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お祭:SS集 - (2011/12/12 (月) 22:47:21) の編集履歴(バックアップ)



目次.各種中継-各国からの参加風景



02:akiharu国 からの参加風景

akiharu国民はバナナワニの夢を見るか?


 ワニ肉唐揚げを出店することにしたゆり花。
 どうせなら脂ののった養殖物(でもワニ肉なのでヘルシー)より天然物のほうがいいと考えた彼女は、観光地のガイドから話を聞くことにした。

「じょぶじょぶ大丈夫。
 大丈夫だから。
 うちの国のバナナワニは凶暴だけど、人食いバナナはもっと凶暴だから。
 もう凶暴なんてもんじゃないから。
 ぜんぜん問題ないって。
 食べられたら痛いけど、ゆり花ちゃんはおいしそうだから丸呑みしてくれるって。
 痛みも感じる間もないって。
 大丈夫。
 間違いなく大丈夫。
 天地神仏ご先祖様に誓って、絶対大丈夫だから。
 うちの子供もバナナワニを捕まえに行って帰ってきてないけど大丈夫。
 便りのないのはよい便りっていう言葉もあるし大丈夫。
 ゆり花ちゃんが食べられたときのことを考えて、保険金をいっぱいかけておくから大丈夫。
 留守中にゆり花ちゃんちにソックスハンターが押し入ることもあるけど、大丈夫。
 ちょっとUMA植物に遭遇して、ピドポーションっぽい分泌物でマッチョマンになることもあるけど、大丈夫。
 通りすがりのUFOにキャトルミューティレーションされたりするけど、大丈夫。
 とにかく大丈夫だから」

 ガイドが力説しているうちに、カマキリたちがバナナワニを採ってきたとさ。
 めでたし、めでたし。


03:FEG からの参加風景

~アクセサリーショップにて~


「いやあ、お祭りですなあ」
「お祭りですねえ」
「いやあもう、カップルだらけですなあ」
「愛の国ですからねえ」

 アクセサリーショップの店先で座っているのは、若い職人達だった。
 FEGの専門店で扱うにはまだまだ未熟な腕の彼らは、時折祭りの際に屋台で自分達のアクセサリーを作って売る事で、腕を磨いているのである。
 今日はレンジャー連邦で大きな祭りがあるからと言う事で出張した訳なのだが。
 いつもよりも覗きに来る客覗きに来る客のカップルの比率が高いのに、やや職人達はダメージを受けていた。

「……リア充爆発しろー」
「スラング使うの止めて下さいよー、恥ずかしい」
「いやでもよー、何で今日はこんなにペアリング買いに来る客多い訳よ」
「売れないよりいいじゃないですか」
「それはそうなんだけどさあ」

 先輩職人はぶーたれる。
 普段から金属を相手に仕事をし、時たま屋台で作ったものを売る。出会いがないのだ。

「愛の国なんですからいいじゃないですか。カップル結構」
「お前お気楽なあ」
「だって、今日はアイドルのコンサートあるんですよー? ここで店してたらもしかすると遊びに来てくれるかもしれないじゃないですかー」

 対して後輩は、ミーハー丸出しでどこぞで買って来たパンフレットを見てウキウキしていた。あちこちに丸がついているのは、まさか自分放置して見に行くつもりじゃないだろうな……。

「行くのは完売してからだからなー」
「はーい……もうすぐジャンケン大会なんですけど……」
「……10分待つ。さっさと行って負けて来い。負けたらすぐ帰ってこいよー」
「ひどいなあ……はーい、行って来まーす」

 そのまま後輩はジャンケン大会の行われるステージへと走って行ってしまった。すぐに後輩の姿は人波に飲まれて見えなくなってしまう。

「たくっ……」

 先輩は少し溜息を吐く。
 でもまあ。
 こうやって店番をしていて、人の笑顔を見ているのは楽しい。

「リア充末永く爆発しろー」

 スラングを吐くと、ちょうど屋台を女の子達が覗きに来た。

「すいませーん、このリングって、これだけですか?」
「これですか? これは奥に2セットありますよ」
「わあ……じゃあこれ2つ下さい!」
「はーい、毎度ありー」

 店はまだ賑わいを見せるばかりである。

04:海法よけ藩国 からの参加風景

物産展SS:よけ物産展


海法よけ藩国の物産展ブースでは、今か今かと人が詰め掛けていた。
客層をみると、一部、物産展には不釣り合いな格好をした人々が多い。
何故か?
答えは、物産展のアピールに、海法よけ藩国のよけアイドル、避け森晴香が起用されているからであった。
物産展関係者は、客層を見て、物産のアピール上手くいくんだろうかと、ちょっと心配気味である。
『おおー!!』
『晴香ちゃんだ!!』
『は・る・かちゃ~ん!!』
お客さんの一団の一部が、そう騒ぎだした。
見ると、避け森が、新鮮な、よけ野菜などを荷車に載せて引いてきている。
『荷車引いてる姿も素敵です~!!』
ファン心理は凄いものである…。さて置いて。
「みなさん。こんにちは~!!今日は、海法よけ藩国の物産ブースへようこそ!!今私が引いてきた荷車に乗ってる農作物など。よけ藩国の特産品をどんどん紹介しますね!!」
『お願いしま~す!!』
「はい。みんな元気ですね。元気が一番。(笑)」
『風邪とかひかないように注意してよけます!!』
「さて、まず紹介するのが、海法よけ藩国の、よけ野菜の代表ともいえる、よけキャベツ!!キャベツ農家では、毎日、よけキャベツに擬態した、避けろキャベツと熱い戦いが繰り広げられています。私も両親に、『おまえは、生まれた時、避けろキャベツの口から救われたんだよ』って言われたことあるんですよ!!」
『うおお!!避けろキャベツすげー!!』(*1)
(ちょっと待って、そっちに反応しない…。)
「栄養はもちろん、味のほうも、ロールキャベツにしたりすると、とてもおいしいんですよ!!」
「お次は、よけ鳥。避け藩の在来種で、ダチョウによく似た外見をしています。肉は赤身で、脂が少なく美味。反面、卵の味は見た目どおり大味です。また、皮は衣服として、卵の殻は美術品に用いられるんですよ!!よけ鳥は卵を産むとき、外敵に奪われることを避ける為に、擬似卵も生み、本命の卵を見分け難くする習性があります。卵幕が展開されたらドット避け必須ですね!!!」
『うおお!!卵幕すげー!!』(*2)
(またそっちか…。)
「そして、よけ牛。もともと、よけ藩に牛は居なかったんですが。外来種が輸入されて、品種改良されたものが、現在のよけ牛です。乳の出が良く、乳質はコクがあり香りもよい。また、肉は、美味絶品で知られ、全てをよけることによって鍛えられた筋肉、殊に赤身の旨さは銀河一と呼ぶものも。最後の戦いをも避けたという、かのよけ牛、『スタンリー』の伝説もあります。」
『うおお!!スタンリーすげー!!』(*2)
(お!?ちょっと良い感じ?)
などと、物産展関係者の悲喜こもごもを、悲多めで見ながら。
アピールは進んでいく。
「よけキノコ!!伝説のバナナの木を探していて、何故か持ち帰ってきたそうです。このキノコは餓死しそうな生物に反応し、巨大化。通常時は見つからないほど小さく、とても美味しいというものです。食べると幻覚見るよけろキノコもあるので、気をつけましょう!!」
『うおお!!よけキノコすげー!!』(*3)
(良いんだよな…。これで…。)
「よけ木苺!!子供しか見つけられない、木苺畑の話は、よけ藩では有名です!!」
『うおお!!よけ木苺すげー!!』
(…良い。)
「などなど、まだまだ、よけ藩の物産展ブースには、よけ藩の特産品がたくさん!!よけ藩の味、蕎麦粉クレープや、よけ弁等など、屋台もたくさん!!国をよけてるのに、何故こんなに揃えられているかと言うと、それは色々な藩国様の協力のおかげです!!」
『うおお!!よけ弁いただいてます!!すげー!!』
(…。これだ!!これでこそ、よけ藩だ!!)
「さて、よけ藩の物産の紹介はいったんこれで終わりになります!!」
『うおお!!晴香ちゃ~ん!!』
「次は、そう!!他の藩国様の物産展ブースも、紹介します!!先ずは、レンジャー連邦様のブースに行ってみましょう!!突撃~!!」
『『俺達も行くぞ~!!』』
と、なんだか、物産展関係者まで引き連れて、突撃する集団…。
物産展まで避け出したようです…。

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SS:さまよえるアイドル ~差し伸べる手~

レンジャー連邦に伸びる街道を、よけタイガーで進む一団があった。
その一団の中心には、長い黒髪の凛々しい女性がいる。
名を、避け森晴香と言い、キミプロ所属で、海法よけ藩国出身の、よけアイドルであった。
『さまよえるアイドル』と称する人がいるように、最近、国難をよけて、各国を巡業して回っているのだ。
デビューしたころに比べると、だいぶ大人びて見えた。
過ぎた年月を考えれば当然かもしれないが、それ以上に、困難を乗り越えた経験も彼女が大人びて見える理由なのではないだろうか。
そこに、近づいていく一つの影があった。
「『ら・みゅーじっくおぶらぶふぇすた』『らぶらぶ』…っか。同期のアイドルも参加するみたいだし楽しみ。(笑)」
そう言って笑顔になる避け森。
「うん。右ノ森さやかさんとかも参加を決めてるそうだよ。地元だしね。」
そこに唐突に割り込む影。
「…!!…って。P!!どっから湧いて出たんですか!!」
避け森が驚いて影を見ると、そこには、プレゼンPがぬぼーっとよけタイガーに乗っていた。
「いや。さっきからここに居たんだけど…。」
「どんなステルス性能してるんですか!!気配がよけ過ぎです!!」
よけタイガーの上で、orzとがっくりうなだれるプレゼンP。
「あっ。いや。言い過ぎました。ごめんなさい。(汗)」
あわてて謝る避け森。
「…まあ。この話は置いといて…。久しぶり避け森君、元気だったかい?ずいぶんと大人びて見違えたよ。(笑)」
避け森は、一瞬悲しそうな顔をして、そして、すぐに満面の笑みを浮かべると、
「はい。色々ありましたけど、私は元気満々ですよ!!」
と、プレゼンPに強がりを言った。
「…そうか。色々と苦労させてしまったね…。『さまよえるアイドル』なんて君のことを称する人もいるくらいに…。」
国難に際して、旧来のよけの民は、国外を旅することになり、ほとんど、海法よけ藩国に帰らないのだ。
「P。私は気にしてないですよ?『よけアイドル』の本領発揮です!!たとえ藩国のみんなと離れていても、よけの心を持っています!!」
「…そうか。ならば私も、さまよってなんかいないで『よけプロデューサー』や『よけFROGスタッフ』として頑張らなくてはならないね。(笑)」
「…はい。さまよってなんかいません。よけてるだけです。何もかもがよける国それが海法よけ藩国クオリティですよ。(笑)」
そう言う、避け森の目は笑っていなかった。ただ、へこんでなんかやるものかという決意に満ちているようだった。
「国難のたびに、私たちが生き残ってこれたのは、たくさんの国内外の方々が、手を差し伸べてくれたからです…。『頑張れ!!』『負けるな!!』って…。だから私はそれに応えたい。手は差し伸べられた。だから、今度は手を差し伸べる番、応える番なんです。私は手です…。過去から未来に差し伸べる。立ち止まってなんかいられません。」
避け森の目は、ここにない何かを見ているようだった。気を抜けば真っ黒に染まる未来、そこに差し伸べられた手。
「私は、よけた先で全てに手を差し伸ばすという目標、まだ諦めてません。」
「避け森君…。」
言葉を失うプレゼンP。
「はっはっはっ。それでこそ俺達の晴香ちゃんだ!!(笑)」
それまで二人のやり取りを、見ていた一団の一人が、そう言った。
「プロデューサーさんよ。安心しな。晴香ちゃんは一人じゃない。あんたが居る。俺達が居る。たくさんのファンが居る。応援してくれる藩国のみんなが居る。」
「…!!」
はっと、何かを思い出したようなプレゼンP。
「そうだ…。『それは仲間である。一人で出来ないことは、大勢の力を合わせて可能であるという理解である。』忘れなさんなよ…。(笑)」
「そうだ…。前にもそれで、避け森君に叱られたっけ。懐かしいな…。(笑)」
そう言って、笑みを見せるプレゼンP。
「なんだい…。前にも言われたのかい。進歩がないな。(笑)」
「そうですよ。P。心配しなくても大丈夫!!(笑)」
そういう、避け森の笑顔は今度は本物のようだった。
「おっと。そろそろ、レンジャー連邦だ。野郎ども、晴香ちゃんのサポートしっかり頼むぜ!!」
『おう!!』
一団のみんながそう気勢を発した。
「レンジャー連邦か、久しぶりだな。ういらー君どうしてるかな…。よし…。我々のよけを見せてやりましょう!!まってろ『らぶらぶ』!!愛の国!!」
プレゼンPがそう言うと、『おう!!(笑)』と一団が気勢を発した。今度は笑いまじりで。

/*/

「着いたー!!久しぶりのレンジャー連邦だ。」
よけタイガーを降り、そう言って周りを見渡すプレゼンP。
その視界に、遠巻きに、避け森を囲む一団が入る。
『おおー!!』
『晴香ちゃんだ!!』
『は・る・かちゃ~ん!!』
どうやら、避け森のファンらしい。歓声と声援が漏れる。
「喜んでいいんだけど、なんか複雑、お父さんの気持ちというかなんというか…。」
プレゼンPが複雑そうな顔をする中、避け森が声援に応える。
「ありがとう!!『らぶらぶ』楽しみに待っててくださいね!!」
『おおー!!』
『待ってます!!』
そう応えられて、一団より一層の歓声と声援が浴びせられた。
「うん。今回も動物使いさんにステージの依頼頼んでるから頑張らないと、前の時の教訓で、動物さんの声対策もばっちりだよ。」
プレゼンPにそう言われて、笑顔を見せる避け森。
「前の失敗を繰り返さないようにしないとですね。(笑)」
「少しは学習したつもりだけど、どうなんだろう。(笑)」
笑いながらも、orz気味なプレゼンP。
「ああ…。FROG就労支援企画もまだできてないし、課題山積みだな…。出来るんだろうか…。」
「負けるな、昼行燈!!(笑)」
何かを思い出して、笑いだす避け森。
ずっこけて笑いだすプレゼンP。
「懐かしいな…。避け森君がデビューしたのがまだこの前に感じる。(笑)」
「そうですね…。でも、私も皆も成長してます。Pも。(笑)」
「だと良いんだけどね…。(苦笑)よし、『らぶらぶ』開催まですぐだ、準備を入念にしておこう。」

/*/

聞こえる歓声…。
湧きたつ会場…。

控え室で一人目を閉じて考えている避け森。
(よけた先で全てに手を差し伸ばす…。)
(私に出来ること…。)
(よけアイドルに出来ること…。)
(みんな…。)
(私に力を貸して…。)
(全てに手を差し伸べる…。)
(一人では出来ないけれど…。)
(みんなでなら出来るから…。)

「避け森さん!!出番です!!他のアイドルの方もスタンバってます!!」
『らぶらぶ』スタッフが、控え室に来てそう告げた。

「はい!!」
(我々のよけを見せてやれ!!)


06:レンジャー連邦

ラジオ中継、あの人は今!



<人物紹介>
P=城 華一郎。レンジャー連邦の摂政。華一郎P。
さ=右ノ森 さやか。元アイドル。

P:「というわけで特番ラジオの『あの人は今』コーナーから出演依頼がかかった訳ですが、今何やってんの君」
さ:「……(渋いニヒルなかお」
P:「何アヒルみたいな口してんだ。それもブームちょっと過ぎてきてんぞ、どうしてお前はそういつも世間とズレをだな」
さ:「アヒルじゃないよニヒルだよ! 荒ぶるアヒルのポーズすんぞ!」
P:「なにかにつけ荒ぶらないと気が済まないのかよ!」
さ:「いやーちょっと聞いてよ私今さー探偵やっててさー」
P:「嘘だろさや太郎!?」
さ:「ああ、だがマヌケは見つかったようだぜ」
P:「鼻に血管なんて浮いてねーよ。つーか嘘かよ!」
さ:「ぽいことはやってるのよー」
P:「ぽいこと? 具体的には?」
さ:「ペットハンター」
P:「まさかのご家庭専門狩人!? かつてのお茶の間アイドルがお茶の間に惨劇を!!」
さ:「いやー、ナマケモノのポーズで結構覚えられちゃっててさー」
P:「スルーかよ。ああ、一時期子どもにも流行ってたな、あれ」
さ:「今では荒ぶるポーズすると寄ってくるんだー、ペットたち」
P:「動物に覚えられちゃってましたか?!」
さ:「お陰でバリエが300種類ぐらいまで増えました」
P:「どんだけ荒ぶってんだよ!! つか元々あれは一発ネタじゃなかったのかよ!!」
さ:「一発売れればそのネタで一生ほそぼそと食っていけるらしーねー案外」
P:「迷子のペット探しは地方巡業じゃない!!」
さ:「ていうかじゃんけん大会に今から出ないといけないんだけど、そろそろいーい?」
P:「あれ、まさかの現役復帰ですか??」
さ:「まっさかー。ゲストっすよー。なんか藩王さまから呼ばれたー」
P:「マジバナだな、おい!」
さ:「ふっふっふ、参加者しょくーん! 私を倒しても第二第三の上ノ森と下ノ森が……」
P:「ここにきて引退後に新キャラ…だと……。むしろ左ノ森さんがいる設定とかすっかり忘れてたわ」
さ:「奴は所詮四天王の中でも最弱……」
さ:「さやか一族の面汚しよ」
P:「誰!? 今の誰ノ森さんたち!!? ていうか一族だったの!? あ、あと、左ノ森さんもう負けてね? なんで??」
さ:「え? さやかちゃん一族は安心と信頼のブランドだよー?」
P:「何が売りのブランドだよ……」
さ:「それはもちろん使い捨てヒロインとしてだねー。左ノ森さんは既に私の現役時代で使い捨てられていたのでしたり」
P:「きわどいところを攻めるなー毎度のことながら!!!」
さ:「残念、さやかちゃんでした!」
P:「思ったより時代のボールとバットが近い!!!」
さ:「あっはっはー」
P:「そんなわけで、あの人は今!」
さ:「右ノ森さやかちゃんでしたー!」
P:「じゃんけん会場行けばまだまだこいつに会えるよ! よ!
さ:「ライブ会場脇でぼくとあくしゅ!(チョキ出しながら」

ある準備風景


「きたきたきたきたきたあぁぁぁぁっ!!」
とあるレンジャー連邦国民の魂の叫び

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ある昼の事。
レンジャー連邦の浅葱空とレンジャー連邦猫士のにゃふにゃふは今日も今日とてもんじゃランチを楽しんでいた。
そんな時に聞いたビックニュース。「ら・みゅーじっくおぶらぶふぇすた、通称らぶらぶ」の開催。

「ま、ままままま、まつりとな!?」
「うん、音楽のお祭りみたいだよ~飲食店の出店とか、観光名物とかPRするってさ~」
「ほうほう…まつり…祭りか…」

にへら、とへんな顔しながらにじりよる浅葱。
にゃふにゃふ、なんか嫌な予感がする。

「にゃふにゃふー、私も…」
「めんどくさいなぁ~」
「まだ何も言ってないじゃない」
「どーせ俺に投げかけるんでしょ~」
「駄目っすか」
「駄目じゃないよ。駄目じゃないから“めんどくさい”んだよ~」
しょうがないなぁと言いながらにゃふにゃふ、思うのだ。
ただ楽しそうだから、と言って照れるだろうあなた達の胸から溢れる旋律は常に愛に満ちていて、

“ああ、まるでいつだって祭りのようだ”と。


/*/

(1)皆で一緒に!
まずは、企業に協力を仰ぐ、と浅葱が頼み込んだのは
レンジャー連邦ではおなじみのもんじゃ屋さんのひとつ、『Friendship&Love』だ。
以前、大観光地(http://www23.atwiki.jp/ty0k0/pages/141.html)でもお世話になった老舗である。
『Friendship&Love』を中心として、レンジャー連邦中のもんじゃ屋さんが集結した。

「にゃふにゃふーあとね、あそこと、ここと、あれにも声かけてー」
「エー。まだあるのぉ~?」
「だって、お祭りだよ!皆で一緒に楽しみたいじゃん!!」

(2)出店するよ!!
<もんじゃ>
もんじゃはその性質上、持って帰る事、立ち食いすることができない。
野外用の鉄板テーブル等を設置し、その場でお客様には召し上がって頂く。
(テーブルの配置、調達はにゃふにゃふが奮闘しました。)

<アイス>
もんじゃも美味しいけど、デザートも重要!!
ここぞとばかりにレンジャー連邦名物、移動屋台『バタフライアイス』も側に設置する。
レンジャー連邦暑いからアイス大人気!

<団扇屋>
アイドルにはつきものの、アイドルビック団扇を各種ご用意ー!!
レンジャー連邦のアイドルはもちろん、各国のアイドルの団扇全てを取り揃えております。
どうぞご贔屓のアイドルの団扇をお買い求めください。そして一緒に盛り上がろう!!

(3)その他
もんじゃ屋スタッフは全員各自の応援するアイドル団扇を装備。会場とお店を盛り上げつつ、皆様を扇ぐサービスを行います。

「…扇ぐサービス?空ぁ、ほんとにこれ意味あるの~?」
「ふふふ。扇ぐというのは唯の建前さ…真の目的はもんじゃのにおいを遠くまで運ぶことにあるっ!!!」
「あ~においにつられてお客さん来るように、と」
「それもある!!さらに、皆にもんじゃの匂い染みこんで、お風呂入りたくなったられんれん号へ誘導、入館、着替えが欲しいぞ、そこで民族衣装の販売すればさらなる経済効果が!!(どーん)」
「………まぁ、いいか。温泉は気持ちいいし~」


/*/

祭りまで期間は短く、やれることも限られている。
でも、だからこそ花火のように美しく潔く、どーんっと一発でっかいのを打ち上げてやるっ!
わくわくしながらアイディアだけ出す浅葱と、それを具体的に実行に移すにゃふにゃふは今日も慌しくレンジャー連邦を駈けずり回るのだった。



10:世界忍者国 からの参加風景

SSその1:「いつもの準備風景」(作:結城由羅)


 実は、世界忍者国には特産品が多い。リワマヒ国には負けるものの、共和国の中で上位の農業国として、特産品の開発にこれまで力を入れてきた。主力のトウモロコシと固有の果物ベマーラ以外にも、米やそれから作られる清酒、そして人狼領地を特産地とする小麦やそれから作られるビール、牛・豚・鳥の肉やそれらを加工したハム・ソーセージ類、美味しいものが沢山ある国なのである。

「あーいい匂い」

 お祭りがあるというのではるばるレンジャー連邦までやってきた世界忍者国のエド・戒が、トウモロコシの粉を水で溶いたものを鉄板に丸く流し込みながら、それが焼ける香ばしい匂いにうっとりとしている。この薄く焼いた皮で、色々なものを巻いて食べるクレープのような料理は、昔からFEGなどで好まれていた。

「こっちもいい匂いですよー」

 人狼領地特産のホルスター・インという名の牛の肉――そのロースの部分をタレに付けた物をやはり鉄板でじゅうじゅう焼きながら、よだれの垂れそうな顔で弓尾透がエドに声をかけた。この焼いたものを、レタスやスライスしたトマトと一緒にエドが焼いている皮で包んで売る予定なのだ。

「今日は共和国中から人が来るからねー
 じゃんじゃん焼いてねー」

 お祭りには目のない藩王結城由羅がうきうきと楽しそうに指示を飛ばしている。

「ん、これはなかなか…」

 その横では、白銀優士が役得とばかりにベマーラブランデーの試飲をして、舌鼓を打っていた。ベマーラブランデーは代用燃料の開発時に副産物として生まれたもので、現在藩国でイチオシの新特産品である。すでに羅幻の商人が目ざとく見つけて、大量に買い付けていったが、尋軌などはさらにその販路を伸ばそうと考えているらしい。宣伝のために試飲コーナーブースが作られ、グルメが趣味な白銀がここを担当することになっていた。

「飲み過ぎちゃダメですよー」

 いつものように経理担当としておつりの準備などをしながら、川流鐘音がそちらへ釘を指す。

「やー痛んでないかチェックしてるだけですよ」

 白銀の補佐としてブースについているみはえるが、頬をほんのりとピンクに染めながら、言い訳がましく声を返してきた。

「荷物こっちですかー?」

 人狼産ビール「WOLF BEER」の缶が詰まった段ボールを多段に積んだキャリーカートを松永がごろごろと引きずってきた。

「あ、こっちに倉庫あるから、お願いー」

 配送の指揮は摂政の久堂尋軌が一手に仕切っている。常々国内の配送をしている彼の手腕はプロ級である。

「こっちこっちー」

 荷物の管理をしている可銀が倉庫からひょっこりと顔を出して松永に手を振った。その後ろでは、荷物を抱えた松葉と徒理流が慌ただしく走り回っている。

「パネル展示コーナーの設営はほぼ終わったぞ」

 今回は技術紹介のパネルコーナーを担当している濃紺が、いつものようにクールに顔を出す。

「ちょっどうして俺の格好はこんなんなんですか!」

 準備にばたばたする皆の元へ、上ずった声を挙げて神崎零が飛び込んできた。皆の視線がそちらに集中し、そして固まる。

「…似合ってると思うのねう」

 初めに口を開いたのは由羅だった。それに周囲が三々五々頷く。

「似合ってます」
「似合ってるな」
「ばっちり!」

 くぅが、野菜をすさまじい勢いで切りながら、いい笑顔で親指を立ててみせた。そのはずみで、野菜がこぼれそうになるのを、逢瀬みなおが慌ててボールで受ける。

「似合ってないですよ!!!!」

 神崎がその姿――メイドの衣装でぶるぶると震えた。

「えーかわいいのに」
「その格好もなかなかだな」
「…えっと、給仕されたいです…」

 お皿を準備している優羽カヲリにほんわかと言われて、神崎はがっくりと肩を落とした。カヲリの後ろでは、あんぐら2と匪がこの国にはよくあること、とスルースキルを全開させて、黙々と皿を並べている。

「なんでいつもこんな格好ばっかり……」

 神崎の後ろから現れた真神貴弘が、やはりとてもいい笑顔でその肩を叩いた。

「それが、お前の運命だ」
「ちがああああう!!!」

 さらに後ろから現れたすでにばっちりメイド服を着こなしたソーニャが神崎の首根っこを掴む。

「あきらめるのねう」
「いやだあああああ!!!」

 そんなある意味いつもの情景を、なかだいがにこにこしながらカメラに収めていた。

/*/

 そして祭り当日、世界忍者国ブースにとてもかわいい女装メイドがいるというのが話題になったという。

SSその2:「世界忍者国その女装の歴史」(作:桂林怜夜、編:結城由羅)


――女装。

 遥か昔、女性でしか参加できないイベントの為に、藩国の男性全員が女装したのが世界忍者国における女装の始まりであった。それは懐かしくもレンジャー連邦に関わるイベントだった。

 しかし、本格的に広がったのはハンターキラウィッチのアイドレスの登場からである。このアイドレスを着用するためには、男性は女装しなければならない―――――という事情があったからなのだ。

 そう、世界忍者国の女装は初めは友誼の為に、そして次は仕事の為だったのだ。

そして今。

「チーフ、今度のお祭り用に女性のメイド服の注文が入りました!」
「うむ。アイドル用はSサイズ、女性用はMとLか。30着ずつくらいか?」
「そうですね。今回もメンズが30着ほどです」
「わかった。いつも通り女性用は藩王サイズ、男性用は神崎サイズで見本を送っておいてくれ。ご贔屓にしてもらってるサービスだ」
「わかりました。サービスですね」

          • というわけで、25%ほどが女装用になっているのであった。

 尚、裏ご神体としてロジャー子像が国のどこかに隠されているらしく、男性が女装する際には、こっそり同じ服を着せ、任務の無事な成功を祈願するらしい。

SS(作:久堂尋軌)


「アイドルDuoをプロデュース!」

「「・・・・・はぁ?」」

サングラスをかけたひろきPが叫ぶと、アイドル二人はいぶかしげな顔で声をあげた。こういう時には、あまり事が起きないと判っているからだ。

「うむ、今回レンジャー連邦さんで行われる祭りに二人を参加させようと思ってな。いっそのことDuoとして売り出してしまおうとな」

「……えっと、こういうときに私たちの意見は?」
「ないんでしょうねぇ…」

ひろきPの前にいるアイドル二人。
先に言葉を発した卯月律に、それに呼応したフォン・リュウシン。二人は基本的には同じ屋根の下で暮らしているが、アイドルという以上あまり知られていない。

「ということで、今回は・・・ふたりともアカペラでやるぞ!」

「「あ、アカペラ~~~!?」」

さすがの二人もびっくりした。何せ、音楽の祭りなのに音楽抜きでやろうと言うのだから外法と言われても仕方ないであろう。

「なんで、なんでそういう結果になるんですか!」

律が、声をあげて食いつくとひろきPは自信満々に言いきった。

「だって、音楽を流しっぱなしなんて皆疲れるときもあるだろ?そこの間隙を俺たちで埋めようというわけだよ」

「あぁ、つまり塩で甘さを引き立たせようとするわけですか…なるほど」
「納得するな!まぁ、そういう見方もあるんでしょうけど…」

フォンがポンと手を叩いて納得してしまうと、律もその様子に思わずツッコミを入れてしまう。

「とりあえず、アカペラでみんなの度肝をぬかすように頑張るぞ二人とも!」

「「はーい、わっかりましたー」」

アピールポイント:音楽祭を盛り上げる為にアカペラでがんばります!



15:ナニワアームズ商藩国 からの参加風景


”ら・みゅーじっくおぶらぶふぇすた”の観光物産の部


お祭りを楽しむ、にぎやかな雑踏の中、賑わいに負けじと力強い客寄せの声が聞こえてくる。

「さあさあ、よってらっしゃい、見てらっしゃい。ナニワ名物、たこ焼きだよ!」
ピンポン玉くらいの大きさの半球状の窪みが幾つも並ぶ鉄板の上に刷毛で油を引いていく。
「お子さんのオヤツからビールのあてまで何でもござれ。是非一度ご賞味あれ」
紅ショウガ、細切れのタコに万能ネギが入ったクリーム色の生地を豪快に鉄板に流し込むとジュージューと景気の良い音と共に湯気が立ち上る。
「たっぷりのソースとお好みでマヨネーズもいけるよ」
屋台の周囲に生地が焼ける香ばしい香りが広がる。頃合いを見計らってアイスピックのような金具を半球の窪みに差し込み、クルリと回す。
するとたこ焼きが次々と引っ繰り返されて狐色に焼けた生地が顔を出す。
注文を受けると慣れた手付きでひょいひょいと発泡スチロールの容器に取り分けると刷毛でたっぷりとソースを塗り、青のりと鰹節をパラリ。
湯気で鰹節が踊り、爪楊枝を添えてイッチョ上がり!!
「へい、まいどあり。あ、お嬢ちゃん、中の生地はあつあつなんで火傷に気を付けて食べなよ」
「さあさあ、焼き立てのあつあつだよ~。一口食べれば寒い冬でもほっこり温まるよ~」
「あ、そこのおにーちゃん。お酒のツマミにもやしの酢漬けはどうだい?結構いけるよ」
「へい、まいどあり。今後も是非ご贔屓に!」
力一杯に客寄せをやっていると

『みんなー!楽しんでるー?』
”ワーーーーーーーーーーー!!”

ステージの方からアイドルの元気溌剌とした声と観客の賑やかな歓声が屋台まで聞こえてくる。

『今日は素敵なイベントに参加させて頂きありがとうございます。微力ながらも歌とダンスで頑張らせて頂きます!!皆さん是非楽しんで行って下さい!』
ナニワの民らしき声「「「マ・リ・アちゃぁぁぁぁぁぁん!」」」

くう、あいつら楽しそうだなあ。あのときグーじゃなく、チョキを出していれば・・・
今頃他のやつに店番任せて俺もあそこでマリアちゃんの応援に参加できたのになあ。
と心の中で思わずぼやく屋台のオヤジ。

”ワーーーーーーーーーーー!!”
『それでは一曲目、”春風と・・・』

リズミカルなメロディラインにのって弾むような歌声が流れてくる。

まあ過ぎた事はしゃあないか。こうなったら、みんなの分まで頑張ってビシバシ売りまくるぞー!

「お土産には日持ちする怪獣バターや怪獣チーズがお勧めだよ。そしてお祭り気分を満喫したい、そこのにーちゃん!」
「着心地バッチシ、ちょっとした防寒にもなるナニワ特製の法被に、ライブ会場には付き物のペンライトもあるよー。」
「更に今日はめでたい祭りの日!出血大サービスで今ならたこ焼き4人前を買ってくれたお客さんには法被かペンライトのどちらか1つを無料サービスだよ!!」

ステージに負けない元気な声で屋台のオヤジの声が辺りに響き渡る。


23:キノウツン藩国


SS

引っ込み思案だった只の少女が、ひょんな事からアイドルになり、やがて旅立ってからいくつかの日々が流れた。

―今、私は共和国に帰ってきた。

きっかけは先日届いた兄さんたちからの手紙。
いつものように怪我や病気はしてないか、寂しくはないかと長い長い決まり文句の後に、私宛の手紙が届いたから同封しておく。と、付け足されていた。
封筒には懐かしい事務所のマーク。ああ、まだこの封筒なんだなあって少し嬉しくなった。

中にはレンジャー連邦さんで行われるお祭りへの協力要請と、飛行機のチケット。あと社長さんからのメッセージがあった。
『―という訳で久しぶりにステージに立つ気はないかね?問題なければ連絡をしてくれたまえ』
『追伸。今回の要請は“彼”からの君へのメッセージでもある。
相変わらず何も言葉にしない男だが、今の君を見せてやりなさい』

答えは決まっている。
すぐに荷物を纏め、私は機上の人になった。


控え室に置かれていた花束や、プレゼント。
ファンの方達からの復帰祝いの中に、ぽつんと置かれていた差出人のない手紙。
中にはたったの一言。
『お前のトップを見せてみろ』
と、書かれているだけ。

思わず笑みが零れる。そう、いつもこうなのだ。
必要な事も言葉にしない。自分で考えろ、と突き放す。
きっと根性がひねくれていて意地悪な顔をしているのだろう、と思う。見たことないけれど。

すう、と息を吸って吐く。
最後のライブから世界旅行に旅立って色んな事を経験した。
暁の円卓で見た凄いギタリストさんと巫女の舞。
詩歌ではたくさんの歌い手さんに圧倒されたり。
辛い事や悲しい事もたくさんあったけど、一つだけ分かった事が

プロデューサー、私、自分の刀をやっと持てた気がします。
誰にも見えないけれど
とても小さくてすぐに折れてしまいそうだけど
それは私の心に確かにある。
私が今までやってきた事、柔術や歌や踊りが、私の刀なんだって。

私は、私の刀でどこかの誰かを助けてあげたい。
辛い事や悲しい事があっても、ほんの一歩でも前に踏み出す切っ掛けになってあげたい。
それが私の、私だけが出来るイアイドだから。
「聞いてください、私の歌―」

観光物産SS

「お帰りなさいませご主人様お嬢様、キノウツン伝統の焼き菓子はいかがでしょうか。お茶請けによし、お土産によし、ぜひご覧になってくださいませー」
毎度おなじみメイドが呼び込みを行う焼き菓子の出店。
試食用のお茶やお菓子はそれなりに捌けているようだ。
そろそろ裏へ取りに行こうかな、と思っていた金髪のメイドの元に、裏からのっしのっしと追加分を運んでくる赤毛のメイド。
「おす」
「うす、キッチンどうよ?」
「人数少ないからきつい。そっちは?」
「同上」
「ですよねー」
「しかしこー」
「うん?」
「ものものしいよねー」
ぐるり、と周りを見れば他のブースに比べて明らかに警備が厳戒なキノウツンブースの出店である。
ちなみに他の出店より遠くに作られているのも、治安上の理由だ。
「安全のためではあるよね。あたしらのためなのか他の人のためなのかはわからないが」
「しょうがないんじゃないの。私達が悪いんじゃないとはいえ」
「むう、しかしこのままにしておくというのもキノウツンメイドとしては敗北を認めるようでちょっとイヤン」
「ないわー、死語ですらないわそれー」
笑顔で仲良く机の下で足を蹴りあう二人。喧嘩も見えない場所で優雅に行わねばならないのが悲しいサガか。
「すいませんお菓子ください」
「ありがとうございます。1つ2にゃんにゃんになります」
お客様の声に素早くスマイル。2秒でスマイルを作れなければメイド学校ではしばかれたのだ。
「じゃあ10個ください」
「10個お買い上げですね」
横で手早く袋に詰められていく。受け渡しにもにっこり笑顔。嘘も偽りもない笑顔を向けるのがメイド魂だ。
「ありがとうございます。熱いのでお気を付けくださいませ」
受け取ったお客は再び雑踏の中へと消えていく。
「で、どうする?」
「やるしかないでしょ。あたしらにはあたしらにしかできない事があるはずだ」
「とりあえずはおもてなし?」
「他にあったら聞こうか」
「…ないわね」
「よっしゃ、メイド学校卒の実力見せてやろうぜ!」
「おうよ!」
がし、と腕をクロス。メイドの戦いはこれからだ!


アイドル・アーティスト部門 SS


レンジャー連邦の一大イベント、「ら・みゅーじっくおぶらぶふぇすた」、その舞台袖――。
「うひゃっほぅ!キノウツンが誇る超・メイドアイドル、ナナセ・ハルナ、満を持しての超・大・復・活ッス!」
 メイド姿の元(?)アイドルはバシッとポーズを決める。
 現在は小さなラジオ放送局のメインDJ兼オーナーの彼女は、このイベントの仕事を聞いた後、早速レンジャーに行く事を決めた。
「ラジオはリスナーに申し訳ないけど録音ッス! 折角の大仕事なんだからこまけー事はいいんッスよ!」
 ――ぶっちゃけメジャー時代は同じ国の同期の方が人気があったのだが、彼女はそんな事は微塵も気にはしてない。
 『と言うかいちいち人気の上下みたいなそんなモン気にしてたらメイドなんぞやってられないッス』、と言うのが彼女の持論らしい。――メイドはともかくアイドルは人気商売なので気にした方がいい気がしなくもないが。
「それに、ほら、なんか…キノウツンとレンジャーってあんま空気良くない系じゃないッスか。せめてもうちょっとわかり合えるようになった方がいいと思うんッスよねー。ウチらが言えた義理じゃないかもしれなッスけど…」
 一瞬だけ苦笑したが、それを即座に隠すように再びポーズを取る。
「今日は昔よりもっとパワーアップした超弩級ステージをお見せするッスよ! そう、キノウツンのメイドは進化し続けるんッスっから!」
 最後にビシィ、とひとさし指を天に向けるようにポーズを取った後、現役時代と同じ人なつっこそうな顔でにへらっと笑った。

観光物産の部 SS


「紅茶セット、お待たせしました。ごゆっくりどうぞ」
「ご主人様、おかえりなさいませ!」
 キノウツン藩国ではで身近な施設である、メイド喫茶を再現した飲食ブースにはメイド姿に身を包んだ女性達の笑顔と声が弾けていた。
 メイン会場から遠目の立地も、分厚い警備もなんのその、メイド装束の女性達は故郷での仕事と変わらず――時に可愛らしく、時に優雅な姿を客に見せながらテキパキと給仕を行っていく。
 今回レンジャー藩国の祭に参加するメイド達は、勿論見せかけだけの給仕女性だけではない。――彼女達はお客様に対する礼儀や受け答えは勿論、さらにはテープルに出すまでのお茶の温度管理まで事細やかに鍛え込まれた本格的な教育を受けた者だらけである。
 メイド喫茶の多いキノウツンでは、メイドの顔だけではなく、最終的には彼女達の給仕としての能力や店の料理もしっかりしていないと店として立ちゆかず、淘汰される。――その様な本国で厳ついムラマサやイアイド達をも骨抜きにしてしまうくらいの笑顔と給仕の能力を彼女達は持っていた。
「では、お会計はこちらになります」
「ご主人様、いってらっしゃいませ!」
 深く一礼し、笑顔でお客様を見送る彼女らはまさにメイド喫茶と呼ばれる戦場に立つ、一騎当千の猛者達であった。

アピールポイント:
アイドル:国内でのラジオでのDJ・パフォーマーとしての活動でますます腕を上げた彼女。勿論、ハイテンションでなノリと切れのあるダンスも健在!超メイドアイドル、ナナセ・ハルナに注目!