『女3人そろえば・・』

306 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/06/11(月) 03:24:19.90 ID:8nn3yjv30

家族という存在を考えたことは今までなかったような気がする。結婚して子供が産まれて一緒に暮らす・・ それが家族の言うものだと思っていたのだが、よくよく考えてみると自分は果たして親の役目を全うしているのかと 思うと少し不安になってしまう。結婚してから俺たちの仕事の都合によって長男坊が産まれて数ヵ月後・・日本から 離れ遥か遠くの自由の国アメリカへと住んでいた。

それ以降も次男が産まれてから長年のアメリカ暮らしが続いていたのだが本当にこれでよかったのかと 考え込んでしまう、いくら仕事の都合とはいえ無理してでも日本に暮らせばいいのかなっと思ってしまうときもある。

そんなことを考えながら俺は結婚記念日に予約しておいた最高級のレストランでワインを飲み干すと、遠く離れた故郷を 思い浮かべていた。

「なぁ、久々に日本へ帰ってみるか」

「あの個性の強いお前のお姉さんたちに挨拶でもするのか」

俺の妻になって早、数年・・今や世界的な大女優と化した沙織の言うことに俺は少し言葉を失った。 この世界には女体化シンドノームと言う奇妙かつ漫画のようなスペクタクル溢れる病気が存在する。この病気が奇妙だと 言われるその所以・・それは15、16歳の性行為を体験していない男子が突如として女性へと変貌してしまうのだ、 人によってはこの病気を前向きに受け入れ後の人生の糧にする人もいるのだが大半の人間はやはり女体化して しまうとショックは隠せないものだろう。何の変哲もなくいきなり男性から女性へと変わるのだからショックと驚きは まず隠せまい・・

そんな病気だが俺の人生には切っても切り離せないほど重要な関わり合いをもっている、俺の姉も元は女体化する 前は立派な男性だったし沙織だって元は立派な男性だったのだ、そして今度は俺の子供もその病気の影響で ガンになってしまった・・

307 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/06/11(月) 03:25:47.49 ID:8nn3yjv30

「なんだか急に日本のこと考えてたら帰りたくなったんだよ」

「・・日本か、そういえばこのところ舞台や映画の撮影で帰ってなかったな。 確か家族で戻ったのは3年ぐらい前だったな」

「そうだったな・・」

ここ最近は互いの仕事の関係もあってかもう3年近くも日本に帰っていない、沙織のご家族はお母さんが 1人いたのだがそれも昔の話・・沙織がアメリカへ単身留学している間にひっそりと亡くなってしまった。 なので身内で出会えるのは俺の姉さんたちだけだ・・ そういえば最近、姉貴たちもどうしているのだろうか、留美のほうは子供も大きくなって旦那さんと一緒につつましくも 和やかな生活を送っていると言うし真理のほうも父さんと母さんと一緒に同居しながら子供とつつましく暮らしている。 確か真理の子供が慶太と同年代らしいし留美のほうはもうすぐおばあちゃんになるらしい・・息子のほうも十条の娘と 付き合っているらしいがこの歳でおじいちゃんになるのはいささか勘弁だ。

「ま、こっちもスケジュールの調整をしてみる。あいつらにも久々に日本の風を当ててやろう」

「ああ・・久々に帰れるかもな」

結婚記念日の夜、沙織と共に過ごした遠い故郷を思い浮かべると帰郷のときをゆっくりと思い浮かべた。

309 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/06/11(月) 03:29:06.38 ID:8nn3yjv30

物事と言うのは思い浮かべるととんとん拍子に進んでいくもので、日本帰郷の手立てもスムーズに進んだ。 まぁ、それはいいのだが会社のほうは個人の事情ではそう簡単には抜け出せないものですべてを束ねる 社長と言う立場上、なかなか休暇の取れる日取りが見つからなかった。

隣にいるブロンドの金髪がよく似合う女性の秘書に俺は絶望的になりながらも今後のスケジュールを聞いてみた。

「・・今後のスケジュールはどうだ?」

「一時間後には幹部会議が・・明日には各会社との接待が予定されています」

「・・休みは取れそうか?」

この絶望的な状況・・何とかして休みを取りたかったのだが、俺の一個人の都合で会社を休めるわけにもいかない。 もう俺はただの一介の社員ではないのだ・・

310 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/06/11(月) 03:30:08.15 ID:8nn3yjv30

「どれぐらいになったら休みが取れそうなんだ?」

「少なくとも2ヶ月程度は無理です。それに政財界の要人との接待も・・」

「もういい・・あんな老人どもと戯れたってちっとも楽しくない」

そういって秘書は淡々と俺のスケジュールを説明するとそのままスケジュール表に今後の予定を書いていた。 休みの取れない過密スケジュールを実感しながら社長室でうなだれると自分の重要性を改めて実感させられる。 十条に頼ると言う手もあるのだが、副社長と言う職についている十条はああ見えて俺よりも仕事をしている。 いつぞやの時みたいに休日なんて簡単には取れないのだ、考えてみれば大学上がりの俺たちが設立した会社が アメリカに本社を置くほど今じゃ世界規模にまで拡大している。 でもやっぱり現実と言うのは厳しく、大学出の俺たちじゃ経営すら素人に毛が生えたのと同然だし何度も倒産を 覚悟した・・

そんなときにとある経済界に顔が利く人物に出会い、それからとんとん拍子に会社が大きくなって今じゃ世界各国に 支社を持つほどにまで成長しており、早すぎる会社の急成長に少し疑問も持ってしまったぐらいだ。

311 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/06/11(月) 03:32:35.33 ID:8nn3yjv30

「人間と言うのはつくづくわからんもんだ・・」

女体化が世界人類に浸透しようが社会のやり方についてはちっとも変わってないし綺麗ごとばかり並んでも 人間というは本質的に汚いものだ、そこには男性や女性も関係ない。いくら女体化で現を抜かしても汚い部分は 覆い隠せないものだ、しかしそれが皮肉なことにある程度の汚いことが会社に発展をもたらしているのも事実な話である。

「幹部会議まで後3時間ですので準備をお願いします」

「ああ・・」

机に置いてあったコーヒーを飲みながら考えるが・・すでに冷めてあったコーヒーはどことなく苦かった。

「慣れたとはいえ英語での幹部会議は疲れるものだ。まぁ、会社が硬直状態になったら俺たちの役目も 終えられるだろうよ」

「お、引退宣言か」

「永過ぎる安定とトップの存在は後々の弊害をもたらすんだよ。 俺たちがいなくなったら誰かに後を任すのもいいだろう」

会社を辞めたときのことなんて考えてもいなかったのだが、夫婦2人でのんびりと老後を過ごしてみるのも悪くはなかろう。 まぁ、2人とも料理はできないからそこはマルチな才能を持つ十条に手伝ってもらうとするか、難産な娘を産んでしまった 影響で奥さんを亡くしているからさぞ老後は寂しそうなのだが・・まぁ一緒に住ましてやって料理とかを任してもらおう、 このメンバーで果たしてまったりと老後を過ごせるのか?

もしかしたら孫争いに発展しそうな・・

312 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/06/11(月) 03:33:43.14 ID:8nn3yjv30

「ま、のんびりとやっていくさ」

「俺たちもなんだかんだ言っても歳だからな・・」

妙に真面目な顔になる十条に少し驚きながらも自分の歳を考えさせられてしまうものである。 いくら自分でも心身ともに若くしているつもりでも、やはり息子たちにはもう敵わない部分も僅かながら見えてしまう 歳となってしまった。女体化して世間的にも未だに外見は20代そこそこに見える沙織でもやはり同じく女体化した 來夢に敵わないところも多々あるらしい・・

そろそろ身の振りを固めなければならない歳となってしまったのだろう、ここ最近は過去の自分と比べてしまうことが 多々ある・・そんな自分に思わず嘲笑してしまう。

「さて、仕事を・・ん? どうした」

“大変です、社長! 突然、謎の女性たちが押しかけてきて社長に会わせろと・・”

「何だと・・」

突然、慌て気味の受付から連絡が入り俺は思わず書類を落としそうになったが、状況を把握するために 冷静に向こうを落ち着かせながら詳しい状況を聞いてみた。

313 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/06/11(月) 03:35:43.58 ID:8nn3yjv30

「その女性たちの用件はこの私との面会なんだな」

“え、ええ・・ それにどうも外国人のようで通訳に任せています”

「外国人・・?」

思わず受付の外国人という言葉にピンッと来てしまった俺だが、秘書から聞いたスケジュールを思い浮かべても 外国人企業との接待など予定されてもない。それなのに俺に面会を希望する外国人というのは誰なんだろうか? 考え込んでいる俺に代わってここですかさず十条が冷静に対応を開始した。

「ご苦労だった。すぐに部屋に通せ、後は俺たちが対応する」

“わ、わかりました・・”

すんなりと通す十条に俺は苛立ちと疑問を覚えながらもそれを必死に抑えて静かにその理由を尋ねた。

「なんですんなりと通したんだ・・」

「・・まぁ、たまにはいいだろう。それに案外俺たちの知っている人かも知れないぞ」

俺たちの知っている人物・・それに十条は不思議と冷静でしかもこれから来訪してくるお客の正体をいかにも知っている ような視線で心なしか楽しみにしていそうだった。俺のほうは来訪する客が初っ端からどんな対応をするのか 少し不安だった、もしかしたらぶっつけ本番の博打をしている一端の営業マンかもしれないし無茶な提案をごり押しで 通してくるかもしれない、何とかそれだけは阻止したいのだが・・ああいった手合いはどうも苦手だ、ここは十条に 任すほかない。その肝心の十条はどこか懐かしそうな視線でドアのほうを見つめていた。

いろいろな気持ちが入り混じる中で、そんなことを考えているとドアのノブが静かに音を立てて開いた。

314 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/06/11(月) 03:38:57.03 ID:8nn3yjv30

社長室のドアのノブがゆっくりと開かれたとき、そこには驚くべき人たちが立っていた。 2人とも受付の言っていたとおりに女性だったのだが、日本人であったため向こうが外国人という理由もどこか 納得できた。しかし驚くべき最大の理由は俺はその女性をよく知っていた・・いや、よく知っていたと言うよりも その2人は俺と十条がもっとも知らなければおかしい存在であった。

「よぉ、アメリカ観光のついでに寄ってみた」

「2人ともちょっとは驚いたでしょう?」

「あ、ああっ・・・」

会社に突如として現れた人物・・それは紛れもなく女体化している2人の姉だった。本来なら日本にいるはずなのに なんでアメリカに来ているのか不思議なのだが、この本社に乗り込む根性がなんとも姉貴らしいと言えば姉貴らしい のだが・・

俺の隣にいる十条は思わぬ姉貴たちの来訪にも冷静になりながら見つめていた。

「昔、あんた達が会社作るっていってたのがここまで大きくなっちゃうなんてね」

「まぁ、あの大女優を射止めたお前もたいしたもんだよ。・・十条、どこへ行く気だ?」

「えっ・・」

留美の言葉に反応した俺たちは十条のほうをみてみるが明らかに十条は留美から逃げようとしていた。 何年も歳を食っても苦手なものは苦手らしい、さり気なく逃げようとしていた十条をとめた留美も留美だ。 やはりなんだかんだ言っても変わっていない所は変わっていない・・そう考えるとなんだかスッと胸が軽くなった。

315 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/06/11(月) 03:41:56.24 ID:8nn3yjv30

「まぁまぁ、あんたたちの仕事が終わるまで私たちは甥っ子たちと遊んでくるわよ。・・ねぇ?」

「いいだろう・・お前の家で待ってるぞ」

言いたいことだけ言って騒動の元となった姉貴たちは華麗に去っていった。 世界規模を誇る大企業の本社がたった2人の女性・・それも身内にいとも簡単に侵入されたとなったらいい笑いものだ。 それにそれ以上に社員に今まで培ってきた会社内でのイメージ像が一気にガタ落ちしそうで怖い・・社内の俺の イメージは公私共に厳しくも凛々しい社長で通っている、それがたかだか2人の女性にけちょんけちょんにされたと 知られれば・・考えるだけで恐ろしいものだ。

十条のほうも冷静を保ちながらも体のほうは小刻みで震えており内心びくついているのだろう・・

「秘書や盗聴器がなくて助かった。こんな俺の姿を社員に見られたら翌日には笑いものだ・・」

「まぁ、そんときはそんときだ。しかし2人とも歳食っても相変わらずだったな、久々に昔を思い出したな」

「・・お前な、ちょっとは自分の立場も理解しておけ」

いつもと変わらない十条のマイペースさにはほとほと困ったものだが、まぁ十条なりにちゃんと理解しているのだと 思いたい。秘書を社長室から追い出したのはまさに幸いともいえるであろう・・

316 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/06/11(月) 04:07:09.90 ID:8nn3yjv30

時が過ぎて騒動の晩、いつもどおりに仕事を切り上げた俺はいつものように車で自宅の周辺まで送らせるとそのまま 自宅のドアノブを掴んだ。しかし、どうも自分の家なのにどこか入り辛いのは気のせいではあるまい、中からは 歓声と悲鳴が同時に聞こえているような気がしており、特に気高い女性の声が家中から響いていた。 多分、昼ごろに会社に乗り込んだ姉貴たちだろう、沙織には少し荷が重すぎたのかもしれないな・・

俺はゆっくりとドアノブを回し恐る恐る自宅に帰ってみると・・歓声が響き渡る中でしかめっ面の息子が俺の帰りを 出迎えてくれた。

「親父、なんで日本にいるはずのおばさんがいるんだよ」

「そんなもの俺が知りたいぐらいだ。あの2人は昔からお構いなしに突然現れるんだからな・・」

思えば、あの2人はいずこもなく突然やって来てしまう事が多かったような気がする。昔、とんだ手違いで不良に 絡まれたとき超能力者的な能力を身につけたのか颯爽と俺の目の前に留美がやってきて颯爽と不良を倒したり、 まだ沙織と付き合っている頃にいつものように簡単なデートを終わった後に沙織とのデートのことなど何にも知らない はずの真理がひょっこりと俺の目の前に姿を現したこともあった。とにかくこの姉妹は常に俺が考える予想外の反応を 起こすことがすごく多かった・・

「2人とも俺よりも母さんや来夢がお気に入りのようだったな・・」

「まぁ、2人には来夢の女体化を教えてなかったからな。余計に驚いたんだろうな・・」

少し昔を思い出しながらそのまま家に上がってみると沙織と女体化した来夢が真理におちょくられるかのように楽しく からかわれていた。でも長年の功なのか沙織のほうは真理のほうを軽くあしらいながらも楽しんでいたのだが、来夢の ほうも意外と手馴れた様子で真理の冗談も笑いながら対応していた。

どうも女体化してから話が進むらしい、よくよく見てみると留美のほうもそれを微笑ましい視線を送りながら見守っていた。 しばらく女体化した男たちで盛り上がっていたのだがようやく沙織が俺の存在に気を向けたようだ。

317 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/06/11(月) 04:08:23.63 ID:8nn3yjv30

「お、帰ってたのか? まさか真理さんたちがここまで来るとは思わなかったぞ」

「・・・楽しそうだな」

「まぁまぁ、そこでぼさっと立ってないであんたも飲みなさいよ」

すでに出来上がった真理に無理矢理、椅子に座らせられると酒の入ったグラスを差し出されてしまい仕方なしに 一杯飲むことにした。酒の飲み友が増えた真理は一気に先ほどから保っているマシンガントークをさらにヒートアップ させながら酒を片手にいろいろと笑い上戸を保ち、思い出話を織り交ぜながら様々な話をを始めた。

「まぁ、あんたたち2人が結婚して可愛らしい子供産んだのも衝撃だったけど、その息子が女体化したのにも驚いたわね。 こんなに可愛らしい娘持ってるあんたは幸せよ!」

「俺の子供は無事に男性として全うしたが来夢が女体化したのにも驚いたな。 前に見たときには僅かにお前の面影も残しながらも女顔だったけど女体化してからお前の面影が完全になくなったな」

「2人ともそこまで言ったら父さんが落ち込むよ~」

さり気なく来夢が俺をフォローしてくれているのだがそれが反って俺の心境にダメージを与えていた。 本人は全く悪気がないのだがこうしたところは俺似なのかなよくわからんところだ。しかめっ面だった息子も仕方なく 会話に参加しており性格が一緒の故か俺共々真理のいい餌食となっていた。

318 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/06/11(月) 04:09:40.75 ID:8nn3yjv30

「来夢が女体化したのも最大の驚きだけど十条君があんな可愛い子供を産んだのは奇跡に近いわね。 遺伝子的には十条君のほうが壊滅的に負けてるけど・・」

「それがどういう道を辿っていたのかはわからないが、こうして慶太の彼女になっているから世の中は不思議なものだ・・」

「か、母さん!!」

同じ遺伝子を持っている所以か・・俺たちは特定の人物には弱いらしい、俺と一緒に女性陣ののおもちゃになりつつある 息子だがこれに更なるおばさんがいるとわかったらどのような反応をするのだろうか?

息子本人としてみればもうこれ以上は個性的なおばさんは勘弁願いたいだろうな。しかし俺たちよりも歳は上なのに 若い頃と全く変わりない若さと勢いを持っているこの2人にはある意味で尊敬すら覚えてしまうものだ・・ そういえばここ最近うちに移り住んだ十条の娘の姿が見当たらない・・2人とも実質上の同棲生活を送っているので どこかにはいるはずなのだがなぜかいない。

ある程度、状況が落ち着くと俺は小声で息子に十条の娘の居場所を聞いてみると息子は少し言葉を濁らせながら 苦々しくこう答えてくれた。

319 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/06/11(月) 04:13:59.90 ID:8nn3yjv30

(おい、香織ちゃんはどうしてるんだ? 家にはいないようだが・・)

(・・部屋で眠ってる。親父相手にこんな事言いたくないけど、実は・・した後に急におばさんたちが来たんだよ。 あいつは満足したのか今も裸で眠ってるけど・・)

(わかった。それ以上言うな・・)

いつまでも続く息子のしかめっ面の理由がようやくわかってきた。俺も過去に似たような体験をしていた経験がある、 その時はちょうど真理が出かけており当時付き合っていた沙織と2人きりで恋人同士の甘いひと時を味わったのでは あるのだが・・ どこか予定が狂ったのか出かけていた真理が急に家に帰ってきてしまい、しているところは目撃されなかったものの 2人仲良く俺の部屋から出られない有様であり部屋を出たときはあの時の沙織は恥ずかしいのか少し顔を赤らめながら そそくさと退散したのだが俺は終始、真理にからかわれぱなしであった・・

だから俺は息子の心境もよく理解できたし、まさか親子そろって似た経験をするとは思ってもみないものである。 息子に同情と悲惨さを感じつつ酒を飲んでいると突然笑い上戸を保っていた真理が急に落ち着きを帯びた口調となった。

320 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/06/11(月) 04:16:15.44 ID:8nn3yjv30

「・・しかし、こうして自分の夢を叶えているあなたたちは誇らしいわ。 方や世界的に有名な大女優、方や世界規模を誇る会社の大社長・・あの時言った夢をきちんと実現させているからすごいものよ」

「そうだな。 ・・昔、大学出のお前たちが会社を設立するって言ったときはかなり驚いたがこうして大成しているからたいしたものだ」

そういえば会社を設立しようと志したとき、そんな俺たちに周囲からはものすごい反対の意見が大多数を占めていた。 留美からは“自分から死にに行くのか!!”っと一喝までされたほどで両親からも快い返事など到底もらえなく この世の終わりかと思うような顔つきで言葉すら出なかった。

しかし、ただ真理が身内で1人だけ何も言わずに“ただ、自由にすればいい・・”と自由奔放な真理らしい 言葉だったのだが、妙にひしひしと体から重みを感じてしまったのも事実だった。 それからも沙織と互いの夢に向かいながら磨き続けた結果・・今のように至るわけである。もしかしたら片方が 大成していたかも知れないし、はたまた互いにすれ違いが続いて別れてしまったのかもしれない・・

今まで辿って来た道を見つめ直すとよくここまでこれたなぁっと感心してしまうものだ。

321 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/06/11(月) 04:18:33.83 ID:8nn3yjv30

「ふぅ・・」

「どうした・・? 酔い潰れでもしたか」

「今までの事思い出してた。・・俺も歳だ」

ある程度の盛り上がりをみせた飲み会だが、酔い覚ましに俺は家の外に出るとほとぼりが冷めたのか 沙織がこちらへとやってきた。夜風が心地よく酒で火照った体を冷ます中で俺はじっと夜空を見つめながら今まで 沙織と一緒に歩んできた人生を一つずつ思い出していきながらそっと沙織の肩に手を寄せた。

「・・なぁ、このまま俺が会社辞めて子供のほうも立派に独り立ちしたらどこか静かなとこで 家を建てて、のんびりと2人で暮らすか?」

「何を急に言い出すかと思えば・・老後のことなんて考えてない。私は一生お前と過ごすだけでいい・・」

「そうか・・」

俺は軽く沙織を見つめると大女優と世間から詠われても、いつまでも変わらないその有りのままの姿は俺に癒しと 安心感を与えてくれるものがあって今まで歩んできた人生なんて単なる思い出に過ぎないことを再認識させられる。 家の中を見てみると立派になった子供たちを見てみると今後に期待できそうだ、俺もゆっくりとする時期が来たのかも しれないな。 若い頃は我武者羅に動き回ってバカみたいに汗をかいていたあの気持ちにはもう戻れない、歳をとっていく自分を 想像するとどこか恐怖心みたいなのに掻き立てられて余り想像はしたくなかったのだが、気がついてみたら予想以上に 歳を食ってる自分を実感させられる。

322 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/06/11(月) 04:19:29.00 ID:8nn3yjv30

「さ、帰るぞ」

「ああ・・一緒に帰るか」

そして今日も俺は家族のいる我が家へと戻るのであった・・

―fin―


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年09月17日 19:52
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。