Le souhait 由梨編5
――妹だから。
義理とはいえ、『妹だから』という理由で何度由梨を拒んだことか。
拒んだということに否定はできない。
だが、拒む事もまた否定できない。
だから俺はそのせいでいつも悩んで、表面上は由梨に好意を持って接しているんだけれども、
それでも心の奥で由梨を受け入れる事がどうしてもできず、結局は中途半端になって、
そして同じ朝を迎える。
…俺は、いつも先のことを見ていた。周りを見ていた。それは当然の事だ。
由梨が俺に好意を抱いている事はわかっている。
けれど、由梨は一日一日を生きていて、しばしば二人の世界を楽しむ事で、『幸せな日々』を送っている。
いつもの朝で迎えられる。
本当に恋愛対象として付き合うつもりなら、少しは将来の事を考えるべきだ、なんて真面目な事は言わない。
言えない。
恋愛対象だと認めるのが怖いと思っているのもある。
恋愛には終わりがある。
兄妹に終わりは無い。
いつもの朝が来るのが途絶えないのと同じに。
そう、思っていた。
ハロ「ふあ・・・」
ユリ「もう、おにいちゃんったらまたあくびしてる」
朝食で使った食器を洗いながら、由梨が言う。
ハロ「仕方ないだろ」
テーブルカウンターに頬杖をつく。
ハロ「睡眠欲ってのは人間の三大欲求の一つなんだから。途絶える事は無いんだ」
由梨はてきぱきと食器を洗っている。
ハロ「今朝食摂ったろ?食欲を満たしたことで三つのうち二つが満たされたわけだからもう寝るしかないんだ」
ユリ「寝るしかない、って・・・今日学校だよ」
キュ、と蛇口をひねる音がした。
ユリ「・・・あれ?なんで二つも満たされてる事になるの?」
ハロ「皆まで言わすな」
由梨は無言でエプロンをたたんだ。
ハロ「まあ伊達に集めてないですよ」
俺の背後にまわり、頭を手のひらで打った。
ハロ「痛い」
ユリ「イタイのはおにいちゃんのほうだよ」
ハロ「イタくねぇよ!」
すかさず反論する。
ユリ「じゃあ抱っこして」
ハロ「話が繋がってないじゃないか」
といいつつも、満面の笑みを浮かべて両手を広げる由梨の姿を目の当たりにすると顔がにやけてくる。
ので平静を装う。
俺は立ち上がって、静かに由梨を抱きしめた。
いつからか朝の習慣になってしまった『これ』。
『これ』に何の意味があるのかは言葉でうまく言い表す事はできない。
由梨は抱き枕が無いとなかなか寝付けない性分だし、それもちょっとあるのかなと思う。
だが体を離した後の由梨は本当に嬉しそうで、推移する事も馬鹿げたものに思えてくる。
いつもの道を行く。
俺たちの朝は早い。
由梨はいつもどおり俺にくっついて家を出てきたが、おそらくツンに会えば逃げて(?)しまうだろう。
ユリ「へへ・・・///」
ハロ「なんだよ、悪いものでも食べたか?」
ユリ「食べてるもの一緒でしょ?」
ハロ「じゃあ何だよその笑みは」
ユリ「別に。何でもいいじゃん」
そういえば、今日はツンの姿を見かけない。
まさか。
ハロ「ツンを買収したな?」
ユリ「え?」
ハロ「今日はツンが現れない。いつもはコート着てグラサン掛けてマスクして俺を待ってるのに」
ユリ「それ、たぶん秋奈先輩じゃないよ・・・っていうかそんなお金無いよ」
ハロ「まあいいか。おそらく風邪だろう」
ユリ「その片付け方も酷いね」
ハロ「いいんだよ。あの娘は(気の)強い娘だから大丈夫」
襟をめくってみるが、盗聴機は無い。
ユリ「おにいちゃん?」
ハロ「あ、いや、なんでもないんだ」
この前蕪雲に我が部活の技術の粋を結集して作った小型盗聴機を着けられていたからな。
ちなみに毒男やしのたも一枚絡んでいたらしい。
ま、まあ聞かれてもやましい事なんか無いんだけどな。
ハロ「はははははは!」
ユリ「はははははは!」
ハロ「何が可笑しい」
ユリ「え?だっておにいちゃんが笑ってるから」
ハロ「?」
ユリ「一緒に笑えば楽しいでしょ?」
天然過ぎる思考回路に悩まされる事もたびたび。
ハロ「まあ、そうだが。たぶん言葉の意味は違うぞ」
ユリ「ふうん?」
ハロ「ほら、一緒に楽しい事をして笑うとか、そういう事だろ?」
ユリ「でも、おにいちゃんが笑ってたら私も笑えるし」
ハロ「こんな朝から兄を口説くな」
ユリ「ごめんなさい」
しかも笑いの発端が唐突過ぎるだろうに。
ユリ「・・・」
ハロ「・・・」
しばらく沈黙が続く。
冷たく、澄んだ空気は秋の季節を感じさせる。
静かで、落ち葉を踏む音だけが響いている。
朝早く家を出るのは、単に学院で何かするためではない。この静けさが少し気に入ってるからだ。
ユリ「・・・ね」
ハロ「ん?」
由梨が口を開いた。
ユリ「おにいちゃんはさ、いつもこうやって秋奈先輩と学院に通ってたの?」
ハロ「うん、まあ」
ユリ「へえ・・・」
ハロ「何だよ?」
ユリ「ちょっと、うらやましいな」
由梨は照れくさそうに言う。
ハロ「・・・もっと早く、一緒に通う機会があっても良かったのにな」
と言うと、由梨はくすくす笑って言った。
ユリ「それだと秋奈先輩が邪魔者みたいだよ?」
ハロ「でも、お前もそう思うだろ?」
ユリ「え?えーっと・・・///」
由梨は俯いて考え始めた。
ユリ「んー、ちょっとは・・・///」
ハロ「それだとツンが邪魔者みたいだろ」
ユリ「おにいちゃんが言わせようとしたんだよね今!?」
俺はそっぽを向いた。
ユリ「もー、バカ、バカ、おにいちゃんのバカ!私だけ感じ悪いじゃんか!」
ぽかぽか叩かれても全く痛くない。
ハロ「これがツンに知れたら大変だな。恋敵だし」
ユリ「別に誰も聞いてないからいいもん」
由梨は少々いじけてしまったようだ。
ユリ「あ、告げ口はしないでよね?」
ハロ「そんな小さい人間じゃありません」
だんだんと学院が近付いてきた。
ユリ「もうすぐ着くね」
ハロ「何年も通ってるんだから何の感慨も沸きやせん」
特に苦労して来たわけでもなし。
ハロ「もう抱っこしないぞ」
ユリ「あ、さっき頼めばよかった」
ハロ「家を出た時点でしないけど」
ユリ「むう」
ハロ「お前は本当に抱っこ好きだな」
ユリ「なんだかんだ言っておにいちゃんも抱っこしてくれるじゃん」
ハロ「ま、まあな。断る理由も無いし」
ユリ「だから好きだよ」
…何が?
ハロ「好きだということに理由は無いから深くは聞かないけどな」
なでなでから抱っこに発展した過程からその先にあるものは何なんでしょうと言う話です。
ユリ「あ、じゃあね、おにいちゃん」
駄弁っているうちに学院に到着した。
ハロ「ああ」
由梨は校内へと駆けて行った。
朝から元気ですなあ。
…俺が笑ってると自分も笑える、か。
俺も由梨が笑ってくれるのなら・・・って少々危ないけれども、けれどもそうなんだよな。
それだけなんだ。他に何も要らないほど単純な事なんだ。
って、自分に言い聞かせているんだけれども。
教室に入る。
ハロ「え?」
そこにはいつもどおり、蕪雲と、毒男と、そしてツンが居た。
ちなみに俺はこの三人を『早朝三人衆』と呼んでいる。
俺を含めれば四人に、更に智途を含めれば五人にもなる。
ハロ「あ、おはようございます」
何故か敬語で挨拶する事を余儀無くされた。
ハロ「あ、そういえばツンはどうして今日あそこで待ってなかったんだ?」
机に鞄を置きながら言う。
毒「知れた事」
毒男が立ち上がった。
そして着席した。
ハロ「今なんで立っ」
ツン「私もそんなに鈍感じゃないって事」
ツンが口を開いた。
ツン「義妹なんでしょ?いいんじゃない?別に。私は邪魔者だから退散しただけ」
ま、まさか盗聴機が!?
袖口を確認するが、それらしきものは見つからない。
毒「ターゲットは盗聴機の有無を確認中と見える」
蕪「何か聞かれちゃまずい事でもあるのかお?あるのかお?」
二回も言うな。
ハロ「俺は潔白だ」
でも・・・。
でもツンに掛ける言葉が見つからない。
毒「いいんですよ別に白黒つけばいいんですよ。ただ!!」
ハロ「え?」
蕪「おまいが中途半端な態度をとってるって事はしのたから筒抜けだお」
しのため。メガネ取るぞ。
具体的にどの程度筒抜けなのか・・・由梨は聞かれたら答えそうな感じがして怖いな。
ツン「妹さんが好きならそういえばいいのに。何だかかわいそ」
可哀想、というのが少し癇に障った。
ハロ「そんな事無い。由梨はちゃんとわかってる」
俺が少々強い口調で返した事に、ツンはやや驚いたような表情を見せた。
ツン「そう?私はよくわからないからこれ以上何も言えないけど、もし本当に中途半端なら、って事」
蕪「なんかしのたの情報に食い違いが出たお」
毒「所詮メガネっ娘ですから」
全国のメガネっ娘ファンを敵に回したな。しかもメガネ関係無いし。
ツン「私があそこに居たら余計中途半端になるかなって思って、わざと空けておいたのよ」
ツンは伸びをしながら言った。
ハロ「・・・ありがとう、ツン」
ツン「い、いい?私は由梨ちゃんを困らせたくないからそうしたんであって、別にあんたのためにしたんじゃないんだから」
ハロ「ツンデレしながらでも嬉しいよ」
ツン「な、何よ!別にそんなの狙ってないんだから!あー、気なんか遣うんじゃなかった!」
蕪「恐るべき典型(;^ω^)」
毒「ある種の天然(;'A`)」
みんなが気付いていた事には少し驚いたけど、意外と協力的で安心した。
相手が義妹だという事、それ以前に相手が自分に好意を寄せている女性である事を察せと。
しかし『中途半端でなければそれでいい』と言う言葉が重くのしかかった。
弱いくせにクソ真面目な自分に嫌気がさした。
放課後。
俺は廊下を歩いていたしのたに何気なく話しかけた。
ハロ「しのた」
し「な、なんですか?」
しのたは一瞬ビクッとして応じた。
し「でも、今日も由梨ちゃんが幸せそうなので安心しました」
ハロ「『今日も幸せそう』って・・・お前は草花の観察でもしてるのか」
し「そういう意味じゃないですよ。・・・」
しのたは、哀しそうな顔をして少し俯いた。
ハロ「?どういう意味なんだ?」
し「あっ、いえ、なんでもないんです。じゃあボクはこれで」
ハロ「あ、おい!」
しのたは俺と擦れ違って駆けて行ってしまった。
ハロ「何なんだ?」
もしかして俺、凄い睨んでたのか?別に責める気は無かったんだが。
首を傾げて考える。
チト「邪魔だ」
ハロ「あ、すまん」
智途、最近何だか冷たくなったよな。他のみんなは協力的なのに。
まあどうせ生理か何かだろう。
ユリ「あ、おにいちゃん」
昇降口では由梨が待っていた。
ハロ「いつもはお前のほうが早く帰ってるじゃないか。どうしたんだ?」
ユリ「え?うーん・・・」
これまでにもなにやら陰謀が見え隠れしていたし、今更聞くことも無い。
あっという間にみんな『用事がある』とか言って居なくなるわ、部活には一人も来ないわで、俺は暇になった。
なので仕方なく一人でとぼとぼ歩いてきたわけだ。
ハロ「ま、いいや。帰ろうか」
ユリ「あ、うん!」
俺たちは靴を履き替え、外に出た。
橙色に染まった世界を歩く。
まだ夕暮れだと思っていたが、もう日は落ち始めている。
俺はつい考え事をしてしまって、会話をしていなかった。
ユリ「ね、ねえおにいちゃん」
ハロ「ん?」
ユリ「あのね、私が来たときのこと、覚えてる?」
ハロ「中学校に入ったあたりだったかな」
ユリ「うん、それそれ!」
ハロ「あんないじけてた俺のことをおにいちゃんおにいちゃんって慕ってくれてたよな、最初から」
ユリ「うん。・・・あのね。どうして、私がおにいちゃんが欲しかったか知ってる?」
なにやら意味深なセリフだな。
ハロ「いや、知らない」
由梨は悲しげに言った。
ユリ「私の本当のおにいちゃんね、死んじゃったんだ。交通事故・・・だったと思う」
ハロ「え・・・」
ユリ「なんとなく、雰囲気が似てたの。遥おにいちゃんに・・・」
そうか、それで俺なんかの事を。
ユリ「私は遥おにいちゃんに会う前はずっと泣いてた。おにいちゃんのこと、大好きだったから」
由梨は顔を上げて言った。
ユリ「あ、でもね!その時はそうだったけど、でも今は面影を重ねて好きだってわけじゃないから!」
と必死に訴えた。
ハロ「ああ、わかってるよ」
ユリ「それでね・・・」
由梨は昔の思い出を反芻していった。
俺たちの親は本当にばらばらに散っていってしまったんだなあと思わせられた。
今の状態を含めて、お互い最低三回は環境が変わったと言う。
親がそばに居ない今ほど、安定した時代が今までに無かったんだなと思うと、今が幸せだと思う。
俺と由梨は、ほとんど寄せ集めて作られた家族の中で暮らしているようなもので、正直兄妹と呼ぶのもつらい。
俺の母さんは父さんに内緒で俺に仕送りをくれる。内緒と言うか、まず父さんの所在を俺は知らない。
別な家庭で生まれた由梨は由梨の義母に養子として迎えられ、由梨が言う『おにいちゃん』は江川家の長男。
んで父さんは二股とかそんな感じだろうか。
やっぱり、ごちゃごちゃしててよくわからない。
ハロ「思えば、壮絶だよな。全然まともじゃない」
ユリ「でも私は気にしてないよ。私は今のままでも・・・」
ハロ「当たり前だ。これ以上まともな生活があるか。・・・俺たちって、随分深い縁があったんだな」
ユリ「そうだね。・・・運命かもね」
ハロ「はは・・・」
運命、ね。
ユリ「もうちょっとで家に着くね」
ハロ「ああ」
ユリ「帰ったら、抱っこしてくれる?」
ハロ「ああ。抱いてやる」
ユリ「・・・なんかニュアンスが違うよね」
ハロ「何!?お前がそんなフランス語知ってるとは思わなかったぞ」
ユリ「し、知ってるもんそのくらい!フランス語だって言うのは知らなかったけど・・・」
ハロ「大体、家はそんなやらしいことする所じゃないぞ?」
む、と由梨はこちらを睨む。
ユリ「抱っこをやらしいと思ってるの、おにいちゃんだけでしょ」
ハロ「だってふt」
言おうとしたが、由梨は先に玄関に向かって駆けて行った。
由梨は鞄から鍵を取り出し、鍵を開けてドアを開いた。するとまた駆け入っていった。
ハロ「おいおい、何そんなに急いでるんだ?」
俺も家の中に入り、玄関のドアを閉めた。
由梨は靴を脱いで俺のほうを向き、
ユリ「お帰り、おにいちゃん」
と言った。
ハロ「・・・アホか」
俺は失笑した。
やっぱり、これでいいんだ。
今日いろいろと話す機会が多かったけど、やっぱりこの状態、この生活が一番だ。
今更由梨が他の人を見つけて出て行くなんて事は考えられないけど、家族をまたばらばらにしたいなんて思わない筈だ。
いずれ、俺は由梨と結婚するかもしれないが、今の生活が変わるわけでもないだろう。
ならば、あせる事はない。
俺たちは夕食を終え、ソファーに腰掛けてテレビを見ている。
由梨は隣から俺にもたれかかっている。ちょっとバランスを取りづらいが心地は悪くない。
こんな時がずっと続けばいい、と思っていた。
二十二時。
俺はテレビを消した。
ハロ「さ、そろそろ部屋に戻るぞ、由梨」
ハロ「由梨?」
由梨はすうすうと寝息を立てていた。
ハロ「しょうがないな・・・」
俺は電気を消した後、由梨を負って部屋に向かった。
俺は由梨を真っ暗な由梨の部屋のベッドに仰向けに寝かせた。
ユリ「んん・・・」
起こしてしまっただろうか?と、警戒する。
ユリ「おにいちゃん・・・」
由梨は体を起こし、俺の首に腕を回した。由梨の顔が眼前にある。
何だ、起きたのかと言おうとしたが、その仕草に遮られた。由梨は目を閉じ、キスを待っている。
俺の理性なんてものは本当に弱いんだな、と参ってしまう。
俺は静かに由梨に口付けをした。舌で舌を舐めあい、唾液を交換し合い、互いを愛し合った。
迷いは無かった。
口を離し、呼吸を乱し、恍惚とした表情で俺を見つめる由梨を、そのままベッドに押し倒した。
ユリ「あ・・・おにい・・・ちゃん・・・///」
俺は由梨のパジャマのボタンを外していき、その小さな胸に口をつけた。
ユリ「あっ・・・んん・・・///」
そして体を這うようにして手を下腹部まで持っていくと、パンツをズボン後と下ろした。
俺は上半身を起こし、痛いほどに勃起したそれを下着から開放した。
目は暗闇に慣れ、互いの姿を捉える。それ以外は何も見えなくても構わなかった。
ユリ「あ・・・///」
ハロ「じゃあ・・・」
それを濡れた口にあてがい、ゆっくりと奥まで挿入した。
ユリ「ん、あぅ、あ・・・く、はぁ、は・・・///」
俺の首に回していた腕が震える。
ハロ「大丈夫か?」
ユリ「ん・・・だいじょぶ・・・///」
それを聞き、俺は腰を動かし始めた。
ユリ「ん・・・ふぁあっ・・あ、お、おにいちゃ・・・!///」
由梨はシーツを握り締めて快感に堪え、悶えている。
静かで真っ暗な部屋の中に、淫靡な音と喘ぎ声だけが響く。
我を忘れて由梨と交わっているわけではない。これでいい。これがいい。俺の決心でもある。
由梨の中はきつく俺の竿を締め上げ、わななく。
襞にくすぐられ、俺もこれ以上動きを早めたら出てしまうまでに昂(たか)められていた。
ユリ「あっ、ああっ、お、おに、ちゃ、わたし・・・!///」
ハロ「くぁ、あ――」
由梨が先にイくと思っていたら、俺が先に射精してしまった。
ユリ「ぁああぁあ!おにいちゃ・・・ん!///」
由梨が俺をギュッと抱きしめてきた。
ハロ「あ、やば――」
どくどくと脈打ち、由梨の中に精液を吐き出してしまう。
ペニスは満足すると、その動きを止めた。
ハロ「はぁ、ご、ごめん・・・」
ユリ「ん・・・大丈夫なの、今日は」
ハロ「え・・・?」
ユリ「たぶん・・・」
由梨は微笑したが、俺はがっくりとうなだれた。
適当に事後処理をした後、満足そうに眠る由梨を尻目に部屋を後にし、自分の部屋に入った。
ベッドに仰向けになり、ため息をつく。
ハロ「・・・」
何か、考える事があった。
頭の中がざわざわする。何か感じていた筈だ。
今日、何か不安なような怖いような感覚がどこかにあった。感じたのはいつだったろうか。
思考は猛烈な眠気に掻き消されていき、俺は眠りに落ちてしまった。
…。
ハロ「・・・朝か」
体を起こす。
ハロ「ああ」
あれで、寝てしまったのか。
俺は昨日、確か何かに気付いたんだ。
何か、何だ?わからない・・・。
時計に目をやる。
ハロ「・・・?」
こんな時間なのに、由梨が呼びに来ない。
まあ無理も無いだろう。昨日してしまったことだし。
俺は部屋を出て、先に朝食を作ってから由梨を呼びに行くことにした。
リビングまでやってくる。
そのままキッチンに向かい、引き出しを開ける。
引き出しには、俺のエプロンがある。
俺は違和感を感じた。
昨日も、一昨日もエプロンは由梨が使った筈だ。ならば、由梨のエプロンが俺のエプロンの上にあるのが普通だ。
だが引き出しの中を探せど、由梨のエプロンは無い。
それどころか、由梨のものは何も無い。
俺は胸騒ぎがして、階段を駆け上がり、由梨の部屋のドアをノックせずに開けた。
ハロ「――・・・」
そこに、由梨の姿は無かった。
整然とメイクされたベッド、机、大きなものだけ残っていて、後は何も無かった。
ハロ「由梨・・・?」
俺にはわけがわからなかった。頭をがりがり掻いた。
必死に昨日の事を思い出そうとした。確かに胸騒ぎを感じていた筈だ。だが何も思い当たらなかった。
俺は呆然とし、階段をふらふら降りた。
またリビングに戻ってきた。
ソファーに腰掛けた。
ハロ「・・・」
紙が、テーブルの上に合った手紙が目に入った。『おにいちゃんへ』とある。
俺はそれを開いて見た。
『おにいちゃんへ
突然私がいなくなって、驚いていると思います。
面と向かってこんな事言うのは、たぶんできないから、手紙にしました。
江川家のひとの都合で、わたしはまた江川の家に戻る事になりました。
ちょっと前から言われてたんだけど、おにいちゃんの悲しむ姿を見たくなくて、言えませんでした。
こんな形でしかお別れできなくて、ごめんなさい。
いままでありがとう。 おにいちゃん、大好き。さようなら。
由梨』
ハロ「・・・?」
何が何だか、さっぱりわからなくて、涙が溢れて、止まらなくて、全身が震えて、息ができなくて、視界が揺れて、
悲しくて、悔しくて、腹が立って、いろんな感情が、一気に込み上げて来て、どうしようもなくて、
ハロ「由梨・・・由梨、由梨・・・由梨ーーー!!」
ハロ「ふざけるな、ふざけるなああ!!うあああああああああああああっ!!!」
ハロ「何で、どうして、勝手に消えるんだ!?また俺を一人にするのか!!」
ハロ「これで、これでいいって、ようやくわかったのに!」
ハロ「俺が居て、由梨が居て、ここで暮らして、幸せだって、それで良かったのに!!」
ハロ「何だ!!お前はそういうやつだったのか!?騙された!!最悪だ!!畜生、ちくしょう!!」
テーブルを殴った手が痛みに包まれる。ヒビくらいは入ったかもしれない。
ハロ「はぁ、はぁ・・・」
言ってやれなかった。
最後に、ちゃんと『好き』って言ってやれなかった。
『好き』って言って、ギュッてしてやれなかった。
ハロ「くそ・・・」
終わらせない。終わらせてなるものか。たとえ寄せ集めで、二人だけの家族だったとは言え、俺にとって、
由梨は最愛の妹なんだ。決して終わらせはしない。何としてでも取り返す!
後がどうなろうと知った事じゃない。ただ、由梨と暮らすために!
制服に着替え、手紙を胸ポケットにしまった。
学院。
『俺が落胆した状態で学校に来るであろうと思っていた人々』は、俺の姿に驚いているようだった。
し「本当に、ごめんなさいっ!」
深々と頭を下げるしのた。
ハロ「今更咎めたところで何にもならない。由梨も隠しておいて欲しいと言っていたからな」
毒「叔父さんに頼んでなんとかしてもらおう。きっと何とかしてくれる」
ハロ「ありがとう、毒男」
毒「ただ、今一度確認しておくが、半端な気持ちじゃ叔父さんも力を貸してくれないぞ」
ハロ「半端な気持ちじゃない。前にも言った事だ」
ツン「ハロ・・・」
ツンの頭をぽんぽんと叩く。
蕪「じ、じつは漏れもしのたから聞いてたんだお」
ハロ「いいんだ。お前がそんなに誠実だったとは思わなかったぞ」
チト「すまん。姉さんに頼んでいたんだが、こうなったらもう・・・」
ハロ「大丈夫だ。気を遣ってもらってごめんな」
俺は必ず由梨との生活を取り戻す。
失う前からわかっていた、その大切さを、ありがたみを、かけがえの無さを、再び取り戻す。
ハロ「死ぬほど危険なところに行くわけじゃない。みんな、そんな辛気臭い顔するな」
皆が顔を見合わせた。
ハロ「じゃ、毒男、頼む」
毒「まあ、お前と由梨ちゃんの頼みなら仕方ないさ」
毒男の頼みを聞いてくれた渋沢さんは、現在の江川家の調査に協力してくれる事になった。
渋「世の中、正義が正しいとは限らんぞ?」
ハロ「じゃあ正義でなくてもいい。もともと俺には何も無い。ただ・・・」
渋「そうか。ならばもう何も聞くまい」
さらに車を走らせる。
渋「帰りの車は必要か?」
ハロ「いや・・・歩いて帰る」
最終更新:2007年08月04日 09:29