ツルとカメ-39
「そろそろ蕎麦茹でるか。ツルは天ぷらと油揚げ、どっちが良い?」
「卵がそろそろ期限だから月見にする。それよりもこっち見てよ、本当に下らないわ」
数分前までは紅白歌合戦を見ていたようだったが、テレビのチャンネルが今はローカル
局の織濱超放送へと回されている。演歌の部分に入ったので変えたらしい。僕は嫌いでは
ないが、ツルは聞いていて苛々するという理由で嫌っている。
代わりに画面に映っているのは竹槍で武装した巫子服レポーターの姿で、テロップには
『対決!! 神道の力は大蛇に勝てるのか!?』という文字が書かれている。確か彼女の家は
地方でも有数の大きさを持つ寺だと先日の深夜特番でやっていたような気がしたのだが、
こんなにも堂々と他の宗教の格好をしても良いのだろうか。それに大晦日が神道の行事と
いう理由で大蛇と戦うなんて、正気だろうか。
そんなことを考えている間にも、レポーターは果敢に森の奥へと進んでゆく。周囲から
光が消えてゆくにつれて及び腰になっているが、大丈夫だろうか。
『い、今見えました! 大蛇が居ました!! 無理です勝てませんグロいしデカいし人間が
勝負を挑むのが間違ってます!!!! え、嘘!? いやぁァ、来たぁァ!!!!』
泣きながら大蛇を突きまくっているレポーターの姿は、壮絶の一言に尽きた。凶悪に目
を鈍く輝かせ、唾液を垂らしながら気持ち悪く舌を動かす蛇も酷い。見ているだけの僕も
恐くなった程だ。だがそれ以上の形相で眉間を一突きにし、喚きながら既に死んでいる蛇
に追撃を加える姿は鬼そのものだ。思わず蛇の方に同情したくなる。
『勝ちました!! ついに神道が、日本が勝ったのです!! 大日本帝国万歳!!!!』
危険思想だな、と思いながら蕎麦の茹で具合いをチェックする。少し柔らかい方がツル
の好み、卵にもよく絡む。一本すすって丁度良いと判断し、ザルに麺をぶちまけた。湯気
が周囲に広がり、温泉のようだとなんとなく思う。
「どう、良い感じ?」
寄ってきたツルを見て閃いた。
「一緒に風呂入ろう、ビバ混浴!!」
「いつものことじゃない。週一で足りないの?」
足りない、出来れば週に十回のペースが良い。
「それに、今年最後だし」
仕方ないわね、と溜息を吐きながらツルが丼を並べる。
食後が楽しみだ。
◇ ◇ ◇
爆発音が響き、コイは頭を抱えた。
「何でこうなるのよ」
カップの蕎麦にお湯を注ぐだけだった、それだけなのに失敗したという事実に落ち込み、
溜め息を一つ溢す。傍らに立つ女性、コイの姉であるアイも苦笑をするだけだ、これには
フォローの仕様が無いのだから。リビングに居る両親や弟も同様の反応だった。
喜ぶべきは被害が騒音だけだったことと、体にお湯がかかって火傷をしなかったこと。
そうポジティブに思考を切り換えて、コイは飛散したお湯を拭う。
「しっかし、コイも頑張るねぇ。あれか、やっぱりカメ君の為か」
「まぁね、手料理とは言わなくても結果は出したいし」
お熱いことで、とからかうように言うアイの言葉を追うように、リビングからも家族の
煽る声が聞こえてくる。そのことに顔を赤らめ、コイはそっぽを向いて雑巾をシンクへと
投げ捨てた。元々、褒められたり囃されたりするのが好きなタイプではない。
「でもよ、コイ姉。まずは口を直さないと駄目なんじゃね? たまにカメ先輩と話してる
ところ見るけどさ、何か腐れちんことか変態とか言ってんじゃん。嫌われるぞ?」
う、と小さく呟いて、しかし次の瞬間には笑みを浮かべていた。視線を回してカメ達の
家へと目を向けると軽く何度か首を振り、弟へと戻して鼻を鳴らす。どこか誇らし気な、
自分の意見を確信している表情だ。
「大丈夫よ、カメはそんな上っ面だけで判断するような馬鹿じゃないし」
「それ、本人に言ってあげたら喜ぶわよ?」
「そうだよな。じゃないとせっかくカメ先輩好みのデカい乳なのに、無駄になっちまう」
その発言で思い浮かんだのは、カメと何度か重ねた行為だ。コイは顔を瞬間沸騰させて
手元にあったものを全力投球、それは見事に弟の顔面へとヒットした。
「ギャァ、熱い痛い!!」
熱湯の染み込んだ雑巾の二枚目を投げ付けられ弟は悶絶するが、既に日常となっている
行為なので全員が無視をする。口に入ったなら即病院直行だが、この程度ならば気にするまでも無い。
「さて、もう一頑張りするか」 気合いを入れてエプロンの紐を結び直し、コイは本日五度目のヤカンに火をかけた。
◇ ◇ ◇
「はい、ありがとうございましたー」
「また来るのじゃぞー」
新年を数時間後に控えた『SHOPオリハマ』の中は、夜中という時間でありながらも少々
混雑していた。大量の酒を買う者。これから神社に行く予定なのだろう、友人達と携帯で
連絡を取り合っている者。年越し用にカップの蕎麦を買う者。つい先程はアズサとエニシ
も来ていたことを思い出し、ミチルは一人笑みを浮かべた。
「人の世界は、楽しいのう」
今までの人生を振り替えってみれば、有り得なかったことだ。カメに拾われるまでは、
今のようなことになるとは夢にも思っていなかった。ミチルにとっては新しいこと、新鮮
なことの連続である。それは半年以上経過した現在でも変わっていない。寧ろこちらでの
知識を身に付け体験することによって、益々それは広がってきていた。
「でも良いの?」
「何がじゃ?」
小首を傾げるミチルに、円は自宅の方向を指差した。正確には円の自宅ではなく、その
隣の家の方向。ミチルが現在住んでいる、阪田家の方向だ。
「カメ君達と一緒に年越ししたかったんじゃない?」
「せっかくの年越しなんじゃ、恋人は二人きりにしてやらんとな。それに儂は、働くのが
とても楽しい。新しい商品を見たり、それを買う者と接したりするのがな。働いて稼いだ
金で飯を買うことも楽しみじゃ。他にも楽しいことばかり」
だから心配は要らん、と言ってミチルは雑誌のコーナーに向かう。未成年なのにエロ本
を立ち読みしている者が居たからだ。ミチル自身は構わないと思っているが、これも人の
世界での決まりである。カメのように何人もの女と関係を持つ者が居る中で、こうして本
で楽しむ者も居る。不思議なものだ、と思いながらもミチルは客にバックドロップ。店内
にかかっている販売促進ソング『衝動買いサブリミナル』に混じって鈍い音が響いた。
「エロ関係は大人になってからじゃぞ? 良いな?」
正座して何度も頷く学生を見て満足した顔で数度頷き、レジへと戻る。
「ミチルさん、カップ麺が切れそうだから補充お願いしまーす」
「今やるぞ。全く、忙しいのう。……じゃが」
快い。
客に爽やかな笑みを向けながら、軽やかな足取りでミチルは倉庫へと向かった。
◇ ◇ ◇
暗い部屋の中、ボタンを連打する音と連続する破壊音が響いていた。
「せめて、今年が終わる前に全クリしマスよ!!」
緩いウエーブのかかった金色の髪と青い瞳、白い肌に豊かな胸。それを引き立てる均整
の取れたスタイル、どれもが男を引き付けるものだ。だが今は目の下に出来た濃いクマに
よって、全てが台無しになっていた。普段の素朴であどけない表情は部屋に負けない程に
暗いものへと変わり、大きく可愛いらしい二重の目も、瞼が降りて半目となっていた。
原因は、センスの隣に詰まれたシューティングゲームの山だ。数にして十五本程だろう、
センスは昨日から年納めとしてこれまでに買ったもの全てをプレイしていた。勿論途中で
投げ出すことは無く、風呂と食事を除けば不眠不休での総プレイである。それとて空腹や
不衛生が不快になり、腕が鈍るからという理由でのものだ。
その甲斐もあり進みは好調、クリアバーをくぐり、
「やりまシタ、次でラストデスよ」
画面が暗転し、切り替わる。
映っているのは無骨な巨大装置、自分の操る魔法幼女の十倍以上の大きさを持つものだ。
その下の会話バーでは全年齢対象とは思えないような、制作者の正気を疑うような発言の
羅列が並んでいた。よく発禁にならなかったものだ。
「皆サン、力を貸して下サイ」 ラストの一本でのラスボス、つまりは全体でのラスボスになる。映っている巨大な装置
は画面全体の弾幕と威力が高い上に広範囲の拡散レーザーを数秒毎に使用してくる強敵だ。
これまでの戦績は3対7で敗けが多いが、負ける訳にはいかない。
栄養ドリンクを三本一気に飲み、会話を進めて戦闘に突入する。時計を目の端で確認、
今年は残り一時間といったところだ。これまでの戦闘時間を思い出し、
「余裕デスね」
軽快にボムを数発、無敵時間を利用して敵のレーザーを回避する。
「今のわたしは無敵デスよ!! As you Fuckin', Son of a Bitch!!!!」
今まで誰も見たことが無い程狂暴な目付きで歯を剥き、普段の姿からは考えられない程
に口汚く画面の向こうの相手を罵倒する。何も知らない他人が見たならば、多重人格障害
か別人だと思うだろう。そんな自分の変化も気にせず、センスは怒濤の連射を開始した。
◇ ◇ ◇
「家はキリスト教なのになぁ」
「その前に日本人だから良いんじゃないですか?」
一真と千歳は呟き、織濱超放送を見ながら蕎麦をすする。両親は既に就寝しているので
起こさないように配慮して静かなものだが、寂しい空気ではない。どこにでもある兄妹の
穏やかな一場面、落ち着いた雰囲気のものだ。
「そう言えば兄さん、知ってましたか? あのエロ本墓場、もう無くなったんですよ」
「あ、マジか?」
残念な話です、と呟いて鰹の匂いの濃い汁をすすり、千歳は目を伏せた。先日にカメと
行ったデートの帰り、何気無く寄ったのだが、そこは開発されて幾つかの事務所があった。
「時間が経つのは早いですね」
「そうだな。お前が親父達と戻ってきてから、もう結構だしな。文化祭の後くらいから、
もう3、4ヶ月か。もうクラスには大分馴染んだだろ」
「今更ですよ」
それより兄はどうなのだろうか、と思う。外見がヤンキーだし、どこか浮いているし、
しかも空気キャラになっているような気がする。
電子音。
「お、カメからメール来た」
「見せて下さい」
『十二時は混むから今の内に「あけましておめでとう」、年が変わったらまた開いてくれ。
一真もチーちゃんも、来年もよろしく。そして僕はこれからツルとイチャ付くから妬め』
残酷ですね、と苦笑する千歳に一真は眉根を寄せた。
「カメに想いは伝えたのか?」
「何度も伝えて、何度も振られました」
「カメはツル一筋だからなぁ。まぁ、俺は大切な妹を応援するが」
憎き恋敵の姿の幼い姿を思い浮かべ、千歳は力強く頷いた。こんな場所では負けてなど
いられない、来年こそは振り向かせてみせると。そう決意して、残った蕎麦を一気に口の
奥へと流し込み、白い喉を鳴らして飲み込んでゆく。
「兄さん、ピザ頼みましょう。来年は太く短くです!!」
「いや、そりゃあ、あれも極端に短い円柱と言えなくもないけどよ」
こんな時間に食ったらカロリー以外の部分でも大変なことになるぞ、と気遣うような兄
の声に千歳は一瞬躊躇うが、しかし手は既に近所のピザ屋の番号を呼び出していた。
注文をしながら、千歳は思う。
明日からが、真の本番だと。
「あのロリなんかには、絶対に負けません」
「明日初詣行くけど、ニキビ出来るぞ」
失念していたことを思い出し、千歳は慌ててキャンセルをした。
◇ ◇ ◇
安いアパートの洋式トイレ、そこには二人分の人影があった。一人は黒のショートヘア
に縁無し眼鏡をかけた黒いジャージ姿の女性、もう一人は厚手のシャツにデニムのロング
スカートを着た黒いロングヘアの女性だ。
エニシはアズサの背を擦りながら、ミネラルウォーターを口に流し込む。つい十分程前
からずっと、今のような状態が続いていた。理由は言うまでもなく、いつもの酒である。
一人で年越しは寂しいからとエニシを強制的に連れ込んで酒を浴びるように飲みまくった。
恋人の一人も居ないままに年を越えるという事実が泣き上戸の心を暴走させて酒は進み、
例の如く吐いたのである。明日の初詣は大丈夫だろうか、とエニシは頭を掻いた。
「うぅ、カメは、カメはどこだ?」
「居ないわよ、カメ君は呼んでないでしょ?」
肩を貸して立ち上がらせながら、ベッドに向かって歩いてゆく。その途中でなんとなく
テーブルを見れば、視界に入ってくるのはカップ麺やコンビニで買った惣菜の残骸の山。
随分と色気の無い光景だ、と切ない気分になる。
「カメは、何をしてるんだ?」
「だから、居ないわよ。多分今頃はツルちゃんと年越しセックスの準備でも」
言ってから失言だと気付き、エニシは慌ててベッドに倒れたアズサを見た。最初は、は、
という発音の小さな声。それが、あ、というものに変わり、やがて長く連続したものへと
変わってゆく。アズサは枕に顔を埋め、背を震わせて泣いていた。
「カメの」
一拍。
「馬鹿あぁァッ!!」
叫ぶ。
「そんなに独身が悪いのか!? 干支だってギリで一周してないのに、それでも年上は駄目
なのか!? それとも乳か!? えぇい、エニシ、お前の乳を半分寄越せ私はボインになる!!」
「壊れないで」
いつもよりも激しく暴れる親友の頭を撫でながら、強く抱き締める。酒さえ入らないの
なら立派な人間なのに、この悪い癖は治らないのだろうか。これではいつか出来るだろう、
未来の恋人が大変だ。そう考えながら、一人の少年の名前を小さく呟いた。
「全く、罪な男よね」
「うあぁ、カメぇ!!」
「はいはい、明日神社で会えるわよ。ついでに一発やりましょうね」
ぐずるアズサをあやしながら、もう何度目かになるか知れない溜息を吐いた。
「本当、カメ君アズサを貰ってくれないかしら?」
◇ ◇ ◇
ホウオウコンビは年越しパーティの会場を抜け出して、テラスで夜風に当たっていた。
煌びやかなドレスをなびかせる空気は冬の温度に冷やされ、澄んだもの。それがワインで
火照った体から熱量を奪ってゆくのを快いと感じながら、ホウは大きく伸びをした。
「気持ち良いですわね」
「……はい、とても」
嬉しそうにホウを見ながら一歩近寄り、
「……今年も、終わりますね」
手を繋ぐ。
「とても早い一年間でしたわね、でも」
充実してましたわ、と言って軽いステップを踏む。会場から微かに聞こえてくるワルツ
のリズムに合わせ、1・2・3の動きでオウをエスコートしながら浮かべるのは無邪気な
笑みだ。作法も少し無視した動きで、はしゃぐように踊ってゆく。ホウは金の髪を翻し、
オウは銀の髪を揺らしての、テラスという場所の狭さを感じさせない動きでだ。
鈍音。
動きが止まる。
「あいたたた、肘が……」
「……大丈夫ですか?」
数秒。
肘を押さえて辛そうな表情をしていたが、顔が笑みに変わる。最初は小さく吹き出して、
やがて大きな笑い声に。そして最後にはオウも珍しく、小さくではあるが声を出しながら
笑っていた。その表情のままに互いに手を伸ばして、再び舞踏を開始する。今度は先程の
ものとは違って落ち着いた、穏やかで滑るような動きのもの。
「いつまでも、続くと良いのに」
「……ボクも、そう思います」
ずっと踊り続けていたい、と思いながらホウは腰を大きくグラインド、腕をオウの腰へ
回して大幅なステップを踏んだ。それが数度続いて、一曲目が終わる。
数秒。
二人で息を吐くのまで同時にして、唇を重ねた。それに合わせるように二曲目が始まり、
良い雰囲気だ、とホウはオウと手指を絡めて強く握る。私は幸せ者ですわ、という呟きは
果たして聞こえただろうか。
「……ホウ様」
「このまま、どこかに逃げてしまいましょうか?」
「……ホウ様が望むなら」
でも、と体を回しながら、
「……まずはこの曲が終わってからですね」
ターンを見事にキメて微笑み、踊り始めた。
◇ ◇ ◇
水樹は夜の街を歩いていた。先程までは家業である歌舞伎の演習の手伝いをしていた為、
女性物の着物の上にジャケットを着ているという奇妙な格好になっている。更に彼を妙に
見せているのは左右の手に提げられた巨大な紙袋、中に入っているのは大量のバーガーや
ポテト、フライドチキンなどだ。明日からの講演では水樹は出演しないが、その代わりに
演じる者達への労いの気持ちを込めたものだ。
「この新発売の豚トロバーガー、クドいけど明日もたれないかなぁ?」
何故か殆んどの者が頼んできた新商品の味を思い出し、軽く悩む。一口食べた瞬間に口
の中に肉の脂が広がり、そのまま染み付いた濃い味は数時間もの間消えることは無かった。
それをおかずに丼で白米を食い、無理矢理に口内の味を消した程だ。祖父などはとうとう
惚けてしまったのか数日経った今でも味が残っていると言っているし、母が一口食べた後
庭で飼っている犬に与えたところ、急激に動かなくなった。
「後で散歩させなきゃ。と、この辺りかな? 優さんの車どこだろ?」
電話で指示された場所に着いたのだが周囲に車の影が見当たらず、取り敢えずベンチに
座り込んだ。こちらは目立つ格好をしているし、何か勘違いがあってもすぐに電話をして
場所を教えれば見付かる筈だ。ならば下手に動くよりも、じっと待っていた方が良い。
「それに、お腹も空いたし」
紙バッグからフランクフルトを取り出し、アルミホイルを剥いてかぶり付く。粗引き肉
なので肉を食べているという感じが強く、それなりにボリュームもあるので好きなのだ。
最初は何も付けず、次にケチャップ、最後はマスタードも付けて三段階で食うが水樹流。
「やっぱり美味し、大きいし。この肉汁も良いよね。うわ、口の周りがベトベトに」
ヤバい発言を無自覚にしながら食べていたが、不意に一人が近寄り、
「よぅ姉ちゃん。俺のフランクフルトも食ってくれよ」
「残念だけど、あたし男だよ。それにフランクフルトなら『串』を刺すよね?」
その水樹の笑みを浮かべての残酷発言に、周囲で眺めていただけの男達が一歩引いた。
「このまま皆離れて、来年は痴漢が無かったら良いなぁ」
串を隣接するゴミ箱に投げながら、水樹は溜息を吐いた。
◇ ◇ ◇
時計を見ると時刻は11時40分、もう暫くで除夜の金が鳴る時間だ。今年も残りが僅かと
思うと、妙な考えが沸いてくる。本当に色々あった、楽しい時間だった。
「もう、8ヶ月も経ったんだな」
「何よ、その半端なカウントは」
「いや、ツルと付き合い始めてからな」
顔を赤らめて横を向くツルが可愛くて、思い切り抱き締める。キスを重ねつつベッドへ
一緒に倒れ込むと、ボディソープの甘く良い香りが鼻孔を擽った。
「ちょっと、嗅ぎすぎよ」
いかん、つい愛しかったもんだから。
「で、話を戻すけど。今年ももう、終わりね」
「そうだな」
鈍音。
除夜の鐘の音が聞こえてきた。
「そう言えばこれって、煩悩を消すのよね」
「いつも清く正しくいやらしく生きている僕には関係ない話だ」
「まぁ、無限から百八個を抜いただけじゃね」
どうやら今年も僅かなのに新しい問題が出てきたようだ、残り十数分で誤解を解くのは
不可能だろうか。出来れば楽しく誤解を解きたいものだが、どうすれば良いのだろうか。
考えて、結論する。
煩悩浄化するまで今を貫いていたら、逆説的に清いということになるだろう。我ながら
素晴らしい考えだと思う。鐘の音に合わせて突いたら、もっと説得力は増すか。
「ほら、時間が少ない。もう残りは百を切った」
「え、あ、うん」
瞬間的にツルを全裸に向いて、胸に口付ける。今年最後のツルの味は少し甘いものだ。
来年にも期待しようと思いながら乳首を舌で転がして、最近発見したツルの性感帯、膝の
裏を撫でてゆく。どこまでも沈みそうな程に柔らかい肌の感触を堪能しながら脇腹を通り
臍まで唇を移動させ、臍を舌先でこじるように舐める。そのまま下に唇を動かして、股間
の割れ目に舌を潜り込ませた。
急いだせいか、まだ濡れが甘い。クリトリスへと目を向けて、指先でこね回す。快感が
強すぎるらしいので普段はあまり使わないが、今はそうも言っていられない。皮を向いて
外気に晒しただけでも気持ち良かったのか小さく身を震わせたが、僕は追い討ちをかける
ように充血した肉芽を唇で挟んで刺激する。時折、歯まで立てながら周囲をなぞるように
舐め、湧き出す蜜を擦り付けて動きを加速させる。
「や、ちょ、いつも、よりも」
抵抗するように顔を太股で挟んでくるが、僕にとっては気持ち良いだけだ。細く肉付き
が少ないが、すべすべとした柔らかなもので挟まれると気持ち良い。つい一時間前、一緒
に風呂に入ったときも素晴らしい感触のあまり撫ですぎた程だ。キレたツルが全開熱湯を
股間に浴びせてきたときは死にそうになったが、それだけのリスクを犯しても不満は無い
と思ってしまう。今年の最後まで魅力的なんて、何て素晴らしい娘だろうか。
「や、駄目、だってば」
これが最後の大掃除、ツルの魅力を全て僕が頂いてしまおう。
「やめ、やめて」
そして十分後には新鮮なクリーンツルを堪能する。
「や、やだぁ」
泣きそうな声で我に帰り、ツルを見た。股間は既に洪水になっていて、割れ目の入口は
痙攣をしていた。どうやら達しているのに気付かず愛撫を続けていたせいで、相当酷い状態になっていたらしい。呼吸に
合わせて動く大平原はの先、荒い息を漏らす口の端からは唾液が垂れ、頬には大粒の涙が
流れていた。目はひたすらに虚ろで、ぼんやりと天井を眺めている。
「大丈夫か?」
「死ぬかと、思った」
は、と息を吐いてこちらを睨む姿も可愛い。
いつもならば少し休息を入れるところだが、悠長に回復を待つ時間などは無い。それに
何より、こんな姿を見せられては我慢が出来なかった。竿を取り出すと割れ目に押し当て、
一気に奥まで押し込んでゆく。子宮が降りてきているのか普段よりも浅い部分で止まって
根元を残す状態になったが、先日のホウ先輩の中を思い出すような強い締め付けのお陰で
いつもの数倍も気持ちが良いと思えるようなものになっていた。
鐘が鳴り、それに合わせて引き抜いて強く打ち込む。恐ろしく敏感な状態になっている
らしく、それだけで再び達してしまったようだ。殆んど泣き声に近い声で喘ぎながら悶え、
強くなった痙攣の動きでひだが動き、先端に絡み付いてくる。初めてのときも締め付けが
強く気持ち良かったが、膣内が慣れた状態でのこれは、今までで一番具合いが良い。
「も、カメ、激し」
鐘が鳴る。
また強く突いて、次の鐘が鳴るのを待った。腰を動かしていなくても、入れているだけ
でも達してしまいそうだ。鐘が鳴るのが待ち遠しくもあり、このままで居たいとも思う。
鐘が鳴る。
頭が痺れるような音と、脳を染める快楽。もっともっと、初めてではないのに、まるで
性行為を覚えたての子供のように、貪欲にツルの体を味わいたくなってくる。この鐘の音
が煩悩を消すと言われているが、まるで呼び水のようにさえ思えた。
鐘が鳴る。
鐘が鳴る。
もう残りは一回だけ、次に突けばラストになる。必死に堪えていたものが出せるという
ものもあって我慢が効かなくなり始め、急激に強い射精感が背筋を走ってくる。
「ツル、もう、出る」
丁度最後の鐘が鳴ると同時に根元まで埋めるように突き、射精した。
時計の針が12時を指すのを見ながら引き抜き、ぐったりとしているツルの髪を撫でる。
ティッシュで溢れ出してきた精液を拭って、ふと気付く。これが今年の初後処理だ。更に
言うならば、これからすること全てが今年の初物になる。
「なぁ、ツル」
「ん、何?」
軽くキスをして頷き、
「初キスだな」
「そうね、何だか不思議な感じ」
言った直後、ツルはくしゃみを一つ。
「いかん、初風邪を引くぞ。ほら早く今年の初パンツと初ブラを着ろ。大丈夫、しっかり
初着替えを見ててやるから。あ、場所は箪笥の一番上の引き出しだからな」
「初変態発言してんじゃないわよ!!」
股間に初打撃を受け、初絶叫と初悶絶をした後、初蹲りをした。
最終更新:2007年08月04日 18:13