オニダの城がある森から西へ数キロ進んだ場所に、それはある。
【メモリーグレイブ】
ジャング:メモリーグレイブ。すごく地味な町で、何度か地図から省かれているほど存在感のない町だな。
ネクリア:graveってことね。でも、色が地味なって意味じゃなかった?
ジャング:詳しいとこまで知るか。
ヤズネ:ほんと、目立ったものもない地味な町でやすね~。
ウミナギ:ちッ。
ハリイノギョ:どないしたん?
ウミナギ:別になんでもねェよ。ただ、何か気にくわねェ。
フバクノソラワ:ネクリア様~っ。お腹空きました~っ。
ネクリア:そうねー、この町に何かあればいいんだけど…
ソルト&シュガー:見る限り、過疎った村みたいな場所だからねー。ありそうにないよねー。
ウミナギ:だったらさっさと抜けようぜ。長居する理由もねェならよ。
町を数分歩いた。
ヒイカ:ネクリア。気付いた?
ネクリア:ええ、もちろんよ。
ジャング:この町…
ヒイカ:子供しかいない。
見渡す限り、子供たちは遊んでいるものの、その親らしき人物も、働いている大人も一切見当たらない。
ネクリア:どうなってるのかしら?
ヒイカ:幽霊姉妹。何か感じないの?
シュロ:ええ、残念ですが…
ユラク:原因は霊的なのじゃないなー!
ガーラミンド:どうするんだ?このまま進むのか?
ヒイカ&ジャング:…
ガーラミンド:ん?なんだ?
ヒイカ&ジャング:いたんだ。
ガーラミンド:あぁっ!?
ユラク:あれ?あなた誰だっけ?
ガーラミンド:俺様はガーラミンドだ!覚えとけ!
ヒイカ&ジャング&ウミナギ&ユラク:忘れた。
ネクリア:(とことん嫌われてるわねぇ…)
てててて
ぼすっ
ヤズネ:んおお?
一人の少女がヤズネにぶつかった。
少女:いたっ!
少女は転んだ。
ヤズネ:大丈夫でやすか~?気をつけるでやすよー。
ヤズネは少女に手を差し伸べた。
少女:…じーっ。
ヤズネ:な、なんでやすか?
少女:お姉ちゃん…ねぇ、《あなた、だぁれ?》
ヤズネ:へっ?わちき?わちきは……
ヤズネは言葉に詰まった。
ヤズネ:(あ…れ…?わちき?わちきの名前は…?)わからない…?
少女:ふぅん。わからないんだ…
少女はにやっと笑った。
ヤズネ:(な、何!?こいつ、危ない!?)虹つk…!
ヤズネは周囲を見渡すと、誰もいなかった。
ヤズネ:え…?虹使い!どこでやすか!?魔女!?ナイフ!?ウミナギ!?
叫んでも、誰も返事はしなかった。
ヤズネ:(一体どうなって…?)おいお前!何をしたでやすか!!
少女:何を…?ねぇ、《あなた、どこから来たの?》
ヤズネ:質問してるのはこっちでやすよ!何をした!!
少女:質問?ねぇ、《あなた、何の質問してるの?》
ヤズネ:だから!お前が…あれ?お前が…なん、だっけ…?
少女:…ねぇ、《あなた、仲間なんているの?》
ネクリア:変な町だけど、特に変な事が起きるわけでもないわね。
ジャング:そうだな。まぁ、子供だけの町で何か起きるってのも考えづらいしな。どうやって生活してるのかは気になるが。
ウミナギ:…?
ウミナギはきょろきょろしている。
ペライト:ドウシタ?
ウミナギ:あいつ、どこいった?
ノット:あいつ?
ウミナギ:ヤズネだよ!さっきから見当たらねェんだよ。
ハリイノギョ:え?ヤズネはんおらんの?
ウミナギ:いつもならヒイカの近く飛んでるのによォ…
ヒイカ:そういえば…いないわね。
エール:ここまでほぼ直線だし、迷うなんてこともないよねぇ。
一瞬会話が止まった。
ジャング:どうやら、子供だけだと思って油断してたみたいだな。
ネクリア:神隠しの類かしら?厄介ね。
ヒイカ:(だとしても、ヤズネ程の強さを持った奴をそんな簡単に神隠しできるの?)
ミョンガー:神隠しだとしたら、別々に行動するのは危険だね~。
ジャング:そうだな。最低でも2、3人で行動しよう。
てててて
ぼすっ
ハリイノギョ:なんや?
女の子がハリイノギョにぶつかった。
女の子:いたっ!
女の子は転び、長いサイドテールが派手に動いた。
ハリイノギョ:すんまへんな。大丈夫?
ハリイノギョは女の子に手を差し伸べた。
女の子:…じーっ。
ハリイノギョ:どないしたん?
女の子:ねぇ、《あなた、誰でやす?》
ハリイノギョ:ん?わいは…あれ、わいは…誰や?
ハリイノギョはハッとなった。
ハリイノギョ:(しもた!)
そう思ったものの、時すでに遅し。周りには誰もいなかった。
女の子:ねぇ、
ハリイノギョ:(あかん!…え?)その喋り方は…
女の子:《あなた、仲間なんているんでやすか?》
ネクリア:ヤズネー!どこー?
エール:でってこーい!
皆は数人ずつで町を走りまわり、ヤズネを探していた。
ジャング:いたか?
フバクノソラワ:いないよ~っ!
ウミナギ:どこいっちまったんだァ?
ジャング:よし、ウミナギとフバクノソラワはあっちを探してくれ。俺とソルト&シュガーはこっちだ!
ソルト&シュガー:おっけー。
それでも、ヤズネは見つからなかった。
フバクノソラワ:ヤズネ~っ!どこ~っ?
アルトア:大して広くもないのに、全然見つからないな。
ペライト:アルトアデモサッチデキナイノカ…
アルトア:ああ。ウミナギ、次はあっちを調べてみよう!
……
アルトア:ウミナギ!?
そこに、ウミナギの姿はなかった。
ノット:この短期間で…?
ペライト:ヤラレタッ!
てててて
ぼすっ
ウミナギ:あァ?
女の子がウミナギにぶつかった。
女の子:いたっ!
女の子は転び、長いサイドテールが派手に動いた。
ウミナギ:自分でぶつかってきておいて倒れてんじゃねェよ。
ウミナギは文句を言いつつ、手を差し伸べた。
ウミナギ:よっと。気をつけろよなァァ。
ウミナギはその場を立ち去ろうとしたが、女の子に手を掴まれた。
ウミナギ:あァ?まだ何か用か?
女の子:ねぇ、《あなた、誰でやす?》
ウミナギ:や…す…?
ウミナギはじーっと女の子を見つめた。
女の子:ねぇ、あなた…
ウミナギ:お前、ヤズネか!?
女の子:えっ?
ウミナギ:おい!答えやがれェェ!お前は、ヤズネなのか!?
女の子:ヤズネ…?
ウミナギ:そうなんだろォォ!?
女の子:知らない、わちきの名前なんて…
ウミナギ:(わちき!やっぱりヤズネか!だとしたら…この空間のどこかに…犯人がいる!)
よく見渡すと、今までいた場所と少し違った。
ウミナギは神経を集中させた。
ピーン
ウミナギ:そこだァァ!『イートピーポー!』
ウミナギは1件の民家に向かって技を放った。
がらがらがら…
?:ほぅ、中々出来るようだな。
その中から、緑髪の男が現れた。
ウミナギ:てめェが神隠しの犯人だなァァ?
シイ:いかにも。私はシイ。この町は私が作った町だ。
ウミナギ:てめェが作っただァ?むしろてめェが隠して住人を消してるんじゃねェのかァァ?
シイ:お前も妖怪ならわかるだろう?人間は、妖怪にとっては主食なのだ。だが子供は食っても力にならん。だから、私の下僕として働き、大人になったら食うのだ。
スッ
ハリイノギョやフバクノソラワが現れた。
シイ:こいつらは人間ですらないからな。私の下僕としてだけ働いてもらうことにした。
ウミナギ:てめェ…!
シイ:なんだ?妖怪。お前も人の事言えるのか?
ウミナギ:ちッ。俺も喰う側の妖怪。文句は言えねェ。ここの住人がどうなろうが知ったことじゃねェ。だがな…
ギロッ
ウミナギ:こいつらは俺の仲間なんだよォォ!俺の仲間に手ェ出してんじゃねェよォォォォ!!
シイ:残念だ。強い妖怪なら、是非とも仲間に欲しかったが…おい、そいつの記憶も墓場へ送れ。
ウミナギ:墓場ァ?
シイ:メモリーグレイブ。memory(記憶)のgrave(墓場)だ。私の下僕となるのに、記憶はいらないからな。
ウミナギ:てめェェ…ふざけんじゃねェぞォォォ!『イート…
シイ:おっと!
シイはハリイノギョを盾にした。
ウミナギ:なッ!
シイ:攻撃してもいいぞ?ただし、お前の大事な仲間にも当たるがな。
ウミナギ:て、てめェェ!!
シイ:お前はこの空間に来た時点で負けは確定してるんだよ。もう私の術中にある。逃げることは出来ない!
ウミナギ:うるせェ!てめェなんかに…負けはしねェ!
シイ:じゃあ…自分の名前を言ってみろ。
ウミナギ:俺の…名前?俺の名前は……!?
シイ:わからないだろう?もう、お前はここから出られない。
ウミナギ:(くそッ…なんでだよ!?なんでわかんねェんだ…そうだ!)ヤズネ!お前だけでも…逃げろ!
女の子:ヤズネ?逃げる?
ウミナギ:そうだよ!ヤズネだ!お前の名前だよ!早く逃げて…ヒイカたちにこの事を…
シイ:諦めの悪い奴め。さぁ…質問してやれ!
女の子:ねぇ、《あなた、仲間なんているんでやすか?》
ウミナギ:ヒイカにこの事…を…ヒイカって…誰だ?
シイ:(終わったな。)
ウミナギ:ふざけんな…
シイ:!?
ウミナギ:てめェ、俺から記憶を奪ったくらいで勝った気になったわけじゃあねェよなァァ?
ギロッ
シイ:(なんだこいつは!?仲間の事を忘れ、何に怒っているのかもわからないはずなのに!)
ウミナギ:何を奪ったのかも俺にはわからねェ。だが…逆にそれは、俺がてめェに対する妬みの力に繋がるんだよォォォォ!!
ウミナギの両手が狼の顔になり、シイに向かって飛んでいった。
シイ:くっ!(しまった!仲間という概念がなくなって、盾が無意味になったか!)
シイは攻撃を回避した。
シイ:止むを得ん…!
パチン
シイが指を鳴らした。
ウミナギ:はッ!?ハリイノギョ!?
シイ:どうやら…お前からは仲間という記憶を奪わない方がいいらしいな。
シイは再びハリイノギョを盾にした。
ウミナギ:くそッ!
ウミナギは手を戻した。
ウミナギ:おいヤズネ!さっさと目ェ覚ましやがれ!ヤズネ!
シイ:(なるほどな…)お前からは、これをとるのが一番のようだな。
女の子:ねぇ、《あなた、私の事知ってるの?》
ウミナギ:何言って……あれ?てめェ…誰だ?
女の子:知らない。
シイ:ははははは!今度こそ終わりだな!
シイは高笑いした。
ウミナギ:…終わってねェよ。
シイ:何!?
ウミナギ:俺には…こいつが誰かわからねェ。でも…知ってる。俺は絶対にこいつを知ってるんだ!
ウミナギは女の子を掴んだ。
ウミナギ:なァ、お前は誰なんだ?頼むよ…教えてくれよ…!
女の子:知らない…わちきも…
ウミナギ:俺もお前も、お前の事を知ってるはずなんだよォォ!頼むから…思い出してくれよォォォ!!
女の子:わかんない…わかんないよ…
ウミナギ:絶対…知ってるんだよォォ…!
カサッ
ウミナギ:(これは…?俺のポケットに何か入ってる…?)
ウミナギはポケットから紙きれを取り出した。
シイ:いつまでも…いい加減にしろ!
バシッ
シイはウミナギを殴り飛ばした。
ウミナギ:ぐァッ!
ウミナギは吹き飛び、紙きれは宙を舞った。
シイ:おいお前!もっと記憶を消してやれ!
シイは女の子に命令した。が、女の子は紙きれを拾った。
女の子:何これ…
シイ:ん?そんな紙きれ捨てろ!
ウミナギ:(あの紙は…そうだ、誰かが俺のポケットに入れたんだ…誰…だっけな…)
ウミナギは気を失った。
シイ:ふん。落ちたか。だがこいつは強い。俺の忠実な下僕にしてやろう。
女の子:…させないよ。
シイ:ん?何か言ったか?
女の子は、強気の目でシイを睨んだ。
シイ:なんだ?お前…
女の子は紙を見せた。
シイ:紙?…ヤズネ?ウミナギ?まさか!
女の子:思い出したよ…これはわちきの名前を覚えてなかったお前に、わちきの名前を書いて強引にポケットに入れたんだよね。お前の名前も…ね。ウミナギ。
シイ:(こいつ…!)
ヤズネ:わちきの名前はヤズネ。夜雀のヤズネだ!わちきの仲間のウミナギに、それ以上手を出すのは許さないよ!
シイ:ちっ!記憶が戻ったか!だが、またお前の記憶を消して…な!?
シイは目の前が真っ暗になった。
シイ:何も…見えん!?
ヤズネ:もう…遅いよ。お前の目は…わちきが頂いた。『鳥目以下』。
シイ:(まずい…!)
シイは見えない中で走って逃げだした。
ヤズネ:逃がすか!『バースト…
ヤズネは元の姿に戻り、不気味なオーラを纏った手を掲げて体を反った。
ヤズネ:クロウ!!』
ヤズネは目をギロリとさせ、纏ったオーラごとシイに叩きつけた。
シイ:ぐああああああぁぁっ!
ヤズネ:わちきたちの仲間の絆を馬鹿にした、お前の負けでやすよ。
すぅっと背景が変わり、ヒイカたちが見えた。
ヒイカ:ヤズネ!ウミナギたちまで!
ネクリア:うわっ!ウミナギひどい怪我じゃないの!どうしたの!?
ミョンガー:ハリイノギョにフバクノソラワまで~!
ヤズネ:説明は後でやす。それより…こいつが犯人でやすよ。
ヤズネはシイを指差した。
シイ:ぐっ…くそっ!
シイは走って逃げだした。
ネクリア:私の部下たちにこんな仕打ちして…タダで帰れると思わない事ね!
ヒイカ:しっかりとお返ししてやるわ!
ネクリア:『火の山地獄!』
ヒイカ:『レインボードラゴン!』
2つの技が重なり、燃える虹色の龍となり、シイを襲った。
技が消えると、ボロボロになったシイが気絶していた。
ウミナギ:んー…?
ヤズネ:気がついたでやすね!
ウミナギ:お前…ヤズネ!!お前、大丈夫か!?
ヤズネ:大丈夫でやすよ。ウミナギ…ありがとね。
ウミナギ:なッ…!べ、別に礼を言われるようなことはしてねェよ…
ネクリア:あらら~?ウミナギ照れてる?
ウミナギ:照れてねェよ!!
ジャング:スミに置けない奴め。
ウミナギ:う、うるせェっ!
ヤズネ:ウーミーナーギーっ!
ヤズネはウミナギの頭に乗った。
ウミナギ:乗るんじゃねェーッ!
続く
最終更新:2014年03月16日 01:49