ツルとカメ-38
「おはようございます、カメさん」
「あ、おはよう」
これからツルとお節料理の材料を買いに出ようとした矢先のこと、玄関のドアを開くと
一週間ぶりに見る顔があった。ツルとは違う幼馴染み、チーちゃんはこちらを睨むように
見つめ、いきなり腹を殴ってくる。誰に教わったのか、腕だけの打撃だというのに物凄い
威力だ。思わず咳込んでしまったが、構うことなくチーちゃんは打撃を重ねてくる。
「何か私に言うことは無いですか?」
言うこと、とは何だろうか。3サイズは変わっていないし、パンツの色は分からない。
服装はいつもより若干気合いが入っているような気がするものの、それに気付かないから
という理由でいきなり殴ってくることは無いだろう。だとすれば、他には何があるのか。
「あ、今日はニーソックスじゃなくて黒スト……痛ぇ!!」
脛を蹴られた。
「分かりませんか? クリスマスのパーティに私を呼んでくれなかったカメさん」
言われたことの意味を考え、数日前に集まった面子を思い出し、今頃になりチーちゃん
を呼んでいなかったことに気が付いた。うっかり、本当にうっかりだった。一真は呼んだ
というのに、何故チーちゃんを誘い忘れたのだろうか。今になって考えてみると、あまり
にも馬鹿だとしか思えない。チーちゃんも大切な仲間だというのに。
「私がどんな思いでいたか、分かりますか?」
分かる、痛い程に分かる。
「仕方なく独身女子友達ばかりが集まったパーティに出て、処女を奪われそうになって」
それは大変だっただろう。と言うか、後少しでオウ先輩やアズサ先生の仲間入りをする
ところだったのか、何の仲間かは敢えて言わないが。それにしても、一年の女子は随分と
危うい。ホモ部と化している男子バスケ部も含め、今度何か対策でも考えようと決意する。
「埋め合わせに、これから買い物に付き合って貰いますからね」
その要求に頷き、しかし、
「カメ、さっさと行くわよ。って、何でここに小娘が居てカメが土下座してんのよ?」
ツルの存在を思い出した。
◇ ◇ ◇
「良い天気、風が気持ち良いですね」
そうだな。
「カメ、あの服可愛くない?」
いや、ツルには似合わない。
いつもなら、それぞれに答えることも出来ただろう。だが空気が重く、何も喋ることが
出来ない。表面上は二人とも明るく、言葉もありふれたものだ。だが互いが互いを無視し、
僕にばかり語りかけてくるので違和感しか感じなくなっている。それだけでなく二人とも
僕の手を握っているのだが、それぞれが爪を立ててくるので自分の意見が言い辛くなって
いるのだ。例えばツルに何かを言おうとするとチーちゃんが手の甲をえぐってくるし、逆
にチーちゃんの言葉に答えようとするとツルが万力のような力で掌を締め付けてくるのだ。
こんな状態で一体、僕に何をしろと言うのだろうか。
「カメさん、クレープ食べましょう」
「あ、この喫茶店バナナタルトが美味しいんだって」
チーちゃんとツルがそれぞれ左右に分かれようとして、両腕が引っ張られる。そんなに
明るい顔で腕を引かないでほしい、このままでは肩が外れるどころか体が真っ二つになる。
いかん、尻や脳が二つに分かれてきた。このままでは本格的に二等分されてしまう。
「ちょっと離してくれ」
何故か二人とも強く爪を食い込ませてきた。釣り針が引っ掛かった状態のイカの気分が
なんとなく分かった。鋭いものがあれだけ食い込むのだ、辛いだろう。
「早く放しなさいよ、小娘。大岡裁きって言葉知らないの?」
そのような理屈だったら、出来ればツルに放してほしい。それに言った側から僕の腕を
強く握ってきたのは、これはどのような意味なのだろうか。ツルに手を強く握られたり、
求められたりすることは嬉しい。この痛みが無ければ、もっと嬉しい。
「貴方こそ、カメさん痛がっているじゃありませんか!!」
いや、チーちゃんの方も負けず劣らず痛い。
だが神は僕を見捨てなかったようだ。ますます腕の力が強くなり、苦悶しているところ
へ頼りになる人影が視界に入ってきた。黒のショートカットに細いフレームの眼鏡、学校
帰りだろうか、いつもの黒いスーツに身を包んだアズサ先生だ。アズサ先生は冷たい美貌
の中でも一際印象的な切れ長の目をこちらに向けると不思議そうに首を傾げ、
「ん、カメ何をしてるんだ?」 堂々と寄ってくる。
「助けて下さい」
「自分で何とかしろ、私だって忙しいんだ。誰かさんが毎回振るせいでな」
畜生、後半で本音が丸見えですよ。
「あ、パーティだったらまた誘ってくれ」
このタイミングで何ということを言うんですか。左右からの視線が痛いし、しかも腕を
引く力が強くなってきたような気がする。特にチーちゃんは僕を半目で睨み、
「先生は誘ったのに、わたしは誘えないんですか?」
随分と痛いところを突いてくる。違う、違うんだと言えたらどれだけ良かったのだろう。
今年もきっと男も居ないで寂しかろう、というエニシ先生の言葉を聞いて、アズサ先生に
手を差し述べただけなのだ。そこには特別な意味などない、お人好しだと言われる僕の癖
が出てしまっただけなのだ。幼馴染みよりも独身女教師の優先度の方が高かったなんて、
そんなことは無いのだ。あとツルも無理矢理腕を曲げさせるのを止めてほしい、そっちの
方向には曲がらないのだ人間は。ほら間接が何やらヤバい音をたてている。
「何だか大変そうだな」
悪化させたのは間違いなく貴方です。
「それじゃあ、死なない程度に頑張れよ。私は忙しい」
「……帰っても一人で煙草と酒ばっかりのくせに」
聞こえないように言ったつもりだったのだが、物凄い形相で殴られた。
「今のはカメさんが悪いですよ」
「そうね、正直者は損をするわ」
ツルよ、それは残酷発言だ。
「わ、私だって男の一人や二人くらい」
「嘘はいけません、閻魔様にベロ抜かれますよ」
再び殴られた。だが行動はアクティブでも流石に辛くなってきたのだろう。アズサ先生
は半泣きになりながらビールの自販機に連コイン、大量の缶ビールとカップ酒を購入する。
紙幣ではなく貨幣で買ったのが何ともわびしい感じだ。そしてバッグ一杯にアルコール群
を詰めると逃げ出していった。これからヤケ酒でも煽るのだろうか、不憫な人だ。
まぁ、それよりも不憫なのは僕の腕だが。
「あ、ごめん。忘れてた」
「すいません」
漸く放されて、自由という言葉の意味を味わった。拘束から解き放たれるというのは、
何と気持ちの良いものだろうか。これなら乳も尻も二の腕も揉み放題、スカートも捲って
捲って捲り放題だ。当然、ブラのホックを外すことも可能。
「こんな風に!!」
二人の背中を軽く叩き、ホックを外す。コツは最初軽く寄せるようにして、次いで捻る
ことだ。今でこそ簡単に出来るが、昔は苦労したものだと思い出す。水樹にブラを着せて
一真と三人で練習しているところをチーちゃんに見られて、暫く気不味くなったのだった。
特に一真などは家の中で二週間程居場所が無かったらしく、頻繁に僕の家に泊まりに来て
いたものだ。懐かしい話だが、チーちゃんは覚えているだろうか。
「か、カメさんの」
目を向けると、睨まれ、
「「馬鹿ぁ!!」」
ツルと二人で前後同時に股間を蹴ってくる。
激痛。
あまりの衝撃に意識が一瞬暗転して、僅かな暗闇の後に来たのは冷えたアスファルトの
固い感触だった。股間の痛みは引かず、スカートの中も覗けない状態だ。尻を蹴られたの
はまだ許せるが、ツルの蹴りが何とも惨い。玉が逃げないように高い位置から打ち下ろす
タイプの蹴り、それが余すところなく伝えてくる運動エネルギーは恐ろしいものだ。過去
に何度も味わった筈なのに未だに慣れることが出来ない、何故神は玉を外側にして人類を
進化させたのだろうか。悪魔崇拝を少しだけしたくなった。主にミス小悪魔のツルだ。
「うわ、ごめん」
「大丈夫ですか?」
チーちゃんとツルがしゃがみ込んできたので、パンツ眺め放題だ。パンチラ如きで許す
つもりは無いが、わざわざ見せに来た誠意は買おうと思う。チーちゃんは黒ストッキング
越しなので分かり辛いが、記憶しているレースの模様から考えると青か。この模様では他
の勝負下着は持っていなかったような気がするし、ここ一ヶ月はパンツを買ってない筈だ。
ツルは色気の無い無地の緑だが、それはそれで趣きがある。パンツというものは誰が穿く
かによって変わるものだ、ツルが穿けば例え南瓜パンツだろうがオムツだろうが全て良い
ものになる。それに心が癒されるだけではない、緑色は目にも優しい。良いことずくめだ。
人体綱引き、いや靭帯綱引きで痛む腕を伸ばして触れる。
「何すんの変態!!」
衝撃。
しゃがんだ姿勢のままでコサックダンス宜しく伸ばされた蹴りが顔にジャストミート、
ツルに踏まれるのも悪くないが次はもう少し弱く頼みたい。
「もう知らない、カメは勝手にエロ世界に入ってろ!!」
そう言い、ツルは立ち去っていった。
「馬鹿ですね、せめてわたしだけ触ってたら良かったのに」
そんな訳にもいかんだろう、僕にとって最優先にすべきはツルなのだ。例え今のように
冷たくされても、それは変わらない。それにポジティブに考えれば良いだけのこと、今は
放置プレイの最中だと考えれば良いだけのことだ。
「馬鹿ですね」
そう言いながらも立ち上がるのに手を貸してくれるチーちゃんは優しい娘だ。あのとき
ツルに告白されていなかったら、もしかしてチーちゃんと付き合っていたかもしれない。
そうしていたなら、今はどうなっていたのだろうか。
「で、追うんですか?」
「当ぜ……」
頷き、一歩目を踏み出そうとして、
「追わないで、下さい」
裾を、摘まれた。
「追わないで下さい」
「え?」
自分で追わないのか、と訊いてきたのに、それを拒否された。振り向けば視界に入って
くるのは、俯いたチーちゃんの姿。垂れた前髪で表情は見えないが、それの代わりに再び
裾を掴んできた。今度は強く、握り締めるように。
「せっかく、二人になれたのに。それを、崩すんですか?」
「それは」
「寂しかったんです、ずっと」
重く沈んだ声で、言葉は続く。
「カメさんからしてみれば、ツルさん以外は大したことじゃないのかもしれませんけど。
でもわたしは、寂しかったんです。兄さんや他の人と同じ扱いでも良かった、クリスマス
は一緒に居たかった。今日だってクリスマスデートじゃないですけど楽しみにしてました」
押し掛けですけどね、と苦笑を一つ。
「『選ばれなかった幼馴染み』は、とても辛くて、痛くて、寒くて」
でも、と叫び。
「長かった分、諦めることなんて出来なくて」
どれだけの年月、この重荷を抱えて生きてきたのだろうか。十数年見知ったチーちゃん
の背中は、過去と重荷を支えるには小さすぎたのだろう。今にも押し潰されそうになり、
圧力に耐えきれずに震えていた。気安いと思っていた間柄に、こんなにも耐えていた。
ごめん、と呟き、抱き寄せる。
「誤魔化されません」
「ごめん、嘘を吐くのは下手だけど、誤魔化されてくれ。今だけはチーちゃんを見るから、
そう言うからさ。だから馬鹿な僕を信じて、嘘でもデートの続きをしよう」
『選ばれなかった幼馴染み』から『選んだ幼馴染み』へ。
陳腐で、卑怯。
でも今の僕に出来る、最大の嘘だ。
答えを言うことはなく泣き声を強くして、シャツの裾ではなく背中を掴んで、胸に顔を
思いきり埋めて、滅多に表情を見せない幼馴染みは号泣した。
◇ ◇ ◇
あれから数時間、街中を連れ回された。服屋、飯屋、映画館、ありきたりのコースでは
あるがチーちゃんは楽しそうで、僕も一時とはいえツルのことを忘れはしゃいでしまった。
これで良かったんだろう、チーちゃんが楽しかったなら構わない。
でも、流石に疲れた。
ベッドに仰向けに倒れ込むと、天井を眺める。
「最後はラブホ、本物のカップルみたいだな」
いや、今だけは本物のカップルか。
「カメさん、お疲れ様ですね。ありがとうございました、これで最後です」
どことなく寂しそうな顔で隣にチーちゃんが寄ってくる。いつの間にか服を脱いでおり、
身に付けているのは下着だけとなっていた。出来るならストッキングは穿いたままの方が
良かったが、それは後でツルにでも頼むとしようか。
「何か、いきなりエロか。ペース早くないか?」
「カメさん、早く帰らないと駄目でしょう?」
事実ではあるが言われると痛い。嫌いな筈のツルにまで気遣っていることを考えると、
良い娘だと思うよりも先に申し訳なくなってくる。今だけは、ツルではなくチーちゃんを
恋人にしているつもりだった。なのに出来ていないらしい、本来の相手のことを気にさせ
てしまうなんて、僕は嘘彼氏としては下の下のようだ。ならばせめて気遣いに応えようと、
僕はチーちゃんに覆い被さり、唇を重ねた。
「わたしは、これが嬉しいです。カメさんとキスが出来るなんて」
これだけで、という言い方は語弊があるが、唇を重ねることで喜んでくれるのだったら
幾らでもしてやりたい。舌を絡めることのない子供のような口付けの連続だが、こちらの
方が嬉しいらしい。背中に手を回してきて、何度も繰り返す。僕はある程度は慣れている
のだが、不慣れなチーちゃんがすると歯がぶつかって小さな音をたてた。そのぎこちなさ
がチーちゃんの無器用な面を表しているようで、いつもより可愛く見えた。
「キス、気持ち良いです」
「そうだな。ほら、こっちも」
ジーンズ越しの太股に当たるのは、蜜に濡れた感触。確かめるようにそっと指を伸ばし
一撫ですると、チーちゃんの体が一瞬強張った。しかし指を第一関節まで差し込んで浅い
部分を掻き混ぜると、次第に脱力してゆく。感度も悪くないし、他の穴とはいえ経験済み
なので知らない内に体がある程度は開発されていたのだろう。前の穴だけでなく後ろの穴
も小突いて刺激すると、太股が腕を挟んできた。かなり感じているらしい。
胸はどうだろうか。
固くとがった色素の薄い胸の先端に吸い付いて、味わうように舌で転がす。肉は薄く、
仰向けの状態なので更に平地になっているが、構わない。エニシ先生には及ばないものの、
センスと同じくらいの柔らかさだ。顔を埋めるだけでも、かなり気持ちが良い。
「やっぱり、胸は大きい方が良いですか?」
ツルと同じようなことを聞いてくるが、それは違う。僕は胸自体が好きなのだ、大切に
思っている相手だと更に嬉しい。巨乳だとか貧乳だとかは二の次の話だ。感度も良ければ
尚のこと良い、そんな意味ではチーちゃんも高ランクだ。
「そろそろ良いか」
手首まで愛液で濡れているので、量は充分だ。もう入れても良い頃だろう、そう思って
ジッパーを下げ、竿を取り出したところで考えた。
今回は、どうするか。
「カップルは、普通に前の穴でするものですよ」
「……そうだな」
もう今回は、そっちでしても良いかもしれない。今まではチーちゃんに対して躊躇いの
ようなものがあったけれど、今は基本通りにするのがマナーというものだ。ここまで来て
前回や前々回のように素股や尻で誤魔化す程、僕は常識知らずではない。相手がはっきり
言ってくるならば、それに応えるのが筋というものだろう。
「以前は前の方でしてくれなかったことを恨みましたけど、こんな結果になるのなら悪く
なかったかもしれないですね。このシチュエーションだから、嬉しいです」
健気な娘だ。
ふと、思い付いた。
「メリークリスマス」
「遅いですよ」
でも嬉しいです、と言って腕の中で小さく笑う。
「ある意味、最高のプレゼントですよ。ありがたく受け取らせて頂きます」
「じゃあ入れるぞ、力を抜いて」
は、という言葉から長い吐息に変わり、背中に回されていた腕の力が緩んだ。まだまだ
緊張はしているようだが、これ以上は無理かもしれない。何より長引かせると再び緊張を
するかもしれないので、割れ目と僕のものを馴染ませるように何度か往復させると一気に
奥まで貫いてゆく。痛みは少ないようで、チーちゃんは眉根を軽く寄せただけだった。
「思ってたよりも楽ですね、もっと大変だと思ってました」
「これは個人差らしいからなぁ」
負担が少ないのは良いことだ、苦しむよりは。
「でも、これで繋がれたんですね」
「そうだな」
もう何度目かになるか分からないキス、決して舌を交わらせないものをしながら、腰を
ゆっくりとグラインドしてゆく。痛みは少なくとも、だからと言ってすぐに快感に繋がる
訳ではない。ホウ先輩はアブノーマルなので問題外だが、敏感なツルのときや逆レイプを
してきたコイのとき、酔っ払っていたセンスのときは例外だろう。ひたすら痛がった一真
のときのような反応が正しい、だから気を付けて動く。
時間をかけて入口付近まで引き抜き、同じくらいの時間をかけて深くまで押し入れる。
ペースは一定に保ちつつ、たまに捻りを加えてみた。やはりいきなり感じるということは
無いが、それなりに楽なポイントもあるらしい。その角度を集中的に責めてゆく。突く度
に小さな体が揺れて苦しそうな声が漏れてくるが、それを安じて腰を止めると今度は抗議
する視線が向けられてくる。力なく胸を叩く拳のおまけ付きだ。逆に少しペースを上げて
みると、背中に爪を立てながらも嬉しそうな顔をした。
「わたしのことは、構わないで下さい」
そうもいかない、チーちゃんは大切な恋人だ。
「ありがとうございます。でも、無理しないで下さいね」
無理をしているのは、チーちゃんだろうに。
それでも体は正直者で、次第に射精感が沸いてくる。
もう、出てしまいそうだ。
慌てて引き抜き、白く綺麗な腹の上に精液を放出した。
「その、ごめんな」
「わたしはカメさんが応えてくれただけで充分です。いつまでも甘えてはいられませんし、
辛いですけど、これからは元の、只の幼馴染みの関係に戻ります」
シンデレラの魔法は解けました、などと洒落た台詞を吐きながらチーちゃんは服を着る。
一枚着衣が増す度に今までのものが崩れ、チーちゃんらしいチーちゃんに戻ってゆく。
「もし、さ」
付き合ってたら。
その言葉を言い掛けて、止めた。
下手な言葉を投げて蒸し返すよりも、このままの方が良いかもしれない。本人の中で、
決着と言うか区切りが付きそうになっているのだ。押し留めるよりも、背中を押してやる
のがチーちゃんの為だろう。それが僕に出来る、唯一のことだ。
「辛いことがあったら、いつでも甘えて良いから」
結局無難な言葉に落ち着き、我ながら馬鹿だと溜息を吐く。
「自惚れないで下さい、自分のことくらい自分で出来ます。それとも世話にかこつけて、
またわたしの体を貪るつもりですか? とことんエロいですね、この性欲魔人」
口は悪いが、僕のことを気遣ってくれたのだろう。
「ありがとう」
それに答えることなはく、チーちゃんは部屋を出ていった。
最終更新:2007年08月04日 18:09