Le souhait 智途編8
…朝か。
また朝か。また来たのか。懲りないやつだな。
何度も言うように、わしゃこの土地は売らんと言っておるだろうが。
おぬしら若いもんにはわからんだろうがな、この土地は先祖代々続く・・・ん?なんじゃその電卓は。
どうか大切に使ってやって下さい。おながいします。
まあ、そんなもんだよな。
眠気に朦朧とする意識の中に、現代社会の歪みを映し出していると。
漂う香り。
何だろう、嗅いだ事のある、いや、もっと身近な香り。
まさか、白梅香?いやその香りに所縁は無い。
目を開ける。
雪「おはよ、ハロ君」
ハロ「・・・あ、おはよございます」
なんだ、雪花さんか。
ハロ「って何で俺の隣に寝てるんですか!?」
道理で淫靡な香りが漂ったわけだ。
雪「何で、って・・・覚えてないの?」
そう言われて、しばし考える。
ここは智途の家。
そしてここは智途の部屋で、俺はたぶん智途と寝た。
でも俺は文化祭の準備で疲れ果てていたため、すぐに眠ってしまった。
そのせいで、寂しい思いをする智途。
酷い。私は眠れないのに、呑気に眠ってしまうなんて。
その手は自然に自らの股間へと伸び
雪「ハロ君さあ、私が孕まないからって何回も中に出して・・・流石の私も疲れちゃった」
あれ?そうだったっけ?何か違う気がする。
ハロ「昨日は誰にも出してなかった気がしますが」
雪「昨日『は』って・・・充実してるのね」
放っておいてくれたまえ。
雪「で、どうするの?」
ハロ「はい?」
雪「抜いてく?」
ハロ「ああ、じゃあ」
チト「コラ!!」
バァン、とドアを開けて智途が現れた。
雪「ドアが壊れちゃうじゃない」
チト「起きてこないと思ったら、何やってるんだ姉さん!」
雪「ちょっと誘惑してたんだけど・・・」
悪気しか無い雪花さん。
チト「人の彼氏を簡単に誘惑するな。ハロも誘惑されるな」
ハロ「すんまそん」
智途はため息をついた。
チト「・・・朝食の用意ができた」
ハロ「作ってくれたのか。じゃあ行こうかな」
雪「ところでハロ君」
ハロ「はい?」
雪「その前に抜いてく?」
ハロ「ああ、じゃあ」
チト「コラ!!」
今日は文化祭。
テーマは例年のごとくスターズライトブリリアンティ。略してSLB。潜水艦発射弾道ミサイルのような略称だ。
星たち鮮やかに輝かん。
星とはつまり俺たち熾惺の生徒の事。しのたからそう教えてもらった。
『何でボクより長くこの学院にいるのに知らないんですか』って、知らないものは仕方なかろう。
俺たちはいつもの通学路を、いつもの時間に歩いている。
チト「な、なあハロ」
ハロ「ん?」
チト「今日、楽しみにしてるからな」
やや照れくさそうに俯いて言う智途。
ハロ「朝っぱらから旺盛なやつだな」
チト「何と勘違いしてるんだ」
と思えば今度は睨まれた。
ハロ「ああ、ライブの事か」
チト「わざと間違えただろう」
ハロ「そんな事無い」
チト「さっきもそうだ。姉さんとグルになって私をからかった」
と、何やらスネ始めた。
ハロ「本当に起きた直後だったし、寝惚けてたから乗せられただけだよ」
チト「本当か?」
ハロ「ああ」
チト「じゃあ私の目を見てみろ」
足を止め、言われるとおり智途の目を見る。
やはりスネたような顔をしている。なんだか智途にしては子供らしい感じだ。
見つめ合う二人。
そして俺はおもむろにその唇を
チト「ば、バカ!///誰もキスしろとは言ってないぞ!」
どん、と突き放された。
ハロ「いや妙に子供っぽくて可愛いから」
それと、そのツリ目具合が俺の何かを激しくそそる。
チト「ふん!///もういい!行くぞ!」
智途は早足で歩き出した。
ハロ「待ってくれよぅ」
学校に着く。
俺は教室の自分の席に鞄を置き、そしてまた教室を出ようとする。
が、その時背後に殺意のようなものを感じた。
振り返ると、ツンと蕪雲がこちらを睨んでいた。毒男は机に頬杖ついて見てるだけだが。
ハロ「や、やあ。今日は早いね三人とも」
こんな朝早くだから、教室には俺を含めて四人しか居ない。
ハロ「で、何か用かな?」
恐る恐る聞く。
ツン「別に」
蕪「氏ねお」
感じ悪。
言うまでも無いが、智途は俺と違うクラスに居るため、まずはここを出ないと会いに行けない。
向こうから来てくれることもあるが、こんな状況でここで談笑するなんて俺にはとてもできない。
『智途様が幸せなら何でもいいお』とか聖人みたいな事言ってたくせにそれは無いだろ蕪雲。
ここにも居られないし向こうにも行けないし、いや。
戦わなきゃ現実と。
ハロ「じゃあこれにて」
毒「・・・練習しよか」
声に振り向く。
ハロ「は?」
蕪「よーし文化祭前の最後の仕上げだお!行くお!」
立ち上がる蕪雲。
ツン「応援するわ」
茶化すツン。
毒「まさか、三人中二人が練習するって言うのにひとりだけ抜けるなんて」
お前らグルじゃないか。
ツン「まさか、言わないわよね?私、ハロのライブ楽しみにしてるのよね」
ツンはそんな素直な事言いません。
蕪「さ、行くお」
確かにバンドにはチームワークが重要だ。
皮肉な事に、同じ部活である蕪雲と俺よりも、蕪雲と毒男のほうがチームワークが出来上がっている。
ここは友情を取るべきなのだろうか。
もうあるかどうかも疑わしいそれに賭けるか?
せめて、智途に練習の風景を見せてあげたいと言う気持ちもあるんだが。
ハロ「じゃあちょっと待っててくれ」
ツン「なんで?」
誰よりも早く、ツンが反応した。
ハロ「トイレに行って来る。ずっと我慢してて」
ツン「ふん。さっさとなさい」
今、絶対『ふん』って言ったよな。何この嫌悪。
俺はツンの許しを得、教室を出た。
あまり遅くなると『トイレにしては長かった』とか言われそうだから、用は手短に済ませることにしよう。
ハロ「あまりおしゃべりしている時間は無い」
チト「・・・?ああ、そうか。何か準備があるんだな」
ハロ「そんなところだ。じゃあな」
人間関係がギクシャクしてるからとは言えないな。
教室に戻る廊下を歩いていて思った。
ツンも蕪雲も、あれはただのやきもちなんだろう。
しかし、今俺たちに課せられている運命を知れば、少なからず協力的になってくれるだろう。
だが本当のことを話すわけにはいかない。
雪花さんに厳しく口止めされているし、話すことでみんな巻き込んでしまうからだ。
今は俺も智途も監視されているとかそういったことは無いのだが、いずれ。
でも雪花さんは一番巻き込みたくなかった俺たちにその事を話した。
何でも、俺が事態打開の鍵になるとかわけのわからないことも話してくれたことがある。
俺に何ができると言うのか。
今の人間関係にさえびくびくしてるのに。
ハロ「はあ・・・」
ま、今は文化祭。
その事だけ考えよう。
第三音楽室に向かう四人。
さっきとはうって変わってご機嫌なツンと蕪雲だが、俺は少し複雑である。
毒「さ、行くか。ヘブンへ」
ハロ「死ぬ気か」
ハロ「はぁ、はぁ、・・・朝からStarsLightBrillianty-C-はキツすぎたか・・・」
説明しよう。
StarsLightBrillianty-C-とはTHEサンクチュアリ(ryが編曲した今年の文化祭のテーマソングである。
ちなみに百式だから『C』なのである。
ツン「そろそろ切り上げたほうがいいんじゃない?」
そういわれて時計を見ると、HR開始五分前になっていた。
ハロ「やばい急いで片付けるぞ!」
ツン「じゃあ私は先に」
まさに外道。
蕪「で、智途様は呼ばなかったのかお?」
ドラムスの手入れをしながら蕪雲が言う。
ハロ「ああ、呼んでない」
蕪「どうしてだお?」
ハロ「そりゃお前――・・・。お前の前でいちゃつくのは気が引けるだろ。ツンも居たし」
毒「・・・」
黙々と片付ける。
蕪「わかったお。じゃあそろそろ教室戻るお」
毒「だな」
ハロ「ああ」
俺には、蕪雲が何を思っていたのかわからなかった。
文化祭の開会式は、空中庭園で行われた。
ハロ「はあ・・・長かった。何か凄まじく長かった」
チト「何がだ?」
ハロ「ほら、準備とか色々あって」
チト「そうか。ご、ご苦労だったな」
ふと思った。
ハロ「智途は文化祭で何をやるんだ?」
庭園のベンチに座って言う。
チト「劇だ」
智途もさりげなく隣に座る。
ハロ「そうか」
…。
ハロ「げ、げげげげげげ劇!!?!?!1?」
チト「『げ』が多い」
ハロ「なんで今まで言わなかったんだよそれを俺に!?」
そういえばあまり見に来なかったもんな、俺の練習。
チト「大抜擢だったからな。始めのうちは見せられるものではなかったからだな」
ハロ「わかった、じゃあその完成した姿を見せてもらおうじゃないか」
チト「随分偉そうだな」
ハロ「で、何の役なんだ?」
チト「魔王にさらわれたお姫様を助け出す武士の役だ」
…。
ハロ「なんで普通だと思いきや独特なんだよ?」
チト「知るか。しのたに聞いてくれ」
ハロ「しのた?」
チト「脚本を書いたのはしのたなんだ」
ハロ「道理でお前が主人公なわけだ」
チト「む。まるでそうでないと抜擢され得ないみたいな言い方だな」
ハロ「いやいや、若く美人で聡明でナイススタイルな智途からすれば自然な事だよ」
チト「ふん・・・」
とか言いつつ顔が赤くなってるな。
ハロ「ところで、武士ってことは男装なのか?」
チト「いや」
ハロ「さらし巻くのか?」
チト「いや」
ハロ「じゃあそのおっぱいどうすんだよ!」
チト「袴だ、袴!大きな声で言うなバカ!///」
くすくすと笑い声が聞こえる。
チト「ほら、笑われたじゃないか・・・///」
ハロ「半分はお前のせいだろ」
チト「全部ハロのせいだ」
一歩も譲らないな。
ハロ「劇は午前のうちにやってしまうのか」
開会式の途中、しのたに渡されたプログラムを見る。
ハロ「じゃあ、始まるまで他のところでも見て回るか?」
チト「あ、ぁあ」
何で変な声出てるんだ?
チト「な、なあ」
ハロ「ん?」
チト「て、手を」
ハロ「手を?」
といいながら、既に智途の手をギュッと握る。
やっぱり女の子の手だから柔らかいなと思うのでした。
チト「繋いで歩いたら恥ずかしいよな?///」
ハロ「やってみればわかるんじゃないか?」
俺は智途の手を引いて立った。
チト「なっ!こ、こら!///」
はっはっは。よいではないかよいではないか。
散々智途を連れ回していて、時間が相応になってきたらしい。
チト「あ、そろそろ集まらなくては」
繋いでいる俺の手を引く。
ハロ「こらこら俺まで劇に出す気か?」
チト「舞台まで送るくらいはしてくれてもいいだろう」
ハロ「うん、まあ」
チト「じゃあ急ぐぞ!」
再び、俺の手を引いて歩き出す。
急いでて回りが見えなくなってるのはいいが、さっきの恥じらいはどこに行ったんだ。
し「わざわざ舞台裏にまで来させてあげたんですから、感謝して下さいよ?」
しのたが腕を組んで言う。
ハロ「正確には俺が引っ張られて已む無く来ただけなんだが」
し「全く、智途先輩の頼みじゃなかったら、こんなところに来れないんですからね」
S席のほうがよく見えると思うぞ。
ハロ「ところで、雪花さんが来てるかどうかわかるか?」
し「確か真っ先にS席のチケットを予約されたそうですけど。来てるんじゃないですか?」
雪花さんも知ってたのか。何か今日は置いてけぼりだな。
し「あ、そろそろ始まりますよ」
兵「たいへんだ!姫リリーが魔王ルドルフにさらわれてしまったぞ!」
ちゃんと別の名前考えておけよしのた。貸してもらった台本を読みながら思う。
兵「このままではこのブリリアントの国も・・・ウボァー!」
カッ!ゴロゴロゴロ(SE:雷)
いきなり死ぬのか。
兵2「ウボァー!」兵3「ウボァー!」兵4「ウボァー!」兵5「ウボァー!」兵6「ウボァー!」兵7「モルスァ!」
死にすぎじゃないか?
ルド「ハァーッハッハッハ!これでついに十の国を滅ぼした事になる!私に逆らえるものなど居ないのだ!」
大臣「あわわわ・・・こいつはまずい!こんなときに智途様はどこへ行かれたのだ!」
そうだ。智途を出せ。
場面変わって・・・他の城か。
チト「つきましては、今k(キャーーーーーーーーーーーー!!)
歓声うるさいぞ!全く聞こえん!しかも蕪雲の声がよく聞こえたぞ今。
殿「魔王ルドルフに対抗するには今しかない。この正宗・・・を以てやつを倒すのだ」
チト「これは?」
殿「昔使っていたものだ。今となっては使いこなせはしないが」
チト「ありがとうございます、(おおーーーーぉぉお)
うむ。でも刀を持った智途も凛々しいな。よく似合う。なんとも言えぬ威圧感はあるが。
やっぱ黒髪ロングですよ。
殿「だが、それは元の正宗の片割れ。もう一つの正宗は他の領地の殿が持っていると聞く」
兵343「た、大変です智途様!魔王が我が」
臣下「無礼者!!」
兵343「ウボァー!」
いきなり死んだぞ。
兵406「僭越ながら申し上げます!智途様!至急ブリリアントに帰還されたし!我が姫が魔王に・・・!」
チト「なんだと!だが、もう片方の正宗を探さなければ魔王は倒せないと言われている・・・」
?「お任せを!」
ボン!(SE:煙玉)
?「片割れの正宗の事は、この影にまかせるでござる!にんにん!(おおーーーーぉぉお)
ハロ「あれ誰だ?マヨか?」
し「あれは東雲先生ですよ」
ハロ「へ、へー・・・確かに小さいな」
殿「うむ、では行くがよい!勇気あるものたちよ!」
遅い来る謎の忍者たちを総べて体術で叩きのめし、ついに片割れを得たてんてー、いや、影。
影「全然大した事無いでござるな!これで智途殿に正宗を届けられるでござる!にんにん!」
ルド「甘いわ!」
影「何!?お主は・・・!」
チト「なるほど。正宗でなくては貴様を傷つけられない理由、それは正宗がお前の分身だからだったんだな!」
刀を向けて言い放つ智途。
ルド「You're right!なかなか利口。流石は勇者」
チト「だが今はお前も片割れ。なら、ば――」
智途の体がふらつく。
し「あ、あれ?おかしいですね。台本にあんなのは・・・」
ハロ「バカ!見てわからないか!」
俺は舞台の袖から駆け出し、倒れ込む智途の体を支えた。
智途は汗びっしょりになっていた。模擬刀が智途の手から離れ落ち、カランと舞台の床で音を立てた。
チト「ハ・・・ロ・・・?」
ハロ「・・・大丈夫だ」
辺りは耳を劈くほどの静寂に包まれた。
劇は終盤。台本の内容は大体覚えている。
俺は智途を静かに仰向けに寝かせた。
ハロ「私はブリリアントの王子、レオンハルト!勇者が危機に瀕していると聞き、急ぎ参った!」
ルド「・・・王子は俺が殺したはずだが」
ハロ「私が身代わりを立て、隠れていたのだ!父上がそうしろと、だが、そうも言ってられない」
俺は智途が落とした模擬刀を手にした。
ハロ「勇者の遺志は私が継ぐ!」
ルド「おもしろい!」
これで、台本は戻ったはずだ。ありがとうルドルフ。あとで何かいいものを送っときます。
影「レオン殿、これを!」
俺はてんてーから模擬刀を投げ渡された。ひそかに『にんにん』と小声で付け足していたのが聞こえた。
ルド「何!?貴様は我が分身が殺したはず!」
影「拙者は影。正宗の影に隠れていたでござるよ。にんにん」
ルド「何と非科学的な!まあよい。我が分身も融合した!これで勝負だ!行くぞレオンハルト!」
チト「ん・・・」
ハロ「智途!」
チト「ハロ・・・?」
俺は安堵のため息をついた。
智途は、俺、保健室の天井、窓、と視線を巡らしている。
チト「!劇は!?」
ハロ「劇?」
チト「そうだ、劇!私は確か劇の途中で倒れて、それで――!そ、それにお前ライブの時間!」
ハロ「そう騒ぐな」
雪「そうよ。病人は安静にしてなさい」
雪花さんが入ってきた。
チト「でも、姉さん」
雪「やっほ、智途。私のこと見つけた?最前列の砂被りの席に居たんだけど」
チト「砂など出ない!ハロ、今ならまだ間に合う!ライブに行って来るんだ!」
ハロ「・・・」
雪「言って来たら?智途のことは、私が看てるから」
この機を逃すほかなかった。
おそらくツンも蕪雲も毒男も、俺が保健室に居て、ここで智途の看病をしているのがわかっているだろう。
ハロ「よろしくお願いします」
雪「ん、行っといで」
だが、俺はライブに向かう事にした。
チト「が、がんばれ!」
フ、と微笑んで返した。
何を頑張るんだよ。
頭に染み付いて離れない不安を打ち払うように、俺は全力でライブに臨んだ。
歌が悲痛の叫びにならないよう、弱弱しいものにならないよう。
StarsLightBrillianty-C-。皆でアレンジし、練習した曲。毒男のオリジナル曲、電波ソング一般アレンジ曲。
ライブ本番。
それこそ智途はこの場に居ないけれども、きっとこの場に居るよりも遠いところに智途は居るから、
より遠くまで聞こえるよう、俺は頑張ると思うんだ。
やっぱり、頑張るんだな。
歓声。歓声。歓声。嬉しいじゃないか。みんな俺たちを見ていてくれてるじゃないか。
俺は泣いてない。誰にも不安は共有させない。
お前は舞台で倒れてしまったけれども、お前だってつらいの隠してたんだろ?
舞台が終わるまで必死に輝こうとしていたんだろう。
な、-Chito-
智途は文化祭が終わる頃には回復した。
ハロ「大丈夫か?」
チト「大丈夫だ。もう、何回聞くつもりだ」
とはいえ、俺と智途は文化祭が終わる頃に早退してきてしまったわけで、俺たちは智途の家に居る。
俺は智途のベッドに座らせてもらっている。
雪「あ、ちょっと用事できた」
雪花さんが携帯電話を見て言う。
チト「・・・」
雪「そんな心配そうな顔しないでよ。いままでだって、ちゃんと帰ってきたでしょ?」
雪花さんはすたすたと部屋を出て行った。
――雪花さんは智途に、今回倒れたのは疲労が原因だと言った。
しかし俺には、疲労だけでなく精神的にショックがあったからだと説明した。
精神的ショック。それが何を指すのかは大体わかった。おそらくは雪花さんの・・・あの運命。
ハロ「ごめん、気付かなくて」
チト「何がだ?」
ハロ「まさか、智途がこんなに・・・具合が悪かったなんてわからなかった」
チト「そんなの済んだ事だ。医者じゃないんだから、わからないのは仕方ない」
ハロ「・・・」
チト「ところで、ライブどうだった?頑張れたか?」
ハロ「ああ。見せてやれなかったのは残念だがな」
チト「そうやってすぐへこむな」
智途はぽんぽんと俺の頭を叩く。
チト「きっと誰かが録画しておいてくれてるさ」
ハロ「初心者が撮ったんだろ。どうせ海賊版みたいな出来だよ」
お前何撮ってるんだ、とか入ってるやつ。
チト「・・・」
智途は俺の右手を持って、その左胸を触らせた。
ハロ「?なんで着けてないんだ?」
チト「さっき外したんだ。こうすれば少しは元気になるだろう?」
ハロ「いけないところがな」
智途は手を離した。
チト「な?お前は手を離さない」
ハロ「離すと元気なくなるからな。ちょっと慰めあうか?」
チト「直接的に言うな///」
ハロ「あ、智途ドキドキしてきた」
チト「うるさい!やっぱ離せ!///」
今度は手を引き剥がそうとする智途。
俺は自ら手を引いて智途の体を引き寄せ、正面から抱きしめた。柔らかな感触が俺の胸板を覆う。
そのまま、勢いでなぜか俺が倒されてしまう。襲う筈が作戦ミスだ。
チト「ふん、お前だってドキドキしてるじゃないか。何か硬いのも当たってくるしな」
ハロ「だって胸が当たって・・・」
チト「ほら、どうしてほしい?やっぱり足か?」
ハロ「い、挿れたいんですけど本番は無しなんですか?」
何故敬語。
チト「仕方ないな。今日は助けてもらったから特別だぞ」
俺たちは服を脱ぎ始めた。
チト「んっ・・・く!///」
ハロ「くぁ・・・!ちょ、締めすぎ・・・」
チト「気付いてるか?お前は挿れるたびに早くなってるんだぞ」
ハロ「んなバカな・・・」
智途はそのまま俺に倒れ掛かってきた。
更に腕を回して抱きしめるように俺の両手を手首でクロスさせたまま固定した。
チト「さて、どうだ。押さえつけられたほうが興奮するんだろ?」
ハロ「あ、うん・・・ええ、ああ」
眼前に豊満な胸を突きつけられ、目を見て話すこともできない。
チト「そうか。お前はそれも好きなんだな」
ハロ「!?」
智途は更に体を倒し、顔面を胸で覆った。そしてそのまま腰を動かした!
チト「ん、あ・・・!///あまりもがくな!く、大人しく・・・///」
腰を動かされ、ペニスがぬめったい襞でこすられて力が出ない。
更に手首は固定され、上に乗られ、全く抵抗できない。
ハロ「ぷはっ!はーっ、はー・・・」
腰の動きは止まらないが、顔が胸から開放された。
しかし智途の強烈な責めに、俺は本当に早漏になりつつあった・・・のかもしれない。
チト「んっ・・・あっ、はあっ、どうした?ふふ・・・///」
智途は、恍惚とした表情で揺れる胸を見つめている俺に気付くとまたその体を近づけてきた。
チト「次でイくな?」
ハロ「あ・・・はい」
何故敬語。
ハロ「――!!」
再び柔らかい感触に顔が覆われる。
体が揺れ動くたびに、俺の顔にその感触が擦り付けられる。
ハロ「(もう、限界・・・!)」
チト「・・・あ」
俺は胸に顔を埋めたまま射精してしまった。
チト「ほ、本当に早・・・だ、出しすぎだ、止め、ろ・・・///」
ハロ「ぷはっ!はあっ、は・・・」
智途が竿を引き抜くと、精液はどろりと膣からこぼれ出た。
チト「バカか!止めろって言ったら止めろ!」
ぺしっ、と跨られたまま叩かれる。
ハロ「いてっ!そりゃ無理なんだって!もう十分慰められたよ本当」
チト「まったく・・・」
翌日。
朝、教室に来るとそこにはツンしか居なかった。
俺は机に鞄を置いた。
ツン「はい、これ」
ツンがDVD-Rを差し出した。
ハロ「何これ?」
ツン「昨日のライブ。理緒んとこの人が撮って焼いてくれたの」
ハロ「おお、ありがとう恩に着る!」
ツン「早く持って行ってあげたら?」
手をひらひらさせてみせるツン。
ハロ「・・・あ、ああ」
ツン「何、別に気にしなくていいわよ?別にあんたの事好きじゃないし」
ハロ「フ、ありがとう」
ツン「何よ今の『フ』ってのは!?さっさと渡して来なさいよバカ!」
ハロ「いたい いたい!」
ハロ「と、いうわけなんだ。はい、これ」
チト「・・・さっき蕪雲に同じものをもらったぞ」
ハロ「ぇ」
最終更新:2007年08月04日 09:08