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ウソハキムスメ

  • 作者 ロボ氏

「なぁ、ウチな、あんさんのこと好きやねん」
 突然の言葉に、俺は困惑した。
 何だこいつは、一体何を言っているんだ。
 目の前に居るこの鷺原・コトは、俺を騙して楽しむ性悪女ではなかったのか。なのに、
今のこいつときたら頬を初に染めたりなぞして、これは何の冗談なんだ。服装もよく見て
みるといつになく可愛い感じだし、どこからどう見ても純情乙女ではないか。いや、俺は
騙されん。どうせいつもの如く、うっかり信じかけたところで極悪な笑みを浮かべて鼻で
笑うに違いない。そうやって俺のピュアな心を弄び、それで悦楽にふける変態女なのだ、
こいつは。皆はこいつの被った猫に騙されているが、この世に生を受けてから十六年間、
幼馴染みとしてと言うより腐れ縁として妙な性癖に付き合ってきた俺がそう思うのだから
間違いない。はっきり断言しよう、これは嘘だ。まごうことなく、正真正銘の嘘っぱちだ。
 なのに、何だろう。
 この、不思議な胸の高鳴りは。
 本能が叫ぶ、Just Do It!!
 心の赴くままに、俺はもじもじと俯いているコトの肩へと手を伸ばし、
「なぁ、あんさん。今日の日付分かる?」
「ん?」
 その肩が、小刻みに震えていた。
 まさか、まさかまさか。
「あんさん、もしかして本気に受け取ったん? 今日は四月一日やで? 四月馬鹿よ?」

 アホやなあ、の言葉と共に向けられたのは見慣れた極悪な笑み。そのまま楽しそうに腹
を抱えて笑い、一旦止めて俺の顔を指差すとまた笑う。今まで何十何百何千と見た姿だ。
 やられた、また引っ掛かってしまった。
「もしかしてウチのこと好きで、それで喜んだんねやろか?」
 はっ、と鼻で笑い。
「身の程知らず」
「うるせぇ、分かってたよ!! またお得意の嘘だってな!! それにいつも嘘吐きだろが!!
 大体てめぇ、妙な言葉使いやがって!! だから彼氏の一人も出来ねぇんだ!!」
「いらんわ、そんなもん!! それにこれは両親が育った京都の言葉、つまりはウチの心の
故郷の言葉や!! 文句を言われる筋合いなんてあれへんわ!!」
「嘘吐くな、親父さんもお袋さんも訛りが全開な生粋のドサンコじゃねぇか!!」
 全く、こいつは。
 何でこんな馬鹿に騙されなきゃいけないんだ。四月馬鹿だから逆に嘘は吐かないなんて
期待してしまったのに、こいつにはそのようなものは全く関係ないらしい。頭の中は年中
エイプリルフール、しかも何故か対象は俺限定、酷い娘も居たものだと思う。
「あはは、ご飯奢られたるさかい、堪忍な」
 何が奢られてやるだ、ここは普通なら奢ると言うところだろうが。つくずく我儘姫だと
思う、可愛げも何もあったもんじゃない。やっぱりこいつは俺を玩具にして小馬鹿にして、
それで喜ぶ生まれながらの最低性悪女だ。
 行くで、と言って伸ばされた掌を見て溜息を吐く。
「この、ウソハキムスメが」
 あの告白が本当だったら、どれだけ良かったことか。

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最終更新:2007年10月31日 19:14