暗闇の中で

  • 作者 604氏

「あれ?」
 ナノが声をあげる。
 その視線の先には長岡か。一緒に居る女性は誰だろう。
 向こうもこちらに気づいたようだ。俺たちがその場に止まっていると近づいてくる。
「たしかハロのクラスの伊水士と、えっとえっと」
「副主だ。長岡だよな」
「そ。んで、こっちが姉の」
「雪花です。よろしく。副主くん。伊水士さん」
 ふぅん。長岡の姉か。姉?あれ。
 俺はとっさにナノを背中に隠す。
「な。なに?」
「いや。えっと。とりあえず、そこに居てくれ」
 あんまりナノに近づいて欲しくは無い。
 アレが正しければ長岡の姉は危険だ。
「あら。嫌われちゃったかしら」
 雪花さんは頬に指をあてて首をかしげる。
「二人になんかしたんじゃないの?」
 長岡が雪花さんを睨む。
「何にもしてないわよ。初対面だもん」
「そっか。なら、なんでだ?」
 ひょっとして、雪花さんって悪い人ではない?
 やっぱりアレはフィクションなんだろうか。
「あ。江口だ!」
「どこだ、おい、どこにいる」
 俺の声に反応したのは長岡だけ。雪花さんはそんな長岡をほほえましい目で見てる。
 む。江口の名前に反応しないってことは、本当の雪花さんは無害っぽいな。
「おい。どこだよ」
「悪い見間違えた」
 長岡は舌打ちして俺を見る。
 悪かったな騙して。
「ねぇ。副主くんたちはどこへ行くの?」
「俺たちは映画です」
「へぇ。デート?」
 雪花さんが目を細めて俺たちに聞く。
「デートなのか?」
「今までも二人で映画なんて何度も来てるし。違うんじゃない?」
「だよな」
 恋人同士になったとはいえ、俺とナノの行動は今までとほとんど変わらない。
 デートと言われても、遊園地も動物園も水族館も、二人で行ったことがあるからあまり実感がわかない。
「じゃあ、私たちもご一緒していい?」
「へ?」
 雪花さんの言葉に一番驚いたのは長岡だった。
「ちょ、それはさすがにまずいだろ」
「俺はいいよ。なぁ、ナノ」
「うん」
「じゃあ、決まり。さ、行きましょう」
 雪花さんが先頭を切って歩く。
「悪いな」
「いいよ。長岡たちこそ用事あったんじゃないのか?」
「私たちはただの散歩。あと、私のことはチトでいい。伊水士もそう呼んでくれ」
「じゃあ、私のこともナノって呼んでね」
「ほら。早く早く。映画、始まっちゃうよ」
 雪花さんが俺たちを呼ぶ。
 けど、雪花さんは俺たちが何を見に来たか知ってるのか?

 映画が始まる。
 俺たちが見に来たのは、最近話題の海猿。
 公開から時間がたっていたが、人の入りがすごかった。
 4人並んで座れなかったため、俺は3人の後ろの列に座った。
 俺の前にチト。その右に雪花さん。さらに右にナノと言う風に座っている。
 開始10分。
 ん?ナノの様子がなんか。身をよじってるような?
 トイレでも我慢してるんだろうか。
 ま、アイツもガキじゃないし。俺は映画に集中するかな。
「雪花さん。そこ、違います」
 私の太ももを雪花さんがゆっくりとした感じで触っています。
 最初は肘掛に置いたコーラを探しているのかと思ったけど、どうも違うみたい。
「声出すと、周りに迷惑かかるわよ」
 雪花さんが私に耳打ちを。
 絶対にわざとだ。
「やめてください。チノだって隣りにいるのに」
「この子は映画とか入り込むと最後まで帰ってこないから平気。ふふ。綺麗な肌」
 その手がスカートの中へ。
「ダメ。そこ・・・あ」
 私は両手で押さえているのに、片手で簡単にスカートを上げられて。
 え?あ、嘘。えぇぇ。
「可愛いわ」
 口を手で押さえて、声が出そうなのを我慢。
 雪花さんの手が下着越しに私の大事なところを。
「も、もうやめてくだ。ぁっ」
 手が離れたかと思うと今度は胸に。
「止めて欲しい?」
 私が何度もうなずく。
「じゃあ、副主くん。食べちゃっていいかしら?」
「え?」
「彼、まだ女を知らなさそうだし。美味しそうなのよね」
「・・・ダメ。公人に手を出さないで」
 雪花さんがこちらを見てニンマリと笑みを浮かべる。
 彼女が何を言いたいのかわかるけど、でも、それもダメ。
「じゃあ、続きしましょう」
「んっ。ぁっ」
 雪花さんの手が下着の中へと。
 まだ、公人にも触ってもらってないのに。
 あ、あ。ダメ。そこ。んっっっ。
「クリトリス。大きくなってきたわね」
「ゃぁ」
 なんで。嫌なのに、嫌なのに、気持ちがいいなんて。
 これ以上されたら。
「一人でするよりいいでしょ?」
「・・・よくない」
 とは言ってみたものの、もう、だめ・・・
 あ。え?
 雪花さんの手が止まった。
「どうしたの?私の顔なんて見て」
「な、なんでもありません」
「最後までしてほしい?」
「・・・欲しくない」
「そ。じゃあ、これでおしまい」
 うぅ。なんで、なんでこんなに切ないの。
 でも、雪花さんにいかされるくらいなら。
 私は回りに迷惑をかけていると気づきながらも席を立つ。
 そして、早足でトイレへと駆け込む。
「あ・・・こんなに」
 下着を下ろすと、白い布に大きな染みが出来ていた。
 初めて会った人でこんなになるなんて。
「ナノちゃん。大丈夫?」
 個室の外から、この声は。
「雪花さん?」
「あたり~。ひょっとしてもうオナニー始めてた?」
「し、してません。そんなこと!」
「お姉さんが続き、してあげようか?」
「いりません!」
「彼には言わないでおいてあげるから・・・ね」
 こんなことしておいて。何を今更。
 あ。真後ろじゃないけど、後ろに公人いたんだった。気づかれてないよね?
「結構です」
 私は気持ちがわるいけど、濡れた下着を上げる。
 スカートをととのえ個室から出た。
「あら?」
 体のうずきは収まった。
 こんな人にいかされてたまるもんですか。
「ん~。残念」
「雪花さん。貴女には絶対に私も公人もあげませんから!」
 トイレを出た。
 ・・・公人が悪いんだ。私を・・・欲求不満にさせておくから。
「ん~。面白かった」
「うぅ。ひっくひっく」
 チトが俺の前の席で泣いている。
 けど、言うと誰かんみたく殴られたりしそうだからやめておこう。
「さって。っととと、ナノ?」
 通路に出た俺の腕をひっぱるナノ。
「どした?」
「早く出よ」
 俺の意思は無視して外へと向かう。
 あ、チトと雪花さんに挨拶してないや。
「どうした?途中で席をたってたみたいだけど、体調悪いのか?」
「全然。健康体そのものよ」
「ん?」
「だから・・・だからあれだって・・・私の意志じゃなくて・・・」
 ???
 ナノが顔を真っ赤にして俺を睨む。
「あの人より下手だったら、絶対に許さないんだからね!!」
「は?はぁ?おい、ナノ。なんのことだよ」
「知らない!」
 おいおい。一体何があったんだよ。

「ねぇ、チト」
「ん?」
 私は確認したいことがあって、休み時間にチトをたずねた。
「昨日の・・・お姉さんってあれが地?」
「へ?あぁ、昨日はちょっと賭けやっててさ。一日おしとやかにするって。負けたなぁ」
 じゃあ、アレが地なんだ。
「なんで?」
「なんでもない。あ、昨日先に帰ってゴメンね」
「いいけど」
「じゃあね」
 絶対に雪花さんの毒牙から公人を守るぞ!!

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最終更新:2007年08月03日 20:50