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1―

 番司が果歩に告白してから2週間、最初は皆が天変地異かと大騒ぎしてましたが、今は落ち着き二人はカップルとして認められています。
そんな二人は仲良く学校から帰宅中。朝は番司が毎日迎えに行き途中までの短い道を一緒に登校し、帰りも番司が迎えにいってます。

「果歩、今日の弁当旨かったぜ。世界で2番目だ」

「ええ~、2番~?じゃあ1番ってどんな料理なのよ!」

 果歩は愛情手料理を2番と言われ、可愛く頬を膨らませ番司をにらみます。

「1番か?そんなの決まってんだろ?」

 番司はニヤリと笑い言い切ります。

 「……明日、お前が作ってくれる弁当だよ」

 果歩はキョトンとしてましたが、言葉の意味が分かったのか番司の腕に抱きつきました。

「あははっ、何それ~。小説で読んだことあるよ~。うふふふ、でも、アリガト……チュッ」

 このように2人は、付き合いだしてからこんな甘~い毎日を繰り返してる訳です。しかし残念なことに、作られた幸せは長くは続きません。
そう、番司は惚れ薬の効果で果歩に告白し、果歩は知らず知らずの内に惚れ薬を番司に盛ってしまっていたのです。

「ねぇ果歩ちゃん、どうして番司君と付き合う事になったの?撃退薬作ってくれなんて言ってたのに…なんで?」

 久しぶりのGHK集会の後、2人になった時に優さんが聞いてきました。あれだけ邪魔者扱いしてたんですから当然の疑問ですね。

「えっとぉ、…番司からね、告白してきたの。好きだ、お前を愛してる、お前が最初で最後の女だって」

 思い出しているのでしょうね。両手を赤く染まった頬に当ててイヤンイヤンってやってます。

「はぁ~情熱的だねぇ、番司君は……」

「優さん、手、出しちゃダメですよ」

 殺気たっぷりに優さんをにらみます。

「アハハ、出さない出さない。あ~あ、あたしもいい人見つけようかな?あ、そうだ。辻原くんにでも惚れ薬使っちゃおうか?」

 優さん、あなたが言うと洒落には聞こえませんよ。

「惚れ薬って……そんなの辻原さんには効きませ~ん」

 知らないとは罪ですね。優さんの冗談だと思ったのか、無邪気に笑う果歩。普通は自分が使っちゃったとは思いもしないでしょうね。

「まぁ薬は中之井さんに没収されちゃったし、もう作る気ないしね~」

「えっ?ホントに作ってたんですか!優さん凄い!さっそくお兄ちゃんに……」

 キラーン!と光る目。國生さんと我聞をくっつけるために使う気なんでしょうか?この性格は番司と付き合うようになってもそう簡単には変わりませんね。

「いや、だから中之井さんに没収されちゃったのよ。はぁぁ~、あれ作るのに結構お金かかったのにぃ~」

「残念~!お兄ちゃん達をくっつけるチャンスだったのに~」

 研究費が無駄になったことに肩を落とす優さん。果歩はせっかくのチャンスだったのにと悔しがってます。

「まぁ惚れ薬といっても一粒三日ぐらいしか効果ないと思うし、よく考えたら薬で恋人同士になっても長続きしないだろうしね」

「そうですよね、やっぱり真実の愛じゃなきゃ!……ところでその惚れ薬、今どこにあるんです?」

 握りこぶしで使う気マンマンです。サスガです、我儘です。

「中之井さん、果歩ちゃんのとこから引き上げた後にトイレで流したって言ってたなぁ」

「へ?アタシのとこから引き上げた?何ですそれ、知りませんよ?」

 そんな物あったかな?と首を捻る果歩。そんな果歩に優さんが話します。……果歩が知らなかった真実を。

「あれっ?聞いてなかったの?前に渡した番司君の撃退薬ってあったでしょ?あれって惚れ薬だったのよ。
同じビンに入れてたから間違えて渡しちゃったのよ、ゴメンね」

 優さんの言葉を聞いた果歩の顔は青ざめ足が震えだしました。

「ええ?あの薬が……惚れ薬?……じゃあ番司は惚れ薬で?」

「一度でいいから人間で試してみたかった……か、果歩ちゃん、どうしたの?顔、真っ青よ!」

 真実を知った果歩は、震える手で優さんに抱きつく。

「優さんどうしよう?あたし……番司に嫌われちゃう!……嫌われちゃうよぉ。やだよぉ……嫌われたくないよぉ」

 思いもしなかった真実に、果歩の目からはこらえきれずに涙が溢れだしました。

2―

「そっか……あの薬、使っちゃったのか。ゴメンね、あたしがビンを間違えたばっかりに……」

 泣きじゃくる果歩から事情を聞いた優さんは、果歩の頭を撫でて落ち着かせてます。

「ううん、あたしが番司に変なもの食べさせたからいけなかったの……罰が当たったの」

 だいぶ落ち着いたのか果歩が涙をふきながら話し掛けてきました。

「よく考えたら番司がアタシなんかを好きになるなんてありえないもんね。アタシが番司の恋人になるなんて……夢みたいな話だもんね」

「果歩ちゃん……」

「そうよね、番司は陽菜さんが好きでアタシなんて全然意識してなくて……邪魔者扱いされてたし。
それに引きかえ陽菜さんはやさしくて綺麗で頭も良くて……アタシなんかよりずっと大人だし」

「果歩ちゃん!」

 優が話を遮ろうとするも、話し続けます。

「おかしいと思ってたんだ。……急に好きだなんて言い出すんだから。そうじゃなきゃ番司がアタシの事なんて、好きになってくれる訳ないじゃない……番司には、アタシなんかより陽菜さんの方がお似合いなんだ」

 パンッ!

「果歩!しっかりしなさい!」

 優が果歩の頬を叩きます。そして両肩をがっしりと持ち、揺さぶり話しかけます。

「確かに薬の力であなた達は恋人同士になったわ。けど、だからといって番司くんを諦めなきゃならないなんてことはない!
あなたの番司君への気持ちはそんなものなの?薬なんかに負けちゃうわけ?諦めていいの?」

 優は果歩を抱き締め語ります。

「今度は薬の力じゃなく、あなたの自身魅力で番司君を虜にしちゃいなさい! ……大丈夫、果歩ちゃんならできるわ!」

 優の言葉に果歩は泣きじゃくります。

「優さん……番司、アタシのこと嫌いにならないかな? ……ホントに好きになってくれるかな?……このまま付き合ってくれるかな?恋人のままでいてくれるのかな?
……アタシに……好きって……言ってくれるかな?」

 不安な瞳で優に尋ねます。

「大丈夫、この天才優さんが保障するわ!番司君なんて、果歩ちゃんの魅力でイチコロよ!」

 優は自信満々に言い切ります。

「第一、番司君はモテナイしね。まぁよっぽどな物好きじゃなきゃ、あのハチマキ男には惚れませんよ、果・歩・さん?」

 ニヤリと微笑み、ハンカチで果歩の涙を拭く優さん。そんな優さんの優しさに、果歩は自信を取り戻しました。

「むぅぅ~、物好きで悪かったですね!」

 ハンカチを奪い取って涙を拭き、握り拳を振り上げ立ち上がります。

「あれは誰にも渡しません!アタシの物です!アタシだけの物です!」

 再度拳を突き上げ、机を叩き大声で叫びます。

「そうよ!アタシの物よ!邪魔するヤツは例え陽菜さんでも……殲滅よ!女の恋は……戦争よ!」

「よっカワイイよ、このわがまま女!」

「変な合いの手入れない!さっそく……作戦会議よ!」

 瞳に愛の炎を宿した果歩が力強く宣言します。どうやら完全に立ち直ったようです。

(やれやれ、やっと果歩ちゃんらしくなったね。……しかし惚れ薬、大成功じゃん!商品化しよっかな?)

 優さんあなた、少しは懲りたらどうなんですか? 給料でなくなりますよ?

3―

 愛の力を取り戻した果歩は、優さんの部屋で作戦会議です。今回はデルタ3,デルタ4共に不参加です。
まあ恋人に薬を盛ったなんて、あまり人には知られたくないですしね。

「まずどうやって番司をアタシの虜にするかですが、提案のある人いますか?」

 2人だけで提案のある人もないような気もしますが、本人達はいたって本気です。

「ハイ、議長!」

 優さんが挙手をしてホワイトボードに書き始めます。

「私の提案は『口渡しでポッキー食べさしてキスしちゃった作戦』です!」

「却下です」

 優は即座に却下されたので『何故に?』と問いただすと『……毎日してるから』と甘い答えが。

「…では、『膝枕での愛の耳かき』作戦です!」

「却下です」

 また即却下です。

「まさか議長……」

 果歩は真っ赤な顔で頷き指をもじもじさせてます。

「……うん、昨日したところ」

「まさか毎日とか?」

 優さんが呆れ顔で聞きました。すると『二日に一度ぐらい』と素敵な返答が。

「……では『ご飯が熱いからフーフーして食べさせて、あ・げ・る』作戦です!」

「却下です」

 嫌な予感を抱きつつ、額を押さえ理由を聞くと、『……2人の時は必ずしてるの。……ポッ』とやっぱりな答えが。

「……必ず、なんだ」

「うん……番司も食べさせてくれるし……優しい番司、大好き!」

 果歩は頬に手を当てイヤンイヤんしてます。

「……さいでっか」

 優さんの手にはいつの間にかビールが握られてます。

「……では『今日も一日ご苦労様、お風呂でお背中流しましょ』作戦で……」

「却下です」

 一気に飲み干した空き缶を握りつぶし理由を聞く優さん。

「『果歩に背中を洗ってもらうと心も綺麗になるよ。愛してる、チュッ』ってしてくれるから、よくするの。……こんなこと人に話すのって恥ずかしいなぁ。
あ、もちろん水着着用ですよ。私達プラトニックな関係ですから」

 との体中がかゆくなる返答が。優さんはそんな攻撃にも負けず、一升瓶片手にまだ提案します。すごい忍耐力です。

「では最終兵器の『男の夢!裸エプロン』作……」

「却下です」

 二本目の一升瓶片手に『何でじゃい』と聞く優さんは、とてもうら若き乙女には見えません。

「番司に怒られたの。そんな事しなくてもお前は世界一魅力のある女だ…って」

 またイヤンイヤンってしてます。惚気話が出来て幸せそうな果歩。体中が痒くなるような惚気を聞かされた優さんは……

「……もう嫌だ~!殺せ!いっその事殺せ!もう殺してくれ~」

 甘甘惚気に耐え切れず、優さんついに切れちゃいました。

「もう、優さんったら、こんなに酔うまでお酒飲むなんて……よっぽどな事があったんだ」

 ……ありましたよ。今、まさに目の前でね。

「もうてめぇら子供でも作ってどっか行け!ボ~ケ~!」

 酔っ払い優さんのたわ言に、果歩の目がピキーンと光りました。

「そう、それよ、それしかないわ!二人の愛の結晶よ!」

 いやいや早まっちゃダメですよ、果歩さん。あんた中2でしょ?

「番司に飲ました薬は10錠。……優さんは1粒3日って言ってたわね。2週間経ってるから残り16日。……今日を除くとあと15日」

 顎に手を当て考えます。目が怖いです。

「生理の周期を考えると……作戦決行日は……3日以内ね。よしっ!ここからが正念場よ~」

 両手を握り締め決意を固めてます。

(ここを逃せば番司と別れなきゃいけないかも…そんなのイヤ!死んでもイヤ!絶対に……イヤ!アタシをここまで惚れさせた責任は取ってもらうわよ。絶対逃がさないんだからね、覚悟なさい!番司!)

 果歩は鼻息荒く走り出しました。……哀れな酔っ払いをそのままにして。

4―

 次の日の朝、いつも通りに番司が迎えにきました。

「おはよう番司、いや弟よ。毎朝ご苦労さん」

「おっす工具楽、果歩はまだか?」

 最初は弟じゃねえ!とか言ってましたがもう慣れたみたいです。

「ああ、なんかまだ弁当作ってたな」

「へぇ珍しいな。寝坊でもしたのか?」

「まさか、俺じゃあるまいし、はっはっはっ」

 我聞、胸を張って笑ってます。

「それって威張れることか?こんなのが兄貴だと果歩も苦労するよな」

 やれやれといった感じの番司。ちょっと前までは人の事は言えない生活をしていたのに……愛とは偉大ですね。

「むぅ、何を言う!どこをどう見ても立派な家長じゃないか!」

「勇ましいセリフは赤点をなくしてから言ってみな」

「うぐっ、し、しかしお前も見たようなもんだろ?」

「はっはっはっ、最近は果歩に勉強を教えてもらってんだよ。赤点なんてあり得ねぇよ」

 いやいや、番司君。果歩は中2ですけど?なんで中学生に勉強習ってるんですか?そんな番司はやれやれといった表情で言います。

「ははは、お前のような奴が社長じゃ、國生さんもかわいそうだよな」

 その何気ない一言が、さらなる大変な勘違いを生み出したのです。

(う~ん、お弁当、番司に精力付けてもらう為とはいえ、ウナギの蒲焼にとろろ汁はやりすぎたかな?)

 果歩は番司と我聞の弁当箱とポットを持って玄関へと急ぎます。ちなみに我聞の弁当の中身はふりかけだけです。
悲しき日本人の父親といった感じのお弁当ですね。

「お兄ちゃん、これお弁当。ポットにはとろろ汁が……」

 玄関から我聞に声を掛けようとした時、番司の声が聞こえてきました。

「……國生さ……かわい……よな」

(え?今、番司が國生さんって言ってた?なんで?……まさか薬の効果切れちゃったの?)

 恋人の番司が以前の思い人の名を言ったことに愕然とします。

(なんて言ったの?『國生さ…かわい……よな』って言ってたよね?)

 真っ青になった果歩の脳裏には、最悪の言葉が浮かびました。

(『國生さんってかわいいよな』って言ったんだ。……あはは、遅かったんだ。……薬、切れちゃってたんだ)

 目からは涙が溢れ出します。

(もうアタシの事かわいいって言ってもらえないんだ……もう、無理なんだ)

 果歩はお弁当を玄関に置き、自分の部屋にこもりました。
最終更新:2007年12月21日 21:45
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