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その魂を1度だけ

私の名前は亜空。時空を超える力を持った人間…の姿に化けてる人間ではない生き物です。

人間の姿に化けてる理由は単純明快。どの異世界に落ちた時でも対応できるように。

逆に人間がいない世界に落ちた時が大変だけど、その時はその時。

え?容姿?んーと、青い髪のサイドテール。白い服と青い短パン。

そんでもって赤いグローブに茶色の靴、白いコートってとこかな。

そして私はいつも通り、どこに落ちるかわからない時空の旅を楽しんでいた。

亜空「ほい到着!」

少年「…!?」

亜空「あ…」

少年「い、いきなり人が現れたぁぁぁぁ!」

亜空「あちゃー…見られちゃったか…」

こういう時が一番厄介。

亜空「あー…えーと、ワタシ、ミライカラキタミライジンネ!ココノコトバワッカリーマセーン!」

少年「その前にめっちゃ普通に喋ってたよなぁぁ!?」

亜空「とりあえず、私については突っ込むとキリないからやめておきなさい?」

少年「いやいやここは突っ込ませてもらうぞ、まずどっから現れた!?それからここに何の用だ!?それからそれから…」

亜空「あーもううるさいなー!質問は1つずつしなさい?それにまず質問する前に名乗るのが基本!」

少年「よし、いいだろう。まず俺の名前はボムリ。」

亜空「ほんとに名乗るんだ。」

ボムリ「いーから。」

亜空「私は亜空。」

ボムリ「んで、どっから来たんだ?」

亜空「どっかから来ました。」

ボムリ「そんな微妙な手が通用するとでも思ったのか?」

亜空「思いました☆」

ボムリ「思うなよ…」

亜空「それよりあなた…」

ボムリ「え?なんだよ。」

亜空「別にー?」

ボムリ「何なんだよ…」

ボムリに話を聞いたところ、この世界は普通の人間が普通に生活している世界らしい。

多少違う事があると言えば、1度だけ不思議な現象が起こせる事くらい。

亜空(んじゃああんまりおもしろい事は無さそうね。ちょっとしたら移動しよ…)

「やっと見つけた!」

   亜空とボムリが歩いていると、1人の少女が息を切らしながら走ってきた。

ボムリ「あ、コズミ。」

コズミ「探したんだよ、ボムリ。」

亜空「どちらさん?」

ボムリ「俺の…彼女だよ。」

亜空「あら、じゃあ私は邪魔かしらねー?」

ボムリ「そんな事ない…おい亜空、行こうぜ。」

亜空「へ?」

ボムリ「いーから!」

   ボムリはコズミに背を見せ、歩きだした。

コズミ「ボムリ!」

ボムリ「こっちにくんなよ!」

亜空「ちょっと!それは酷いんじゃないの?」

ボムリ「…いいんだよ。コズミは新しい彼氏探せよな。じゃあな。」

コズミ「どうして…どうしてなの!?あの事故で…あなたに何があったの!?」

亜空「事故?」

コズミ「ボムリの乗っていたバスの運転手が突然の心臓発作で倒れ、そのまま海に飛び込んだあの事故…その後半年も行方を晦まして、現れたと思ったら別れる!?そんな話、受け入れられるわけないじゃない!」

ボムリ「…俺さ、実はさ、浜辺に打ち上げられてて、そこで介抱してくれた人に恋しちまったんだ。だから、お前とはもう付き合えないんだ。」

コズミ「だから!そんな話は受け入れられないって言ってるでしょ!」

ボムリ「分かってくれよ…俺は、もうお前と付き合えないんだよ。」

コズミ「嫌…嫌!ボムリ!離れないで!」

ボムリ「コズミ…くっ…!」

亜空(あ、あれ…私邪魔者じゃないかな…。いや、それよりも…この事は、伝えるべきか…)

コズミ「ボムリ…私、何が足りなかったのかな。何をすればあなたの気持ちを…」

ボムリ「違うんだ!」

コズミ「違うって…何が違うの?」

ボムリ「俺は…俺は…っ!いや、なんでもない…」

コズミ「何それ…言ってよ!」

ボムリ「言えるかよ!頼む、分かってくれ…もう、お前と一緒にいられないんだよ!俺だって…俺だって本当は、ずっとお前と…!」

コズミ「どうして、大事な所で口ごもるの?本当は?本当は何なの?」

ボムリ「もう、時間がないんだ…」

コズミ「時間?」

ボムリ「亜空。変に問い質して悪かったな。よくよく考えりゃ、聞く必要なかった。」

亜空「…そのようね。」

ボムリ「お前…まさか気付いて…」

亜空「…」

   亜空は人差し指を立て、口にあてた。

ボムリ「…そうだな。」

コズミ「ねぇ、ボムリ…」

ボムリ「悪いとは、思ってるよ。お前に何もしてあげられなくて…」

コズミ「そんなのいい!今からくれればいいから!」

ボムリ「ごめん…さよならだ…。コズミ、ずっと愛してる。」

   ボムリは走り出した。決して振り返る事なく全力で。

コズミ「ボムリ!」

   亜空はボムリを追おうとしたコズミの前に立ち、止めた。

   僅かに見えた、ボムリから流れた涙。

コズミ「どうして止めるのっ…何も知らないくせに!」

亜空「ええ、私はあなたたちの関係は何も知らない。どんな話をしたのかも、どこに行ったのかも。けど、これだけは分かる。」

コズミ「何よ!」

亜空「ボムリの最期の言葉には、決して偽りはなかったって事。」

コズミ「なんであんたにそんな事…っ!」

亜空「分かるわよ。ボムリ生涯最期の…最高の想いくらい。」

コズミ「え…?」

亜空「…追うなら追いなさい。」





   コズミは走っている。

   愛しのボムリの元へと。

   「追うなら追いなさい。彼、もう死んでるのよ。事故で死んで、恐らく…最期にあなたに会いたくて、この世を彷徨って会いに来たのね。それほどまでに、愛されてるのよ。」

コズミ「ボムリ!」

   高台でボムリを見つけたコズミ。

ボムリ「コズミ!?」

コズミ「ボムリ…あなた…やっぱり、死んでたのね…」

ボムリ「やっぱり…?知ってたのか?」

コズミ「なんとなく分かった。あなたが私の前に現れた時に。ああ、この人はもういないんだ、って。けど、受け入れられなかった。あなたを失ったなんて、思いたくなかった!」

ボムリ「コズミ…ごめん、俺、もう行かなきゃいけないんだ。」

   ボムリの身体は浮き始めた。

ボムリ「最後にお前に会う。そういう条件で、俺はこの世に留まってたんだ。」

コズミ「待って!」

   コズミはボムリの腕を掴もうとした。

ボムリ「無駄だよ。零体の俺に、触れる事なんて出来ない。」

   ガシッ

ボムリ「え?」

   コズミは、ボムリの腕を掴んだ。

ボムリ「どう…して…?まさか!お前!」

コズミ「…そうよ、私も、もう死んでるの。」

ボムリ「なんだって…?」

コズミ「1週間前、トラックに跳ねられて…けど、私も最後にあなたに会いたくて、その条件でこの世に…」

ボムリ「そう…だったのか…」

コズミ「ごめんなさい…けど、これで、私と一緒に…いてくれる?」

ボムリ「当たり前だろ?これからも…ずっと、一緒に…」

   ボムリとコズミの身体は徐々に消え始めた。

   それを木陰から眺めていた亜空。

1度だけ不思議な現象を起こせる。それは、死んだ時に条件付きで1度だけ現世に留まる事が出来るという事。

それをあの2人はお互いに会うために使った。

2人の身体が完全に消え、私は別の時空に移動した。




                          END
最終更新:2012年10月03日 06:34
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