競走馬~始まりから終わりまで~

競走馬が育っていくまでの過程を順を追って説明していきます。

誕生

その年に生まれた0歳馬(当歳馬)のことを「当歳仔(とねっこ)」と呼びます。馬の年齢の数え方は、誕生日に関わらず1月1日には1つ年をとります。生後半年ほどで離乳が始まり、草を食べられるようになると、母馬と別々の馬房に入ります。一度親離れをさせた仔馬は、放牧のときも仔馬の集団で行なうようにします。

馴致(じゅんち)
仔馬を人になれるようにコミュニケーションをとっていきます。生まれたその日から、仔馬に近づいてたり撫でたりすることで、人に慣れさせる初歩的な馴致が始まっていると言えます。1歳になると、ハミをつけ、引き綱をつけて歩かせ、腹帯を締め、鞍をつける、このように段階を踏んで馬具をつけていきます。それから人を背中に乗せ、指示で歩いたり走ったり出来るように慣れさせていきます。

育成
人を乗せられるようになると、「ダク(速歩・はやあし)」「キャンター(駈歩・かけあし)」「ギャロップ(襲歩・しゅうほ)」などの歩法やゲートの練習など、実践的な訓練をします。

入厩(にゅうきゅう)
2歳の春頃から、厩舎に預けられます。茨城県の美浦トレセン内にある厩舎に入った馬を「関東馬」、滋賀県の栗東トレセン内にある厩舎に入った馬を「関西馬」と呼びます。馬体の成長を見ながら、新馬戦が始まる6月以降、適当な時期にデビューさせます。

デビューに備え、まずは「ゲート審査」を受けます。すんなり枠入りし、枠内でじっと立っていられるか、ゲートが開いた瞬間に発走することができるかをチェックされ、合格しなければ出走できません。
また、デビューに合わせて正式な競走馬名が決まります。

新馬戦で勝つことを「新馬勝ち」と呼び、幸先も良く、非常に名誉なこととされています。

普段は早朝にトレセンで調教し、レースに出走する週は「追い切り」と呼ばれる強めの調教で調子を整えます。レースに合わせて競馬場へ輸送し、走り終わったらまたトレセンへ。これを繰り返し、疲れが出てきたら放牧に出します。

2歳でデビューした競走馬は、一般的には8歳頃までに引退します。4歳で引退してしまう馬もいれば、10歳を超えても現役を続ける馬もいます。人間で言うとスポーツ選手と同様に、ケガや病気で引退を余儀なくされる馬もます。しかし、馬によって引退時期に大きな幅が出てくるのには、馬主の意向はもちろんですが、馬の「成長型」によるところも大きいのです。

成長型について。。。

早熟
2~3歳時に好成績をあげたものの、加齢とともに成績が下がってしまうタイプ。一般的に、競走馬が最も充実するのは4歳秋、と言われます。それよりはるかに早い段階でピークを迎えてしまう早熟馬は、馬体の成長もさることながら、「走る気力が失われてしまう」ことに原因があるとも思われます。

晩成
2~3歳ではイマイチな成績でも、古馬になってから成長し6歳を過ぎてピークを迎えるようなタイプ。タップダンスシチーも5歳秋~8歳春に活躍し、カンパニーも8歳秋にピークを迎えたという極端な例もあります。若い時にあまりレースに使われていないと、馬体が若いといわれたりしますが、両馬とも順調に使われてきたうえでの晩成ですので、一概に理由付けはしがたいです。 ただ晩成型は丈夫な体を持っていなければならないので、成長型には遺伝性があると言えます。

本格化
筋肉が発達して馬体が育ち、精神面も落ち着きが出てき、能力を十分に発揮できる状態になることです。早熟タイプの馬は本格化しているとは言えませんが、古馬になってからの本格化には個体差があるようです。

引退

引退した競走馬はそれぞれの道に進み、第2の馬生を送ります。

繁殖
活躍馬や良血馬の場合、牡馬は種牡馬、牝馬なら繁殖牝馬となります。

誘導馬
パドックから本馬場まで、出走馬を先導する役割を担います。気性が穏やかで、白毛・芦毛・黒鹿毛・尾花栗毛など、見栄えのする毛色の馬が選ばれます。

馬術競技馬
適正と従順な性格を持つ馬で、牡馬を去勢して競技用に訓練することが多いようです。

研究馬
JRA競走馬総合研究所で研究用に用いられます。より良い調教方法の考案や、ケガや病気の予防・治療などに必要なデータを取るための被験体となります。

使役馬
仕事を持つ馬という意味合いですが、現在では主に牡馬が「当て馬」として繁殖牝馬の発情を確認し、促すために、牧場で用いられます。

乗馬
乗馬クラブや牧場で一般の人々を乗せるので、穏やかで根気強い性格が絶対条件です。牡馬を去勢しセン馬にして用いることが多く、牝馬はあまり向かないようです。

功労馬
繁殖を引退した牡・牝馬や、活躍馬でありながら繁殖ができないセン馬は、ファンに向けての一般公開や乗馬活動を行ないながら、功労馬として牧場などで繋養され、余生を送ります。
最終更新:2013年07月26日 11:12