Le souhait 智途編9
――まさか、こんな事になるとは、思いもよらなかった。
『元の生活には戻れない』『生きて帰られる保証はどこにも無い』なんて言われて、
そんな事、実感の沸くようなことじゃない。ただ、漠然と受け止める事しかできない言葉じゃないか?
でも、もし自分が人にそんな内容の事を伝えなければいけない時、やはりそう言う事しかできないだろ?
だから、俺たちも漠然としかその意味を理解する事ができない。
あまりに頼もしく、力強く、浅はかで、若い。
そんな俺たちにあるのは、実現する力の伴わない夢、夢想だけだと、
彼らは教えた。
とある施設。
施設、と言うほどのものでもない。ただの家だ。
ただ、中に居れば誰にも居場所を知られる事がないだけの、普通の家だ。
その一室に、私と緋柳は居た。
雪「・・・後悔ばっかりだわ」
緋「・・・」
雪「智途、ハロ君。結局は二人を巻き込んで。・・・私だけ死ねばいいのにって。何回後悔したって」
緋「やめて。せっちゃんは悪くありません。私も、一人で決断するように強要したようなものですから」
雪「強要?フフ、わたしはそんな事された覚えは無いわ」
ただ、幸せになって欲しかったって、それだけ。
雪「でも、あの子達は言うのよ。私を見殺しにできないって。私を助けるって。協力するって」
思わず笑いがこぼれる。
雪「言葉の意味がわかってるのかしら?自分たちの幸せをなげうって、私なんかを・・・!」
緋「・・・」
雪「私を守りたいって、そう、言ってくれるの。笑っちゃうわね」
緋「でも、せっちゃんも同じような事言ってます」
雪「え?」
緋「自分の幸せを犠牲にして、二人を守ろうとしていませんか?」
雪「私の幸せはどうでもいいの。智途たちのように半世紀以上の猶予なんて無いんだから」
それに、私がいくら不幸になったところで、私はすぐに死ぬだろうし、すぐに忘れ去られるでしょう。
それが、一番綺麗で望ましい状態じゃないかしら?
緋「・・・私も、せっちゃんの幸せを願っています。では私は、彼らのように愚かでしょうか?」
雪「愚か・・・いや。若いのよ」
緋「若くて結構です。どうせ、死ぬまで若いですから。せっちゃんと同じです」
どこまでも『同じ』と言いたいようね。腹が立ってきたわ。
緋「願わくば、みんなが生き残る術を。そうは、考えたくありませんか?」
雪「あったらいいわね」
緋「無理ですか?」
雪「わからないけど、都合はいいわ」
お互い、これが最後の手段になるでしょうけど。
雪「そうね。できるだけ、みんなが生き残る道を辿りましょう」
緋「はい」
緋柳は笑顔で応えた。
一方、こちらも施設の一室。
ハロ「――っだぁ、はぁ、はぁ・・・」
チト「こら、ハロ!休むな!」
俺たちは、雪花さんに『じゃあ取りあえずこれやっといて』と言わされて与えられたメモ通りに行動している。
ハロ「『懸垂百回』なんて、『取りあえず』の部類じゃねぇぞ・・・」
チト「しかし、やるしかないだろ」
ハロ「そ、そうだが。俺は運動しているお前の肢体を眺めて妄想をするほうが望ましい」
チト「・・・ちょっと話がある」
ハロ「いいいい痛い痛い痛い!」
四の字固め。
ハロ「痛いけどなんだか素敵な感しょk・・・あだだだだ!」
ガチャ(SE:ドアの開く音)
雪「もう、騒がしいわね。何?」
チト「なんでもない」
雪「『なんでもない』じゃないでしょ?調教してないでさっさとハロ君離しなさい」
智途は言われたとおりに俺を解放した。
うーん、なんだか筋肉が伸びて動きやすくなった感がしないでもない。
チト「だって、ハロが運動する私をいやらしい目で見てたんだ」
ハロ「言いがかりだ!」
チト「って自分で言ってた」
ハロ「確かに言った!」
あ、間違えた。
雪「だって智途がいやらしい体してるもん。そりゃ私だって見るわよ」
ハロ「ほら」
チト「何が『ほら』だ!全然嬉しくないぞ!」
智途は機嫌を損ねたふうに、傍にあった椅子に座って足を組んだ。
チト「で?姉さんは私をからかいに来たのか?」
雪「もう、怒んないでよ。・・・ちょっと、二人に紹介したい人が居てね」
ハロ「交際相手ですか?」
雪「ふふ、断固否定♪」
さいですか。
雪「とにかく、入ってきて」
雪花さんが合図すると、ありえない組み合わせの二人が現れた。
ハロ「えーと・・・」
現れたのは、理緒のところのメイドさんの緋柳さんと、毒男の叔父さんの渋沢さん。
何コレ?と思って智途の顔を見るが、目が合ってしまった。
緋「実は私たち」
ハロ「アイドルグループだったのです、とか」
雪「黙って聞いててくれる?」
笑顔で怒られた。
緋「・・・私たちは、反オミナス団体、センチネルの団員なのです」
はあ。
ハロ「kwsk」
雪「前に話したでしょう?私のような改良した人間を作った団体。それがオミナスなのよ」
ハロ「だいたい把握した」
チト「そういえば、聞いたことがあるな、そのオミナスとか言う名前」
渋「・・・話を進めろ」
渋沢さんが口を開く。不機嫌なのだろうか、いつもの冗談めいた雰囲気は無い。
雪「私たちは今回、オミナスに向かって攻撃を仕掛ける事にしたの。覚悟はできてるわね?」
ハロ「・・・ああ」
チト「う、うん」
雪「よろしい。そこで、今回ハロ君に任される仕事はただ一つ」
ハロ「ただ一つ・・・」
雪「二つがいい?」
ハロ「いえ、一つの方向で」
雪「オミナスが張った特殊なバリアを解く事。何、格闘したり銃で撃ち合ったりする事じゃないわ」
チト「よかった・・・」
ハロ「全然良くないぞ」
ハロ「俺はそんな技術持ってないんですが」
雪「行けばわかるわ」
どういうことなんだ??
チト「わ、私はどうすればいい?」
雪「できるだけハロ君と一緒に居て。危ないからね」
何が危ないんだ?
全然意味がわからない。『行けばわかる』ってどういう事なんだ?さっきの懸垂百回の意味は?
ハロ「雪花さんたちはどうするんですか?」
俺が聞くと、三人で顔を見合わせた。
やがて、雪花さんが俺のほうを見て微笑んで言った。
雪「ハロ君たちにはできない事よ」
ハロ「・・・」
渋「とにかく、今日は家に送ろう。明後日の明朝、また迎えに来る」
渋沢さんと三人で乗った車の中で、俺たちは一切会話をしなかった。
見知らぬ風景を過ぎ、やがて知る風景になろうとも、不安は取れずに居た。
渋「・・・もうすぐ遥の家だ」
ハロ「智途の家で降ろしてくれ」
車は俺の家を過ぎた。
俺がそう言っても、智途は聞いていなかったようにただ窓の外の夜景を見ていた。
流した汗をシャワーで流した後、俺たちは寝室に向かった。
同じ布団にくるまる。
だが、いつものような気はおきない。
沈黙に押し殺されそうだ。
ハロ「なあ」
俺は耐え切れなくなって、智途に話しかけた。
チト「何だ」
智途は、向こうを向いたまま返事をした。
ハロ「俺たち、間違った事をしたんだろうか?」
チト「・・・そう思うか?」
ハロ「どうだろう。正直に言うとわからない」
智途はため息をついた。
チト「姉さんは、嘘をつくのがうまい」
智途は寝返り、こっちを向いた。
チト「もしかしたら全部嘘で、明後日の迎えも来ないで、そのまま居なくなってしまうかもしれない」
今回の作戦の内容も漠然としていた。ありえない話ではない。
チト「私たちの幸せを守ろうと、もしかしたら今回の作戦で死ぬ事も辞さないかもしれない」
ハロ「なんで・・・そんな」
チト「だって・・・!」
智途が体を寄せ、俺の胸板の辺りに額をつけた。
チト「私が姉さんだったら、そうするかも知れないって思ったんだ・・・」
智途の頭に軽く手を添える。
チト「でも、それは間違ってる。やっぱり、みんな生き残るほうがいいに決まってる筈だ」
ハロ「なら雪花さんもそれをわかってる筈だ。大丈夫。大丈夫だから」
誰かが死ぬだの死なないだの、そんな血なまぐさい事はごめんだ。
ハロ「もし明日の作戦に俺たちが参加すれば、俺たちはオミナスの標的になる」
チト「知ってる。・・・もう狙われてるっても言ってた」
ハロ「もしかしたら、明日の学校生活が最後になるかもしれない」
そういう意味を持って、『明後日』などと一日を置いたのだろう。
チト「それでも姉さんを見捨てる事なんてできない。幼い頃から、私を育ててくれた。唯一の肉親だ」
智途は強い口調で言い放った。それから、すこしおとなしくなって言った。
チト「すまん」
ハロ「え?」
チト「全部、私のわがままだな。そのせいでハロも姉さんも苦しめてしまった」
智途の体は、震えているようだった。
ハロ「俺は別に、苦しんでなんかいないさ」
チト「別に、私に付き合ってくれなくてもいい。他人として振舞えば死ぬような危険も無くなるだろう」
ハロ「死ぬまで付き合うつもりでいるんだけど?」
震えが治まり、智途は俺の顔を見上げた。
ハロ「ずっと他人として振舞うよりだったら死んだほうがマシだし、臆病な俺は知らん顔もできな」
チト「ハロっ!」
凶悪な力で俺を抱きしめる智途。
ハロ「痛い痛い痛い!!」
でも胸が押し付けられて気持ちいい気がしないでもないぞ!
チト「バカッ!どこまでバカなんだお前は!いつからそんなキザな言葉吐けるようになった!」
ハロ「しょ、小二くらいからかな・・・」
俺を抱きしめる腕が緩まる。
チト「・・・冗談でも嬉しかったぞ」
ハロ「冗談じゃないって」
チト「わ、わかってるって言ってるだろ?///」
ハロ「い、言ってな」
窓から差し込む月明かりに照らされた智途の顔は、なんとなく紅潮して見えた。
チト「く、口説いてないでさっさと寝ろ!///」
智途は寝返りを打って向こう側を向いてしまった。
ハロ「おやすみ」
そう言って、俺は目を閉じた。
さっきのような不安は無い。
俺は、何かわかったような気がした。
――翌朝。
眠い。眠いな。50眠いだ。いや、60眠いを超える勢いだ。
どんな単位だ。
(SE:ガチャ)
チト「ハロ、そろそろ起きろ」
何か声が聞こえるような気がするが、起きない。
チト「起きろ。・・・困ったやつだな」
むにゃむにゃ。もう食べられないよ。
チト「・・・よし!」
なにやら気合を入れましたね。さ、どうやって起こしてくれるんでしょうかね?・・・!?
ハロ「え!?」
チト「起きたか。ほら、そろそろ朝飯だ」
唇に柔らかな感触が。
ハロ「今、何した?」
チト「何もしてない」
ハロ「顔が赤いぞ」
チト「赤くない!///」
ハロ「・・・あのな、目覚めのチッスと言うのはほっぺたにするもんだぞ」
チト「なっ――!///やっぱり起きてたんじゃないか!」
ハロ「正解」
朝食を終え、いつもの時間に、いつもの通学路を通る。
急に、無言になってしまう。
『いつもの状態』であるがゆえに、いつもの態度が取れない。
今にでも実現できるはずだった過去の楽しい時間が、俺たちを阻んだ。
ユリ「あっ!」
ハロ「ん?」
後ろを見ると、由梨が駆け寄ってくるのが見えた。
ユリ「おにいちゃん!どこ行ってたの?心配したんだよ?」
ハロ「あー、ちょっとな」
ユリ「もう、ちゃんとゴハン食べてるかなとか、道に迷ってないかなとか、車に轢かれてないかなとか」
ハロ「俺は家出した猫か」
チト「大丈夫だ。うちで保護しておいたから」
ユリ「あー、それなら・・・」
いいんだ。
まあなんにせよ、誰かが居てくれてよかった。
ハロ「ありがとうな、由梨」
頭を撫でる。
ユリ「?えへへー」
チト「さ、さっさと行くぞ!」
手を引かれ、強制連行される。
ユリ「あ、待ってよおにいちゃん!」
ハロ「待ったら俺の腕が胴体からサヨウナラしてしまう!」
こういうところは子供なんだよな、智途は。これはこれで可愛いんだけど。
学校に到着。由梨と別れ、廊下を二人で歩く。
ハロ「なんて言いながら教室に入ろうか」
チト「いつもどおりでいいだろ」
ハロ「レディースエンジェントル棉!みたいにか」
チト「コラ。いつもはそんなのじゃないだろ。あ、私はここで」
ハロ「ああ。俺も後で図書館に行く」
教室に到着。自分の席に鞄を置く。
いつもどおり、ツン、蕪雲、毒男がこちらを見ている。
ハロ「な、なんだよ?」
ちなみに、これがいつものセリフだったりする。
蕪「図書館・・・」
ハロ「(ギクッ)」
毒「リアクション有り。陽性」
ツン「強制連行ね」
グイ、と俺と無理矢理腕を組み、俺を連行するツン。とあと他二人。
ハロ「ええ?何これ?何?」
なんか腕が柔らかいものに当たるんですけどこれはサービスですね?
連行されるがままに図書館。
ツン「ほら、居た!」
ツンの指差す向こうには、読書に勤しんでいる智途が居た。
チト「賑やかだな」
ハロ「ちょっとな・・・はは」
ツン「コラ、そこ!私を無視して話しない!」
チト「で、何か用か?」
ツン「確かに、わたしはテニスで負けたわ・・・」
ハロ「何か語り始めたぞ」
毒「スキップできません」
ツン「・・・でもね!この決着だけは着けたいのよね!」
蕪「要するに智途様置いてとっとと立ち去れお」
な、なんと話題の古い。
ハロ「あ、あのな。今それどころじゃないんだ。っていうかお前テニスで負けたんだから潔く認めろ」
チト「今更ハロをどうのって・・・往生際が悪いぞ」
ツン「なっ、何よそれ!?どうしていつの間にかそんなに親睦が深まってるわけ!?」
蕪「いつのまに智途様の心が漏れから離れてハロへと移ってしまったのか情報kwsk」
倒れる蕪雲。
毒「気をしっかり!」
チト「むしろ、いつのまに私の心がお前にあった事になっていたんだ」
ツン「そんな事はどうだっていいのよ!」
確かに。
ツン「べっ、別にハロの恋愛事情が気になるわけじゃないんだけど、そういうことはちょっとぐらい教えてくれても
いいんじゃない?幼馴染としてそういう態度を」
ハロ「いや要らないだろ」
ツン「だ、だって・・・私に内緒で」
だんだん涙目になってくるツン。
毒「謝れ!ツンさんに謝れ!」
し「図書館では静かにお願いします」
ハロ「ふう、ようやく行ってくれたか」
チト「そうだな」
図書館に、本来の静けさが戻る。
チト「まったく、ここだけ時間が止まっているようだったな」
ハロ「同感」
チト「姉さんも、こんなふうに感じていたんだろうか?」
ハロ「うーん、雪花さんはいつもこっちが驚かされるくらいマイペースだからなあ」
チト「だな」
嘘がうまい、か。
ハロ「でも、俺は昨日雪花さんが話したことが嘘とは思えないな」
チト「どうして?」
ハロ「いくら雪花さんが嘘がうまいとは言え、自分の寿命を言う時もかなり緊張していたじゃないか。それに」
チト「?」
ハロ「俺たちを巻き込むつもりが無いなら、最初から手がかりも何も残しておかないだろうし。やっぱ信じたいし」
チト「信じたい、か。プレッシャーのようにも思えるが」
ハロ「そんなに心配するなよ。結局は考えてもわからなそうなんだ。こうでっかく構えればいいんだよ」
手を広げて見せる。
チト「こうか?」
ハロ「あ、いやポーズじゃないんだ重要なのは」
態度の話だ。
ハロ「それはともかく、俺はどんな事になっても幸せで居られそうな条件をなんとなく悟ったんだ。だから大丈夫」
チト「そうなのか?」
ハロ「ああ。教えないけど」
チト「む」
ハロ「口に出すと忘れそうなんだよ。だからお前の口に出した事は無い」
チト「話を変えるな!バカか!///」
ユリ「おにいちゃん、今日も帰ってこないの?」
ハロ「・・・ああ、そのつもりだ」
由梨は、悲しげに踵を返した。
放課後。
俺はそうとだけ伝えた。
チト「いいのか?」
ハロ「・・・」
もし、俺が二度とここに戻らないんだったら、由梨は一人取り残される事になるだろう。
ハロ「絶対、引き止めるだろうな」
チト「わたしは、何も言えない」
由梨だけじゃない。ツンもだ。蕪雲も。
俺たちが居なくなって悲しむ人間に今日会って、別れも告げず、もう二度と会うことは無くなる。
ハロ「お別れ会でもすべきだったかな?」
いかに俺たちが独善的な行動に出ようとしているかを、篤と思い知らされる。
チト「これが、姉さんの『最後の説得』なんだろうな」
ハロ「・・・」
チト「しのた、私が居なくなったら悲しむだろうな」
蕪雲の名は出てこなかったな。
チト「ふふ、どうしてだろうな。寸前で心を決めかねてしまう」
ハロ「どうしても何も、それが正常だろう」
チト「一緒に居ない限りは、もう十年もすれば私たちは思い出になってしまうんだぞ?忘れられるんだ」
ハロ「・・・」
なのに、どうしてだ。『俺たちはそれでいいけど』――他の人はどうなる。そう考えると。
誰もを納得させる言いわけが見つからない。
戦闘の結果はどうであれ、俺たちはツンたちと別れを告げなければならない。
ハロ「今回の戦いがうまくいけば・・・」
チト「?」
ハロ「もう、今後俺たちや雪花さんみたいな人が現れなくて済むようになる」
俺は自分に言い聞かせるように弁解を続けた。
ハロ「俺たちの活躍は誰にも知られる事は無いだろうが、・・・」
チト「まるで勇者だな」
ハロ「・・・もう、いいわけはやめよう」
くだらない理由で、俺たちはすべてを捨てる。
それでも姉を救いたいと言う、独善的態度。それを合理化し、人々のためと称する。
汚い。なんとも小汚い。
だが、『すべてを捨てる価値を持った人間かどうか』を判断しようとすることだって、十分汚い。
ハロ「今の生活も、すべてを捨てなければいけないなら、捨てればいい」
チト「それでどうするんだ」
ハロ「また作ればいい。俺たちが作ろう」
チト「私たちが?」
ハロ「願わくば三人で」
チト「よく、そんな屁理屈が思いつくな」
ハロ「・・・ダメか?」
チト「や、面白そうだ。すこし付き合ってやってもいい」
帰宅する。
智途の家にも別れを告げなければならない。
だが、それは苦ではない。
『三人で新しい生活を作る』なんて俺の見た夢想に酔わされているからだ。
チト「ハロ・・・」
ハロ「ん?」
チト「風呂、終わったら・・・しないか?///」
智途は顔を赤らめて俯き、言う。
ハロ「あ、ああ俺はいつでも」
来るもの拒まずの精神で。
智途は着替えを持って、そそくさと部屋を出た。
ハロ「あ、そう言えば着替え・・・」
ピンポーン(SE:チャイム)
ハロ「ジャスト!!」
俺は玄関に走っていった。
玄関に向かうと、由梨が来ていた。
ハロ「おー、由梨、ありがとうな。見計らってたかのようなタイミングにありがとうな」
ありえないくらい気が利くな。
ユリ「でも、おにいちゃん、朝帰りは基本的にダメなんだからね?」
ハロ「気をつける」
ユリ「じゃ、おやすみ、おにいちゃん」
ハロ「・・・あ、由梨!」
ユリ「えっ?」
[ア見送る
キスする
ハロ「・・・じゃな、おやすみ」
ユリ「うん」
由梨は出て行き、玄関のドアは閉まった。
俺は無意識に延ばした右手を、強く、握り締めた。
風呂あがり、パジャマに身を包んだだけの智途の姿は、見るからに艶冶だった。
チト「冷めてしまうところだったぞ?」
風呂からあがった俺は、ベッドに座る智途の前に立った。
目の位置からして俺が上の筈なんだが、智途の態度と俺のM性がそれを感じさせない。
チト「で、何して欲しい?」
にやにやと笑いながら、俺を見上げる智途。完全にスイッチが入っている。
ハロ「中に思いっきり出したい」
チト「何を『してほしい』って聞いてるんだ!しかもそんな直接的に言うな!///」
スイッチoff。
ハロ「つい」
チト「まったく。まあいい。それはそれでさせてやるから横になれ」
そう言ってベッドをぽんぽんと叩く。
俺はwktkしつつベッドに仰向けになる。
チト「さて・・・」
智途は座りなおし、俺の股間に足の裏を当てた。
ハロ「えーと、着替え無いんですけど」
チト「じゃあ脱げ。全部だ」
ハロ「はい」
何故か敬語になってしまった件。
智途は再び俺の股間に足を当て、ペニスを足で扱き始めた。
弱点を心得た足が竿を蹂躙し、扱き上げていく。
ハロ「ぅ・・・」
チト「どうだ?やっぱり私のが一番いいだろ?」
ハロ「あ・・・う・・・うん・・・」
チト「こらこら、じっとしてろ。ふふ、腰が動いてるぞ?」
なかなか射精させてくれない智途の責めに、俺は堪えきれなくなっていった。
ハロ「くぅ・・・だっ、て・・・」
智途は足を離してしまった。
チト「ほら、お前が勝手に気持ちよくなろうとするからだぞ?」
ハロ「う・・・早く・・・」
チト「仕方の無いやつだな。ほら」
智途は両足の裏で竿を覆ってしまった。
チト「お前は私の足で満足してろ。どうせ足でもここを扱かれると気持ちよくて仕方ないんだからな」
ハロ「う、あ、あぁっ!――」
俺は智途の足の間から、噴水のように射精してしまった。
その様子を、智途はあざ笑って見ていた。それが気持ちよくてしょうがなかった。
チト「もっとしてやろうか?それとも、お前は中に出したいんだったかな?」
ハロ「はぁ、はぁ、な、中に・・・。・・・!?」
ぎゅっ、と力を加え、亀頭を足の指で押さえつけ、亀頭に刺激を与えながらそのまま足コキを始めた!
ハロ「う、ぁああ!」
チト「ほら、もう一度聞くぞ?どっちがいい?」
ハロ「あ、ああ、足・・・あひぃ・・・」
チト「足か?ふふ、それにしても情け無い声を出すな、お前は。面白いからもう少しいじめてやるか」
ハロ「あ、ああぁ・・・(もしかして危険日?)」
ハロ「あー、死ぬかと思った」
深夜(になってしまった)。
智途は家にある大切なものの整理をしている。
チト「大袈裟な事を言うな。四回ぐらいしか出してないだろう?」
ハロ「デッドラインが見えたぞ。俺のロンギヌスが磨耗した」
チト「そんなわけないだろ・・・っと、もう少し少なくまとめるか・・・」
ハロ「なんかもう心まで犯されて逆らえませんです智途様」
チト「蕪雲みたいな呼び方はよせ。・・・こんなもんか。姉さんも具体的なアドバイスが無くて困るな」
智途は元気だのう。若いのう。
チト「明日は早い。早く寝よう」
ハロ「あ、ああ。それより、心の準備はできたか?」
チト「・・・お前のバカみたいな提案が何故か私の支えになっているのでな。お前には既に考えがあるのだろう?」
ハロ「一応な」
チト「なら、十分だ」
智途は、部屋の明かりを消し、布団に潜り込んだ。
俺も後に続く。
ハロ「・・・続きは」
チト「無い」
――午前四時。
わずかな荷物を持って、玄関先に立つ。
ハロ「寒い」
チト「本当に来るんだろうな?」
そう言った直後に、車の音が聞こえてきた。
しばらくすると、昨日乗って帰った車があった。車は、俺たちの前で停まった。
渋「その調子だと、乗るようだな」
チト「そのとおりだ」
渋「・・・血迷ったか」
ハロ「どうかな?」
俺たちを乗せた車は、静かにその場を去った。
最終更新:2007年08月04日 09:56