書名
ニューヨーク黄金時代 ベルエポックのハイ・ソサエティ
書誌情報
- 出版社(叢書・シリーズ名)
- 発行年月日
- 版型 造本データ ページ数
- 定価
- 装丁
- 近藤誠(平凡社)
- 写真:柳幸生、平凡社写真部(複写)
- カヴァー表:ウォルドーフ・アストリア・ホテル、パーク・アヴェニュー側のファサード/リンドハーストの館、レセプションルームの天井画/アンドリュー・カーネギーの邸宅
- カヴァー裏:メトロポリタン美術館のペトリー・コート
異版
目次
- アメリカ上流社会の誕生 7
- 金ピカ時代の光と影 21
- 社交界の女王アスター夫人 35
- アメリカ、芸術に目覚める 49
- ザ・ミュージアムの誕生 63
- スーパー・コレクター、モーガン 77
- フリック・コレクション 91
- ウールワース物語 105
- カーネギーの遺産 119
- ジェイ・グールドの隠れ里 133
- グリニッチ・ヴィレッジ 147
- ホイットニー夫人とアメリカ美術 161
- 社交クラブの世界 175
- イーディス・ウォートンの部屋 189
- 社交界の建築家 203
- ヘンリー・ヴィラードの夢のあと 217
- 二つのローズヴェルト家 231
- 孔雀の通る道 245
- あとがき259
- 地図 262
- 出典、参考文献 264
- 索引 270
あとがきより
二〇世紀の芸術は、アメリカによって支えられてきたといっていいほどだ。アメリカの金持がいなければ、アートもパリ・ファッションもどうなっていたかわからない。アメリカは歴史や文化のない国といわれた。だが、一九世紀末に巨大な富を築き、ヨーロッパ文化を買い占めてゆく。近代の芸術派、アメリカ社交界というパトロンぬきに語れないのだ。
ニューヨークには、メトロポリタンやグッゲンハイムといった世界的な美術館がある。それらはアメリカの大金持の寄付でつくられている。巨大な富を築くと、人はなぜか〈芸術〉という巨大な浪費をしてみたくなるらしい。それらの美術館を作ったニューヨークの社交界をたどってみたい。
アメリカにはニューヨークのプルーストとでもいうべきイーディス・ウォートンがいる。彼女の『エイジ・オブ・イノセンス』は、オールド・ニューヨークの社交界の絵巻なのである。これは映画化され、忘れられていたウォートンの小説が復刻され、それをきっかけにオールド・ニューヨーク・ブームとでもいえるものがはじまっている。ウォートンより古いが、ヘンリー・ジェームズなどもリヴァイヴァルしている。そのために、新しい史料が盛んに出され、この本をまとめることができた。
この本は、「太陽」に、「黄金のスタイル――ニューヨーク社交界と芸術家たち」として、一九九九年七月号から二〇〇〇年一二月号まで連載したものをまとめた。幸運にも、ニューヨークにいる友人の明石三世さんが取材と撮影のコーディネートをしてくれた。そして柳幸生さんが写真を担当してくれた。まことにぜいたくで、楽しい企画だった。
ここでは、一九世紀後半から第一次大戦まで、アメリカでアスター、ヴァンダービルト、モーガン、ロックフェラーなどのミリオネアが登場してくる。文字通り〈黄金の時代〉をあつかっている。残念なことに「太陽」が休刊となったが、実は、一九二〇年代以後の時代も書き継ぐはずであった。いつかまた、第二部を書きたいと思っている。
この本と平行して、私は『カリフォルニア・オデッセイ』(全六巻、グリーンアロー出版社)というカリフォルニア文化論を書いていた。奇しくも、アメリカ文化を東海岸(ニューヨーク)と西海岸(ロサンゼルス)の両面から眺めることができたわけである。この本は、ヨーロッパからアメリカへという私の文化史研究の大きな転換点となっている。
このすばらしい企画を連載させてくれた「太陽」編集長清水壽明さんに深く感謝する。連載を担当してくれた濱口重乃さんにはいろいろお世話になった。そして、この企画を「太陽」に推薦してくれた三沢秀次さんが、本にまとめてくれた。
かつて私も編集部員であった「太陽」でこの仕事ができたことは、私にとってこの上ない喜びである。いつかまたこの雑誌が甦ってくることを願っている。その思い出にこの本を捧げる。
主な初出
補記
最終更新:2007年02月22日 01:35