最終更新日:2014年06月26日 (木) 12時29分17秒
目次
概要
- 相手から教わるばかりで、自分で問題を考え解決しようしない少年メノンは、ソクラテスに「徳は教えられるものか?」を尋ねる。ソクラテスは「徳とは何か?」「正義とはなにか?」などと質問攻めに合わせ、メノンが自分で問題を考えられるよう導き出す。これがソクラテス流教育術(産婆術)である。人間は教えなくても自分で問題を解決できるというアナムネーシス(想起説)を述べる。徳以外にも知識と信念、学問の方法、人間の本質、魂、善、幸福、現実政治の議論を行う。
チェック
- 1.この本は何の本か?
- 2.何がどのように述べられているか?
- 3.その本は全体として真実か、あるいはどの部分が真実か
ジャンル
あらすじ
- 主人公メノンは、10代半ばの少年でテッサリアの裕福な家の出身者である。ある日テッサリアにやってきた弁論家ゴルギアスの技術に魅了され、メノンは弁論術の手ほどきを受ける。20歳のころ、アテナイに赴き自分の弁論術の練習の成果をソクラテス相手に行う。「徳とは何か」と尋ねられメノンは様々な徳を羅列するし「徳」そのものには答えようとしない、ソフィスト的な弁論術を披露する。
目次
第一章 徳とは教えられるものか? 徳とはなにか? 徳とは支配?
- メノンは「徳」は教えられるものか?それとも訓練で身につくものか?それとも生まれつき備わっているのか?をソクラテスに問う。ソクラテスから「徳とは何か」と聞かれてそれに応えうるも次々と反駁される。
- メノン「(中略)親しい友にはよくしてあげ、敵はひどい目に合わせて・・・」(71E)
- これは『国家』第一巻の正義を巡る対話でも同じものが出てきた。
- メノン「徳は人々を支配できることであり、これ以外の何者でもない」(73D)
- メノン「徳とは、美しいものを喜び、力を持つこと。自分の主張として、美しい立派なものを欲し、そうしたものを獲得する力があること」(77B)
- ソクラテスによって「貨幣を手に入れることが正しくない場合は獲得しないことが正しい」として、「獲得することが「獲得しないこと」より上回ることはないと論される。
第二章 探求のパラドクス
- ソクラテス「知っていることは探求は不要、知らないことは何を探求するかもわからないから知ることができない」(80E)
- メノンの召使に幾何学の問題を解かせる。最初召使は知っていると思っていたが、ソクラテスの指導により知らないことが判明。知っていると思い込むのと、知らないことを知らないと認識することどちらが召使にとってよいことか。これは召使を苦しめることか?などと
第三章
『メノン』におけるソクラテス像
- ソフィストには徹底的に嫌がらせじみた問答を行うが、メノン相手には穏便に行うとして一応区別はつけているようだ(75C-D)。喧嘩腰論法と友愛論法らしい。
- 「自分では難問の回答を知っていて他の人々を難問で苦しめているというのではなく、どこの誰よりも難問で苦しんでいて、其れ故他の人まで難問で苦しめているのだからね(80C)。
政治理論書の各テーマ分析
教育論
知性を伴って学ばれ躾けられるなら有益だが、知性を欠いたなら有害である。(88B)
- 素晴らしい教育論。父親は、子どもをいくら叱りつけ躾けようにも子どもが理解していない、なぜ怒られているのかわからないのなら躾の意味が無い。
女性について
- メノンは「家計を守り夫に仕え家を守ること」が女の徳であるとソクラテスに述べる(71E)。
哲学的な分析
想起
- 魂は不死であり、生まれ変わる。知らないことと思っていても魂はすでに知っているため、想起することはありえる。81C
- 『パイドン』、『パイドロス』でも想起説が登場する。
心理学的な分析
経済学的な分析
疑問
書評
各評価
J.S.ミルは「宝石」(光文社古典メノン)
気になった本
- プラトン『ゴルギアス』『国家』
- アリストテレス『形而上学』
- ロック『人間知性論』
- デカルト『省察』
- カント『純粋理性批判』
読書記録
最終更新:2014年06月26日 12:29