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小ネタ

  • 作者 ◆GK0/6l5f56氏

 彼女は僕の前に膝をつき、硬度と熱を帯びるペニスを白い指で捏ね
くりまわしている。
プライドの高い彼女が跪いているという眼前の光景と彼女の挑発的な愛撫に、理性が
吹き飛びそうになるぐらいの快感を覚える。
「んん……はぁっ……ぁぁ」
 先端から滲み出るカウパー液が彼女の指に絡まり、いやらしい水音を立て始めている。
このままやり続けられると、手だけで達してしまいそうだ。
「っぁ、ああ…………はっ、んん」
 滑らかな彼女の指先と、そして快感を呼び起こす術を心得ている手つきに僕は頭が
白くなっていく。
「ぁああ……んっ」
「ねぇ?」
「はん……っ……な、何?」
 僕の視線の先の瞳は、夜の猫のように黒目がちで円らだ。

「あのさ…………どうして、ヤラレている僕よりヤッている君の方が息が荒いの?」

「えっ!?はっ!?な、な、な、何言っているのよ!そんなことあるわけないじゃない!!
あ、あんたにして欲しいって言われて渋々やっている私が、どうして興奮しなきゃいけない
わけ!?」
 僕は確かに「して欲しい」とは言ったが、それは彼女に散々誘導された結果だ。そんな
ことをお構いなしに、焦った様子の彼女は僕の硬くなった性器から手を離す。その瞬間、
粘性を帯びた先走りが彼女の指とペニスの間に淫猥な糸を引いた。
「いや、だってさ」
「だって、じゃないわよ!空耳なのよ、この変態バァッカ!」
 空耳ではない。事実、彼女は結構艶っぽい吐息を瑞々しいその唇から零していたの
だから。キッと目尻を吊り上げて、こちらを睨んでいる彼女の迫力に今日は大人しく従う
つもりはない。

 ◇ ◆ ◇ ◆

 数日前──
「プラシーボ効果って、薬と偽って何の効用もないものを服用させると、患者の心的作用に
より薬と同じ効果をもたらすっていう、あれ?」
「ああ、それだ」
 友人は大きく頷く。何故、僕の彼女の話をしている最中に偽薬効果の話が突然出てくる
のかは、サッパリ分からない。
「お前の彼女は、絶対ツンデレだ」
 ツンデレ──と言われれば、そうかも知れない。
 普段は僕のことを「バカ」「変態」「最低」と罵る彼女の姿を見れば、誰も二人が恋人だとは
思わないだろう。実際、僕でさえ自分が彼女の隣を歩いて良いものか時々、首を捻ってしまう。
 でも、恋人同士であることは紛れもない事実だ、キスだって、肌を重ねたことだって何度もある。
ただいつも彼女は「あんたがしたいって思うから、仕方なく付き合ってあげているのよ、まったく!」
と言うのだが──。
 おまけに彼女はハッキリと僕のことが「好き」だとは、口には出さない。元々、彼女は
容姿端麗、才気煥発型の完璧人間だからプライドが高いのは分かるのものの、僕のことを
本音のところでどう思っているのか知りたいと思うのは、高望みではないと思う。
 勿論、どストレートに彼女に質問しても答えてもらえるはずがない。「バカ」とか「あんたの
クセに生意気」と言われるのが関の山だ。そこで僕は友人にそのことを相談していたのだ。
「ツンデレっていうのは、自分の本音を正直に口に出せない人間だ。お前の彼女もお前のことを
好きなはずだ。でなければ、あんな可愛い子がお前の相手をする理由がない」
 言われていることは最もだが、我が友人ながら中々痛いところを突いてくる。
「それはさておき、彼女がお前のことを好きだがうまく伝えられずに、つっけんどんな態度を
取ってしまうということは、言い換えれば、本当の自分に嘘をついているということだ」
「はぁ」
「だから、何か適当なものを飲ませて、それを自白剤だとか本音を語っちゃう薬だとか
嘘をつく。プラシーボ効果じゃないが、疑心暗鬼になった彼女は本音を喋り出すかもしれないぜ」
 と、友人は提案してきたが、そんな簡単に行く筈がない──そう思っていた。
 が、ものは試しだ、と思ったのも事実。

 ◇ ◆ ◇ ◆

「さっき、僕の出したジュースを飲んだでしょう?」
「……な、何よ、いきなり」
「変な味しなかった?」
 彼女は少し考えてから、小さく頷いた。僕はフルーツジュースにスポーツドリンクの粉末を
混ぜ、苦味が出るように仕向けた。
「あれさ、自白剤を少し薄めたものが入っているんだよね」
「自白剤!?……何でそんなものを!」
「だって、君に正直になってもらいたかったから」
 彼女は目を丸くして、僕を見ている。
「しょ、正直って何よ!私が嘘をついているとでも言うの?」
「さっき、本当は興奮していたでしょ?」
 意地悪く尋ねてみる。彼女は口を噤んで、僕を恨めしそうに睨んでいる。
「薬、そろそろ効いてくる頃だから、無駄な抵抗は止めた方が良いよ」
 最後の一押しだ。これでダメなら、冗談でしたと言って誤魔化すしかない。効果がない
のに嘘を押し通して、彼女が本気で怒り出すようではどうしようもない。唇を噛み締める
彼女の次の言葉をただ待つことしかできなかった。
「………………してた、と思う」
 彼女が蚊の鳴くような小さな声で恥ずかしそうに呟くと同時に、僕は心の中でガッツポーズを
作った。どうやら、彼女はこちらの企みに嵌ってくれたようだ。
「どうして?」
「どうしてって何よ!?」
「薬の効きが足りないのかなぁ?質問に答えないなんて」
 後は何もかも、ありもしない薬のせいにして、彼女に逃げ道を作るのだ。そうすることで、
本当のことを喋りやすくしてあげる。だが、これは僕にとっても諸刃の剣だ。本当に彼女が
僕に渋々付き合っているだけならば──。
 不安が膨れ上がるよりも先に、彼女の唇が躊躇いがちに動く。
「……だ、だって、触るとドンドン硬く大きくなって、いつもこれが私の中に入っている
んだって思うと……」
 顔を真っ赤に染めながらも、彼女は澱みなく答えた。これはもう一種の羞恥プレイと
言えるだろう。赤面しながら答える彼女の姿はそれだけでそそるものがある。
「そう。でも、どうして入っていると思うだけで興奮するわけ?」
「えっ……そ、それは…………気持ち良い……か、ら」
 薬のせい、という言い訳を受け入れることができたからか、彼女は存外素直になってきた。
「でも、普段は言ってくれないよね、そんなこと」
「い、言えるわけないでしょう!…………恥ずかしいもの」
「でも、今は薬が効いているから、僕の質問には何でも正直に答えてしまう」
 彼女はコクリと頷く。
「し、仕方ないもの。あんたが変なもの飲ませるから!」
「そうだね。結構、強力だって聞いているから、さすがに君も口を割るしかないと思うよ」
 普段の覇気はどこへやら、彼女は完全にか弱い一人の女の子になっていた。
 ふと、気がつくと僕は愚息を出しままだった。何とも情けなく、恥ずかしい格好だったの
だろう。とりあえず、仕舞っておこうとした瞬間──
 彼女は素早く僕の手首を掴むと同時に、もう一方の手でペニスに指を絡めてくる。
「えっ!?」
 驚きのあまり間の抜けた声を出した僕の視線から、顔を反らした彼女はか細い声で
とんでもないことを呟いた。
「も、もう少し触らせて……」
 最初は、「スケベなあんたに付き合って渋々やってあげているだからね」とかって言って
いたクセに本当は彼女もそうしてみたかったのだ、と気がつくと何だか、少し嬉しい。
「薬が少し、濃過ぎたみたいだね」
 あくまで彼女のプライドを傷つけないよう、言動が薬のせいであることを強調する。僕の
言葉に彼女は微かに頷き、ゆっくりと僕のペニスを扱き出す。それが徐々に激しくなるに
つれて、彼女の口から甘い吐息が再び漏れ出す。
「……んぁ……ぁぁ……熱い」
 早くも彼女はさっきの興奮状態を取り戻し、より積極的に僕の性器を愛撫する。
「興奮するんだ、やっぱり?」
「……うん」
 もう完全に従順に質問に答えてくれるようになった。
頬を染めて、少し嬉しそうに僕の性器を捏ねくり回す彼女の瞳は徐々にトロンと虚ろな
様子になっていく。
「で、君は僕のこと好き?」
 本当に聞きたかった事は”これ”。ハッキリと彼女の口から、僕のことを掛け値なしに
好きだ、と答えて欲しくて、わざわざこんな猿芝居を打っているのだ。
「……えっ……あっ、そ、そんなこと……」
 これにはさすがに、困惑の表情で彼女が固まった。
「もしかして、好きじゃない?」
「…………ば、ばかじゃないの、そんなこと聞くなんて」
 彼女は首を振って、イヤイヤしながら質問に答えることを拒もうとしているが、薬を飲まされたと
思い込んでいる彼女の内側にはきっと、本心を告げるようにと囁く悪魔と、それを阻止しようとする
理性という名の天使が葛藤しているのだろう。
「おかしいな、薬はまだ効いてきているはずなんだけど?」
 俯き、苦しそうに悩む彼女の姿に心が痛むが、友人からは手は緩めるなと言い含められている。
 もう退くことはできないのだ。
「っう!?」
「さっ、答えて」
 彼女は俯き加減のまま押し黙ってしまった。顔を伏せているせいで、表情は伺えないものの
肩が小刻みに震えていることはハッキリと分かる。もしかして、怒らせてしまったのだろうか、
嫌な予感がする。
「……きぃ」
 あまりに小さい声だったために、僕はうまく聞き取れなかった。
「えっ?」
「好きに決まっているじゃない!」
 ヤケになったのか、耳まで紅く染まった顔を挙げ思い切り彼女は叫んだ。目尻には
薄っすらと透明な涙の粒すら、浮かんでいる。余程、僕が好きだということを言うのが
悔しかったのだろう。
「バカ、バカ!あんたが変な薬を飲ますからいけないのよ!」
 彼女はそのまま僕に抱きついてきて、胸を痛いぐらい強く何度も叩いてくる。
「そ、そうだね。僕が悪い」
「そう、思うなら…………慰めなさいよね」
 上目遣いで睨めつけてきた彼女の強請る口調に僕の理性は沈没した。

 ◇ ◆ ◇ ◆

 薬を飲まされていると思い込んだ彼女は──凄かった、激しかった、そして、可愛かった。
 誰に教えたくないぐらい素敵な交わりが終わって、彼女と僕はベッドの上で抱き合っていた。
「今度、変なもの飲ませたら……ただじゃ済まさないわよ!」
 僕が薬の効果が切れたと告げてすぐに、彼女は普段の調子を取り戻した。
「……は、はい」
「まったく。自分の彼女に自白剤なんて飲ませようなんて信じられない!」
 強い言葉とは裏腹に、彼女は余韻を愉しむかのように目を閉じて、鼻先を僕の首筋に
押し当てたまま黙ってしまった。
 そんな彼女の柔らかな髪の毛を撫でながら、芳しい香りに鼻を擽られながら僕は行為に
入る前に浮かんだある疑問を思い出した。
「そう言えば、僕のこと好きって答えてくれた時、ちょっと泣いていたよね」
 あの涙の滴を僕は忘れないだろう。きっと、あれは彼女のプライドを傷つけてしまった
証なのだ。
「泣くほど悔しかった?」

「……バ、バカ!……嬉しかったのよ。薬のせいだとしても、ちゃんと本当のことが
伝えられて、ね」

 嘘をついたことは墓の中まで持っていかなければならないと、僕は悟った。
 彼女が真実を知ったら、僕の命は恐らく風前の灯となってしまうだろう。

「何、にやけているのよ!このバカァァ!」

 (了)

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最終更新:2010年04月14日 01:45