エール「なにこれぇ?」
「それは拳銃って言うんだよ。撃ってみるといい。」
エール「ふーん。どうやって?」
「そこに人差し指をかけて…」
バン
エール「あ、撃てた♪」
ドサッ
エール「あれ?どうしたの?んー?動かなくなっちゃった。」
それがエールにとって、初めての銃殺だった。
エール「ま、いっか。」
警察「拳銃で心臓を1発。即死ですね。」
警察「一体誰が…?この家の娘はどこにいった?」
警察「娘のエール・ラヴァルは、行方不明です。ラヴァル家に恨みがあった者の犯行と考えるなら、誘拐か、あるいはもう…」
警察「どうであれ、まずは娘を捜す事が優先だ。本部にそう伝えろ。」
警察「はっ!」
オニダ「エール…?お前、何やってんだ?」
エール「ねぇオニダ。私、人殺しになっちゃった♪」
オニダ「いやいや…なっちゃったじゃないだろ!?どういうことだよ!?」
エール「お父さんがね、こうやるんだーって教えてくれて、してみたら死んじゃった♪」
オニダ「そんな軽々しく言える話かよ!人殺しだぞ!?きっと今頃警察が…」
エール「あー、じゃあ私捕まっちゃうね♪」
オニダ「エール…。よし、まずは手を洗え。念入りにだ。ついでに拳銃に指紋が残らないようにな。血のにおいもだ。」
エール「どうして、そんなことするの?」
オニダ「隠蔽するんだよ!お前を殺人犯にするわけには…いかないからな。」
それから血がとれなかった拳銃を崖から捨て、証拠は何一つ残らないようにした。
翌日にはオニダの親にバレ、エールは警察に引き渡された。
警察「ねぇお嬢ちゃん、お父さんを殺したのは誰か本当にわからないのかい?」
エール「うん、わかんないよー?私ずーっとオニダの家で遊んでたもん♪」
これはオニダの悪知恵で、決して自白しないようエールに言い聞かせたのだ。
エールの家にエールの指紋があるのはなんら不思議じゃない。オニダの家で遊んでいても同じだ。
唯一の証拠の拳銃は見つからない。エールから証拠は出ない。警察は完全に行き詰った。
しばらく経つと身寄りのないエールは施設に預けられる事となった。誰一人殺人者とは気付かずに。
子「エールちゃん、一緒に遊ぼう?」
エール「んー、いいよー♪あ、あっちの子も誘おう?」
子「いいよー!」
元々社交的なエールは施設の子供たちとすぐに仲良くなるどころか、年上すらいる施設の中のリーダー格になっていた。
オニダ「おーいエールー!」
エール「あ、オニダー♪」
オニダはほぼ毎日施設に遊びに来ては、エールと一緒に施設の子と遊んでいる。
少なくともエール自身は幸せで、オニダもこの生活に不満はなかった。
いつかエールを嫁にして、一生守るんだとオニダは誓っていた。
しかし、数年経ったある日、エールは頼まれたおつかい帰りに道に倒れているオニダを見つけた。
エール「あれ?どうしたのー?」
オニダはボロボロで、今にも死にそうだった。
エール「あ、あ…救急車…」
エールはすぐに救急車を呼び、オニダは一命を取り留めた。
病院でエールはオニダが目を覚ますまでずっと付き添っていた。
エール「大丈夫ぅ?」
オニダ「エール!?」
数日後、オニダは目を覚ました。
エール「くすっ。よかったぁ。死んじゃったかと思ったよぉ♪」
オニダ「俺は、どうして病院に?」
エール「倒れてたんだよぉ?道に。びっくりしちゃった。」
オニダ「お前が…助けてくれたのか?」
エール「そうだよぉ♪感謝したまえ♪」
オニダ「ありがとな、エール。」
エール「くすっ。どういたしましてぇ♪」
その後オニダは退院したが、施設に来る事は少なくなった。
エール「オニダ、最近あんまり来なくなったねぇ。忙しいのぉ?」
オニダ「ま、まぁな。大丈夫だって、心配すんな。浮気なんかしてねぇよ。」
エール「浮気?何の話?」
オニダ「な、なんでもねぇよ!それよりエール!実は俺さ、死なない体を手に入れたんだ!」
エール「死なない?うっそだぁ♪」
オニダ「嘘じゃねぇって。俺は死なない。心臓を撃たれようと、車に轢かれようとな。」
エール「えーっ。」
オニダの話はあまり信じられず、エールはてきとーに流していた。
しかし、そのオニダが荒れだしたのだ。
通り魔によって殺されたオニダの両親。発狂し始めたオニダ。
エールは壊れかけのオニダをそっと抱きしめた。
エール「大丈夫だから…」
オニダ「…」
オニダにその声が聞こえたのかはわからなかったが、その日以来オニダは落ち着きを取り戻した。
エール「(オニダの両親が殺されたら、オニダはどうなるんだろう?やっぱり、私と同じでこの施設にくるのかな?だったら、もっと楽しくなるわぁ♪)」
オニダの両親の死を明るく考えるのは戸惑ったが、オニダと遊ぶ時間が増えることはエールにとって喜びだった。
しかし、オニダは来なかった。待てど暮らせどオニダは来なかった。
家に行ってもオニダはいない。どこに行ったのか、まったくわからなかった。
エールの中でオニダの存在はどんどん小さくなっていった。
黒服「あのなぁ、いつまで居座ってる気なんだよ。」
子「だ、だって…私たち、ここ以外に住むところが…」
黒服「だから何だってんだよ?あぁ?この施設はずーっ借金してんだよ。俺らだってそんなに待てねぇ。わかるか?」
子「そ、そんな事言われても…」
黒服「アニキ、この家大人いませんぜ。」
黒服「何?ちっ、とうとう逃げやがったか偽善者め。」
黒服「アニキ、偽善者って?」
黒服「ここの野郎は、子供助けるとかいいつつ裏じゃ俺らと大差ねぇ同業者ってわけだ。やっぱり早めに金取るべきだったぜ。」
黒服「アニキ、じゃあどうしやす?」
黒服「そんなの決まってんだろ?このガキども殺してでも立ち退かせて、土地を貰うんだよ。」
黒服「アニキ、流石っす!」
黒服「うるせぇ!さっさとあいつらも呼んでガキどもを掃除しろ!」
この時、エールはたまたま買出しに行っていたのだ。
エールが帰り着いた頃には…
エール「えっ…?何これぇ?」
黒服「アニキ、またガキが沸きましたぜ。」
黒服「あぁ?さっきはいなかったガキだな。」
エール「あのぉー、何してるのぉ?」
黒服「みりゃわかんだろ?この施設はもうお前らガキの住処じゃねぇってことだよ。わかったらさっさとどっか行け。」
エール「子供たちは?他の…子供たちはどこに行ったのかなぁ?」
黒服「あぁ?そんなの俺たちが知るかよ。」
黒服「アニキ、けどあのガキは…」
黒服「しっ!黙ってろ!」
エール「あのガキ…?」
エールはハッとなって施設の中に入った。そしてその奥の部屋…
エール「あ…ああ…」
そこには、おそらく抵抗したのであろう施設の子供たちの姿があった。
黒服「見られたんじゃあ仕方ない。お前もそいつらと一緒にいかせてやろう。」
エールの中で、何かが生まれた。
エール「…見せて?」
黒服「あ?何をだ?死後の世界ってやつをか?」
エールは首を横に振った。
エール「逃げまどう姿ぁ♪」
バン
エールは落ちていた銃で足を撃ち抜いた。
黒服「アニキ!」
黒服「てめぇ、何しやがる!」
エール「くすっ…」
バン バン
エール「あはは…あははは…」
バン バン
バリィン
エールは黒服たちを撃ち殺した後、やたら滅法に撃ちまくった。
エール「ああ、ああ…」
オニダ「おいエール!悪い、警察が別の施設に連れて行くってうるさくてやっと振り切って…え?」
エール「あ、オニダだぁ♪」
オニダ「お、お前…なんだよこれ…?どうなってんだよ、何があったんだよ!?」
エール「ねぇオニダぁ…」
オニダ「エール…」
エールの目からは、涙が溢れていた。
エール「銃殺って……」
「ぐずっ。楽しいね…」
オニダ「エール…」
警察「オニダ!逃げるんじゃない!君はあっちの施設で…」
オニダを追って警察が施設に入ってきた。
オニダ「(やべぇ!このままじゃ、エールが犯人にされちまう!)エール!逃げるぞ!」
エール「…なんで?」
オニダ「なんでって…殺人犯にされちまうだろ!その銃を隠す時間はねぇ!だったらまずは逃げるんだ!」
エール「私、逃げないよぉ?」
オニダ「何言ってんだよエール!」
エール「だって…私が殺したんだもん♪」
オニダ「お、お前…!」
警察「ど、どういうことだ?」
警察がタイミング悪く、その言葉だけを聞いた。
警察「エール・ラヴァル。もしかして、君は…自分の父親も…!」
エール「くすっ。そうだよぉ♪お父さんもこの黒服たちもみんなみーんな!私が殺したんだよぉ♪」
オニダ「違う!殺したのは俺だ!俺が犯人なんだ!捕まえるなら俺を!」
警察「オニダ、君がここにきてからまだ数分。数分でここまでは出来ない。それに何より…エール、君のその返り血が何よりの証拠だ。」
警察「残念だよエール。君を逮捕する。」
エール「逮捕ー?出来るのぉ?」
警察「出来るさ。」
エール「くすっ。わぁい♪標的だぁ♪」
エールは銃を構えた。
オニダ「やめろエール!これ以上は!」
エール「オニダもどかないと、殺しちゃうかもよ?♪」
オニダ「エール!」
バン
警察「ぐぁぁ!」
オニダが止めるのも聞かず、エールは警察を撃った。
警察「貴様!」
警察はエールに銃口を向けた。
オニダ「やめろ!エールを撃たないでくれ!」
オニダは警察の銃を奪い取ろうとした。
警察「邪魔をするな!こいつは、捕まえなくちゃいけないんだ!」
オニダ「ふざけんな…ふざけんな!エールを捕まえられてたまるかよ!!」
オニダは警察を思いっきり殴った。
オニダ「エール!逃げよう!俺がお前を守るから!だから…」
オニダは強引にエールの手をとり、施設から逃げ出した。
どこまで走ったのかもわからない、どこなのかもわからない場所に辿り着いた。
オニダ「ここまでくれば、警察も中々追ってこないだろ。」
エール「ねぇオニダ、どうして?どうして私を助けるの?」
オニダ「そりゃあお前…その…」
エール「?」
オニダ「お、俺は、お前を嫁にして…その…」
エール「えー何?お前は俺の嫁だーってやつー?」
オニダ「そ、そそそそれだよ!それ!」
エール「くすっ、変なのー♪こんな殺人犯相手に、無理しちゃだめよー?」
オニダ「無理なんかしてねぇ!俺は…本気でお前が好きなんだ。エールは、俺の嫁だ。誰が何を言おうと。」
オニダはエールを抱きしめた。
オニダ「お前に近づく奴は誰だろうと俺が殺してやるよ。お前の手は汚させない。お前を一生守ってやる。俺はお前だけを、お前は俺だけを見て…生きるんだ…」
エール「オニダ…」
それから2人の旅は始まった。
しかし、その旅は長くは続かなかった。
オニダはあまりにエールに執着し、エールに近づく男という男を次々殺していったのだ。
エールが止めるのも聞かず、殺人を繰り返した。
エール「ねぇオニダ、もうやめてよ…」
オニダ「なんでだよ?お前が教えてくれたんだろ?人殺しは楽しいってな。」
エール「違う、私はそんな殺し方が好きなんじゃないの!私は…逃げまどうのを撃ち抜くのが好きなだけ…」
オニダ「一緒だろ?」
エール「違う!私は私なりの拘りがあるの!プライドがあるの!たしかに一般的には同じかもしれない、でも…あなたの虐殺とは違う。」
オニダ「あぁ?俺はお前のためにやってんだぞ?それなのになんだ?あぁ!?」
エール「オ、オニダ…?」
オニダ「お前は俺の嫁だ。俺の言うことだけを聞いて、俺に従ってればいいんだ。わかったな?」
エール「ひ、ひぃ…」
オニダ「わかったな!?」
エール「は、はいっ…!」
オニダはどんどん人を殺し、どんどん強くなった。そんなオニダを、エールは止めることは出来なかった。
そしてある日、そんな生活が窮屈になったエールは、オニダを殺す事を決めた。
エール「ね、ねぇオニダ。」
オニダ「ん?どうしたエール?」
エール「あれ、何だと思う?」
オニダ「どれだ?」
バン
エールはオニダの隙をついて銃を撃った。
オニダ「エー・・・ル…」
オニダは血を流しながら倒れた。
エール「ごめんなさいオニダ。でも、私には耐えられない。」
オニダ「俺から…逃げられると…思うなよ…?」
オニダは苦しそうにしながらもエールを睨み付けた。
エールはそんなオニダに恐怖を感じながら、その場を去った。
その後エールは銃を愛しすぎたのか、魔法で銃を生成する力を得た。
そして銃殺を続け、指名手配犯になった。
エールは銃殺に快感を覚え、もはや止まることはない。
銃殺少女エール・ラヴァル。彼女が報われる日は、来ないのかもしれない。
END
最終更新:2012年10月03日 06:33