ツンデレ・カフェ
カランと音をさせて喫茶店のドアを開ける。
「いらっしゃいま……また、来たの?」
そこまで出ていた作り笑いを引っ込めて、奈緒子がぶすっとした顔になった。
「また来ました。で、ご注文は?」
わざとらしくこっちからお題目を言ってやると、呆れたように首を傾げた。
「いつものでしょ」
持っていた水を置くと奥へ入ってしまった。
あいかわらず可愛いな~などと心の中で考えながら奈緒子の尻を目で追う。
しかしこれが見つかるとビンタを食らうかもしれない諸刃の剣……というやつか?
「はい、コーヒーでございます」
既に砂糖とクリームまで入れて攪拌されたものが出てくる。
「いつも、すみませんね。本当にナオちゃんは優しいなぁ」
「バカ」
お盆を抱えた彼女は悔しそうに言うとほっぺを赤くしてキッチンに身を隠してしまった。
実は仕事の合間を縫ってカワイイ彼女にちょっかいをかけるために来ているのだ。
今日は実は時間はあまりない。
「ごちそうさま。美味しかったよ~」
席を立つと、奥から監視していた奈緒子が小走りにやって来る。
店主はアルバイトに任せてうつらうつら船を漕いでいる。
「もう帰るの?」
奈緒子が上目遣いでやけに困った顔をしている。
本当に素直じゃない。
「今日は忙しいんだ」
本心から残念そうに言うと、奈緒子はハッとして
「でも客の回転が良くて助かるわっ」と慌てて言った。
「どうせ、また来るしね」
「うん、また来るよ……と言いたい所だけど」
僕は意味深に言葉を切ってみた。
「な……何?もう来ないの?引っ越すの?」
あわてん坊の奈緒子ちゃんはびっくりしたように大きな目を見開いた。
「僕とデートしない?」
「ん?…………うん」
疑問符の後にやっと彼女は小さく頷いた。
「じゃ、また来るよ。予定はその時にね」
「……まいどあり……」
恥ずかしそうに俯いた彼女の小さな声に見送られて店を出た。
嬉しそうだったのに、それでもまた来てねって言ってくれない。
何気ないように装ったけれど実は心臓がばくばくと猫のように早い。
じわじわと達成感と多幸感がこみ上げてくる。
「…ヤッター」
歩きながら小さくガッツポーズを取ると歩行者に不審そうな目を向けられた。
最終更新:2007年10月28日 22:22