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ツルとカメ-19

  • 作者 ロボ氏

 いつもの如く生徒会室に呼び出されて、僕はその重厚な扉の前に立っていた。深く息を
吸い、溜息として吐き出す。正直、油断をしていた。夏休みが終わってからは期末テスト
や文化祭の準備、その他にも色々と忙しかったので呼び出されていなかった。だから心に
隙が出来ていたのだ、今こうして暗い気分になる程に。今まではホウ先輩もオウ先輩も、
なんとなく見過ごしていてくれたに違いない。しかし、それにも限度があったのだろう。
きっと今回も扉を開いた瞬間に、ホウ先輩が毎回の如く理不尽な意見を突き付けてくるに
違いないのだ。それを思い、再度溜息が口の端から漏れてくるのを自覚した。
 軽くノック。
『入りなさい』
 扉越しでもよく分かる、高く澄んだ声が響いた。了承の合図が出たことを確認し、僕は
遠慮がちに扉を開く。文化祭の後処理や前半期の部費の決算などで忙しいらしく、二人は
こちらに視線を向けることなく書類に物凄い勢いでペンを走らせている。生徒数が多く、
また割と自由な校風なので自然と大量の書類が出るらしい。二人の傍らには驚異的な速度
でも減る気配が一向に見えない程の、山のような量の書類が積まれていた。
「遅いですわ、こちらには時間が無いというのに」
 なら呼び出さないで欲しい、と言おうと思ったが、言ったら睨まれそうなので止める。
見るからに苛々としているホウ先輩をわざわざ刺激する程、僕は馬鹿ではない。変に話が
こじれて前回のような展開にになったら、今度こそ人として完全にアウトだろう。
「こんな見苦しい姿で失礼しますが、カメ君も遅かったのでおあいこですわね」
 今まで下を向いていたので気付かなかったが、顔を上げたホウ先輩は眼鏡をかけていた。
キツい顔立ちをしているので、細いフレームの眼鏡がよく似合う。いかにも仕事が出来る
女性といった雰囲気で、なんとなくアズサ先生を思い出した。アズサ先生のように、嫁に
行くのが遅くなりそうだと思ったのは敢えて言わないでおく。大丈夫、焦っていてもまだ
辛うじて二十代中盤と言うことが出来る。アズサ先生にも、きっと良い未来がある筈だ。

 納得して頷けば、ホウ先輩が妙な目で見てきているのに気が付いた。
「どうしたんですか?」
「何でもありませんわ、それより」
 いよいよ例のお叱りが来るか。
「カメ君は、生徒会の選挙に出ませんの?」
 唐突な言葉に、僕は首を傾げた。言っている意味は分かるが、生徒会に僕の名前が結び
付く理由が分からない。そもそも普段から呼び出しを食らっている僕だ。自分で言うのも
悲しくなってくるが、そんな生徒が生徒会長を勤めるのは無理があるだろう。それに次の
会長は、理事長の孫娘である織濱さんが継ぐ筈だ。上の方に何の縁もない僕がなることは
多分無いように思えるし、周囲もそう思っているだろう。
 それに何よりも、生徒会に入ればツルとイチャ付く時間が極端に減ってしまうだろうし、
それだけは絶対に避けなければいけない。書類を眺めるよりもツルの尻を眺める方が僕に
向いているし、ペンを走らせるよりもツルグッズを作っている方が良いだろう。
「だから、出ません」
「何がどう『だから』なのか分かりませんが、出ないのですか」
 途端に不機嫌な目付きになり、その表情は鬼と化した。それでこそホウ先輩だ、直視を
するのも嫌になる。正直逃げ出したい気持ちで一杯だが、蛙を前にした蛇のような雰囲気
がそれを許さない。金縛りに遭ったように動けない僕を睨みつけると、ホウ先輩は眼鏡を
取って立ち上がる。そして一枚の書類を手に取り、こちらに歩み寄ってきた。誰かに助け
を求めようにも、この部屋の中に居るのは僕とホウオウコンビのみ。そのオウ先輩は僕と
ホウ先輩のことなど気にした様子もなく、黙々と書類を処理している。

 いかん、冷静になれ僕。そうだ、大丈夫、ホウ先輩は僕のところまでは辿り着けない。
アキレスとカメの原理を利用すれば、近付くことは出来ても追い付けないと古代ギリシャ
の偉い哲学者が言っていた筈だ。それを信じて心にゆとりを持ち、楽しいことを考えよう。
例えば、ホウ先輩のけしからん乳の揉み方を。
「いかん、乳にも永遠に辿り着けない!!」
 おのれ、ゼノンめ!!
「何を言っているんですの?」
 故人に向いていた視線を現実に向ければ、眼前に乳がある。衣替え期間のせいでシャツ
の上にブレザーを着ているが、そんな状態でも大きさがはっきりと分かる程の豊かな乳だ。
以前温泉ではっきりと確認した、シャツの胸元を押し上げる二つの塊は、圧倒的な存在感
を持って自己主張をしている。これは、揉まない方が失礼だろう。
 手は自然に伸び、気付けば僕の掌はホウ先輩の乳を鷲掴んでいた。食い込む左右の五指
に伝わってくる弾力が、幻想でないことを教えてくれる。手指を軽く動かせば形は自在に
変わり、まるで意思でも持つかのように僕に応えてくれた。
「これぞ、リアル」
「何がですの!?」
 激痛。
 股間を蹴られ、思わず蹲った。痛みに鈍い体質で、しかも普段からツルの打撃に耐えて
いる僕だが、これは我慢出来ない。女性の筋力とはいえ足の力は腕の約三倍、しかも急所
を容赦なく打撃されて無事でいる男などこの世界に存在しないだろう。
 涙目になりながら視線を上げると、そこにあるのはピンク色の総レースの下着。可愛い
らしさと色気が上手い具合いに同居した見事なものだ。凝視し、蓮の模様があるのも確認
すれば心が不思議と落ち着いてくる。
「いい加減にしてくれませんこと!?」
 ホウ先輩は頬を赤く染めながら慌ててスカートの裾を押さえ、再び蹴ってきた。

「何するんですか!?」
 ホウ先輩といいセンスといいアズサ先生といい、僕の周囲には打撃系の女性ばかりだ。
「そんなことより」
 僕の人権を無視して、ホウ先輩が睨みながら見下ろしてくる。手に持っているのは先日
文化祭で行った『巨乳喫茶』の報告書だが、何か不備でもあったのだろうか。提出をする
前にきちんと内容を確認したので問題は無い筈だが、どこが悪かったのだろう。
「こんな破廉痴な内容のもの、どうして出したんですの?」
 そうか、ホウ先輩が知らなかったのも無理はない。事前に案を提出したときには分類上
では喫茶店としていたし、備考欄を書くときも、巨乳云々の話は記入していなかったよう
な気がする。準備中はあまり絡まれたくなかったので書類上は当たり障りのないものにし、
事後承諾にしてもらうつもりだったけれど、今の様子を見るに承諾して貰えそうにはない。
全く、世の中は中々ままならないものだと再確認をする。
「でも、他のクラスの方が法に触れてたような気がしますけど」
 際物揃いの中で僕のクラスが若干浮いていたような気がしないことも無いけれど、それ
は良い意味でだと思う。法に触れることは無いし、比較的落ち着いたものだった筈だ。
 それを言うと、ホウ先輩は声を詰まらせた。
「と、とにかく後で罰を受けて貰いますわ!!」
 何だかよく分からない理屈で部屋を追い出された僕は、首を傾げるしか無かった。



「どうだった?」
 教室に戻ると、水樹が紙パックの牛乳を飲みながら声をかけてくる。しかしどうだった
と問われても、僕も説明をしにくい。敢えて事実を端的に述べるとするならば、
「現実を再確認しようとしたら、股間を全力で蹴られた。あとピンクの総レースだった」
 と言うしか無いだろう。
 蹴られた、のフレーズで水樹と一真の顔が青ざめ、僕に同情の視線を向けてくる。一真
は兎も角、水樹が股間を押さえている姿を見ると危うく思えてくる。中身は男だが、外見
に限って言うのならば学年屈指の美少女なのだ。ブレザーを着たことで胸元が隠れて乳が
無いことも気にならなくなってきているので、その傾向は、尚更顕著になってきている。
今朝などバスの中で痴漢にあってしまったと涙目で言ってきて、正体を知っている僕でも
一瞬倒錯的な趣味に走りそうになってしまった程だ。幼馴染みでなかったら、どうなって
いたのか分からない。そしてついでに、ツルと今度痴漢プレイをしようと決心した。
「それって、そんなに痛いんデスか?」
 センスが小首を傾げて言ってくるが、あれは痛いなんて問題ではない。例えるのならば
灼けた鉄球で内部を掻き回され、更には体内を通って喉元まで競り上がってくる感じだ。
地獄が本当にあるのかは分からないが、有るのだとしたらきっとこんな感じだろう。鬼に
鉄の棒で股間を強打される光景をリアルに想像して、僕は思考を切り替えた。
「それで、現実を云々ってアンタ何したのよ? どうせまたエロいことでしょ? 最低ね」
 コイにだけは、エロいこと関係で文句を言われたくなかった。それに、無意味にした訳
でもない。あぁでもしなければ僕の精神が保てなかっただろうから、止むに止まれずだ。
「しかし、乳を揉んだくらいで股間蹴りは酷いな」
「……カメ?」
 愛しい声に振り向けば、ツルが普段の三倍は不機嫌そうな目でこちらを見つめている。
「待て、僕は無実だ」
 ツルは口の端を吊り上げ、目を弓にした。形こそは笑みに近いものの、しかしその奥に
ある瞳は笑っていない。怒りと憎しみが冷たい色を伴って爛々と光を放ち、僅かに開いた
唇からは獲物を食い千切る直前の獣のような唸り声が聞こえてくる。僕が恐怖に一歩後退
すると、ツルは嘲笑を浮かべて一歩歩み寄ってきた。

「良いわよ、別に無理しなくても、気にしてないから。カメは大きな乳が大好きだものね、
巨乳喫茶を開くくらいだし。あの馬鹿女の乳を揉むのも当然だと思うわ。今回も、いつも
みたいに鷲掴んだんでしょ? 楽しかった? あの下品な乳は? あ、ついでにパンツも
見たんだっけ? 良いわねぇ、楽しそうで」
「違う、乳なんて脂肪の塊だ!!」
 ツルは楽しそうに鼻を鳴らし、
「ふうん、なら一番下の引き出しにあった本は捨てて良いわね。それに私、買ったら駄目
って言ったわよね? あれは何の当て付けか説明してくれる? タイトルは『巨乳天国』
だっけ、また随分と直球できたものね。本当に腹が立つわ」
「あれは一真が置いてった奴だ」
 ツルが一真を見て舌打ちを一つ、一真は慌てて首を振った。
「馬鹿野郎、俺を巻き込むな!! それにお前も楽しそうに見てたじゃねぇか!!」
「へぇ」
 また一歩、ツルがこちらに踏み込んでくる。僕との感覚は約1.5m、あと一歩踏み込んで
こられれば、それは僕の死を意味することになる。本気になったツルは、その化物じみた
戦闘能力で股間を殴ることを何とも思わない。痛みは先程の比ではない筈だ、下手すれば
ショック死をしてしまう可能性も充分に有り得るだろう。
「あれは、ツルに似てたから」
「どっちかと言えば、センスに似てたがなぁ」
 一真の不用意な発言に、久し振りにセンスは胸元を押さえてこちらを睨みつけてくる。
目尻には涙が浮かび、口からはえげつないスラングの数々が飛び出していた。懐かしい、
と思う間もなくツルが更に一歩踏み込んでくる。
「死ね」
 低い呟きと共に細い腕が空間を走り、
 激痛。
 僕は今までの人生で一番の絶叫をした。
 どうしてこんな状況になっているのだろう、僕は身動きのとれない状態で考えた。
 引いてくれない痛みと背後からの視線に耐えつつ午後の授業を受け、HRまでこなして
いたことは辛うじて覚えている。そして学校から解放されると意識し、後はツルと仲直り
するだけだと油断をしたのが良くなかった。気を緩めてしまった途端に意識が遠くなるの
を感じ、保健委員であるコイが僕を保健室まで連れていってくれたのも思い出した。肩を
借りた際に乳に手が触れていたことも思い出し、しっかりと揉んでおけば良かったという
後悔の念もある。そこまでは認識出来ているのに、そこから先がどうしてこうなっている
のか、そこがさっぱり分からない。保健室でベッドに入り、意識を飛ばし、
「何で僕は縛られているんだ?」
 現在僕は何故か生徒会室の中で、椅子に座って縛りつけられている。動こうにも随分と
上手く固定したらしく、力を込めても痛みが来ない代わりに身じろぎ一つ出来ない状態だ。
脱出は不可能かと諦め、僕は眼前に居る人を見た。
「どうして僕はこんな場所に居るのでしょう?」
「……ゴメン、拉致った」
 背後から聞こえてくるのはオウ先輩の低く穏やかな声、だが内容は穏やかという言葉が
当て嵌りそうもない物騒なものだ。こんな状況に、いつぞやのことを思い出す。ズボンの
ジッパーを急いで確認すれば、まだ開いた様子は無い。取り敢えず今はセーフだったこと
に吐息するが、安心するのはまだ早い。昼に罰がどうとか言っていたし、これからそんな
状況になる確率も決して低くはないのだ。何せ相手は淫乱金髪巨乳弩Sお嬢様生徒会長だ、性的な罰がよく似合う。
 不安を消すようにホウ先輩を見て、
「何で拉致ったんですか?」
「罰、ですわ」
 やはりそうか。
「具体的な内容は?」

 ホウ先輩は小さく声を漏らし、目の前の椅子に腰掛けた。そして靴を脱ぐと僕の股間に
脚を伸ばし、爪先で軽く擦ってくる。天性の才能なのか、それとも練習をしたのか、多分
前者だろう。絶妙な力加減で動かす脚は、やけに厭らしく見える。脚を動かす旅に下着が
見え隠れし、股間に伝わる刺激も加わって血液が集中してくるのが分かった。
 これは、いかん。
 何が駄目かって、だんだん気持ち良くなってきている僕のドラ息子が駄目だ。静めよう
と精神を集中しても言うことをきかず、ついには最大にまで大きくなってしまった。股間
のものは痛い程に布地を押し上げ、誰の目に見ても分かるようなテントが出来ている。
「ふふ、大きくなってますわね」
 いちいち説明しないでほしい。
 ホウ先輩は楽しそうに笑いながら、器用にジッパーを下げてきた。そして下着も降ろし、
脚だけで僕のものを取り出し、直で扱き始める。高級品であろうニーハイソックスの表面
は驚く程に滑らかで、柔らかなホウ先輩の足と共に、吸い付くような感触を与えてくる。
過去にツルやセンスにやられたりしたこともあったが、脚でこれ程の快感が与えられると
思っていなかった。雰囲気がどうこう言う以前に、物理的な快楽でもって僕のものを責め
たててくる。リズミカルに、時には不規則に、抵抗する意思そのものを奪い取ろうとする
ような動きは紛れもなく才能だ。認めたくないがその動きは確実に僕のツボを捕えている。
 流されまいとなけなしの意地を持ってホウ先輩を睨んだが、愉悦にとろけた表情と目が
合うだけで終わってしまった。カリ首をえぐられて、悶え、つい視線を反らしてしまった。
だが、ホウ先輩の表情は、網膜にしっかりと焼き付いている。以前にも見た、他人が快楽
に溺れそうになっているのが心から楽しい、といったものだ。

「ふふ、最初は只の罰のつもりだったんですけど、楽しくなってきましたわ。やっぱり私
の目に狂いはありませんでしたわね、ねぇカメ君?」
 問いながら、捻るようにこねてくる。
「最初に見たときに、ピンときましたの。カメ君は、私を楽しませてくれるって」
 ピンとこなくても良かったのに。正直限界が近い。
「でも、ちょっとしぶといですわね」
 ホウ先輩は眉根を寄せて、竿を軽く蹴り飛ばした。散々いじられた後では、それすらも気持ち良い。そしてホウ先輩は
粘着質な笑みを浮かべて指を鳴らし、それに応えるように背後に居たオウ先輩がホウ先輩
の隣に並ぶ。褐色の肌のオウ先輩と白い肌のホウ先輩は良い意味で対照的、外見のタイプ
も真逆で互いが互いを引き立てあっている感じがする。一瞬、見とれそうになった。
 本当に、一瞬のことだった。
「オウ、手伝って頂戴」
 ホウ先輩が僅かに体をずらし、オウ先輩が空いたスペースに腰掛ける。そして靴を脱ぎ、
ホウ先輩のように竿に脚で触れてきた。上手すぎるホウ先輩と比べると多少ぎこちないが、
それでも気持ち良い。それにオウ先輩は白のハイソックスな為、褐色のふくらはぎや太股
が惜しみもなく露出されていて、それが白いホウ先輩の脚となまめかしく絡んで一種独特
な色気をかもし出している。僅か二色で形成された芸術は、僕のものを貪欲に求めてきた。
四本の脚が餌を捕えた触手のように動き、少しでも多く絞り取ろうと絡みついてくる。僕
が堪えきれずに声を漏らすと、ホウ先輩は楽しそうに脚で応える。

「まだ、出ませんの?」
 二人の足の動きが早くなり、その動きの差が現れる。脚だというのに絡みつく動きと、
少し乱暴ながらも丁寧に擦ってくる動き。種類の異なる二つの刺激に、僕もそろそろ我慢
が効かなくなってきた。息を合わせたように二人に同時に強く圧迫されれば、堪えていた
ものが奥から競り上がってくる。これ以上は、もう無理だ。
「っ、出ます」
「あは、出しなさい」
 二人の脚に、射精する。
 白く濁った液体が二人の脚を汚した。特にオウ先輩の褐色の肌に垂れたものは見ている
だけで、再び固くなりそうになってくる。ホウ先輩の脚をハンカチで丁寧に拭い、続いて
自分の脚を拭うとオウ先輩は僕の股間に顔を埋めてきた。
 ホウ先輩は竿に付着した精液を舌で拭うオウ先輩の姿を満足そうに見た後で僕の耳元で、
「また、覚悟しておきなさい」
 囁くように言い、僅かに耳を甘噛みした後で顔を遠ざける。
 次も、あるのか。
 今度はどうなってしまうのか考え、僕は盛大に吐息した。

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最終更新:2007年08月04日 11:29