてな。文化祭でやる奴も結構気合が入っているよ」
そういえば文化祭は演劇部もやるっていっていたな、十条に言わせれば 注目度は結構あるらしい。俺も沙織の晴れ舞台を見てみたな・・ おっと、今日は学校のことやらは忘れるんだったな。
だから、今日だけはすべて忘れよう・・
それにこうして沙織にも感謝されているようだし、何より俺自身も無性に 沙織と2人きりで歩いているのがとてもうれしかった。
俺は座りながら横にいる沙織にそのまま付き合ってくれた礼を述べた。
298 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/08(木) 23:46:20.25 ID:cVwvu9Oi0
「本当に今日は付き合ってくれてありがとな。俺もお前と一緒にいれてなんだかうれしいよ」
「――ッ!!そ、それは・・おおお、お互い様・・だろ。 突然、お前は何を言うんだ・・」
「そうか? ま、次行こうぜ」
「あ、ああ・・」
俺たちは再び公園のベンチから立ち上がると一緒に歩を進めた。 それにしても沙織はあの時何故照れていたんだろう?
そこだけは今日1日沙織と過ごしていても、あまりよくわからないものだった・・
300 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/08(木) 23:53:49.03 ID:cVwvu9Oi0
あれから翌日・・いつもどおりに教室に来てみると、沙織もいつものように舞台の 台本を熱心に読みながら十条と楽しく話していた。 だけどあれから少し変わったことが1つ・・沙織と2人きりになったときにいつもと 違ってなぜか沙織が少し緊張気味になりながら話すのだ。 これはなぜだろう?・・まぁ、昨日2人きりで歩いたんだから沙織が緊張するのも 無理はないだろう。
そう結論付けると俺もいつもどおりに友達の輪に入って楽しく会話をしながら毎日を楽しんでいた。
「そういえば・・今日も練習だったな。ためしに俺たちも行ってみるか?」
「おいおい、十条よ・・俺たちが行けば練習の迷惑にならないか?」
俺も沙織が部活で何やっているのかそりゃ見てみたい気もするが・・ 勝手に行ってしまえば部にも迷惑が掛かってしまうし何より沙織も 困惑して今までどおりの練習ができなくなってしまう。 だからここは・・沙織に余計な刺激を与えちゃいけないな。
しかし沙織は台本から手に止めると意外なことを言い出した。
162 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/11(日) 14:27:28.01 ID:fimqTbem0
そのままうれしい気分が持続したままの俺はそのままお昼休みを迎えた。 ま、当然だろう。人間というのはうれしい気分を持続してこそうまく生きられるというものだ。
「お前今日は嫌に機嫌がいいな」
「まぁな。今まで劇の練習なんて見ていなかったからな。そりゃ楽しみで仕方なさ」
「はいはい、大人しくしてろよ」
そう十条は俺をなだめながらパンを食べた。俺もそれに同調するように弁当を 食べながらお昼休みを過ごしていた。 夏が過ぎ、文化祭が近くなっていく今日この頃・・秋も近くなってきており、空も夏と は少し変わっていった。そんな四季の移り変わりをしみじみと感じていると・・俺と 十条の席に1人の女性が現れた。女性といってもこの学校の生徒ではなく見たところどうも隣のクラスの人間だった。
俺たちは突然の女性の出現に驚きながらもその女性と応対することにした。 女性をよく見てみるが、顔はほがらかで声も優しいものなのだが・・目は余り好意的ではなかった。
「な、なんだよ・・」
「あなたが平塚 明人ね。・・ちょっと顔貸して」
「なんだか・・訳ありみたいだな。ま、行ってこい」
十条は厄介ごとに巻き込まれたくないのか・・はたまた楽しんでいるだけなのか。快く俺を送り出してくれた。
163 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/11(日) 14:38:36.43 ID:fimqTbem0
「・・ここでいいわね。私は石塚 亜美、まぁ、こんな自己紹介なんて どうでもいいわ。
それよりあなた・・小林さんと仲良くしているわね」
「それがどうかしたのか・・」
亜美と名乗る女性・・さっきの顔つきが違い異性の俺に敵意剥き出しのまま 淡々とした口調で俺をじっと見ていた。なにやら沙織を引き合いに出しているよう だが、俺・・何かこの女性に恨まれるようなことしたのだろうか? 頭の中で今までの行動の数々を振り返ってみるが、この女性とは話したことも なければ見たこともない、それにこれはどうも初対面だ。 何故、初対面の俺にここまで殺意に近い敵意をむき出してくるのだろうか?
亜美と名乗る女性はさらに俺に対する敵意を更に強めながら吐き捨てるような言葉で言ってきた。
164 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/11(日) 14:41:13.02 ID:fimqTbem0
「はっきり言って・・あなたの存在が煩わしいの。小林さんから離れてくれない?」
「はぁッ!!!何言ってんだよ!!」
はっきり言って全く意味がわからない。 いや、こいつはどこか逝ってしまっているのかと思ったりしてしまう。 この女はいったい何が目的で俺と沙織を引き離そうとしているのだろうか?
- も、もしかしてこの女は――ッ!!バイなのか!! そう考えたらすべての辻褄が合うけど、俺らと同じ歳で同性愛に興味を 持っている奴なんてほとんど皆無だ。もしいたとしても俺らと同じ歳では 有り得ない。 だけど・・沙織によく近づいている俺の存在が邪魔だとすれば確かにそう思えたり しなくもないけど・・
いや、だけどそういったのはもう少し歳が成熟しなければ・・
165 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/11(日) 14:42:15.08 ID:fimqTbem0
「お前、やっぱもしかして・・」
「ようやく気がついたようね。 はっきり言って小林さんにあんたみたいな鈍感邪魔なの。
さっさと小林さんを私に任せて消えてちょうだい」
「な、何だと――ッ!!」
よくわからないが・・恋敵って奴だな。それにかわいい外見だけど 性格はかなり悪い。なんだか腹のそこからムカついてきた・・沙織については 今の時点でよくわからない気持ちだが、俺のかけがえのない友人というのは 間違いない。
友人として・・沙織にこんな女を引き合わせるわけには行かない。 同性愛については偏見がないほうだが、こいつだけは別だ。こんな性格が悪い バイ女に沙織を渡すわけにはいかない。
俺は敵視して見つめる亜美に向けて決意を込めながら・・今の自分の本音をこの女にぶつける事にした
166 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/03/11(日) 14:43:18.87 ID:fimqTbem0
「・・お前みたいな奴に沙織は渡さない」
「商談決裂ね。・・まぁ、端から期待してなかったけど。 これで私たちは恋敵同士って訳ね。
全力を持ってあなたから小林さんを奪ってみせるわ!!・・じゃ、さようなら」
言いたいことだけ言って亜美は去りやがった。 まだ、沙織に関しての気持ちはよくわからないままだが・・あんな女にだけは 渡したくはなかった。 よく、恋敵というのはほかの男が定番なのだが・・まさか女とやりあうとは 思ってみなかったな。だけど・・あんな女にだけは沙織を渡したくない。 それだけは変わらないままだ・・ここは負けられない。
俺は拳を力いっぱい握り締めると決意を固めた。
(あの女に・・あの女だけは沙織を奪われたくないッ!!!)
力いっぱいに拳を握り締めた俺はあの女から沙織を守るまいと決意しながらその場から立ち去った。
最終更新:2008年09月17日 19:44