362 :トライアングル☆ツンデレ・お嬢様よ何処へ行く③:2010/12/26(日) 00:42:11 ID:pYsXp8mo
「ハアハア・・・・・・」
喫茶店の敷地を出てすぐそこにある電柱に手をついて、息を整える。
何かに寄りかからないと立っていられない。これほど必死になって走ったのは久方ぶりだった。
飲食店や本屋さんなどを回り何の収穫も得られなかったことに落胆した。
ブロンドの美少女なんて何処にでも落ちてるわけでは無いので、直ぐ見つかると想っていたが・・・
「それにしても、もう喉がカラカラだ」
もう暫く行くと公園が有る。
そこで水分補給を兼ねてジェイクに連絡を取るかな。
僕は再びスピードを上げて走り出す。
飲み屋街のビルを抜けると公園はすぐそこだ・・・人影?
街路樹の陰からビルの入り口の方を見ている人がいる。
まあ、お堅いイギリス人の少女が、この時間から酒を飲む事は考えられない。
ビール好きのドイツ人あたりだったら気晴らしに一杯やるかもしれないが・・
そんな事を考えながら、一応確認の為に走るスピードを緩める。細かい情報を見逃さない事は人捜しの基本だし。
よく観察してみると街路樹の陰に居る人物は上下黒のスウェットスーツ。帽子を被っているが、後ろから黒髪が露出して肩の方迄伸びている。
どうやら女性のようである。街路樹の方からビルの様子を伺っている感じだ。
確かビルの三階には暴力団の事務所が有ったはずだし、警察関係者か?だったら何か手懸かりが・・
そう思って更に近づくと細面のメガネを掛けた小柄な女性。挙動もオドオドして、どう見ても捜査官には見えない。
しかし、どこか見覚えもあるように感じられる。う~ん・・もしかしたら。
「山本さん!」
思い切って声を掛けてみる。
「ひゃう!!」
女性は僕に突然話しかけられてビックリしたのか、小さい悲鳴を上げて転けそうになる。やはり山本さんか。
山本さんとは姉さんの大学の合気術サークルの後輩で、家にも時々きたことが有る。
姉さんによれば、腕前はイマイチらしいのだが、生真面目で人が善くてドジっ娘属性でほっておけない後輩らしい。
「驚かせて申し訳有りません、僕ですよ、斎藤裕一郎ですよ。」
「ゆ、裕一郎くん・・・」
「はい、お久しぶりです。今日はこんな所で何をしているんですか?」
山本さんは確か酒は一滴も飲めないはずだ。
363 :トライアングル☆ツンデレ ◆WXGiSVZK0w :2010/12/26(日) 00:44:59 ID:pYsXp8mo
山本さんは確か酒は一滴も飲めないはずだ。
「裕一郎くん・・実はね、さっきまで公園で走ってたんだけどね・・・女子高生の三人組が・・金髪の女生徒をどこかに連れて行こうとしていたの・・」
「金髪!もしかして外国人では!」
「う~ん、そうかもしれない。
それに何かリンチでもしそうな雰囲気だったんで、こっそりつけて来たんだけど・・・このビルに入っちゃって・・」
「まさか・・・三階の・・暴力団事務所に・・・」
「うん、多分間違いないと思う。
チンピラみたいな人が上からおりてきてたし。」
女子高生の三人組・・もしかして黒河達か、噂通りなら暴力団事務所と一本の線が繋がる。
僕は目を瞑り大きな深呼吸を一つするとビルの三階の窓の方を見上げる。
突入するしかない!警察に通報する手もあるが、もし手遅れに成ったら・・・
「山本さん。僕、暴力団事務所に行ってきます。
多分連れ去られたのは顔見知りみたいだし・・・
もし、三十分以上たって僕が出て来なかったら警察に通報して下さい。」
僕は携帯を確認するとビルの中に入っていった。
「裕一郎くん・・今ーーー」
山本さんが後ろで何か叫んでいたようだが、もう後戻りは出来ない。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「アニキ!ヘロインを持ってきました。」
「よし、注射器には・・・」
「すでに準備が出来ています。」
「分かった。」
「アニキ、俺が打ちましょうか?」
「ケン、慣れてる者でないと失敗する事が有る。
ヘロインは高いんだ、俺がやる。」
「分かりました!」
男達はどうやらワタシに薬を打つ準備を終えたようだ。
確かヘロインとか・・・・・・
薬物に関してはロンドンの学校で習った事がある。ヘロインはその使用者に対して肉体面での依存症と精神面での依存症の両方を形成する。
「快」の面でも「悪」の面でも最も高峰に位置するものとして、「薬物の女王」の代名詞を持つ。
打たれたらワタシは終わりだ。
チャンスは一瞬。男がヘロインを打つ瞬間に注射器を蹴り飛ばすのだ。
もしかしたら逆上した男達に殺されるかもしれないが、薬漬けにされるよりマシだ。
「さ~て、お嬢ちゃん今天国に連れて行って上げるからね~」
男はワタシが横に成っているソファーの前まで来ると、しゃがみこんで右腕の方に手を伸ばしてくる。
364 :トライアングル☆ツンデレ ◆WXGiSVZK0w :2010/12/26(日) 00:47:46 ID:pYsXp8mo
そしてワタシの右手を掴むと腕を丹念に消毒しながらニヤリと笑う。
「ほ~ 肌がスベスベしてやがる。
やっぱり物が違うよな~」
気色悪いが今は我慢だ。
「さ~てと」
男が左手でワタシの右腕をしっかり掴むと、右手で注射器を持ち、針を腕に徐々に近づける。
針は先端部分が不気味な光を放ちワタシのうでに迫る。後十センチ!今だ!
ワタシは渾身の力を振り絞って蹴りを放つ!
しかし・・・
「おっと・・狙いは良かったんだけど、生憎起きてることには気づいていたよ。」
最悪だ。こちらの意図はバレていたようで、足を捕まれてしまった。
「おい、誰かこのべっぴんさんの足を押さえろ!」
「あたしがやるよ!」
「おう、彩か・・足の上に乗っかって、しっかり押さえてろよ!」
男は暴れるワタシを押さえると、今度は足の上に黒河が飛び乗ってきて両手で体重を掛けて太股をしっかりと固定する。
もう、逃げられない。
“いや!いやぁあああ!!”泣き叫ぶワタシの声は猿轡に塞がれて
「う~う、う~」
と呻き声を発するのみ。
「何言ってるのかわからないけど、さようなら金髪のお嬢様・・・」
黒河が冷酷に笑う。もう駄目・・・
その時・・・ドガーンーーー!!
ワタシが諦めようとした瞬間ドアの方から物凄い音がした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
駆け足で階段を上がる。
三階のフロアーに到着すると、ふうっと、小さく息を漏らす。
ドアの前に立つと自分の胸にソッと手を当てる。すると鼓動が早鐘のように激しく打ち鳴らす。
僕は自分を叱咤する為に両頬をニ~三度叩くと、ドアノブをゆっくりと回す。
ガチャガチャ・・・鍵が掛かっている! どうやらもう時間的な猶予は無いみたいだ。僕は助走の為にニ~三メートルドアから離れると
「でゃあーー!!」
気合一閃体当たりをドアに敢行した。
ドガーンーーー!!
轟音と、ともに身体ごと数メートル吹っ飛び転がると、目の前が開けてくる。
そこはまさに修羅場と呼ぶに相応しい光景が広がっていた。
365 :トライアングル☆ツンデレ ◆WXGiSVZK0w :2010/12/26(日) 00:51:13 ID:pYsXp8mo
「なんだ!てめぇはーー!!」
「おう!クソがきゃあぁぁーー!!」
「殺すぞ!おらぁああーー!!」
部屋に突っ込んだとたんにいきり立ったチンピラに囲まれる。男が五人女が三人・・・
女はやはり黒河達か、お嬢様は縛られて猿轡をかまされている。アニキ分らしき男がお嬢様の前に立ち、手には注射器を持っている。
もしかして薬?状況的には戦うか、逃げるか?逃げる事は考えられない。逃げる位なら最初から突っ込まない。
だが、何分五対一だ。ここでやられたら、何にもならない。
まずは状況を見切ることだ。勝てそうなら戦う。判断の根拠はいつも単純だ。
しかし僕は範馬刃牙では無い。今戦うことは自殺行為だ。ならば、出来ることは一つ・・・・・・
「すいません!このお嬢さんが何をしたのか知りませんが、許して下さい。」
部屋の真ん中で床に両手をついて渾身の土下座をする。
え、情けない?昔から謝るのは慣れてるし、謝ってすむのなら幾らでも謝るさ。
蛮勇を振るって二人とも死ぬなんて、そんなくだらないプライドはゴミ箱に捨てた方が良い。
「いちびってんのかーー!!」
アニキ分が、がなり立てて今にも飛びかからんばかりのチンピラを“まあ、待て”とばかりに制して僕の目の前に立つ。
男はその場にしゃがみ込むと、僕の髪の毛を無造作に掴む。そして荒々しく強引に顔上げさせられると僕は一瞬殴られる事を覚悟した。
しかし顔はその行動と不気味なほど対照的に、穏やかな柔らかい表情で僕に言葉をかける。
「坊やは・・このお嬢さんの何なんだい」
「家族です。いや、別に血縁関係は無いですけど・・
彼女は僕の家にホームステイをしてますし、一緒にすんでる以上家族なんです!!」
アニキ分は僕の言葉に冷酷な笑みを浮かべる。
「そうかい、普通なら身内の為に身体を張るなんて、男の中の男と誉めてやりたい所だが・・・
現場を見られた以上お嬢さんと二人このまま帰すわけにはいかないなぁ」
「ねぇ・・こいつの親父、外務省の役人だよ。」
黒河が不安そうな表情でアニキ分の方に顔を向ける。
「なぁに・・今日日の(キョウビ)高校生が突然の家出・・・良くある事だ。
所で彩、同級生が死ぬのは流石に見たくは無いだろう。
お前等は帰った方が良い・・・」
黒河達はその冷酷な呟きに驚いて言葉を失ったようだが、チンピラ達に追い出されるようにその場を後にした。
366 :トライアングル☆ツンデレ ◆WXGiSVZK0w :2010/12/26(日) 00:53:58 ID:pYsXp8mo
黒河達はその冷酷な呟きに驚いて言葉を失ったようだが、チンピラ達に追い出されるようにその場を後にした。
それで良い・・僕だって同級生に死体を見られるのはごめんだ。まあ、実際死んだ経験は無いが、死んだらタダの肉の塊か・・・
僕は髪の毛を引っ張られ、そのままソファーの角に頭を叩きつけられる。
変な話だがその時僕は恐怖や痛みより、髪の毛が抜けたらどうするんだ!と可笑しな心配をしていた。
ふと横を見ると、ソファーで拘束されているお嬢様と視線が合う。彼女は悲しそうな顔で僕を見詰めて必死に首を横に振る。
・・・いいんだよ別に・・君が悪い訳じゃないさ・・そして君の為に死ぬ訳でもない・・僕はそんなに偉い人間じゃ無いんだ。
ただ、やるべき事は後一つ・・・
「さて、勇気ある坊やは別の場所で始末してあげよう。
心配しなくてもお嬢ちゃんは今直ぐ死ぬわけではないよ。
只、薬漬けにされて遠い国で暫く生きる屍に成っているだけさ・・アハハハハハ」
アニキ分は愉快そうに笑う。
完全に勝ち誇って油断しているようだ。 僕は男の背広の胸ポケットから出ている注射器を素早く抜き取ると地面に叩きつけた。
パリーン!!ガラス製の注射器は液体を撒き散らして、あっとゆうまに破片になって四散した。
「こ、このがきゃあぁぁー!!ヘロインはグラム八万だぞ!」
今まで一貫して余裕の有ったアニキ分は、最初呆気にとられたような顔をしていたが、みるみるうちに逆上した。そして背広の内ポケットから黒い塊を取り出す。
け、拳銃・・!?
そして銃口を僕の顔に近づけると、なんとーーそのまま僕の口に先端を突っ込む。
口いっぱいに鉄の味が広がる。チンピラ達もアニキ分のキレっぷりに驚いてるようだ。
「アニキ、ここで殺るのは不味いって!」
「アニキを止めろ!」
「うるせえーー!!てめぇら、人を殺すってことが、どうゆう事かよく見ておけよ・・・」
チンピラ達は顔色を変え慌てて止めようとするが、逆上したアニキ分はどうやら止められないようだ。
え!どうして注射器を壊したかって? 簡単な事さ・・ヤクザの事務所に入った時点で第一の目的は先ずお嬢様を救出すること。
その為にお嬢様に危険が及ぶヘロインを破棄する。
367 :トライアングル☆ツンデレ ◆WXGiSVZK0w :2010/12/26(日) 00:56:40 ID:pYsXp8mo
僕が死ねば死体の処理をしないといけないし、再度ヘロインを打つにしても時間が掛かるだろう。早めに通報出来れば彼女が助かる確率も上がるってもんだ。
自分自身のことは優先順位的に先送りに成っただけさ。何故冷静かって?・・色々経験したからさ・・そう色々。
まあ、君達があの世に来たら話す機会もあるだろう。
親父・・先に逝く。姉さん・・もう練習は一緒に出来ないね。ジェイク・・あんた良い男だったよ。川上・・別に言う事は無いな。舞・・仲直りしたかったよ。
母さん・・向こうでまた会おう。
そしてお嬢様・・線香位は頼むよ。
トライアングル☆ツンデレ・お嬢様よ何処へ行く③終了
最終更新:2011年01月04日 18:42