『蒼い炎』(3)

73 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/07/25(水) 14:43:41.96 ID:Jwx4iLhj0?

「ありがとうございました・・」

いつものように最後の客を愛想よく送り返しながら切りのいいところでバイトから上がる。 同じバイトの奴はまだこれからシフトを入れている予定なので俺よりも遅く帰宅することになるだろう。まぁ、そんなのは 俺にはさらさら関係ないしどうでも良いことなので略しておく。大学に入ったときからこのコンビニのバイトをしている のだが、店長以外の奴らは大学の奴ら同様に俺のことは避けているようだ。 事実、偶然にも俺に対する文句などの陰口を聞いたことがある、ムカつくとか一緒にいるだけでも蕁麻疹が止まら ないとかいろいろ言われていたのだが、所詮は俺に堂々と言えない奴らがああいった陰口でしか文句を言えないの だから怒りというよりも哀れみを感じてしまう。

まぁ、俺も余計な争いや些細なことで店長の信頼を崩さないためにもそのことは黙っているのだから ある意味お互い様だろう。

(さて、もう少しで給料も入ってくる・・適当に貯金して生活費に廻すか)

言い忘れていたのだが、俺は高校を卒業を機に一人暮らしを始めることにしたのだ。いつまでも家にいたら退屈だし、 向こうにもちゃんと頑張っているといってあるのでそう不安になることもなかろう、両親は俺の本性なんて全く気に せずに昔からよく勉強が出来る子供と褒め続けていたので俺に対する認識が甘い。だから俺の言うことなど ほいほいと信じ込んでしまうのだからある意味で平和な人物だろう。

いろいろ思い出しながら作業を続けているといつの間にか時間が来たので控え室に入ると荷物をまとめて帰る準備を していたのだが突然として店長が緊迫した顔をしながら控え室へと入ってきて帰ろうとしてた俺にこう告げてきた。


74 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/07/25(水) 14:46:40.43 ID:Jwx4iLhj0?

「あ、小林君。帰りのところすまないけどもう少しだけ出てくれないかな?  入ってくる予定のバイトがどうもばっくれちゃったみたいなんだよ」

「そうですか・・わかりました」

「悪いね」

店長は気まずそうな顔をしてたのだが、俺が出てくれると判断するとうれしそうにしながら控え室を後にする。 脱ごうとしていた制服を再び着なおすと俺は仕方なしに次のバイトがやるはずの時間帯に出ることになるが、 まぁそれでも店長の信頼が増えたということには変わりなく結果オーライというものだろう。 俺は客がいないことを確認すると商品の整理や値札の貼り付けなどをいそいそとしながら作業をしながら ばっくれた奴の分まで働くことにした。ま、そのおかげでさらに店長の信頼が増えているので俺にとっちゃ嬉しい 限りなのだがな それでもう一人の奴はというと俺が続けて出るのをわかったとたんに作業が楽なトイレ掃除を長時間しながら じっと待機をしている。多分俺が帰るまではどんなことがあっても出ないつもりだろう、俺が嫌いなのはわかるのだが それが長続きしているのがばれてしまうと後々自分の首を絞めることになるのだから面白くて仕方がない。

製品の整理をしながら後、そいつがばっくれられて機嫌の悪い店長に見つかるまで何分までトイレ掃除をやり続ける のかと考えていると自動ドアが開かれた音がした。どうやらこんな夜中にも拘らずお客が来たらしい、俺は振り返って いつものようにいらっしゃいませ~と挨拶をするのだが、お客のほうに振り向いた瞬間、俺の目の前には最も会いたくない 人物が立っていた。

75 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/07/25(水) 14:50:13.31 ID:Jwx4iLhj0?

「いらっしゃ――ッ!!」

「へー、無様ね・・って言いたいところだけど勘弁してあげるわ」

なんでこいつが俺の店を知っているのかというのはよくわからないが、それにしても嫌なやつに見つかったものだ。 だけども俺はそれを決して表に出さない、表に出してしまえばひょんなところから誰かに見られてしまい下らない 弱みを握られるのは少々勘弁と言うものである。だけども俺は予想外のことで体から出る動揺を抑えきるのに 精一杯だったのだが、こいつに弱みを握られてしまったら後々昼頃に何を言われるのかたまったもんじゃない。

それにこいつだっていつまでも深夜帯のコンビニに居続けられまい、もしかしたら偶然にここに立ち寄ってきた 可能性のほうが高いはずだ。それに気に食わないがこんな奴でも一応は客としての立場は変わりない、 動揺を隠せない体を何とか思考を仕事モードに切り替えてはいるものの予定外のことだからひょんなところから 崩れてしまう可能性もあるから気をつけないといけない、俺だって人間だから想定外のことには弱いし、どうすれば いいのか全くわからないときだってある。だけどもそう長くは居続けないと言う確たる自信と妙な確信もあってか 少し楽観視しているようになってる感じがあるような気がする。

しかし理嗚は俺の予想を覆すかのように適当に飲み物を選ぶとすぐにレジへと向かっていく、長年の経験から俺も それに合わせながら急いでレジへと向かう。

76 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/07/25(水) 14:51:35.60 ID:Jwx4iLhj0?

「・・これくださいな」

「全部で760円になります」

「・・どうも」

いつもと同じように物静かなしかめっ面の表情を保ったまま理嗚は店から立ち去っていった。 意外にあっけなかったことに俺は驚きを隠せないのだが、このまま平穏で過ごせることを考えると安いものでこっちと しても私情を挟まずにいつものように気楽に業務ができるのは難しいものかもしれない。 それにしても理嗚はこのコンビニにきたと行くことはこの近所に住んでいる可能性も考えられるがやはりあくまでも 偶然と考えたいしそうでなければ俺としても納得がいかない。

(あいつ・・何がしたいんだ?)

大学を卒業するまであと2年を切ったところ、早いところ就職を決めたら大学を卒業して理嗚すっぱりと別れたほうが それでいい。あいつと一緒にいるだけで胸糞が悪い、後数年我慢すればすっぱりと別れられるものだ。

だったら思い出の欠片として永遠と封印してするのがちょうどいい、後1年間強・・俺は辛抱を強いられながらも 理嗚をいつでも抹消すてもいいように頭を切り替えることにした。

77 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/07/25(水) 14:52:51.61 ID:Jwx4iLhj0?

「あら・・ご飯も食べずに勉強なんて珍しいわね」

「・・課題だ。もう少しでできる」

「熱心なこと・・」

いつものようにお盆を置くといつものようにかけうどんを食べ始める。結局あれから数日経ったのだが理嗚は一貫して 俺がバイトしているコンビニのことは何も話すことなく語られることはなかった。それにしてももうこんな光景に慣れて いる自分がどこか恨めしく感じてしまうもので慣習化されて体に染み付いたこの日常が憎々しいのだが、言ったって 仕方ないと思う。無駄なことを考えてる暇があったらこうして課題やレポートに勤しんでいたほうが機が楽だ。 無駄なことを追求するのはそれだけバカバカしく疑問さえ覚えてしまうし、この世には無駄なんてないという言葉が あるのだが所詮そんなのは無駄な現実逃避に過ぎない・・

「そういえばあなたって生徒受けは悪いけど教師受けはよさそうね」

「・・下らんな」

教師受けしたって別にたいしたことはない、それに教師にすかれたってなんら利点もないし帰って熱血教師みたい なのに構われた日には不快すぎる・・ああいった人種は俺みたいな合理性を嫌いやれ信念とかいろいろな下らない 精神論を発揮するから相手にするだけでもバカらしい。

78 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/07/25(水) 14:55:11.12 ID:Jwx4iLhj0?

「そういえばあなたってどうやって女体化逃れたの?」

「お前に話す義理なんてない」

「・・どうせ風俗かそこらあたりでしょう。あなたのことだからお金なんてたくさんありそうよね」

「ああいった奴らは金さえ払えばちゃんとサービスをしてくれる。・・所詮世の中はある程度は金さえ払えば何とかなる」

この世の中、ある程度は金がものを言う時代で世の中の大半を動かしているといっても過言ではない。 だけども金で物事を図るのは下らない価値観にとらわれている奴のすることで、人が動けばそれだけで変わる場合も 多々ある。所詮金だけでは大局を動かすことなどで気やしないのだ・・

79 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/07/25(水) 14:56:04.64 ID:Jwx4iLhj0?

「ある程度は金さえ払えば何となる・・実にあなたらしい答えね、世の中でも達観したの」

「まさか・・だけどお前みたいにムカつくお喋りをする女よりかはマシだね」

「それもそうね。あなたの予想を裏切るようで悪いけど普段の私は物静かな女で通ってるわ・・」

「そんなのはただの遊びだろ、お前の猿芝居に付き合うほど俺も気長じゃない。・・いい加減に本性を出したらどうだ?」

「猿芝居ね・・いい例えだけどつまらないわ。ワンパターンで」

互いに腹の探りあいをしながら食事をする・・こんなことも慣れたものだ。それにしても理嗚は自分の猿芝居を指摘され ても顔もピクリとも動かさずに平然としながら俺のほうをじっと見つめている、未だに俺は葉山 理嗚という人間の 本質をいまいち掴めてはいない。 今のこいつは自分で作り出した仮の人格で俺に接しているのは百も承知なのだが、人工的に作り出した人格にも 限りはあるものでいつかはぼろを出すのかと内心期待していたのだが・・どうも空振りしたようだ。

それにしても一般的な昼食と言うのはよくわからないのだが、会うたびにこうやって食事を食べながら嫌味の応酬や 腹の探りあいをするのもどこかおかしいと思う。俺はまだ心の奥底でこいつと言う人間を甘く見ていた節があったのかも しれない・・

80 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/07/25(水) 14:59:45.77 ID:Jwx4iLhj0?

そんなこんなで俺が課題のレポートを書き終えた同時に理嗚はうどんを食べ終えてお盆を運ぶ・・帰宅を確認した俺は 少し休んでいるとそんなときに理嗚は歩を止め静かに俺の思考を見透かしたかのような言葉で帰りしなの一言。

「・・それに私の本性が知りたかったらもっと頭を柔らかくして観察することね」

「――何だと・・」

「あなたに付け入る隙など確かにないわ。・・だけども私から見ればそれが死角よ」

そういって理嗚は再び歩を進めて器の入ったお盆を元に戻すと食堂から消え去った。次第に俺は体からふつふつと 怒りが溜まってくるのが確認できる、勢い任せに握っていたシャーペンにも力が入ってしまい簡単に折れてしまいそうである。 俺は必死にそれを表に出さないように抑えながら書いたばかりのレポートを見つめるが、常に感情をセーブしながら 物静かな表情を保っていた理嗚からあの勝ち誇ったような顔をされるとさらに怒りが溜まってくる。 今日だけは・・理嗚にやりくるめられた忌々しいものだった。負け惜しみとは言わないものの・・俺はあの女に付け入る 隙を与えてしまった自分に苛立ちを募らせると同時にあの女が恐怖で竦み、怯える顔もどこか見たくなってくるもの なのだが、考え直してみるとあいつとは所詮、大学上での付き合いに過ぎない。それに落ち着いて考えてみると あの女は所詮、浅知恵が深いだけだ・・そう深く考えることもあるまい。

だけども怒りが収まらない俺は唯一頼んだコーヒーを啜りながら再びレポートにチェックを入れていた。

23 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/07/28(土) 21:01:36.01 ID:D9L1tjta0?

休日・・課題もレポートもすべて終わった俺にとって休日と言うのはいつもよりたくさんのタバコを吸う以外退屈より 他ならない。こんな日は図書館でゆったり過ごすということも考えたのだが、読みたい本もなければすぐに飽きて しまうのは目に見えているので他のことを考えることにするのだがなかなか思い浮かばんものだ。 体を動かすのもいいかもしれないが、普段の日課であるスクワット100回はすでにこなしてしまったし、かといって 練習量を倍増すれば余計な筋肉痛で学校を休むこととなる。

(ま、たまにはのんびりするのもいいだろう)

雑魚寝をしながら本を読むがいつもとは違ってどうもしっくりこないものもある・・そんなことを感じかけたときに 偶然にも本能的な欲求からか空腹を同時に感じることなり、わずかな脳内会議で空腹感が優先されることとなった。 空腹感を満たすには何か適当に作ればいいのだが、生憎そんなのはめんどくさいし元々、料理は既製品で済ませて いるので知識はあっても作る習慣はないのだ。財布のほうを見てみると最低限のお金以外は全然使っていないと 言うこともあってか半日は外食で賄える余裕があるぐらいだ。

24 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/07/28(土) 21:02:14.59 ID:D9L1tjta0?

「・・ファミレスにでも行くか」

秋も終わりを告げそろそろ肌寒い季節となってくる、外にでるにはコートも必要になってくる。寒い中、俺は飯を食べる ため近くにあるファミレスへと向かうことにする。ファミレスからは歩くだけで十分な距離なのだが都心のほうなので 歩いている途中からだんだんと人がたくさん来るようになったのだが、こうしてみてみると何を目的としてこの道を 歩いているのだろうと考えてみたくもなるのだ。 まぁ、人の思考なんてそれぞれだしいちいち考えてしまったら切がないもので、頭を悩ませるだけ無駄なもので 人間観察程度に収めておくのが丁度いい・・ファミレスに着くと俺は喫煙席に座り適当なメニューを頼んでタバコと コーヒーで暇を潰しながら頼んだメニューを待ちながら外の様子を見てみると空は徐々に曇り始めていた。 このままだと雨が降ってきそうだな・・

(雨か・・)

俺は雨の天気が嫌いだ、かといって晴れの天気も好きではない・・何の変哲もない風が少しだけ吹いている 曇り空のほうが心地よく人間に最も適している天気だからだ。そのほうが気分もベストな状態に保てるし気分もいい、 俺はタバコを吸いながら急激に降ってきた雨を見ながら料理を待っていたのだがそれにしても今は混んでもいない のに少し遅い、不機嫌になると余計にタバコの本数も増えてしまうものである。

25 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/07/28(土) 21:05:00.29 ID:D9L1tjta0?

「・・お待たせしました、カルボナーラです」

ようやくパスタが運ばれてきたので俺の空腹も満たされるようだ、タバコを消してチーズをかけてパスタを食べると 空腹感が程よく満たされて心地よい。食事で気分でこんな空気を味わったのはここ数日振りだ、大学での昼飯のこと は余り考えないようにしているのだが、たまにはこういった満足のいる昼飯もいいと思う。それにこんなところにまで 足を運んだら確実にストーカーの類に相当するだろう、それだけであんな女と食事をするだけでも癇に障るのだから・・

久々に優雅で1人で心地よい飯を食べていると1人で食堂で昼飯を食べていたときがどんなに心地よかったのだろう かと思うと言葉に表せない気持ちだ。他人とくだらない会話をするより1人で黙々と飯を食べるのが俺にとっては 何よりもの心地よさだし唯一のストレス発散なのだ。あの女が俺の目の前に着てからと言うものの下らんお喋りに 付き合わされるようになってから俺の中で満足な食事と言う行為がストップしてしまう。だからこうやって1人で食事する のは本当に嬉しかったしできることなら今後もこういう風に一人で食事をしたい。

パスタを食べながら俺は優雅に過ごしていたのだが・・妙な違和感を感じてしまう。 最初はそんな感覚など気にしていなかったのだが段々と気になってしまいパスタを食べるフォークがついに止まって しまう、俺は恐る恐る人気が最も感じる目の前の席のほうに向くと・・思わぬ人物を発見してしまいぱべかけていた パスタを吹きそうになってしまった。

「お、お前は――・・」

「・・ごめんなさい驚かせてしまって」

「そこまで来るともうどうしようもないな。・・本気で訴えるぞ」

本来ならいないはずの相手・・その女は俺の都合などお構いなしにのうのうとしながらドリンクバーで取ってきたの であろう、コーラを余裕の感じられる表情で悠々と飲んでいる。その姿が俺にとってはかなり恨めしい・・

26 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/07/28(土) 21:06:05.57 ID:D9L1tjta0?

「・・今日は御代は持ってあげるわ」

「当たり前だ! ・・お前のせいでせっかくの飯が急にまずくなった」

「そうね・・」

本来ならもう少し言いたいところなのであるが大学の食堂とは違い、ここだと周りの目もあるし目の前にこの女が いたとしても抑えなければならない・・

「あっ、タバコちょうだい、なくなっちゃったの」

「自販機で売ってるだろ」

「いつも吸っているやつがないの」

仕方なく俺は自分のタバコを渡してやるがここまで図々しいとある意味では感心する。 俺は頑張って味の変わってしまったパスタを食べようとするのだが喉が進まない・・しばらくは俺のタバコを吸っていた 理嗚もハンバーグを頼んだようで到着すると美味しそうに食べていたのが恨めしい・・ ま、こいつに何を言ったって無駄なものなので残ったパスタをゆっくりと食べながら沈黙を保つことにする。 溜まる怒りというのはどうしようもなく体に溜め込むしか方法がない、発散しようにもここだと周りの目もあるし余計に ストレスも溜まってくる。

27 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/07/28(土) 21:09:25.95 ID:D9L1tjta0?

「・・もう食べないの?」

「誰のせいだと思ってるんだ・・」

「ま、仕方ないわね」

俺はパスタを下げてもらうと再びタバコで気を間際らすことにしたのだが、平常心と言うのはなかなか取り戻すことが 難しくタバコでもストレス発散が余りできない。それにどうもあの女に食事を奢られるのは考えてみればいささか ムカつくし男としてのプライドとか言う下らないことはいわないものの、どこか納得のいかない部分を覚えてしまう。

ハンバーグを食べ終えて再び俺からタバコを取り上げてそのまま吸うのだがどうも腑に落ちない部分がある。 そんな気持ちのままでじっと静かにタバコを吸っていた俺たちなのだが、いつものように理嗚はいつかの食堂のごとく 俺に話を振ってきた。このまま無視をしながら静寂を保つのも簡単だが周りの目もあるのでここはおとなしく 話さなければならないだろう、全くもって忌々しい。

「・・そういえばあなた女体化した人が嫌いなのよね」

「そうじゃない、女体化したくせに男のときの頃の言葉を使っている奴が嫌いなだけだ」

「結局は一緒じゃない。あなたの言葉には矛盾が多すぎるわ」

「うるさい・・」

人に正論を吐かれるのはなかなか好きになれないのだが、ことこいつに関してはそれが最も濃くでてしまう。 元々こいつとは相性が悪いと言うこともあるのだがそれだけでは納得のいかないものがありよりいっそうな警戒心を 俺の本能が敏感に感じ取っていた。 “コノ女ハ危険ダ・・”電気信号のごとく脳内でこの言葉がインスピレーションされるのだが、理嗚はいったい何を考え この俺に近づいているのかだんだんわからなくなってくる。

28 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/07/28(土) 21:10:54.35 ID:D9L1tjta0?

「さて、帰りましょうか・・」

思考を遮るかのように理嗚は立ち上がるとそのままレジのほうへと向かい始めた、俺もそれに合わせながら一緒に 会計に付き合うがそこで俺は驚くべき光景を目にすることになる。会計の際にチラッと理嗚の財布をみたのだが何と 支払いをクレジットカードで済ませてしまいやがった、俺でも金に余裕があるとはいえカードは余り使わないほうだし 何よりもその利便性の裏には大きな落とし穴があるので余り多用はしないほうなのだが・・理嗚の財布にはまだ たくさんのカードがあるようである。

会計が終わった後、すでに俺の視線に気がついたのか理嗚は俺の言葉などお構いなしにカードのことを少し説明した。

29 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2007/07/28(土) 21:11:50.44 ID:D9L1tjta0?

「あ、これね。驚くのも無理はないけど・・」

「金持ちの自慢話なんて聞きたくないね」

「金持ちね・・確かに家のほうはそうかも知れないわね」

「家・・だと?」

今まで謎だらけだった理嗚の経歴が少しずつだけ見えてきた気がする、大学生にクレジットカードを持たしているの だから家のほうは相当の金持ちなんだろう。だけども虚勢の上で実際にはいくつものバイトを掛け持ちしながらカード 破産をギリギリ防いでいる馬鹿なやつとも取れなくもない。 でも後者の場合は明らかに見栄っ張りの性格が濃く出ている場合に相当するからこいつの性格からしてありえない のだが・・未だに性格がわからないのに決定付けるのは早計というやつであろう。

「・・そんなに考え込まなくても時期に教えてあげるわ」

「別にいい、お前の下らん過去なんか聞いたってためにならん」

「それも・・そうね」

結局この日、昼飯を食べにファミレスで理嗚別れた俺はまともな休日を送れずじまいであった・・


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最終更新:2008年09月17日 20:13
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