Le souhait 由梨編5(完結)
――はじめ。
由梨を失った事で心に開いた穴を埋めるように、
怒って、泣いて、暴れていた。
日常は壊れた。
正しく言えば、それは『奪われた』と言うべきか、それとも『元に戻った』と言うべきか。
少なくとも俺には、由梨と過ごした時間が短すぎて、それを判断する事はできない。
足りないんだ。
これで終わりになるような物語だとしたら、初めから俺にこんな夢を見せてくれるな。
もう一度、『おにいちゃん』って言って、抱っこさせてくれないのか。
由梨は本当にこれでよかったのか。俺は今、向かうべきなのか。これは運命なのか。
確かめなければならない。
『悲しむ姿を見たくない』なんて言って逃げるのはあまりにも卑怯だ。
俺は渋沢さんの運転する車の後部座席に座って考えを巡らせていた。
もちろん、今日は平日だ。授業もある。向かうのは俺一人だ。
渋「おい」
渋沢さんは車を停め、俺に声を掛けた。
顔を上げ、窓から外を見る。
…表札には『江川』とあった。
渋「降りろ」
渋々やって来たらしい渋沢さんは、やや投げやりな態度で言った。
俺が大人しく車から降りると、渋沢さんは俺を置いて去っていった。
ここの最寄の駅から二駅で『熾惺学院駅前』に着く。車で十五分ほどで、歩いて帰れない距離ではない。
表札にはまだ由梨の名は無い。
ここは、他人の家だ。
ハロ「・・・」
俺は意を決し、インターホンを押した。
家の中から音がする。
その音の中から由梨の声を探してみるが、ドアが開くまでにそれを捉えることはできなかった。
現れた中年の女性は、何も知らない顔でドアを開け、一歩外に出てきた。
女性「あの、何か」
ハロ「・・・はじめまして。江口、遥です」
女性は急いで背後のドアを閉め、表情を変えてこちらに向きかえった。
女性「由梨に何の用?」
この人はどうやら、由梨の養母のようだ。
ハロ「今朝――」
母「あなた全然わかってないのね」
激しい口調に、俺の言葉が掻き消された。
ハロ「何がです?」
母「あの子の気持ちが、よ。どういう神経してるわけ?どうしてここに来れるわけ?ねえ」
感情に任せて一気に話し始める。
母「あの子がどうしてあなたが寝てる間に出てきたかわかってるでしょ?それが・・・今来たら無意味じゃない」
知っている。
母「由梨がいくら悩んでこっちの家に戻るのを決めたかわかってるの?」
ハロ「じゃあ、あんた・・・あなたは、どうして由梨が戻る事を『悩んだ』のか知ってるんですね」
まるで俺が何も考えずに来たように思われている事に腹が立って、つい言い返してしまった。
母「知ってるわよ」
俺を睨んで言い返した。
母「あんまり認めたくないけど、由梨はあんたの事が気に入ってたみたいでね。今もぼーっとしてるよ」
気に入って『た』、ね。
母「あんな男の、子なんかのどこがいいんだかね。まあそのうち忘れるでしょ」
ハロ「父さんは関係無い」
母「関係あるのよ。とにかく、あまりふざけた事しないで頂戴。由梨はうちの子なんですからね。元から」
ドン、と俺を手のひらで突っ返した。
ハロ「だからって、勝手に奪い返してもいいと思ってるのか!」
母「何、当然でしょ?とにかく、あんな主の居ない家にあなたみたいな子供と二人で住ませておけないのよ!」
ハロ「だったら何故俺の家に由梨を置いてけぼりにした?由梨は寂しかったって言ってたぞ!」
母「・・・」
由梨の養母は少し口を噤んだ。
母「それは申し訳なかったと思ってるわ。だから、今この家に戻してやる事も償いではなくて?」
ハロ「『戻してやる』・・・?」
金魚を水槽に移し変えるだけのような言い方をする。
まるでこちらに来る事も無かったくせに。何を知っているつもりなんだ。
母「とにかく、あなたが由梨を追ってきたところで無駄なのよ。後でお父さんが着たら追っ払ってやりますからね」
?「お母さん!」
と、玄関のドアが開き、中から幼j・・・女の子が現れた。
母「どうしたの?ちこ」
ちこ?聞いた事無いな。
ち「姉ちゃんが逃げた」
母「ええっ!?どうして止めなかったの!」
…姉ちゃん?姉ちゃんって、まさか。
ち「突然だったから」
母「ああもう!悪いけどあんた、もう二度と来ないでねって事でお引取り願える?今それどころでなくなったのよ」
そう言い、俺と目を合わせることも無く家の中に走っていく。
ハロ「由梨・・・」
母「あ、いい!?あんた余計な事しないでよね!」
わざわざ戻ってきて、そう釘を刺した。
由梨。
由梨の行きそうなところはどこだ?そう遠くへは行けない筈だ。
ち「ねえ」
取り残されたちこが、俺に話しかけてきた。
ハロ「何だよ」
ち「姉ちゃん、兄ちゃんの声聞いて逃げた。ってことはあなた姉ちゃんのもとかれとかじゃないんだよね。残念」
ハロ「・・・何が残念なんだ」
ち「そうだったら、ろまんちっく」
ハロ「はいはい。俺は今それどころじゃないんだ」
ち「なんで?あんた誰?」
しかし・・・全然思いつかない。この辺はあまり詳しくないからな・・・。
ち「だれ?」
落ち着け。落ち着・・・
ハロ「ここ、玄関だよな?」
ち「おまえの目はふしあなか」
ハロ「じゃあ、由梨はどうやってこの家を出たんだ?」
多少の口の悪さは無視する。
ち「窓。塀が高いから降りれるの」
よくも怪我せずに降りたものだ。
ハロ「行ってみるか。あ、お前は来るな」
下手に時間が経つと警察を呼ばれてしまう。由梨・・・。
下手に動けど道はわからず、携帯も・・・元から繋がらない。
時間だけが過ぎ、俺は駅の椅子にへたり込んだ。
何、あがいてるんだろうな、俺は。
何が今まで一緒に暮らしてきた、だ。由梨が行きそうな場所の見当もつかない。
もしかしたら既に警察に通報されたかもな。
警察か、あるいは江川の人が先に由梨を見つけたならば、俺は家にも近付かせてもらえなくなるだろう。
何もわかってもらえないまま。話も聞いてくれなくなって。
時間が過ぎて、徐々に記憶から由梨が失われていって、声も思い出せなくなって、
他人になる。
嫌だ。そんなのは嫌だ。何か・・・何か無いか。
ハロ「・・・ん?」
由梨の行きそうなところはわからない。
『ここでは』の話だ。もしかしたら、熾惺学院方面に電車で向かったのかもしれない。
携帯を見る。
片田舎だと電車は少ない。ここに戻ってくるのに一時間半・・・二時間はかかるかもしれない。
――電車で擦れ違ったら終わりだ。時間的にも厳しい。賭けになるだろう。
だが、ここに居ても仕方が無い。
見慣れない時刻表を見ると、もうすぐ熾惺学院方面に向かう電車が来る。
ハロ「・・・」
俺は焦燥に駆られ、切符を買った。
熾惺学院駅前。
見覚えのある風景が、俺の前に広がった。
電車の中で何度も後悔した。俺は由梨と二人で戻って来る事にしたのに、俺は一人だった。
ハロ「いや」
落ち込んでいる場合じゃない。
ハロ「由梨を捜そう」
まず俺は、走って自分の家まで戻ってきた。
ハロ「はぁ、はぁ・・・!」
あ、あれは・・・ツン、たちじゃないか!?
ツン「ハロ!」
ハロ「はぁ、はぁ、な、なんでみんな、ここに?」
毒「うっせえ!わかりきった事聞くんじゃねえ!手ぶらで帰ってきやがって!」
蕪「どうどう(;^ω^)」
由梨は・・・戻ってないらしい。
ハロ「由梨が・・・俺が駆けつけたのを知った途端に、どこかへ失踪してしまった」
ツン&し「ええっ!?」
チト「し、失踪した?」
ハロ「ああ・・・すまん」
毒「失踪したってどういうことじゃあ!どこに行ったんだ吐けゴルァ!」
蕪「わからないから失踪って言うんジャマイカ」
チト「しかし、わたしたちはここに来るまでに見かけなかったぞ」
ハロ「ああ。・・・頼む。みんなで由梨を捜してやってくれないか」
ツン「う、うん!ってあんた、大丈夫?」
ハロ「お、俺の事はいいから・・・」
くそ、ちょっと飛ばしすぎたか。
ツン「じゃあ、通学路もっかい見て来る!」
チト「しのた、心当たりのある場所を教えてくれ」
し「はいっ!」
毒「最早てめーに任せてられんわ!あの根性どうしたコラァ!」
息を切らして家の壁にもたれる俺に檄を飛ばす毒男。
ハロ「根性・・・」
毒「帰ってきたと思ったら由梨ちゃんは居ないわ死んだアリゲータ=ーガーみたいな顔してくるわ何だお前!」
蕪「アリゲーター=ガーって何だお」
毒「魚だ!」
ハロ「・・・由梨は俺が取り返す!」
まっすぐ、毒男を見て言った。
毒「・・・」
毒男は数歩歩み出て、
毒「最初からそう言えバカ」
といいながら俺の肩をぽんぽんと叩き、そのまま俺と擦れ違った。
蕪「どこ行くお?」
毒「駅の辺りにでも行こうや」
蕪雲も、毒男の後についていった。
ハロ「毒男・・・ありがとう」
毒男に、情熱を分けてもらったような気がした。
毒男は何故かムーンウォークでこちらに戻ってきた。そして俺の前に留まって言った。
毒「今なんて言ったのか大きな声で」
ハロ「ごめん取り消す」
蕪「台無しだお(;^ω^)」
家にじっとしているわけにはいかない。
俺は、俺と由梨しかわからないような場所が無いか考え始めた。
…昨日、由梨が突然昔のことを語り始めた時点で、本当は少しでも怪しむべきだった。
俺がその事に気付いていれば、由梨も本当に黙って出て行ってしまう事は無かったかもしれなかった。
思い出すたびに後悔は募る。
思い出せ。由梨を見つけ出すヒントがあるんだったら後悔してでも。
由梨は俺のしたことを何でもよく覚えてくれていた。
俺が単に忘れっぽいとかじゃなくて、いつも、俺を見ていた。俺はそれに気付かなかった。
由梨の好意に気付いていながらも、それは駄目だと心の中で抑制したり、色々悩んだりもした。
ただ、由梨が『居てくれたほうが居心地がいい』ぐらいにしか感じてなくて、義理では会っても『妹』で、
恋愛対象にさえせず、特にどうする事もできず、・・・。後悔ばっかりだ。
そして今、一番大きな後悔をしている。
由梨の行く場所。
由梨の帰る場所。
由梨のたどり着く場所。
ハロ「ん・・・」
わかったかもしれない。
俺が覚えてるぐらいだから、絶対に由梨も覚えていてくれるだろう。
チト「しのた?」
しのたは急に立ち止まった。
私は不思議に思い、俯いているしのたに近付いた。
し「う・・・ひっく」
チト「おいおい、泣くな。泣いても始まらないだろう」
し「だ、だって、思い出すと後悔して・・・ぼ、ボク、本当に先輩に黙ってて良かったのかなぁって・・・!」
チト「・・・」
私にもわかる。
ハロは、相当無理をして行動している。
大切な人が朝起きたら蒸発してしまっていて、それでも学校に来て気丈な態度を取って見せていた。
だからこそ、ハロが学校に来てあんな事を言い出したのには本当に驚かされたんだ。
予想外な事にその本人が失踪、いまだ見つからずと言う有様だ。
チト「しのた。泣くのはよせ」
しのたは涙を拭った。が、涙はおさまりそうに無い。
チト「いいか。今一番泣きたいのは、つらいのは誰だと思う?ハロはな、いろんな逆境はあってもちゃんと一つの
目標に向かって動いている。ハロの由梨への想いだけがあいつを突き動かしているんだ」
今、由梨を失うなんてことになったら。
チト「あいつは強くない。学校で見せた強がりも風前の灯に近い。あいつは・・・ぼろぼろなんだ」
し「はい・・・わかりました」
しのたは何度か涙を拭った。
し「みんな、同じなんですよね。ボクだけ泣いてちゃ駄目ですよね」
チト「そうだな。お前だけ泣くのはズルい」
しのたは微笑した。
ツン「あ」
毒「お帰り」
駅には毒男が居た。
ツン「あんた、ここで何してるのよ?あんなに情熱的だったくせに」
毒「闇雲に動いてちゃ埒が明かんのでね。よっと」
毒男は椅子から立ち上がった。
毒「蕪雲は江川さんちのある方面の駅に居る。それなら由梨ちゃんが来てもバッチ保護できるってわけよ」
ツン「ふぅん。考えたわね」
毒「ま、見つからんなら意味無いがな。あ、そうそう。向こうのご家族、警察に通報したらしい」
ツン「ええっ!?」
毒「まあまあ、騒ぎなさんな。どうせ人っ子一人のためにはすぐ動くまい。もうすぐ十七時だしね」
駅の時計を見ると、十六時半だった。
毒「俺も走り回りたくなってくるよ。本当」
ツン「じゃあ、代わる?」
試しに言ってみた。
毒「・・・」
ツン「・・・」
毒「行こうかな、マジで」
ハロ「はぁ、はぁ・・・!」
駄目だ。息切らしちゃ駄目だ。こんなの苦しくない。
ハロ「はぁ、は・・・!」
夕日だ。駄目だ。立ち止まるな。もうすぐだ。見えてきたんだ。くそ、遠い。いつも歩いて通ってたのに。
中学校。
由梨と出会った校門。
あの憎たらしい父さんが連れてきた、俺の大切な妹。
駄目だ。地面を見ちゃ。立ち止まっちゃ!くそ・・・!
お姉さんの声「あ、あのー、大丈夫ですか?」
俺は息を切らしながら二、三回頷いた。
声「良かったら私の自転車、使います?」
いいんですか、という遠慮もしている余裕が無かった。
ハロ「か、貸してくださ・・・」
声「あ、どうぞ・・・」
俺は向けられた自転車のハンドルを握り、深く礼をした。
声「いえ、お構いなく」
やや乱暴に自転車の向きを換え、最後の力を振り絞り、漕ぎ出す。
声「じゃ、頑張ってね・・・ハロ君」
中学校に向かう、最後の上り坂を立ち漕ぎする。
そういえば、今日は平日なのに下校する生徒が一人も居ないのはどういうこっちゃ?
ハロ「ぐ・・・ぐぐ」
俺の足は痙攣し、校門の前まで来て体は自転車と一緒に倒れた。
ハロ「(痛っ・・・!)」
ずりずりと自転車から足を引き抜く。自転車の車輪は音を立てずに静かに回り、夕日を反射して輝いていた。
ハロ「はぁ・・・!」
由梨・・・まさか、居ないのか?
顔を上げる。
三メートルくらい前の木の影に人影がある。
息を整えながら、注意深く観察。ってもうこんだけ近いんだからわかってるんだけど。
ハロ「その・・・中途半端な・・・モノテールが出てる」
人影は、手でささっと中途半端に結った髪を手で押さえた。
ハロ「いい加減出て来いよ・・・隠れるには、近すぎるぞ・・・」
この天然め。
俺はふらりと立ち上がり、土ぼこりを払って言ってやった。
ハロ「由梨」
由梨は、木の陰からそっと顔を出した。
ユリ「おにい・・・ちゃん・・・?」
目は、少し涙で滲んでいるようだった。
ハロ「悪いな。大急ぎだったんだが、ちょい遅れた」
ユリ「どうして・・・どうして来ちゃったの!?」
ハロ「はぁ!?そりゃお前・・・」
家の人が心配してるから。
警察も動き出して、大変だったんだぞ。みんなも捜したんだ。全く、心配かけさせやがって。さ、行くか。
――どこに?
俺は何を言おうとしてる?ここまで何のために来たんだ。
ハロ「えー、こほん」
散々わざとらしいと突っ込んできた動作が出てしまうとはな。あー、頭の中にセリフはあるんだが言う勇気が。
由梨も凄い怪訝そうな顔で見てるし・・・。
ハロ「簡単に言うとだな。あー、『好きだ』と言いに来たんだ」
ユリ「え?」
ハロ「いや、だから『好き』って」
ユリ「何?」
ハロ「・・・三度目は言わんぞ」
ユリ「ざんねん」
由梨は、ひょいと木の陰から出てきた。
ハロ「あのなあ、人がラヴ・ロマンシングパーティー開催してる時にボケは要らんのだよ君」
ユリ「ありがとう、おにいちゃん。私・・・嬉しい」
ほろほろと嬉し涙が零れ落ちていく。
ハロ「ああ。ごめんな。俺、何も気付いてやれてなかった。気付いてたのに、何もしようとしなかった・・・」
無理矢理追いつく。
ユリ「ごめんなのは私のほう。勝手に出て行っちゃったりして・・・もう二度と出て行くなんて言わないから」
ハロ「ああ。これだよな」
俺は胸ポケットから由梨の書置きを取り出した。
ユリ「あっ!それわっ!返して!」
光の速さで由梨に奪い取られる。そして、それをビリビリと破り捨ててしまった。
ユリ「こ、こんなのいらないもん!嘘だもんこんなの!」
ハロ「あー・・・記念にとっておきたかったのに」
ユリ「何でよ!おにいちゃんのバカ!」
日はすっかり暮れてしまった。
正直、夜の学校は怖いので後ろは振り返らない事にする。
ハロ「みんなに連絡とって帰ろう」
ユリ「へへ・・・」
ハロ「何だよ」
ユリ「私ね、嬉しかった。おにいちゃんがここに気付いてくれて」
ハロ「あ、ああ。まあ賭けではあったけどな」
ユリ「・・・おうち、帰るの?」
ハロ「だな」
ユリ「どっちの?」
ハロ「俺は、由梨に戻って欲しい。けどやっぱり俺じゃ、あの家の人たちに何言っても無駄だった」
ユリ「私が言わなきゃいけない、よね」
俺はツンの携帯に電話を掛けた。
ガチャ←0.18秒
ツン「あんた今どこで何してるのよ!?」
ハロ「け、携帯を耳に鼓膜破裂・・・至急治療されたし。もう何だよ。いい雰囲気だったのに」
ツン「え?あんたまさk毒「見つかったのか!?」
ツン「私が話してる途中nし「本当ですか!?由梨ちゃん聞こえてますか!?」
ツン「私の携た蕪「智途様愛してるおー(ドガッ)チト「もしもしハロか?今どこだ?」
ハロ「ごめん話す隙が無い」
ユリ「あははー、いつもどおりだね」
由梨はそう言った後、涙を拭うような動作を見せた。
ハロ「えー、ほら、ツン、俺ら通ってた中学校。あそこ」
ツン「はぁ!?あんた、凄い遠くまで行ったのね」
ハロ「そりゃこいつに言ってくれ」
携帯を由梨に向ける。
ユリ「みんなー本当にごめんなさいー」
ツン「よかっt毒「うおおおおおおおおおお!!し「ゆ、由梨ちゃん!」う学校ね蕪「駅員さんが睨んでる件」ってて!」
ツンの声が掻き消されまくってるまま通話終了。
ハロ「・・・さ、帰るか」
ユリ「あ、だったらその自転車に乗っけてほしいな」
由梨が指差す先には、先ほど親切な方から借りた自転車が。
ユリ「あれ、盗んだの?」
ハロ「(半分そうだが)んなわけないだろ。借りたんだよ。さっさと後ろに乗れ」
ユリ「わぁい・・・」
長い畦道を走る。
背中に由梨を感じながら、すっかり冷えた秋の空気を切って進んで行く。
ハロ「あー、疲れた。もうこんな事は勘弁だぜ」
ユリ「あ、見ておにいちゃん」
ハロ「ん?・・・いやお前が後ろに居るわけだから見えるように指差してもらわないと」
それも無理な話だが。
ユリ「あ、消えちゃった」
ハロ「流れ星か?」
ユリ「うん」
ハロ「願い事はしたか?」
ユリ「ううん。いいの」
ハロ「なんで?」
ユリ「もう、叶ったから」
ハロ「・・・。ちょっとお聞きしますけど、いつからお考えになられてたセリフですか?」
ユリ「もう、空気読めないなあ」
ハロ「やっと着いた・・・もうガタガタだよ」
ユリ「ありがと、おにいちゃん」
俺の家の前に、既に皆さんがおそろいでした。
ツン「ハ、ハロ!」
ハロ「おいおい今日はこのお姫様を祝ってやらなきゃ」
ツン「あ、そ、そうね。私ったら何・・・///」
って、もうその必要は無いか。
し「由梨ちゃん!」
ユリ「ごめんねしのたん。心配かけて」
し「いいいいんですよボクなんか全然お役にも立てませんでしたし」
涙ながらに抱き合うしのたん。
チト「で、お前は何でそんなに遠いんだ」
毒「(ギクッ)いや、だって、ここって俺の場所じゃないっスか」
蕪「・・・。由梨たん由梨たん」
ユリ「え?」
蕪「今回、ハロの次に捜査に全力を尽くしたのは毒男なんだお」
チト「フフ。それを言うならハロよりも全力だったかもな?」
毒「いやああああ!光当てないで!光当てないで!」
何だコイツ。
ユリ「えと、毒男先輩。ありがとうございます」
深々と頭を下げる由梨の前に立たされた毒男。硬直。
毒「・・・こ、これからもごひいきに」
何だコイツ。(2回目)
バタン(SE:ドア)
近くに止めてあった車から、人が降りてきた。
ユリ「あ・・・」
由梨の両親と、ちこちゃんだった。
父「いや、あのね。ちょっと感動しちゃったのだよ」
ハロ「はい?」
『追い払ってもらう』とか言われて出てくるくらいなんだから、怖い人かと思ってた。
ち「おねーちゃん、いいなー。ちこもそんな恋したい」
ユリ「ふふ。駄目」
何故禁止する。・・・っと。
母「・・・」
父「ほら、機嫌直さないか。へそ曲がりだなあ」
母「ゆ、由梨は、いい友達を持ったなあと思いました」
ユリ「お母さん・・・」
母「江口さん」
ハロ「はい」
母「もう少しの間、由梨はあなたに預けておきます」
ハロ&由梨「!」
由梨の養母は、そういい残しさっさと車に戻って行ってしまった。
父「やれやれ。じゃ、江口さん、わたしはこれで。由梨を頼みましたよ」
ち「じゃーねー。またあそびにきてねー」
ハロ「ああ、うん」
家族は怒涛のように去って行った。
ユリ「忙しい人たちだね」
全員「お前の家族だよ!!」
ユリ「あっ、ごめ・・・って全員で言う事無いじゃん!もう!」
ハロ「はははははは・・・ごめんごめん。さ、中に入ろう。ここは寒い」
ツン「そうね。みんな、パーティーの準備はいい?」
チト「ああ。なんだっけ、パーティー名があったよな」
ハロ「俺に内緒でそんなの計画してたのか」
毒「その名も『ラヴ・ロマンシングパーティー』。ちなみに俺の案」
ハロ「え」
――五年後。
ユリ「えへへー」
ハロ「何だよ。って何回同じ突っ込みさせるんだよお前は」
ユリ「だってさ、結婚したんだよ?なんて呼び合うか決めなきゃ」
住まいは相変わらず一緒である。
ハロ「うーん、『妻』『夫』でいいんじゃないか?」
ユリ「嫌だよ」
ハロ「うーん・・・」
ユリ「ふふ。でもなんだかこーしてるの幸せ」
ソファーの俺の右横に座る。
ハロ「まあ生活自体はいつもと変わらないんだけどな。あ、そうだ。そんな呼び名決めるよりさ」
ユリ「?」
ハロ「赤ちゃんの呼び名決めようぜ」
と言って由梨を押し倒す。
ユリ「きあー♪」
ハロ「・・・ちったあ嫌がれよ」
ユリ「だって・・・///もういいじゃん。しよ?」
ハロ「・・・っ!」
ユリ「ひあっ!ぁ、ゃぁぁ・・・もう、入んないよぉ・・・///」
由梨の膣から精液がこぼれ出る。
ユリ「これ以上、したら、赤ちゃんできちゃうよぉ///」
ハロ「もう手遅れかと・・・」
ユリ「ぁ・・・おにいちゃんの・・・///」
ハロ「こら。んー・・・でも俺は『おにいちゃん』って響きが好きかな」
ユリ「わらひも呼ぶの好きぃ・・・///」
呂律が回ってないな。
ハロ「可愛いのでもう一回」
ユリ「や、ひゃあっ!///も、駄目だって、ばぁっ!///あ、あぅぅ・・・///」
ハロ「ゆ、由梨、好きだ!っていうと気持ちいいかも」
なんてごまかしてみる。
ユリ「ゆ、ゆりすきだぁ?」
ハロ「いや、お前だよ」
ユリ「そか・・・じゃ、おにいちゃん、好きぃ・・・ぁ、また・・・///」
ハロ「由梨は早漏だなぁ」
ユリ「は、恥ずかしいこと、いゎないで・・・あ、ぁあ、あああああっ!///」
ハロ「俺を置いてイくな!」
――今でも、時々。
この自転車が誰のものだったのだろうかと思う。
あの頃と今とではだいぶ変わってしまった。たった五年の歳月をつい『あの頃』と呼んでしまうほどに。
長岡姉妹も、あの時本当は由梨の事が好きだった毒男も、そして渋沢さんも、あの後に引っ越してしまった。
しのたは大学院で研究をしているらしい。昔は智途のため、と言っていたが俺にはよくわからなかった。
ツンや蕪雲は、今もここに遊びに来る。ツンはまっとうだが、蕪雲はサークルでよからぬ動きをしているらしい。
俺は母さんが亡くなった今、まっとうな人生を歩んでいる。まあ時代の最先端あいてー企業だ。
ハロ「俺たちの家族は、ばらばらになんかさせないからな」
ユリ「ふふ、誰に言ってるの?」
ハロ「うーん・・・。ろくでもない運命に。かな?」
-Le souhait-
最終更新:2007年08月04日 09:46